お前女だったのか⁉ by陰キャぼっちな私【百合】   作:荒井竜馬

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第26話 ストーキングと空模様

それから、私はゆりちゃんの家に着くと、少し離れた場所からゆりちゃんの部屋をじっと見ていた。

 

 カーテンが閉まっているので中の様子は窺えないし、香織が遊びに来たのだからすぐに出てくることはない。

 そんなことを分かっていながら、私はなぜかその場所から離れられなくなっていた。

 

 いやいや、何してんの私。これじゃあ、まるでストーカーみたいだ。

 

 私はそんなことを考えてゆりちゃんの家から一時的に離れたり、ゆりちゃんの家の前に戻ってきたりを繰り返していた。

 そんなことをしていると、段々と日も暗くなってきて、気づけば二時間ほどの時間が経過していた。

 

「で、出てきた」

 

 もうそろそろ香織が帰るだろう時間にゆりちゃんの家の前に戻ってきた私は、物陰から二人が出てくる瞬間を捉えることができた。

 

 私はじっと二人を観察してみたが、特に学校にいたときと変わった様子はなかった。

 妙に距離感が近づいていることもなければ、服が乱れているなんてこともない。

 

「いや、服の乱れって何考えてるの、私は」

 

 私は自分自身にそんなツッコミを入れて、髪の先を指でくるくるとさせる。

 それから、香織はゆりちゃんと一言二言会話をしてから、手を振って帰っていった。

 

 どうやら、色々と私が考え過ぎていただけみたいだ。

 ……これ以上ここにいても仕方がないし、私も帰ろうかな。

 

 そんなことを考えたとき、不意にスマホの着信が鳴った。

 

「っ!」

 

 私は慌ててその場から少し離れて、スマホの着信を切ろうとした。

 しかし、鞄からスマホを取り出そうとするが、ファスナーがバッグに噛んでしまって上手くスマホが取り出せない。

 私は慌てながらなんとかスマホを取り出して、画面に映った怪しげな番号を見てから着信を切った。

 

「なんで、こんなときにいたずら電話が鳴るかなっ」

 

 私は心臓をバクバクとさせながら、スマホの画面に向かってそんな文句を言う。

 バレないように隠れていた時だけに、大袈裟なくらい驚いてしまった。

 本当に心臓に悪いんだけど。

 

「あおいちゃん?」

 

「へ?」

 

 声のした方に振り向くと、そこではゆりちゃんが首を傾げて私を見ていた。

 家を覗いていたのがバレた? い、いや、多分さっきの着信の音で気づかれただけで、数時間ここら辺をうろちょろしていたのはバレていないはず!

 

 私は冷や汗をかきながら、動揺を悟られないように何事もない感じで笑みを浮かべる。

 

「ゆ、ゆりちゃん。奇遇だね」

 

「奇遇って、あおいちゃんの家こっちじゃないよね?」

 

「うっ、そ、そうなんだけど」

 

 ゆりちゃんは当たり前のことを言うかのように、的確な指摘をしてきた。

 そうなのだ。奇遇というには無理があり過ぎる。

 私はなんとか誤魔化そうと頭をぐるぐるさせて考えたが、まともな案が出てこなかった。

 時間が経てば立つほど答えづらくなった私は、勢いに任せて口を開く。

 

「ゆ、ゆりちゃんと香織が二人で遊ぶって聞いたから、気になって来ちゃったの!」

 

 私はそんな言葉を口にしてから、耳を熱くさせる。

 いや、さすがにさっきの表現は直接的過ぎるでしょ!

 

 しかし、そう考えたところですでに遅く、口から出てしまった言葉を引っ込めることなどできるはずがなかった。

 私は心臓の音を大きくさせながら、ちらっとゆりちゃんを見る。

 すると、ゆりちゃんは一瞬目を見開いてから、パッと私から視線を逸らした。

 それから、またいつか私に見せたような悲しそうな笑みを浮かべる。

 

「そ、そっか。ありがとうね、あおいちゃん。友達付き合いについて色々教えてもらったり、相談したりしたから、心配してくれたんだよね?」

 

 私はそんなゆりちゃんの言葉に。上手く頷けずにいた。

 ここで頷いてしまったら、私が百合ちゃんに抱いている感情も全て否定することになってしまう気がしたからだ。

 

「ゆりちゃん。あのね、」

 

 私は何を思ったのか、この気持ちを口にしてしまおうかと考えた。

 しかし、私が言葉を口にしようとしたとき、ぽつっと私の頭に冷たい雫が落ちてきた。

 何だろうかと思って顔を上げると、さらに数的雫が落ちてきて、そのままザーッと雨が降ってきた。

 

「あ、雨?」

 

「うそ。私、傘持ってきてない」

 

 天気雨かと思って空を見上げるが、空には随分と分厚い雨雲があった。

 多分、しばらくは止みそうにない。

 

「あ、あおいちゃん、少し上がってく?」

 

「え?」

 

「ほら、早くしないと濡れちゃうから」

 

 ゆりちゃんはそう言うと、私の手首を控えめに握って、私の手を引いた。

 こうして、私はゆりちゃんの家で雨宿りをさせてもらうことになったのだった。

 

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