二重人格パイロット、銀河辺境砂漠型惑星にて   作:サイリウム

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〇おしらせ

作者交通事故のため、更新が止まっていたことをお詫びいたします。
歩いていたら、ホバー移動のドレッドに吹き飛ばされちゃいました。
皆様も横断歩道を渡る際はよりお気を付けください。

〇これまでのあらすじ

主人公セファは、経営&射撃特化な『私』と開発&近接特化な『アタシ』の二重人格者。
胸に秘めた超強力エネルギー炉と、独自開発巨大ロボ『ドレッド』をもって砂漠の惑星に居住中。
そんなおり、この惑星の三大勢力のひとつ。『商会』に目を付けられてしまい、近くの町を牛耳る支部長率いる軍勢との戦いに。
成り行きで“セファ側”として戦うことになった軍属の2人と共に、大軍へと立ち向かっていく……!

(今回は軍属の一人、少尉視点になります。以前のより詳しい内容はお手数をおかけしますが、最初から読み直して頂ければ幸いです。)



22:いりはする

 

 

 

『あ、あの少尉。……これ私達、いります?』

 

「いらないかもしれないねぇ。」

 

 

短距離通信、画面から聞こえてくる彼女の声。若干素に戻ってる軍曹ちゃんの声にそう返しながら、思考を回す。

 

その装備や振る舞いからかなり出来るだろう彼女。セファを名乗る“店長”だが、どうやらこちらの想定以上のようだ。なにせ自身の視界に写るのは、幾重にも連なる崩壊した車両たち。まだ生き残っている数も多く、こちらに砲撃して来る敵はいるが……。それでも途轍もない残骸が転がっていた。

 

そして視界の外から響いてくる、複数の爆発音。

 

音の大きさからして、間違いなくドレッドを撃破しているのだろう。

 

 

(約3割の車両。一人で敵集団を“全滅”させた後、ドレッドも複数撃破。本部の人事が見たら速攻でスカウトしそうな逸材だよねぇ。)

 

 

文字通りの“全て”ではないが、軍略を齧っていれば『士気が崩壊し総崩れの可能性が出てくる被害』をたった一人で生み出している。それもおそらくほぼ無傷で成し遂げ、その後ドレッドの複数撃破までやり遂げた。

 

これはもうアレ。

 

軍が定めたドレッド乗りの“エース”としての資格を、軽く超えてしまっているだろう。

 

単体で百以上の車両を撃破するか、5体以上のドレッドを撃破する。数だけ見ればそのどちらにも満たしていないが、本来ならば長い時間をかけて達成する成果を、この戦闘だけで上げたのだ。資格は十二分にあるだろうし、確実にその上。エースの中のエースである“トップオブエース”級と言える。

 

 

(顔も悪くないし、囲い込みルートだろうねぇ。)

 

 

それだけの力をもって、なおかつ見た目もいい。

 

遺伝子操作技術の発展によって、人の顔ってのは金を掛ければ掛けるほどに上がっていくものに変化した。けれど、強さと美を兼ね備えた存在というのは中々いない。

 

何せ幾ら技術が発展したとしても、限界というモノがある。

 

風のウワサ程度でしか知らないが、過去にそれまでの戦術を全てひっくり返した途轍もないエースがいたという。当時の政府はその個体のクローンを大量に作り、最強の軍団を作ろうとしたようなのだが……。どれだけ精密にコピーしたとしても、手に入った力は本物の1割程度。限界まで酷使してようやくエースに手が届く程度だったという。

 

 

(それでも十分だと思うけど、“強さ”ってのはそう簡単に複製できないってのは証明されたわけだ。感覚的なものが必要になって来るんだろうね。)

 

 

まぁそんなわけで、その2つ。

 

力と美貌を重ね持つ彼女は相当貴重なのだ。

 

『軍』内部にも、この星における影響力を復権させ『商会』『企業』『団体』の口出しを受けない強い軍を再建させたい、と考える奴らは一定数いる。確かに自分が所属している駐屯地は完全に『商会』の手駒だが、本部はまだ違うのだ。

 

そんな彼らからすれば、完全フリーなエース級戦力は喉から手が出るほど欲しい。経済的にも武力的にも、『軍』は三大陣営に劣る。その一つがひっくり返るかもしれないと考えれば、喉から手が出るほどに欲しいだろう。

 

更に、顔が良いことを考えれば広告塔にもなる。

 

あのドレッドを自力で作ったと考えれば、技術力も多いにある。もし違ったとしても、三大陣営の匂いを感じさせないドレッドを生み出せる“何か”との伝手は確実に確保しておきたい。

 

セファ。彼女を構成する全てを意のままに利用できれば。

その全力を振るわせる環境を用意できれば、

 

今の盤面をひっくり返せる“ジョーカー”。

単なる戦力以上に価値のある、最強の手札になる事だろう。

 

まぁ勿論、それだけ強いカードだったら。三大陣営も狙って来るんだろうけどね?

