二重人格パイロット、銀河辺境砂漠型惑星にて   作:サイリウム

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6:こんなこともあろうかと

 

 

 

敵位置は……、町とは反対側から。東ですか。

 

一旦ホバー機構を切り、両足で地面を踏みしめながら、ライフルを構えます。

 

私のような射撃タイプにとって一番重要なのは距離です。相手が守るべき拠点に到達するよりも早く敵を削り、消し飛ばす。今日この日だけを考えればある程度ダメージを与え撤退させるだけで良いのですが、賊というものは放っておけばそれだけ数が増えるどこぞのGのようなものです。

 

……そういえばこの星でGを見たことありませんね。あの存在がこんな砂漠如きに対応できないわけないですし、運よくこの星に持ち込まれなかったのでしょうか?

 

 

「まぁ今考えることではありませんか。」

 

 

そう言いながら構えるのは、愛用のライフル。

 

対巨獣用駆除弾射出機構『荒池』、それを彼女によって改造された一品です。もともとは市販の安い中古品だったのですが、『私』が戦闘用にも使えるよう改造した口径200㎜の超巨大ライフルとなっています。

 

連射することもできるのですが、弾は有限で高額。何せ一発で大きな車が買えるほど高価ですからね。丁寧に行きましょう。

 

対して今回処理する人間は、基本酷く安価。何せ遺伝子操作技術の発展でクローン作製はアングラではありますが横行しています。一山いくらの時代で、そこから賊に落ちた愚かな魂など値段なんかつきません。倫理など欠片も期待できない時代ですからね。

 

……ま、そんな可哀想な賊が、こんな高価な弾丸で死ねるのです。一発一発丁寧に、ぶち込んであげなければ可哀想というものでしょう。

 

最期の贅沢、存分に楽しんでくださいね?

 

 

「スコープ起動。数は、30以上いますね。基本戦車や装甲車で、ドレッドが三機も。かなり豪勢なことで。……通信傍受、開始。」

 

『おかしらぁ! おそらく襲撃がバレました! 俺たち以外の振動があります!』

 

『あ? 熱源反応なんてねぇだろうが! 気にせず進んで丸ごと全部奪うんだよッ!』

 

『けひひ! あの女、ちと薄いが顔は良かったからなぁ! おかしら! あっしにも遊ばしてくださいよぉ!』

 

 

うーん、典型的な賊ですね。

 

まぁウチのドレッドというか、グリオナイト・コアの特性である『熱を発しない』ことに踊らされているようで何よりですが。ともかく今は情報収取を終わらせすぐに攻撃に移れるようにすべきでしょう。

 

戦車や装甲車はよく見ますが、賊がドレッドを持っているのは非常に稀です。少々警戒した方がいいはず。してその肝心のドレッドは……、全てキャタピラの砂上適性がある機体で、装甲は軽装が2,重装が1といったところ。どうやらドレッド用の弾丸を買うお金はないようで、近接装備のみですが……。戦車や装甲車には火砲が設置されています。ウチを襲うということですから、その対策をしていると見るべきですね。

 

ま、情報はこれくらいでいいですか。

 

 

「では、目障りな雑魚から。」

 

 

即座に照準を合わせ、引き金を引く。

 

心地よい振動と爆音を響かせれば、スコープの中で消し飛ぶ装甲車が一台。

 

すぐに賊たちの動きに乱れが出ますが、何かことを起こされる前に次々と弾を打ち込んでいきます。

 

 

『ぎゃぁぁ!!!』

 

『あっ! ジェムの野郎が!』

 

『でも熱源センサー反応してねぇぞ!?』

 

『チィ! てめぇら何ぼさぼさしてんだ! とにかく撃ってきた方に撃ち返せッ!』

 

 

一応ドロイドたちも戦えますが、戦車は難しいですし、そも彼らはお手伝いロボットであって戦闘用ではありません。

 

武装した人間に敗ける可能性が存在する以上、大事な従業員の安全を守るためには“小回りが利く存在”は真っ先に排除すべきでしょう。確かにホバー移動するこのドレッドのエンジンで轢き殺しながら消し飛ばしてもいいのですが、生き残られる可能性もありますので丁寧に削って行く必要があるわけです。

 

それに今日はドロ猫もいることですし、ね?

