同居人+1   作:CBR

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思いつきで書いたネタです。誰か続きを書いてくれ…。


【プロローグ】私は死にたくない

 地中海に浮かぶイタリア領の島であるサルディニアは、シチリア島に次ぐイタリア第二の大きさを誇る。

 日本で言えば四国くらいの面積で、手つかずの自然や透明度の高いエメラルドグリーンの海、古代遺跡や独自の文化とグルメが魅力的な“楽園”のような場所である。

 

 この楽園が私の()()()()()と呼ぶべき場所だった。

 

 

 私は俗に言う転生者である。前世はありふれた日本人だった。

 それが何の因果か、かつての大戦で同盟国であったイタリア人として生を受けた。大戦自体20年と少したった程度で、終戦80年を知っている身からするとつい最近のことのように感じ、実際身近に帰還兵が存在する。

 

 私の育て親は小さな村の神父だった。囚人の母親が獄中で私を出産し、彼女の故郷がここ──サルディニアだった縁を受け、赤ん坊だった私は神父に引き取られた。

 聖職者は確か結婚できないんだったか。家族は私と神父の二人。男手一つで赤ん坊を育てるのは苦労が要り、時には神父を慕う村人が赤ん坊の世話をしていた。

 

 赤ん坊()はすくすく成長している。ついこの間四足歩行(ハイハイ)ができるようになったばかりのはずが、今はつかまり立ちで二足歩行ができる。

 

 自分のことなのにどこか客観的に感じるのは、私が自分の行動を俯瞰的に見ているからだろう。

 スタンド的とでも言えばいいのか? 私は幼児()の背後にいる。

「あうあう」と言いながら、「こっちへおいでー」と頬を緩ませて手を叩くじじばばの元へ向かって幼児は前進し、途中で何もない場所につまずき転んで、大泣きし始める。

 

 この体に入ろうと思えば入ることができる。しかし赤ん坊の体は自分の思うように動かすことができずストレスが溜まるし、おむつの中で盛大にぶちかます感覚も味わなければならない。

 大人の尊厳を持つ私はそれが許容できなかった。ゆえに幼児────いや、もう一人の『自分()』に赤ん坊の業務を押しつけている。

 

「だぁ! ………」

 

 そうこう考えている間にもう一人の自分の顔が気張り始めた。彼は私と違って精神が普通の幼児と変わらず、語りかけても「?」と首を傾げるばかりでまだまともな意思疎通はできない。

 

 だが、私は君の顔を知っている。偶然アニメで見たからだ。

 

 

 君の名はドッピオ。

 

 あるいは、悪魔(ディアボロ)

 

 

 そんな私は、彼らの『同居人』である。

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 この世界がジョジョの世界だと気づいたのは、水に映る自分の顔を見たのがきっかけだった。

 看守に体を拭かれる中で、まるい目がじっと自分を見つめている。この毒々しい髪の色。おまけに産んだ女が答えた「サルディニア」という出身地名。

 

 私は日常的にアニメや漫画を嗜むような人間ではなかったが、チラリとジョジョの一部分を見たことがある。それが5部のアニメ。

 ちょうど暗殺者VSボスの側近の戦闘シーンだ。二転三転する展開にジョジョをあまり知らなかった私でも手に汗握った。同時にこれを描いた作者にも脱帽した。

 

 見たのはまだ5部だけだったので、それ以外の内容は詳しくは知らない。

 分かるのはやがてディアボロがパッショーネのボスとなり、帝王の道を歩んだ先で主人公たるジョルノ・ジョバァーナに敗れ伏すということ。

 その過程でドッピオも死亡する。

 

 私が何より恐れるのは、第三の人格となった自分がディアボロのレクイエムに巻き込まれてしまう可能性だ。

 

 そもそも私はどうやって死んだのか、覚えていない。

 車に轢かれたのか、それとも溺れて死んだのか。自殺したのかもしれないし、他殺されたのかもしれない。どうやって死んだのかそこだけ丸々と抜け落ちちまったまま転生している。

