二重人格パイロット、銀河辺境砂漠型惑星にて   作:サイリウム

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5:鐵山

 

「ん? ……あぁ途中で寝てしまったのですね。」

 

 

精神の表層に戻ってみれば、何故か寝転んでいる自身の体。

 

周囲を見渡せば大量に散らかった何らかの機械部品と工具たちに、おそらく作業中に開けたのだろうスナック菓子やカップ麺の容器たち。そしてその中に眠る自身とドロ猫の姿。おそらく『私』が作業中に寝落ちしてそのまま、という形なのでしょうが……、何故ドロ猫まで一緒に寝てたんですかね?

 

まぁ別に困るわけではないので、タオルくらいお腹に掛けてあげますが。

 

 

「肉体の方は……、少し睡眠不足といった所ですか。まぁこれぐらいなら今日の活動には問題ないでしょう。」

 

 

その代わり今日は早めに寝るようにしなければ、と脳内のメモ帳に書き込みながら倉庫の外へと足を進めます。

 

私たちの睡眠事情は、少々特殊になっています。人格が二つあり精神に奥行きがある私たちは、片方が活動中にもう片方が休眠を取るということが可能です。故にやろうと思えば24時間永遠に活動することもできるのですが、流石にこの遺伝子操作された体でも5徹以上は死がチラついてきます。ドレッドでの長期外出や戦闘などで休めない時は仕方ないのですが、お互いが体に負荷を掛ける活動を控えるよう努める必要があるんですよね。

 

 

「ま、寝ないと死ぬよ。というわけです。どれくらい休むかは今奥で寝ているだろう『私』が起きてから決めるとして……。」

 

『オハヨウゴザイマス、オーナー。』

 

「あぁ、おはようございます。夜番お疲れさまでした。しっかりと充電してくださいね。」

 

『らじゃらじゃ。』

 

 

そう返しながらドロイドの充電スペースに移動していくドロイドたちを眺めながら、手元にあったタブレットを覗き込みます。どうやら彼女は新しい近接武器の施策に向けて動いていたようで、その図面らしきものが大量に並んでいますが……、一旦それは放置しドロイドたちの管理画面へ。

 

映し出される収支報告やカメラの記録データなどを確認します。

 

偶に深夜にお客様がやって来て油を補給しにきたり、招いていない厄介なお客様がやってきたりするのですが……。ドロイドや監視カメラに異常はありませんし報告も上がってきていません。つまり昨日は何もなかった、というわけですね。お金が手に入らなかったのは残念ですが、問題が起きていないのは良かったです。

 

 

「んー、でも。どうしましょうか。どうやら私も『私』も、もう少し好きに動かせる資金は欲しい所。けれどそう簡単に稼げる仕事はありません。普段の販売に関しても血の方は保存がききますが、ミミズ肉は時間が経つと味が落ちて買取価格が下がりますからね……。」

 

 

血油は長期保存が可能ですが、残りのミミズ肉はやはり食料品。年単位の保存こそ出来ますが、時間が経てばたつほど味が落ちていきます。

 

いくら摂取できる栄養が同じだとしても、食べるなら美味しい方がいいのが世の常。キロ単位で考えるとちょっとしか変わりませんが、ミミズのサイズを考えると馬鹿にならない額が時間経過で吹き飛ぶのです。可能でしたら自分たちが食べる以外の部位は早いとこ売り払ってしまいたい存在ですね。

 

しかし大量に物資を買い取って下さる業者さんは先日すれ違いになってしまいましたし、私個人ではミミズ肉を分割し加工して販売する企業や工場への伝手はありません。場所を調べて持ち込めば買い取ってはくれるでしょうが、足元見られるのは確実。

 

最悪業者さんが次来るまで家に置いておいた方が高くなる可能性があるでしょう。

 

 