 

 

(この戦いがまだどっちに転ぶかは解らないけど……。今後は『彼女の取り合い』ってのが始まりそうだよねぇ。少なくとも『軍』には僕が情報を上げるし、『商会』は今戦ってるから自然と知ることになる。)

 

 

最初は2者による取り合い、その後は『企業』や『団体』も目を付けて参入。

 

彼女は完全に望んでないだろうけど、色々と大変なことになるだろう。

 

そんな“今後”のことを考えながら、意識を戦闘へと戻していく。

 

隣で銃弾をばら撒く軍曹ちゃんと同様に、自身も弾を迫りくる車両たちに向かってばら撒く。彼女と適宜情報を共有しながら、確実に敵車両の数を減らしていく。ま、こっちはドレッドで、相手は車だ。速度も武装の差も各段にこっちの方が上。引き撃ちを意識しておけば、クリティカルヒットを喰らうこともないだろう。

 

後は……、若干気落ちしている部下のメンタルケアくらいか。

 

 

「軍曹ちゃん、2時の方向。」

 

『あッ! しゃ、射撃しますッ!』

 

「考え事するのは良いけど、戦闘中だよ? ほら気合入れて入れて。」

 

 

こちらの指示に反応し、即座に50㎜を放つ彼女。何発か外れ砂漠に大きな砂柱を作り出すが、何とか1発が命中。確実に敵戦車を吹き飛ばすことに成功する。

 

ドレッド乗りとして能力はあまり高いとは言えない彼女だが、言われたことを即座に行い、一定の成果を上げる。“兵士”としては申し分のないパイロットと言える。軍規に重きを置いているため例外や想定外に弱いが、良い指揮官がいれば格段に化けるタイプ。

 

まぁだからこそ、『守るべき市民に守られている』って現状がちょっと、響いてるみたいでね?

 

 

「軍曹ちゃん、思い悩むのは別にいいけどさ。彼女は外れ値だからね? 気にしない方が身のためだよ、マジで。」

 

『で、ですが少尉! しょ、小官たち軍人の責務は……!』

 

「だったらなおさら目の前の状況に集中しなきゃ。ほら、11時からご新規の集団さん。あと5時の方向から回り込んでくるのもいるよ? そっちにはミサイル使っちゃおう。」

 

『りょ、了解!』

 

 

そう返すと、即座にロックオン完了の通知が届き、操縦席の画面。その右端に開いているマップに、着弾予想地域が表示されていく。

 

まぁこんな緩い会話しながらでも、彼女は彼女で元気に銃を放っているのだ。内心何を考えようとも、命令すればその通りの動きをしてくれる。……宿舎に帰ったら酒でも誘った方が良さそうなのは確かだけど。

 

理想と現実、折り合いつけるのは面倒だからねぇ。

 

 

(……でも帰ったら帰ったで残業確定なんだよなぁ。最悪死ぬし。)

 

 

一瞬終わった後のことを考えるが、どう考えても『定時で上がって酒場に駆け込む』ってのは出来そうにない。何せ今回の戦闘によって、『商会』と『軍』。資金援助する側と、それによって子飼い化した側が敵対してしまっているのだから。

 

全体で見ればまだ辺境の町で起きた小競り合いのレベルだが……。この一地域に関して言えば、ほぼ全面戦争のようなものだ。何せ『商会』側はおそらく、今出せる最大戦力を持ってきている。

 

この商会支部で抑えている残存ドレッド&車両全てに、“店長”が監視カメラの情報で見せてくれた“あの黒いドレッド”。

 

 

(情報でしか知らないけど、支部長のドレッドだったはず。ソレが出てきてる当たり、マジの奴だ。)

 

 

そんな戦いに、軍の人間が敵側としてかかわってしまっている。駐屯地の上役たちの意思とは関わらず、敵対してしまったわけだ。

 

この戦いの勝者が『商会』になった場合。かなり面倒なことになるだろう。

 

上は関与を否定するために生贄、自身や軍曹ちゃんの首を差し出し、これまで以上に商会の犬になるように動くはずだ。経済という首根っこをあちらに握られている以上、ウチの駐屯地が生き残る道はそれしかないわけだし。

 

そして自身が“店長”と呼ぶ彼女の結末も、目を覆いたくなるものが待っているだろう。まだドレッドの中で戦死した方がマシなようなものが。

 

けれどこれは、“負けた”場合。

 

 

(でも今の戦況を見た感じ……、彼女のおかげで勝っちゃいそうなんだよなぁ。)

 

 

少なくとも、“痛み分けの引き分け”程度には持って行けそうな状況。

 

自身と軍曹ちゃんだけでは弾切れや、敵ドレッドの数に押されて敗北確定だったのを、たった一人でひっくり返している彼女。まだ敵の数もかなり残っているが、このままいけばあの支部長のドレッド、それ以外であれば殲滅出来てしまいそうな勢い。

 

 

(こっちとしては、その方が都合がいいんだけどね?)