 分からない。分からないからこそ恐ろしい。

 死ぬのは誰だって恐ろしいだろう。だから私はあえてその部分を切り離してしまったのか。

 

 ともかく、ディアボロの巻き込まれ事故を食らうのはごめんだ。だからといってドッピオのように虚しい死を迎えたくもない。

 

 いいか、私は死にたくない。死にたくないんだ。死にさえしないならちょこっとの悪事をしてもいい。スリとか、観光客相手に詐欺くらいなら。

 ただし殺人はダメだ。人を殺したら、一線を越えることになる。ブチャラティチームの面々とて、一線を越えるか否かのラインは「人を殺した」ところにある。

 

 もし高望みしていいならあのままドナテラ・ウナと結婚し、トリッシュと三人で暮らしたい。ギャングのボスなど願い下げだ。たまに帰省して神父に顔を見せるのもいい。

 日本とはまた違った良さのある第二の故郷で骨を埋めてもいいと思っている。

 

 

 問題はディアボロだ。今のもう一人の私は、ほぼドッピオの印象を受ける。鈍臭さを感じるところが特にだ。

 精神的にも私と彼以外にもう一つの人格があるように感じない。

 

 憶測になってしまうが、今の彼はドッピオとディアボロが別れる前の融合した状態なのかもしれない。二重人格も何かしらの外的なショックを受けて精神が分離するらしい。

 であれば、ドッピオとディアボロも外的な要因で精神が分離していったのかもしれないし、単純に成長するにつれて温厚な面と残虐性の面が分かれていったのかもしれない。

 今のところはただの子どもだ。そう、今のところは。

 

(精神が分離する前にもう一人の人格を潰してしまうか?)

 

 向こうの精神が幼い分、主導権は私にある。望めば精神を入れ替えることも可能だ。

 ただ彼の精神を消してしまうということは、ドッピオを巻き込むことになる。

 ドッピオはディアボロに精神を支配されていた節がある。仮にディアボロの人格がなければ船乗りになり、ドナテラとトリッシュの三人で暮らしていたはずだ。

 ──と、いうか、ドナテラと恋愛したのはドッピオなのか? それともディアボロ?

 ドッピオの人格が表に出ている時にトリッシュの父親レーダーに引っかからなかったなら、まさかドナテラとイチャイチャしたのはディアボロ? だがディアボロだったら、ボスになったタイミングで自分の過去を知るドナテラを思い出し殺していてもおかしくない。

 …いや、むしろディアボロの性格を考えれば必ず殺すだろう。その時にトリッシュも殺されていたはずだ。

 しかしディアボロは噂が立つまで娘の存在に気づいていなかった。ならばドッピオの人格がドナテラと恋愛したのか。ディアボロはドッピオの精神を支配している。記憶もドッピオが体験したものを共有しているはずで……。

 

 いや、これは考えれば考えるほど分からないな。二人の人格がまだ完全に別れていなかった可能性もある。

 ドナテラとの関係に純粋な愛があったのか、はたまた気まぐれだったのか。ドッピオでもディアボロでもない私には分からない。

 

 ひとまずもう一つの人格を消すのは無しの方向で、彼の精神がすこやかに成長するよう努力しよう。

 元々虫を助けるような優しい部分があるのだ。残虐性が育たないよう気をつけなければ。

 

 ただ万が一ディアボロが誕生してしまい、レイクエムる羽目になった時は、自分の体を抜け出て全力で亀にしがみついてやろう。

 

 

「だーだ!」

 

 

 君は小さな手をまっすぐに向け、私の方を見つめる。

 

 そうだ、名乗っていなかった。神父がつけた私たちの名とは別に、私は自分で自分の名前をつけたんだ。だって区別する名前がなければ不便だからね。

 

 

 私の名前は『ネモ・テルツォ』。

 

 存在しないはず(三番目)の、君だよ。ヨロシク。

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