お前女だったのか⁉ by陰キャぼっちな私【百合】   作:荒井竜馬

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第25話 不安な気持ちと焦りと

 香織はショッピングモールでゆりちゃんに共通の趣味があることが分かってから、ゆりちゃんと随分と仲良くなった。

 

「百合ちゃーん! 漫画の話しよーよ!」

 

「う、うん。私ももっとお話ししたいと思ってた」

 

 私とゆりちゃんが他愛もない会話をしていると、香織がひょこっと現れて私が知らない少年漫画の話をし始めた。

 最近、私たちが話をしていると、香織が突然入ってくることが増えてきた。

 そして、少年漫画の話になると、私は何も分からなくなり適当なタイミングで相槌をするのも難しくなってしまう。

 

 ま、全く話についていけない私はどうすればいいの。

 

 なんとか話に混ぜてもらおうとも考えるが、二人の熱量を前にすると、強引に入っていくのも違う気がする。

 それに、楽しそうに話しているゆりちゃんを見ると、会話を邪魔しない方がいいんじゃないかと思ってしまう。

 

 ゆりちゃん、本当に楽しそうにしてるなぁ。

 

 以前、ゆりちゃんは私以外の友達ができたことがないと言っていた。

 そうなると、ゆりちゃんも香織と同じで趣味の話をちゃんとできる人がいなかったはずだ。

 部屋にある漫画の数を見れば分かるが、ゆりちゃんは本当にマンガ好きなのだと思う。

 だからだろう。私と話しているときよりも、趣味の話をしているゆりちゃんは生き生きとしているように見えた。

 私はそんな二人を見て、胸に溜まっていくモヤッとする感情を見て見ぬふりをした。

 

 ……私も、百合漫画の話題なら話せるのに。

 

 私はそんなことを考えながら、二人が話している会話をラジオのように聞き流して、休み時間を終えるのだった。

 

 

 

 そんな日が続いたある日の放課後。

 

 ゆりちゃんと帰りたいと思って声を掛けようとしたところ、先生に呼ばれてしまった。

 教卓の前で先生と話をしている最中、横目でちらっとゆりちゃんの席を確認すると、ゆりちゃんの周りには香織と美香の姿があった。

 

 二人がゆりちゃんと話していれば、ゆりちゃんがすぐに帰るようなことはないだろう。

 

 そんなふうに考えて、視線を先生に戻してしばらく話をしてからゆりちゃんのもとに向かうと、そこにいたはずのゆりちゃんがいなくなっていた。

 というか、香織も一緒にいなくなっている。

 

「あれ? ゆりちゃん帰っちゃった?」

 

 私が唯一残っていた美香に聞くと、美香はさっきまでの会話を思い出すように続ける。

 

「うん。香織と一緒に家で遊ぶんだとさ。なんか漫画とかアニメの話をするとか言ってたね」

 

「い、家で⁉」

 

 私は美香の言葉に思わず前のめりになる。

 すると、美香が私を見て目をぱちぱちとしていた。

 私は美香の反応を見て、自分が必死になり過ぎていたことに気づいて、咳ばらいをして誤魔化す。

 すると、美香が頬を掻きながら続ける。

 

「そうだけど、そんなに驚くことかな? もしかして、葵も漫画とか好きだった? 今から追いかければ、間に合うとは思うけど」

 

 美香はそう言って教室の外を指さす。

 私は追いかけそうになる体をぐっとこらえて、小さく首を横に振った。

 さすがに、ここで『私も百合漫画好きだから、今から混ざってくる!』 なんて言えるはずがない。

 

「別に、それほど好きって訳じゃないよ」

 

 私がそんな嘘を吐くと、美香は『やっぱり、そうだよねぇ』と言って笑っていた。

 

「だったら、今日は香織を百合ちゃんと二人だけにしてあげた方がいいかもね。私たちが行っても話についていけないし、それだと気を使わせちゃうことになる。それこそ、オタク同士だから話せる話題って言うのもあるでしょ」

 

 私は美香の言葉を聞いて、ここ最近の二人の会話を思い出す。

 確かに、ここ最近のゆりちゃんと香織の会話を聞いても、上手く二人の会話に入っていけていなかった。

 せっかく、二人が楽しもうとしているところに、話が分からない私たちが入っても気を使わせるだけかもしれない。

 私はそう考えて静かに頷いた。

 

「……うん、そうかも」

 

「それじゃあ、途中まで一緒に帰ろうよ。そのために待ってたわけだし」

 

 それから、私は美香と共に教室を後にしたのだった。

 

 私は何でもないような顔をしながら、二人がゆりちゃんの部屋でどんな会話をしているのか、どんなことをしているのか気にならずにはいられなかった。

 でも、私がその場に入っていくのは違うような気がしたのだ。

 

 

 

 気がしたのだが……。

 私は二人のことが気になり過ぎて、美香と一緒に途中まで帰ってから、引き返してゆりちゃんの家に向かっていた。

 

「少し見るだけ、遠目から確認するだけ」

 

 私は自分行動が普通じゃないと知りながら、ゆりちゃんの家に向かう足を止められずにいたのだった。

 

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