 

 

ここで勝ち切ることが出来れば、まず自分たちが身内に“処理”される可能性はぐっと減る。

 

『商会』はその在り方から敗者に酷く厳しい。相手が持つ全てを、慈悲なく持って行くことだろう。しかしその反面、“勝者”を貴ぶ側面も持っている。例え敵だったとしても、相手が強者であれば相手に礼儀を示すのだ。

 

つまり勝った瞬間、 『商会』から一定の評価を得る。

 

今この戦場にいる支部長は敗者として消されるため諸問題が吹き飛ぶし、そのバックにいる商会本部から一目置かれることになるだろう。自分たちが所属する駐屯地は荒れに荒れるだろうが、上役たちがゴマすりの為に消しに来る可能性がなくなるってわけだ。

 

 

(それに、生きて帰れば“ウチの”本部にも情報を送れる。だからまぁ勝った方がいいんだけど……。)

 

 

仕事が増えるんだよねぇ。

 

いや殺されるよりは各段に良いよ? でも残業はね、ちょっと嫌というか。でも案件的に他の子に任せられないというか、自分しか出来ないというか。

 

でも仕事はね。ほんとにしたくないというか……。

 

 

「うぅん、憂鬱。」

 

『っ! ちょこまかとッ!』

 

「あ、軍曹ちゃんはもう弾切れとか気にせず弾幕張りな? そっちの方が当たるよ?」

 

 

そんな指示を出しながら、戦況を眺めていく。

 

例の彼女に比べれば全然だが、一応こちらも仕事はしている。車両の数は徐々に減ってきているし、彼女が暴れているおかげで戦況もこちらに傾いている。あとはまぁいい感じに引き撃ちしておけば……。

 

 

「ま、そう簡単にはいかないか。」

 

 

視界の端に写る、大きな砂煙。

 

車両ではなく、タンクタイプのドレッドがこちらに向かって進んできている証。

 

……持ってきた装備の種類から、対ドレッドに適しているのは自身の方だ。軍曹ちゃんは純粋に例の彼女の言葉を信じ、原住生物向けの兵装、車両などの小物に使える武器を持って来てしまっている。

 

こっちは彼女との戦闘も考えて色々持って来たんだけど……。ちょっとミスったかもしれない。

 

武器的にも、練度的にも、軍曹ちゃんに任せることは出来ないだろう。

 

そんなことを考えながら。ドレッドのカメラをズーム。砂煙の奥に見える“黒い影”に若干の現実逃避をしながら、軍曹ちゃんに向けて通信を開く。

 

 

「あ~、軍曹ちゃん。敵ドレッド接近中。店長ちゃんの撃ち漏らしがこっちに来たみたいだね。」

 

『ッ! 指示を!』

 

「僕が時間稼ぎしとくからさ、軍曹ちゃんは車両を先に殲滅しちゃってくれる? 弾切れとか気にせずどんどん撃っちゃって構わないから。んで弾切れちゃったら体当たりとか踏みつぶしで何とかする感じで。」

 

『了解しましたッ! すぐに殲滅し合流します!』

 

「よろしくね~。」

 

 

そう口にしながら、彼女と組んでいた編隊を崩す。

 

そして向かう先は、こちらに向かって来るドレッド。50㎜をばら撒き車両を吹き飛ばすことで、軍曹ちゃんの負担を減らしながらの移動だ。自分一人だけならすぐさま逃げ出したいところだが、“今後”を考えるとここで前に出て“彼女”に恩を売る以外の選択肢はない。

 

……軍曹ちゃんの練度からして、おそらく合流は難しいだろう。

 

基本的な動きは出来ているが、本来圧倒できるはずの車両相手に、少々手間取っているように見える。まぁこれだけの数の差は初めてだろうし、仕方のない所もあるが、真面な戦力として数えることは出来ない。

 

つまりかの有名な“支部長”相手に、2人して突撃するのは禁忌肢ってわけだ。

 

 

(多少は出来るつもりだけど、お荷物抱えて歴戦の猛者に勝てるとは思えないからねぇ。)

 

 

そもそも、相手の数の方が多いのだ。

 

この戦いは店長ちゃんの店を守る『拠点防衛戦』であることを考えると、店に向かう車両や戦車を止めるドレッドが必要になって来る。店にいたドロイドたちもある程度は戦えるだろうが、彼らは歩兵扱い。車両を相手するには限界があることから、近寄らせないことが大前提の勝負になっている。

 

それにドレッド同士の戦い、こと地上戦においては横入りして来る“小物”の存在は致命傷なりうる。

 

どう考えたとしても、軍曹ちゃんの役割は車両相手に固定しておいた方が安全だろう。

 

 

(でもそうなると……。)

 

 

僕一人で、あの“支部長”の相手をすることになってしまう。

 

少なくとも自身より強いであろうこちら最大戦力。セファを名乗る彼女であれば、他の雑兵を蹴散らしてすぐにこっちに来てくれるだろうが……。

 

 

「まーじで頼むよ店長ちゃん。足止めだけは何とかするから速く助けに来てよ? マジで。後の事はおじさん頑張って、いい感じになるようにするからさ……!」

 

 

 

 






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