 

 

「っと。あっちも撃ってきましたね、では移動しながら。」

 

 

遠くから響く轟音と、ドレッドから目測100mほど前に着弾した相手の弾を見た瞬間。即座にホバー機構を起動させます。

 

何せこちらには拠点という守るべき存在があるのです。そちらに流れ弾が行かないように立ち回りながら弾を撃ち込んでいきます。……あ、ヒット。これで8つめの車ですね。

 

にしても、やはりホバー移動というのは良いものですね。エンジンの特性から強い熱を帯びるという欠点こそあれど、ある程度自動でその高さを維持してくれますし、出力の高さのせいか両足立ちした時と同様に弾を放つことが出来ます。本来このような機構はドレッドの稼働時間へ大きな影響を及ぼすそうですが、私達にはコアがありますから。エネルギーの心配をする必要は一切ありません。

 

 

『ね、熱源反応ですおかし、あぁぁぁ!!!!』

 

『そ、装甲車全滅! 全滅です!』

 

「さてはて、何か行動を起こさないとお仲間が減りますが、いいんですかねぇ? 13っと。」

 

 

そんなことを考えながら、どんどんと車両を消し飛ばしていきます。

 

頭の中でそろばんがどんどんと弾代を積み重ねていきますが、今は気にせずとにかく命中させることに注力します。ホバーで変則移動を取りながら、戦車や装甲車といった人が乗り込んでいるだろう存在を抹消。着実に削り取っていきます。

 

勿論、相手もタダの的ではありません。戦車の砲や敵ドレッドからの射撃が飛んできてはいますが……、おそらくホバー移動に対応できていないのでしょう。こちらが通り過ぎた場所に弾が突き刺さっていきます

 

 

「……よしっ! 残りドレッド3!」

 

『かしらぁ! 残ってんの俺らだけです!』

 

『に、にげ! にげ!』

 

『うるせぇ! とにかく撃って来てる方向に走れ! じゃなきゃ俺がぶっ殺すッ!』

 

 

最後の戦車に弾丸を叩き込み、機体のセンサーからドレッド以外がいなくなったことを確認。即座に照準をドレッドに移し、射撃モードを単発から連射に切り替えてていきます。

 

一瞬、全弾全てを敵に向かって打ち込んでやろうかと考えましたが、流石にそれは弾も相手のドレッドも勿体ないと思い諦めます。ドレッドとは精密機械の集合体であり、文字通り宝そのものです。完品そのまま確保できればかなりの資金を確保できますし、破損した部品でも十分な金額と成り得るでしょう。確かに弾を使ってハチの巣にすれば安全は確保できますが、ここはもう少し利益を狙いたいところ。

 

 

「流石に、ドレッドほど細かく動くものに当てる自信はありませんが……ッ!」

 

『ひ、ひぃぃ!!!』

 

 

相手のコックピット目掛けて、マガジンに残っていた弾を全弾吐き出します。

 

流石に最初のいくつかは外れましたが、一度着弾すれば最後。相手がどう動こうとも、すでに修正は完了済。単純な技量だけで、パイロットただ一点を狙って弾を打ち続けていきます。

 

すると、どうやらあちら側は味方を犠牲にして距離を詰めることにしたようで、助けに入る様子は一切なし。

 

そんな状況が、悪かったのでしょう。

 

 

『たす、たすけ! ぎ、ぎぃぃやあぁぁぁあ!!!』

 

「……ッ。あぁ、爆散してしまいましたか。」

 

 

通信傍受から聞こえてくる絶叫。

 

見捨てられたのなら逃げるのみ、ただ生物的な恐怖に体が動いたのかもしれませんが、こちらの想定外な動きをする敵ドレッド。そんな彼のジェネレータにこちらの弾丸が放たれてしまい、爆音と共に上半身を吹き飛ばす彼。

 

……コックピットだけ破壊しようと思っていたのですがね。

 

 

「やはりこの辺りの手加減は私よりも『私』の方が得意なようで。」

 

(……んぁ。)

 

「でもまだ寝てるんですよねぇ。」

 

 

そう考えながら、距離を詰めて来た敵先頭へと視線を移します。

 

 

『か、かしら? ま、まだやるんですかい!?』

 

『口答えすんな! 俺に殺されるか! あっちの攻撃全部避けるか! どっちか選べ! 解ったら一直線に走んなッ!』

 

 

ようやく蛇行し始めた彼らに少し哀れみを覚えながら、先ほど同様弾丸を打ち込んでいきます。

 

どうやら残り2機、軽装と重装タイプ両方ともに近接武器を扱うようなのですが……、何故か軽装が前衛を張ってますね? 普通装甲がある後者が前衛を務め距離を稼ぎ、軽装が回り込むなどして戦うと思うのですが。

 

通信傍受だけでは解りませんが、もしかして重装の方に敵の首領が乗っていたりするのですかね?

