お前女だったのか⁉ by陰キャぼっちな私【百合】 作:荒井竜馬
私はゆりちゃんの家を出て自分の部屋に入るなり、ふらふらとベッドにうつ伏せで倒れ込む。
「完全にやってしまったぁ……」
それから、私は枕にぐっと顔を押し付けて、声にならない声を出してさっきの行動を反省する。
ここ最近、ゆりちゃんが私のことをどう思っているのか確かめるために、スキンシップを取りながら様子を窺っていた。
ゆりちゃんは私と付き合う気はないと言っていたけど、私とちょっとしたスキンシップしたとき、嫌な態度を見せることなかった。
それどころか、凄い意識されていると思っていた。
それに、ゆりちゃんは恋愛要素多めの百合漫画を読んでる。なので、私に対して恋愛感情を抱いている可能性が高いのでは? と思っていた。
ずっとゆりちゃんはライトな百合ものしか読まないと思っていたので、あのときは驚いてしまった。
多分、咄嗟に寝たふりをしたからバレてはいないだろう。
そんなことが何度か会って、ゆりちゃんの気持ちを確かめたくなって、気がつけばもっと触れたいと思ってしまった。
触れ合ってゆりちゃんの熱をもっと近くで感じたい。
その気持ちが前のめりになり過ぎた結果……さっき、ゆりちゃんに距離を取られてしまった。
「じゃあ、ショッピングモールのキス待ちはなんだったのぉ」
私はショッピングモールの一件を思い出して、足をバタバタとさせる。
以前、ショッピングモールでゆりちゃんと手を繋いでウインドウショッピングをした。
手を繋いだだけで顔を真っ赤にさせて、意識し過ぎているゆりちゃんが可愛すぎて、悶えそうになる気持ちを必死に抑えていた。
そして、香織たちと遭遇したときに、ゆりちゃんは何を勘違いしたのかキス待ちをしていた。
私は突然過ぎるゆりちゃんの行動に驚いて、咄嗟に誤魔化したが、もしもあの唇に触れていたらと思うと今だに胸がドキドキする。
だからこそ、後ろから抱きついただけあんなふうに距離を取られてしまうとは思わなかった。
なんで急に距離を取るようになったのか。そう考えたとき、一つの可能性が頭に浮かんだ。
もしかして、あのキス待ちは私の勘違いだったのではないか、と。
私はそこまで考えてハッとして顔を上げる。
「え、じゃあ、ゆりちゃんからしたら、そんな気はなかったのに、急にバックハグされてってこと?」
私はそんな独り言を漏らしてから、あまりにも恥ずかしすぎる勘違いに気づいて枕に顔を埋める。
「~~っ」
それから、声にならない声を漏らしながら、私は足をバタバタとさせた。
やばいやばい、急に百合アニメを観ながらバッグハグとか、絶対に勘違いされるでしょ!
「勘違い、勘違い、なのかな?」
私はひとしきり悶えてから、ごろんと横に寝返りをうつ。
このどきどきは、恋なのだろうか?
ゆりちゃんのことを知りたくなって、もっと近くで百合ちゃんのことを感じたいと思った。
一般的に言えば、これは恋と言われる感情なのだと思う。
「恋、なのかなぁ」
それでも私がこの感情を認められないのは、私が女の子でゆりちゃんが女の子だからなのだろうか。
それとも、これが初めての感情だからなのだろうか。
私はしばらく枕を抱いてごろごろして考えてみたが、結局正解が分からずにいた。
それから翌日。
私はゆりちゃんが登校してくるなり、いつもと同じようにゆりちゃんのもとに挨拶に向かった。
「お、おはよう、ゆりちゃん」
「あおいちゃん、おはよう」
ゆりちゃんは一瞬ぴくんとなった後、顔を上げて挨拶を返してくれた。
よかった。とりあえず、昨日のことが原因で避けられるようなことはなさそうだ。
私はそう考えて、安心して胸をなでおろす。
「葵―、話の途中でいなくならないでよー」
すると、私たちのもとに香織たちがやってきた。
不満そうな香りの顔を見て、さっき何か話をしていた途中だったことを思い出す。
「今日、香織が帰りにショッピングモール行きたいんだってさ。買いたいものがあるんだって。葵もいける?」
美香が話を引き継いでくれたおかげで、私はさっきまでの会話を思い出した。
それから、私はちらっとゆりちゃんを見る。
特に今日はゆりちゃんと約束をしていない。
だから、別に用事はないのだけど、今日ゆりちゃんに避けられるようなことがあったら、誤解を解こうと思っていた。
そのついでに、少しお話ができるかなと思っていたのだけど……
私がそんなことを考えていると、私の視線に気づいた香織が何かに気づいたようにポンッ手を叩いた。
「もしかして、百合ちゃんと用事? それなら、百合ちゃんも一緒に行かない?」
「え?」
私は香織の言葉に驚いて声を漏らした。
香織も美香も休み時間に私を通して、ゆりちゃんと話をすることはあった。
でも、こうして放課後に誘うようなことは一度もなかったはず。
「い、いく! いきたい!」
「へ?」
そして、私はがたっと音を立てて席から立ち上がったゆりちゃんを見て、そんな声を漏らした。
ゆりちゃんが人付き合いが得意じゃないことも、香織たちと仲良くしたいことも知っている。
だから、誘われたら断るはずがないことは分かっていた。
意外だったのは、いつになくゆりちゃんが乗り気だったことだ。
こんなに前のめりになっているゆりちゃんは、しばらく見ていない気がする。
私はそんなゆりちゃんの姿を見て、私は少しだけ胸の奥の方をもやっとさせたのだった。