二重人格パイロット、銀河辺境砂漠型惑星にて   作:サイリウム

7 / 24
7:必殺技

 

 

「にゃー! ひっぱる、ひっぱるにゃ! にゃーのしっぽ千切れる!」

 

『ジャア歩ケ。退避退避。』

 

 

時間は少し巻き戻り、セファたちが戦闘を始める少し前。

 

ドレッド出撃のためその周囲から退避を促されたドロ猫は、ドロイドの一体に引っ張られながらとある場所まで連れられていた。

 

ようやく解放され、千切れそうになっていたしっぽを両手でフーフーと息を吹き掛けるドロ猫。しかしすぐに周囲に眼が行き、その瞳を強く輝かせる。そう、ドロイドたちが連れて来たのは避難所にして観測所。倉庫内に存在する一番安全で、外の様子を確認できる大量の画面が設置された場所だった。

 

ドロ猫を運んできたドロイドがボタンを押すと、その画面すべてが外の様子を表示し始める。そこにはもちろんセファの乗ったドレッドも表示されており、この場所から戦闘の様子を眺めることが出来るようだ。

 

 

「すごいにゃ! 秘密基地みたいにゃ!」

 

『タシカニ。』

『ここ、椅子の人できる。』

『オーナー強いから、出番ないけど。』

 

 

気が付けば、セファたちが生み出したドロイドたちがずらり。狭い部屋の中で大量の機械たちがうごめいていた。

 

比較的万能で何でもできるドロイドたちだが、その体に装着されたパーツによって簡単な役割分担が行われている。人の手の様に細かい作業が出来るマニピュレーターを持つドロイドは接客や整備、銃器やスタンガンなどを持つドロイドは警備、といった感じだ。

 

つまりここにいるドロイドたちは、非戦闘員に分類される彼ら。いざとなれば全力でオーナーやこの施設を守るために戦うし同数の人間なら普通に勝てるが、疑似的と言えど人格があることから『私』の方のセファが『危険時は避難するように』という指示を受けているため、何かあった時はここに集合しているのである。

 

 

『戦闘、ハジマル。ハジマル。』

『俺三分!』

『私、ゴフン。』

『ドロ猫、お前は?』

 

「え、何にゃ?」

 

『カケー』

『何分でオーナー勝つか勝負してるの。』

『オレ、今月のオコヅカイもうない……』

 

「ど、ドロイドがお小遣い貰ってるにゃ!? あ、えっと。にゃーはね。えっと……。あ、そうにゃ!? 今にゃーお金もってなかったにゃ! からっぽにゃ!!!」

 

 

ドロイドたちにそう言われ、急いで懐の財布を取り出しながら何分にするか考えるドロ猫だったが……。

 

ここに来る前にご飯を食べたりお酒を飲むのにお金を全部使い切ってしまっていたのだ。元々おつむが弱いせいか、宵越しの銭は持たない主義である彼女は、気が付いたらすっからかんなのが常。希望を込めてお財布をひっくり返してみるが、やはり何も出てこない。

 

賭けに参加できずしょぼんとするドロ猫と、コイツ本当に大丈夫かと心配する様な視線を送るドロイドたち。けれどそんな彼らを余所に、戦闘が始まって行く。

 

 

『あ、始まった。』

『やれー!』

『イケー!』

『ころせー!』

 

「すごいにゃ! なんかいっぱい撃って一杯当たってるにゃ! 凄いにゃ!」

 

『オレこの前ネットで調べたんだけどさ、ドレッドでの射撃戦の命中率って3割くらいだったんだよ。』

『アー。ヤッパオーナー、オカシイのね。』

『なんで全弾当ててるんです???』

 

 

動き回る存在に対して弾を当てるというのは、想像以上に難しい。

 

本来そこを機械類がサポートするのだが、この熱気あふれる砂漠の惑星では熱源反応からの照準合わせが難しく、『いるかいないか』程度の判別しか出来ない。一応技術としては生体反応に向けてロックオンしたり、動きなどに合わせて命中させるものは存在しているのだが、高価となり辺境の惑星でそれを持っているものは非常に少ない。故に『この惑星におけるドレッド射撃戦』の命中率は、3割をキープしているのだった。

 

そのため『アタシ』の方のセファもこの命中率などを案じ、幾つかの対応策を考え開発していたのだが……。『私』がそれを固辞し、空き時間全てを鍛錬に振ることで本人の技量だけで無理矢理命中率を引き上げるというよく解らないことを敢行し、成功している。