 

 

「まぁいいです。打ち抜いてしまいましょう。」

 

 

先ほど同様に、照準を合わせ引き金を引きます。

 

相手のキャタピラに対してこちらはホバー移動。こちらの方が圧倒的に速いので引き撃ちし続けても良いのですが、流石に哀れ。あと鹵獲したいのも確かなので、立ち止まり地に足を付けてしっかりと照準を合わせながら打ち込んでいきます。

 

 

「Hit、Hit、Hit……。」

 

『よけ、よけら! か、かしらぁ! おたす』

 

「Break。貫通ですね。」

 

 

あちらとしてはもう逃げるか突っ込むしかないのでしょう。

 

ただ無残に走り寄って来るコックピット目掛けて弾丸を打ち込み、破壊します。

 

しかし……。

 

 

「普通、ここまで追い込まれば逃げると思うのですがねぇ? まぁ逃げても処理するまで追いかけますし、最後まで足掻くのは間違いではありませんが。さて、お次はどうし……、あぁなるほど。」

 

『ちぃ、役立たずが! だが盾は増えたなぁ、オイッ!』

 

 

次の標的に移ろうとすれば、重装のドレッドが軽装のドレッドの頭を掴み、その体を盾にしながらこちらに走り寄ってきます。

 

なるほどなるほど、ご自分だけ生き残ればよいというタイプの賊さんでしたか。良いですねぇ。しかもこちらがドレッドを鹵獲したいという意図も組んで仲間のドレッドを盾にしますか。賢いようでなによりです。

 

 

「しかしそうなると、面倒ですね。もうハチの巣に……。」

 

 

そう思いながらコックピット内の画面に目を向けますが、そこに表示される弾薬数を見て思わず顔を顰めます。

 

残弾数11。正直に言うと、使い過ぎです。敵車両の数が多かったのと、軽装ドレッドの破壊に使い過ぎたのでしょう。装甲の厚いコックピットではなく履帯を破壊すべきだったかもしれません。でもそれこみの設計で、履帯なしに動くドレッドもいますし……。

 

おそらく軽装ドレッドを吹き飛ばすことはできるでしょうが、そこから重装を仕留めるのは少々難しいでしょう。見るからに装甲が厚く追加装甲もあるため、幾ら全弾ぶつけても完全に無力化できるかは未知数。それに、そこまで弾を使ってしまえば確実に赤字です。防衛に金は掛かるものですが、店舗の経営を預かる身としては赤字はよろしくありません。

 

無論このドレッドの“秘密兵器”を出せば確実に破壊できるのは確かなのですが……

 

 

『おいおいおいおい! やっぱ弾切れか! そうだよなぁ! あんだけ撃ってたもんあぁ!!!』

 

「別に切れてはないのですが……、面倒ですね。さて、どうすべきか。」

 

(……んぁ!? な、なんで戦闘してんだ『アタシ』!?)

 

「っと、失礼。あと攻められてるからですよ、『私』。」

 

 

少々うるさくし過ぎた様で。起こしてしまったのは申し訳ないですか……、ちょうどいい。

 

寝起きですがいけますか、『私』?

 

重装タイプの賊。しかし整備状況は悪いでしょう。アレを使えば簡単に処理できるはずです。

 

 

(え、アレ? アレ使った後直すの面倒いんだよなぁ。普段の奴は? アタシの武装。)

 

「……すみません、置いてきました。」

 

(ま?)

 

「ま。すいません、射撃だけで何とかなると思いまして……。」

 

(あー、まぁ『アタシ』なら何とかはなるだろうけど……。ん?)

 

 

そう言うと、少し考え込んだ後。右手の操作権を奪い操作盤を弄り始める彼女。

 

急に持っていかれるのには慣れているのでドレッドの操縦には問題ありませんが、せめて一言もらえません?

 

 

(あは! わりぃな! でも何とかなりそうだぜ?)

 

「何か妙案でも?」

 

(あぁ! こんな時、なんて言うんだったか……。あ、そうだ! 『こんなこともあろうかと』だッ!)

 

 

 





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