「私達のコアの問題、彼女が言っていましたが、必要になりそうなのが大型の核融合炉。それこそ航宙戦艦にある様なものが欲しいと零していましたし、稼ぐなら販路の拡大を考えてもいいかもしれません。」

 

 

今のガソリンスタンド経営でも十分生きていくことはできますし、たまにドレッドで害獣駆除以外の仕事を頑張れば贅沢を楽しむことはできるでしょう。

 

しかしそれだけでは大型核融合炉は買えませんし、いずれ行きたいと願っている地球行きのチケットなど買えるわけがありません。アレ、規格外なほど高いですし。

 

となると今付き合いのある業者さん以外にも販路を拡大してミミズ肉を売り込むか、それ以外の稼ぐ方法を考える必要があります。一応ドレッドでの傭兵業というすぐに飛びつける仕事はあるのですが、旨味が薄いんですよね。ドレッドの整備料は馬鹿になりませんし、何かあった時のリスクが大きすぎますから。

 

 

「んー、最悪他の星への販売も考えるべきかもしれませんね。少々癖のあるミミズ肉ですがちょっと手を加えれば珍味扱い……、されるかもしれません。となると加工用の機械を作ってもらうべきでしょうか? 缶詰みたいな。」

 

 

そんなことを考えながら外に出て、貫くような日光をこの身で受けます。

 

見上げてみれば恒星が2つに月が6つ。なぜ私たちの先祖はこのような変な立地に入植しようと思ったのか理解に苦しむが、見慣れた空と厳しい熱線。遺伝子操作をしていなければすぐに脱水症状を喰らう暑さによって、体に残った眠気が消えていきます。

 

 

「さ! 今日も頑張りま……、警報?」

 

 

ゆっくりと伸びをし気合を入れようとした瞬間、施設全体に響く大きな警報音。

 

この種類からして……、賊ですね。しかも大量の。

 

おーい、『私』? 起きれ……あ、無理ですねコレ。熟睡してます。仕方ありません、私で対処するとしましょうか。

 

手元のタブレットでドロイドたちに指示を送り出しながら、来た道を引き返し倉庫へと走り出します。

 

すると迎えてくれるのは、飛び起きてあたふたしながら耳を抑えているドロ猫。

 

 

「うにゃぁぁ!! なに!? なんの音にゃぁ!?!?」

 

「警報ですよ、ドロ猫。砂賊が攻めて来たようです。」

 

「砂賊にゃぁ!?」

 

 

目を大きく開いて驚く彼女。

 

まぁ彼らにも何かチーム名などあるのかもしれませんが、この砂漠で略奪を行う賊を私達は“砂賊”と呼んでいます。まぁドロ猫が可愛らしいコソ泥ならば、彼らは銃でも戦車でもドレッドでも、暴力をもって奪いに来る奴らです。

 

まぁウチは防衛設備が整っている町から遠く離れた郊外にありますし、狙いやすいのでしょう。こちらも攻められることを見越して周囲にセンサーを設置したり、レーダーで早期発見できるようにしたり、ドロイドたちに武装させたりしていますが……。今回の警報からしてかなり大規模な敵であることが推察できます。こちらもドレッドで応対せねば被害が出てしまうでしょう。

 

 

「た、たいへんにゃ!? 危ないにゃ!? ほ、ほらセファも一緒ににげるにゃ!!!」

 

「いえ、撃退しますよ。逃げようにも周りには砂しかありませんし、この場所は私の全財産ですから。ほら、ドレッドを出しますから避けて……。いやちょっと散らかり過ぎてますね。皆さんッ!」

 

『らじゃらじゃ』

 

 

急いで飛び出してくるドロイドたちに邪魔になっている機材を運ばせながら、未だうにゃうにゃ言っているドロ猫もドロイドに任せます。うん? どうしましたかドロイド。あぁ武装。今日はライフルだけで結構です。いつも通り弾薬満載で2丁しっかりと乗せてください。

 