 

 

「と、とにかくなんかすごいことだけわかったにゃ……。」

 

『警備に配備されてる奴から聞いたけど、機械より命中率高いらしいぞ。ハンドガンでの勝負だったけど。』

『なんでドロイドが人間に敗けてるんですか……?』

『若者の深刻な人間離れ。』

『コワイ。』

 

 

「はぇ~。あ! もう車全部たおしちゃったにゃ!」

 

 

そこから始まる、セファによるドレッドの破壊劇。

 

戦車を吹き飛ばした時もドロイドとドロ猫が歓声をあげていたが、やはりそれよりも大きな敵であるドレッドが爆散すれば、もう爽快である。両手を挙げて喜ぶドロ猫に、マニピュレーターで強くハイタッチしすぎて腕を壊すドロイド。そこから2機目も破壊したとなれば、もう大騒ぎである。

 

けれど残り一機となったところで、セファが急に射撃を止めてしまう。

 

 

「あれ? なんで撃たないにゃ?」

 

『弾切れ……、ではないよな?』

『ちゃんとマンタンにシタ! あと11発ノコッテル!』

『じゃあナンダロ?』

『ワカンネ。』

 

 

ドロイドたちの言葉で弾切れでないことは理解できたドロ猫だったが、どんどんと敵がセファの元に近づいているのに、一切攻撃がない。ホバー移動である程度動いているようだったが、何故か徐々にその速度を落していっている。

 

ドロ猫の胸にちょっとした不安が過った瞬間……、入り込んでくる、通信が一つ。

 

 

『おいてめぇらッ! 仕事の時間だ! アレ出せアレ!』

 

『『『らじゃらじゃ!』』』

 

「にゃ!?」

 

 

アタシの方の口調で、セファの声が部屋に響いた瞬間、一斉に飛び出していくドロイドたち。それに呑まれて一緒に出てしまうドロ猫だったが……、彼女が目を回している間に、どんどんと作業が進んでいく。

 

用意されるのは、普段セファがドレッドに装着させている近接武器の一つ。名を、対巨獣用駆除近距離鎮圧武装『甘樫』改。ドレッドの名前である『鐵山』と同じ会社が作り上げたスタンロッドであり、長くて太くて硬くて、電気が流れる棒だ。

 

ドロイドたちはどこかからカタパルトを用意し、それを設置。何故か近くにいたドロ猫に、その発射ボタンを持たせる。

 

 

『準備出来たか!? シャぁ! ならやれ!』

 

「え? え?」

 

『ボタン押せ。』

 

「あ、にゃ! ぽちっとにゃ!!!」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「きたきたきたァ! これこれぇ!」

 

(あぁなるほど。武器を射出したというわけですか。)

 

 

おそらく技術者としては一生に一度はやりたかったであろう『こんなこともあろうかと』。

 

それを決めた彼女は、感情の高ぶりから口の操作権を無理矢理奪い、そう叫びます。まぁ常に操作権奪い合うような関係と言いますか、どっちがどう使ってもお互い文句は産まれない様な関係なので気にはしませんが……。

 

ですが『私』? いつの間に発射機構なんか作ったんです? いくら使いました?

 

 

「ちゃ、ちゃんと言われた資金内で収めたぞ!? ちゃ、着服とかもしてないぞ!?!?」

 

(それなら良いのですが……、貴女には前科がありますからね。好きに開発してもらってもいいですが、ある程度私に共有するようにしてください。本当に。)

 

 

昔勝手に彼女がドレッドの部品を大量に買い込んで、文字通り財布も口座も空になったことがありましたからね。まだ『私』も幼く仕方なかったとは思いますが……。

 

ま、毎日“非常食”生活したいのなら別ですが。

 

 

「うぐっ!? あ、アレ砂の味するから嫌いなんだよな……。」

 

(さ、口を挟んで申し訳ありませんでした。気張って参りましょう。『操縦』を、代わります。)

 

「あぁッ!」

 

 

精神の中でハイタッチのイメージが共有され、“切り替え”が完了。

 

『アタシ』から肉体の操作、そしてドレッドの操縦を受け取り、即座に動かす。

 

ホバー用の熱核エンジンを全力でふかし、大空へ。倉庫のカタパルトから射出されたアタシの武装。『甘樫』を受け取り、着地する。

 

はっ! やっぱアタシは銃よりもこっちの方が好みだな! 『アタシ』には悪いが、銃はちと面白味が足りねぇ! パイロットとしても技術者としてもその有用性は理解しているが……。

 

 

「熱く成らねぇよなぁッ!!!」

 

『チィ! 来やがったなクソ野郎がァ!』

 

「アタシは野郎じゃねぇ!」

 

 

広域スピーカーをオンにしながら、ホバーを全開。奴さんに向かって突撃を敢行する。

 

あっちもこちらが近接戦に移ったことを理解したのだろう、盾に使っていたドレッドの身体を投げ捨て、近接武装を展開し始める。形状的に……、質量で押すタイプだなッ!

