お前女だったのか⁉ by陰キャぼっちな私【百合】   作:荒井竜馬

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第7話 生まれる勘違いと、根本的な気持ちの違い

「アニメなんて見るの久しぶり! どんな話なの?」

 

「えっと、ジャンルは日常系って言うジャンルで……」

 

 私は配信サイトでアニメを観る準備をしながら、これから観るアニメの説明をした。

 私が選んだアニメは、かなりライトな日常系アニメだ。カップリングの概念がなければ、百合ものだと分からないくらいライトなもの。

 正直、もっとちゃんとした百合を勧めたいと思ったが、いきなりガチなやつを紹介して避けられるのは悲しすぎるのでやめておいた。

 

 それから、私はクッションを二つ持ってきて、机一個分の距離を置いて並べた。

 た、たぶん、学校でもこのくらいの距離だし、この距離なら並んで座っても問題ないはず。

 それでも、並んで座ることに緊張してしまうのは、あおいちゃんをどうしようもなく意識しているからなのだろう。

 

「それだと遠くない?」

 

「え?」

 

 すると、あおいちゃんは何でもないことのようにクッションを拳二個分くらいの距離まで近づけた。

 それから、あおいちゃんは片方のクッションに腰を下ろしてから、屈託のない笑みを私に向けて、ぽんぽんっと隣に置かれているクッションを叩く。

 

「このくらいの方が観やすいって、ほら」

 

「い、いや、少し近いような、というか近すぎるような気が」

 

「いいから、ほらっ」

 

 私が片手をぶんぶんと振って断ると、あおいちゃんが少しムッとした感じで私を見上げてきた。

 こ、これはもうどうしようもないのでは?

 

「……し、失礼しましゅっ!」

 

 そして、私は噛み倒しながらあおいちゃんの隣に腰をすとんと下ろした。

 距離が一気に近づいたことで、心臓の音が一段と大きくなる。

 深呼吸をして鼓動を落ち着かせようとしても、微かに香る甘いあおいちゃんの匂いが鼻腔をくすぐって、余計に心臓をうるさくさせていた。

 これ、絶対に百合アニメを観たからとか以前の問題な気がするんだけど!

 

 私は浅い呼吸のままアニメを再生して、隣のあおいちゃんをちらっと見る。

 すると、あおいちゃんは特に私との距離を気にすることなく、ノートパソコンに映るアニメを真剣に観ていた。

 そ、そっか。普通は女の子同士ならある程度近くても何とも思わないのか。

 私はそんな当たり前のことに気づいたと同時に、普通とは異なるこの気持ちをどうにかしないとと思い始めるのだった。

 

 それから、そのままアニメを数話観てエンディング曲が流れ始めた頃、あおいちゃんがぱっと私を見た。

 近い距離で見つめられてしまい、私は胸をきゅうっとさせる。

 

「ゆりちゃん、これって百合アニメなの?」

 

「え? う、うん。界隈では百合だって言われてる。えっと、どうして?」

 

「面白いんだけど、なんか恋愛って言うよりも、仲良しな女の子たちの日常って感じなんだなって思って」

 

 私は鋭いあおいちゃんの指摘に、内心でギクッと思う。

 確かに、あおいちゃんに見せているのは百合系の中でもかなりライトな方だ。直接的な表現もないし、そう思うのも無理はない。

 でも、なにも本編だけで楽しむのが百合作品の魅力ではない。

 

「そ、そこはカップリングを妄想して足りない百合分を補完したり、二次創作で盛り上がったりしてるんだよ」

 

「カップリング?」

 

「い、いや、なんでもないっ!」

 

 私は暴走しかけた百合熱を慌てて押さえ込んで、首を横にブンブンと振る。

 今回は軽めの百合を観てもらおうって決めたのに、自ら癖をさらけだしてどうする!

 すると、あおいちゃんが私を見たまま続ける。

 

「ねぇ、さっきジャンルがどうのこうのって言ってたじゃん? もっと恋愛が多い感じのもあるの?」

 

「あ、あるよ。あるんだけど……あうっ」

 

 どうしよう、なぜかあおいちゃんが結構百合に興味を持ち始めてしまった。正直、友達が私の趣味に興味を持ってくれるのは嬉しい。

 嬉しいんだけど、一日で色々と教えてしまうのはあまりよくない気がする。やっぱり、こういうのは段階的に行うべきだ。

 私はなんとか誤魔化す術がないかと頭をぐるぐるとさせて考えてから、ハッと顔を上げた。

 

「ほ、他の百合作品を観るのもいいんだけど、せっかくならあおいちゃんのことも知りたいなっ!」

 

「私のこと?」

 

 あおいちゃんは私の言葉を聞いて首を傾げた。私は話が百合作品から逸れたことをいいことに、そのまま畳みかける。

 

「そう、あおいちゃんのこと! 私、幼少期のあおいちゃん以外のこと知らないからさ、今のあおいちゃんがどんなことが好きなのか知りたいなって思って!」

 

「ゆりちゃん……」

 

 私がそこまで言うと、あおいちゃんはキュッと口を閉じた。

 別にただ話を逸らすためだけに言ったわけではない。実際にあおいちゃんと再会してからずっと気になっていたことだ。

 スポーティだったあおいちゃんが、こんなに女の子らしくなったのだ。

 これまでの間にどんなものを好きになって、休みの日とか何をしているのかとか、色々と聞きたいことがある。

 私がそう言うと、あおいちゃんは嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「それじゃあ、明日は私の趣味に付き合ってよ!」

 

「え、あした?」

 

「ゆりちゃん、一緒にお出かけしよ!」

 

「……へ?」

 

 そこから先は、ポンポンッと話が進んでいった。

 待ち合わせのために連絡先を交換して、暗くなってきたら今日は解散をして、あおいちゃんを玄関まで見送った。

 

 そして、あおいちゃんがいなくなってから、私はすとんと腰が抜けてしまった。

 

 あ、あおいちゃんとお出かけデート⁉

 何がどうしたらこんな展開になるの⁉

 私は突然過ぎる展開についていけず、ただ胸の音をうるさくさせることしかできずにいた。

 

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