お前女だったのか⁉ by陰キャぼっちな私【百合】   作:荒井竜馬

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第19話 同じ趣味をもつ少女たち

 

「あ、あおちゃん?」

 

「え」

 

 とある日の休日。

 私は百合漫画を買いに少し遠くのアニメショップに向かっていた。

 人気の百合漫画の発売日だったので、ついでに良い新刊がないか百合漫画を漁りに来たのだ。

 

 そして、ほくほく顔で会計を済ませて自動ドアの前に立つと、そこには私以上に驚いて目を見開くあおいちゃんがいた。

 

 なんであおいちゃんがアニメショップに?

 私が首を傾げていると、そのまま開いたはずの自動ドアがウィーンと目の前で閉まってしまった。

 

「「……」」

 

 それから少しの間があって、あおいちゃんは仕切り直したように明るく片手を上げた。

 

「ゆりちゃん奇遇だね!」

 

「そ、そうだね?」

 

 私はあおいちゃん似合わせて片手を上げるが、どうしてもぎこちなくなってしまった。

 それから、ちらっと店内の方に振り向いて、私は自分がアニメショップにいることを再確認する。

 

 うん。やっぱり、私がいつの間にか華のある服屋に移動していたなんて展開ではないらしい。

 私は視線をあおいちゃんに戻して続ける。

 

「あおいちゃんは、買い物?」

 

「買い物というか、えーと」

 

 あおいちゃんは私から視線を逸らしてくるくるっと髪を指先でいじる。それから、何かを思い付いたようにハッとしてから私を見た。

 

「ゆりちゃんが好きな漫画とかあるのかなーと思って、見に来たの! この後に、買い物でもして帰ろうかなって思ってたから、ついでにね!」

 

「な、なるほど。そういうこと」

 

 私はあおいちゃんの言葉に納得して頷く。

 ただの漫画とか雑誌を買うだけなら、わざわざアニメショップなんかに来ることはない。

 だから、一瞬あおいちゃんがニッチな漫画を買いに来たのかと思ったけど、そう言う訳ではないらしい。

 どうやら、休みの日まで私のことを考えてくれているみたいだ。

 そう考えると、心が温かくなるのを感じた。

 

「それなら、案内するよ。初めてだと百合棚見つけられないかもしれないし」

 

「初めて? そ、そうだね! 案内をお願いしようかな!」

 

 あおいちゃんは一瞬遠慮しようとしたのか、眉を下げた後に慌てた様子でそう言った。

 さすがに、ここまでしてもらっているのだから、遠慮なんかしないでいいのに。

 私は初めて入るアニメショップに感動しているあおいちゃんを連れて、アニメショップの百合棚に向かった。

 

「へ、へー、たくさん種類あるんだね!」

 

「う、うん。普通の本屋だとここまで種類なかったりするから、助かってる」

 

 私はそう言って見慣れた百合棚を見つめる。

 最近、色んな書店にも百合棚と言われる百合コーナーがあったりするけど、まだまだ置かれている数が少ない。

 それに、こういうところの店員さんのおすすめでハズレることはないから、定期的に見に来たくなるのだ。

 前にあおいちゃんが言っていた通り、私なりのウインドウショッピングなのだろう。

 

 私はそんなことを考えて小さく笑みを浮かべる。

 それから、ちらっとあおいちゃんを見ると、あおいちゃんはどこか一点をじっと見つめていた。

 

 あおいちゃんの視線の先を追ってみると、平積みされている新刊を見ているような気がした。

 まるでそれが目当てで、アニメショップに来たかのような熱い視線を向けている……。

 

 いやいや、さすがにそれはないか。

 百合漫画の発売日にアニメショップに来るような百合オタクが、同じクラスに二人もいるわけがない。

 

 私は自分で考えていて馬鹿馬鹿しくなって、そんなふうに考えることをやめた。

 それからもう少し百合漫画を見てから、私たちはアニメショップを後にすることになった。

 

 

 

「ゆりちゃん。ちょっと外で待ってて」

 

 今度はあおいちゃんの買い物に付き合うことになり、アニメショップを出たのだが、あおいちゃんはピタッと足を止めてアニメショップに戻ろうとした。

 どうしたのだろうかと思い、私も釣られるように戻ろうとする。

 

「え? 戻るなら私も一緒に行くよ」

 

 すると、あおいちゃんは両手をパッと前に出して私を制した。

 私が首を傾げていると、あおいちゃんは顔を伏せて続ける。

 

「一瞬! 一瞬だから、ね?」

 

 あおいちゃんは顔を赤くしながらそう言うと、小走りで店内に戻っていった。

 なんか、あおいちゃんは恥ずかしそうにしてなかった?

 私はそう考えて、今日のあおいちゃんの様子がおかしかったことに気がつく。

 もしかして、百合漫画意外に、アニメショップに来た理由があったのだろうか?

 私はさっきのあおいちゃんの表情を思い出しながら、あおいちゃんが戻った理由を考えて待つことにした。

 それから、少ししてあおいちゃんが戻ってきた。

 

「おまたせ、ゆりちゃん!」

 

 あおいちゃんの顔を見ると、随分とほくほくとしているようだった。

 買い物袋を持っていないが、その表情から何かを買ってきたことは明確だ。

 多分、バッグの中に買った物をしまったのだろう。

 

 恥ずかしそうに買いにいったってことは、ニッチな漫画じゃなくて……もしかして、エッチな漫画を買ってたり?

 いやいや、さすがにあおいちゃんがそんなものを買うとは思えない。

 でも、そうじゃないなら、私が一緒に来ることを避けた理由は?

 ……このお店、年齢確認とかされないのかな?

 

「ゆりちゃん?」

 

「な、なんでもないっ」

 

 私はそれ以上考えることをやめて、あおいちゃんとショッピングモールに移動することにしたのだった。

 もしかしたら、あのお店ならもう少しえっちな百合ものでも買えるのかもしれない。

 そんなくだらなくも、私にとっては重要なことを考えながら。

 

 ……あおいちゃん、えっちなもの見るんだ。

 それと、少しだけそんなことを考えてしまうのだった。

 

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