タブレットでドレッドを起こし、コックピットへのリフトを下げさせながら、聞いてきたドロイドの彼に持っていたデバイスを手渡します。

 

SF系の作品であればここでパイロットスーツなど着るのでしょうが、ここは地上でウチは零細企業です。ちょっと着てみたいですが、必要のないものを買う余裕はないんですよね。

 

 

「よっと!」

 

 

リフトの足場に右足を掛けながら、昇降用のボタンを押し上へと上がっていきます。

 

すでにドロイドたちが整理を終え、発進に問題ないスペースを確保済み。ライフルの用意は少々時間がかかっているようですが、私が乗り込むまでには終わっていることでしょう。

 

 

「さて、頑張りましょうね『鐵山』。」

 

 

リフトからコックピットへと飛び乗り、リフトを格納。補助動力に火を入れます。

 

 

「起動前チェック開始。機体状況問題なし、システムオールグリーン。……ホバー機構に調整の跡あり。さすが、仕事が早いですね。」

 

 

操縦桿とパネルに手を伸ばしいつも通りの確認をしていきますが、先日見られた右足の不調は改善済み。

 

システムはこれまで通り一切問題はなく、更によく見てみればホバー走行に関わる部分のバージョンが一つ上がっていることが解ります。ドロ猫と一緒に、『私』が整備してくれたのでしょう。まぁおつむの弱い猫が何か手伝えたかは少々疑問ですが、二人に感謝せねばなりません。

 

 

『武装準備完了。オマタセデス。』

 

「ありがとう。すぐに発進するので下がっていてください。」

 

『らじゃらじゃ。』

 

 

彼からそう報告を受け取った瞬間、ドレッドが武装とリンクが確立。

 

表示される弾数も注文通り満載。しかも今回の襲撃に合わせたのか、ミミズ狩りで使用していた神経弾を取り外し、全て通常弾頭に変えてくれています。敵の編成は解りませんが、これで弾切れの心配をする必要がぐっと下がりました。

 

そしてその確認を終わらせた瞬間。ドレッドのセンサーが周囲にドロイドたちがいないことを伝えてくれます。

 

……さぁ、行きましょうか。

 

 

「メイン動力接続。」

 

 

ボタンを押した瞬間、勢いよく飛び出してくるコード達。寸分たがわずこの身に刺し込まれたそれは即座に結合され、緑の光を伴いながらエネルギーを引き出していきます。グリオナイトの緑の光。前世の記憶のせいかあまり良いイメージはないのですが、使えるものは十全に使うべき。気にせず仕事に移るとしましょう。

 

 

「動力問題なし。……『鐵山』改、出ます。」

 

 

 






〇昨日のセファとドロ猫の食事(1人分)
・TENJIKU製 甘辛スナック「YABASLICE」明太マヨネーズ味大容量パック(2㎏)
・TENJIKU製 チョコバー「S&C&S」(200g×3本)
・あなによし製 インスタントラーメン「スプラッシュ」(500g×2)に焼いたミミズ肉(300g×6)にスライスチーズ(10枚入り2パック)を乗せたもの
・DDD社製 清涼飲料数「COCAINE」(2ℓ×3)

〇『私』からの総評
37点。たまにはいいですが、もうちょっとこう野菜を取ってくれないでしょうか? しかも保存料たっぷりというか、今の人類でも体に悪いというか……。量も暴飲暴食でしかないですし、これ昨日の業者さんが運んできてくださった菓子類ほぼ食べ尽くしてますよね? 早死にしますよ? 本当に。食事の時間をすぎても私が寝ていたのは申し訳のないことではありますが、起こしてくれればもう少し栄養バランスに配慮したものを作りますから。とりあえず今日の食事はカロリー控えめで胃腸に優しいものにしますからね。

あとドロ猫。貴女用にお野菜沢山のお弁当持たせてあげますから家に帰ったらそれ食べなさい。いいですか?




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