 

 

「甘樫ィ! 起動ォ!!!」

 

『潰れろぉぉ!!!』

 

 

大剣と馬上槍を合わせたような重量級の武器。

 

鉄の塊を振り下ろす相手に対し、下から掬い上げる形で、棒を振り抜く。そしてインパクトの瞬間に、スタンロッドを起動。金属と金属がぶつかり合う火花と共に、青い雷光が火を噴く。だが……。

 

押し返される、アタシの棒。

 

 

「ちッ!」

 

『はッ! 接近戦になればこっちのもんだ! 泣け! 喚け! 命乞いをしろ!』

 

 

どんどんと打ち込まれてくる攻撃。一発一発が無駄に重めぇ。

 

こっちも棒で受け止めてるが、どうしても弾かれちまう。しかも武器自体に絶縁でも施してるせいか、スタンロッドの効果が生かせてねぇ。ドレッドっていう巨大ロボは細部に至るまで精密機械だ、どっかに高圧電流を流しちまえばガタが起きるんだが、一切ねぇ。となるとやっぱボディをねらうしかねぇか。

 

……相手は、重装級な上に馬力と質量が高いキャタピラタイプ。その重さを担保に殴って来る奴の対処はちと厄介。あんまり打ち合い過ぎるとこっちの腕が先にガタがきそうだ。

 

しかも……

 

 

「テメェ! ソレ戦闘型だなッ! どこの軍からかっぱらって来たッ!」

 

『答える義理はねぇなぁ! ほら死んじまうぞ! 死んじまうぞ! 今なら股を開けば生かしてやるが、どうするよッ!』

 

「お断りだァ! そっちが死ねぇ!!!」

 

 

多分だが、軍のドレッドだ。賊の“寄せ集め”にしちゃ動きが洗練され過ぎてる。

 

この星の軍も金がねぇから変に現地改造してキメラ化してる、そのせいで原型が解んなくなってるドレッドが大量にあるんだが……、この動き。軍が採用してたモーションデータだ。裏に流れてたのを見たことがある。一瞬軍人が砂賊に落ちたのかと思ったが……、もう一人のアタシが投げ渡してくれた『さっきの戦闘記録』を流し見る感じ、用兵が素人だ。盗品に間違いねぇ。

 

上手くドレッドに乗る前にパイロットを殺したか、それとも金で買い取ったか。そのどっちかだろうが……

 

 

(んなもんどうでもいい! このふざけた野郎を殺すのみ、だッ!)

 

 

即座にホバーのエンジンを吹かせ、一度後退。

 

追いかけようと動き出すクソ野郎に向かって、再度突撃する。

 

調整したおかげでこっちは調子がアガってるんだ。そもそも、小回りも速度もこっちの方が上。なら密接しながら周囲をグルグル回って! チクチク突いて叩いてストレス溜めてやんよ!

 

 

「オラオラオラァ!!!」

 

『ちぃ! ちょこまかとッ!』

 

「さっきまでの威勢はどうした短小! どうせ童貞だろテメェ!」

 

(『私』?)

 

 

あ、ごめん。ちょ、ちょっとテンションが上がり過ぎて……。

 

心臓が震えあがる様な冷たい声に急いで謝罪を投げかけながら、口を閉じる。

 

だが操縦桿は適切に動かし、『敢えてコックピットに振動が伝わる』位置に攻撃を叩き込んでいく。

 

いくら戦闘用に生み出されたドレッドでも全部の振動を防ぎきれるわけがねぇ! 元々人を元に生み出された鉄の巨神だ! 技術者名乗ってんならどこに骨があるかぐらい簡単に解る! ならそこに合わせて叩き込めばいい! しかもこっちはスタンロッドだ! 打ち込めば打ち込むほどセンサー類に異常が出始めるッ!

 

オラオラ! さっきまでの威勢はどうした! 揺れるだろ! 震えるだろ! 何も解んなくて怖いだろ!

 

 

「そっちが命乞いをする番だよなぁ!!!」

 

『う、る、せぇ! ぶっ殺してやるッ!!!!!』

 

「しゃぁ! そうこなくっちゃ!」

 

(『私』、そろそろ。)

 

「あぁ、調整頼んだ!!!」

 

 

音声から激昂し、若干操縦が荒くなる敵。そ

 

れと同時に一旦距離を取り、こちらに突撃して来る奴に向かって、こっちも突撃を敢行する。

 

狙うのは一点。アタシは、ドレッドを動かすだけでいい。

 

なにせ細かい作業は、『アタシ』の方が得意だからなァ!

 

 

(グリオナイト・コア出力上昇開始、余剰エネルギーは全て『甘樫』へ。計算開始、もって10秒という所でしょう。遊ばず、一撃で倒すようにお願いします。では、プラズマ化まで、3、2、1。)

 

 

『アタシ』が数を数え終わった瞬間。

 

それまで青白く光り輝いていた雷光が一瞬だけ赤く光り、すぐさま不気味なほど緑の光を描き始める。グリオナイト・コアから棒心が消し飛ばねぇ程度にエネルギーを送り込んで生み出す、アタシたちの必殺技の一つ!

 

“ヒート・ロッド”だッ!!!

 

 

『しぃぃぃねぇぇえええええ!!!!!』

 

 

あっちの振り下ろしてくる大剣。

 

全力でホバーを吹かすことで、それを回避。

 

奴の懐に滑り込むように、『甘樫』の先端を、全力で叩き込む。

 

なんの抵抗もなく、融解し突き刺さり、貫通するソレ。

 

一瞬機器に不具合が起こったのか身震いするドレッドだったが、すぐに機能停止。

 

全身に込められていた力が消えていき、こちらがロッドを引き抜くとともに、倒れ伏す。

 

ふぃい。戦闘終了、ってやつだな!

 

 

「変態クソ野郎は消し炭がお似合い、ってな! 『アタシ』、注文通りコックピットだけ消し飛ばしたぞ!!!」

 

 

 





〇セファのドレッド周り

・風防 第十三世代 防塵特化作業機 『錣山』改造機

風防という企業が生み出した第十三世代ドレッド。最新型が十五世代なため、ニ代前の骨董品に近しいドレッドである(レシプロ機とジェット機ぐらいの差)。しかしながら作業用で生み出されたため手先が非常に器用であり、また稼働時間や防塵機能が高いことを評価され『アタシ』に購入された。

現在は大幅に改造され、元々4本あった腕を2本に統合。各フレームの向上に熱核ジェットエンジン(ホバー機構)が設置されている。そもそも戦闘用ではないため機体としての強さはそこまでだが、セファたちの『グリオナイト・コア』という無限に等しいエネルギーや各種武装、本人たちの操縦技術によってそれを補っている。


・対巨獣用 駆除弾射出機構 『荒池』改

ドレッド同じく風防社製の武装。もともとは巨大なトリモチランチャーみたいな存在だったが、『アタシ』が内部構造を魔改造しまくった結果200㎜弾頭を速射できるライフルに仕上がっている。防塵を強く意識し、砂の中に埋めてもそのまま使用できる構造。

また弾頭を切り替えられる機能、また薬莢を排出せず格納するという機能が追加されているが、そのせいか総弾頭24発。増加弾倉を合わせても48発までしか打つことが出来ない。

そのため、軽装はともかく重装のドレッドをこれだけで破壊するのは難しいのだが、『私』はその意味不明な技量で同じ個所に弾丸を当て続けることで破壊することが可能。


・対巨獣用 鎮圧近距離武装 『甘樫』改

同じく風防社製の武装。『荒池』同様もともとは害獣駆除の為に生み出された武装だったのだが、『アタシ』によって対ドレッドにも使用できるようになっている。高圧電流を流すことでスタンロッドとし、打撃ダメージと共に相手内部機構に不具合を起こすのがメイン。

しかし規定より多くのエネルギーを過剰投入することで棒心をプラズマ化させ金属を溶かし切る形状へと変化させることが出来る(実質ザクのヒートホーク)。あと何故かその際はグリオナイト・コアの緑色に発光する。

しかしいったんプラズマ化した状態で戦闘すると再利用が困難なほどに破壊されてしまうため、使い捨て武装となっている。そのため『私』としてはあまり使用して欲しくないものでもあったり……。



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