お前女だったのか⁉ by陰キャぼっちな私【百合】   作:荒井竜馬

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第9話 タピオカミルクティーと、ただのミルクティー

「ゆりちゃん、大丈夫?」

 

「だ、だいじょうびゅっ」

 

 私たちは電車で移動して、少し大きな街にやってきていた。

 普段は絶対に来ないほど混んでいる駅構内を歩いて、近くにあるショッピングモールまでなんとかたどり着いた私だったが、案の定人酔いをしてしまっていた。

 あおいちゃんは人酔いをした私を気遣ってくれて、ショッピングモールに着くなりフードコートに移動して、ひと休憩しようと提案をしてくれた。

 そして、私はあおいちゃんの好意に甘えてその提案に乗ることにしたのだった。

 

 駅で人酔いって、情けなさ過ぎるぞ、わたし。

 

 あおいちゃんと向かい合うように座って、私は俯き気味にあおいちゃんが買ってきてくれたタピオカなしミルクティーをすする。

 ちらっと視線を上げてあおいちゃんを見ると、あおいちゃんタピオカ入りミルクティーをすすっていた。

 ……可愛い女の子が飲んでると、可愛く見えるからタピオカ飲料って不思議だなぁ。

 私がそんなことを考えていると、あおいちゃんが不思議そうな顔をしてストローから口を離した。

 

「本当にタピオカ入ってなくてよかったの?」

 

「だ、大丈夫。今はあんまり固形物を入れたくない気分だから」

 

 私は手をブンブンと振って、あおいちゃんを見ていた本当の理由を誤魔化す。

 それから、私は私たちの隣を通り過ぎていく買い物客をちらっと見てまた顔を俯かせた。

 

「ご、ごめん、せっかくここまで来たのに、いきなり休憩になっちゃって」

 

「そんなの気にしないで。むしろ、休憩してからの方がちゃんと楽しめるし、お得かもよ!」

 

 あおいちゃんはそう言って小さくガッツポーズをした。

 私に気を遣ってくれているのだと分かっていながらも、その表情はどこか本気で言ってくれているようで、少し気持ちが軽くなった。

 せめて、この時間が無駄にならないように少しでも会話をしたい。そう考えて私は口を開く。

 

「あ、あおいちゃんはここよく来るの?」

 

「んー、少し遠いからよくは来れないかな。でも、似たようなところにはよく行くかも」

 

 あおいちゃんは何でもないことのようにそう言って、ここから見えるテナントをちらっと見た。

 あおいちゃんは人混みや大型のショッピングの圧力に負けている私と違い、涼しい顔をしている。

 

「す、好きなの? こういう所?」

 

「うん。好きだよ。ゆりちゃんはウインドウショッピングとかしない?」

 

 私はあおいちゃんの言葉に首を横に振る。

 

「わ、わたしは、必要な物が出たら買いに行くくらい、かな。本屋とかはたまにぶらぶらしに行くけど」

 

 私はタピオカの入っていないミルクティーを飲んで、少し沈んだ気持ちを誤魔化す。

 ……休日の過ごし方ひとつで、ここまであおいちゃんと私は違うんだ。

 なんとなく分かってはいたが、陽キャなあおいちゃんと陰キャな私では、根本的な何かが違うのかもしれない。

 昔はそんなこと感じなかったのだけど、こうして一緒にいるとその違いが顕著に表れてくる気がする。

 

「それじゃあ一緒だね、私たち」

 

「え? 一緒?」

 

 私は思ってもいなかった言葉に間の抜けた声を漏らす。すると、あおいちゃんが私の反応に首を傾げた。

 

「そうでしょ? ゆりちゃんが本を見るように、私は服とか雑貨を見る。見るものが違うだけで同じじゃない?」

 

「あっ」

 

 私はあおいちゃんの言葉の意味を理解して、小さく声を漏らした。

 ウインドウショッピングっていうのは、友達同士でキャッキャしながら服とかを見るものだけかと思っていたけど、目的は良い物が売ってないか見に行く行為だ。

 そう言った点では、本屋をぶらぶらする私の休日の過ごし方もウインドウショッピングといえないこともない。

 少しこじつけみたいな気もするが、私とあおいちゃんの休日の過ごし方は、こじつけで一緒と呼べる範疇のものらしい。

 

 ……もしかしたら、根本的な物は一緒なのかもしれない。

 

 そう考えると、自然と笑みがこぼれてしまった。

 今からでも頑張れば、あおいちゃんの隣にいれるかもしれない。

 今はあおいちゃんに優しくしてもらっているから隣にいれるだけだけど、そうじゃなくて自分でその場所を確立できるかもしれない。

 私はそう考え、意を決して顔を上げた。

 

「あ、あおいちゃんが好きなモノ、知りたいな」

 

「本当? 何でも教えちゃうよー」

 

 あおいちゃんはおどける感じでそう言って、タピオカミルクティーをすする。

 私は間にあるテーブルの上に前のめりになって言葉を続けた。

 

「私が知らないあおいちゃんを知りたい。私でいう所の漫画とかアニメみたいな感じのやつ。あおいちゃんが引っ越してから、頑張ってきたあおいちゃんがどんなモノに惹かれたのかとか、どんなものを好きになっていったのかとか、知りたい」

 

 私が勢いに任せるようにそう言うと、あおいちゃんはぴたっとタピオカミルクティーを飲むのをやめた。

 あおいちゃんのおどけていた表情が真剣なものに変わっても、私は一切退くことなく前のめりでいた。

 距離がぐっと近づいたせいでうるさくなった心臓の音を聞きながら待っていると、あおいちゃんは腕を組んで考えてから口を開く。

 

「ふむ。随分と壮大なテーマになってしまった」

 

「えっと、じゃあ、あおいちゃんはいつからそんなおしゃれになったの? いつも半袖短パンだったのに!」

 

「は、恥ずかしいことを思い出させないでよ」

 

 あおいちゃんは顔赤くして、視線を斜め下に泳がせる。

 どうやら、あおいちゃんの中で昔のあおいちゃんの服装は恥ずかしい服装認定らしい。

 ……思い出の中にいるあおいちゃんも可愛いと思うんだけどな。

 

 私がそんなことを考えていると、あおいちゃんが自身の髪を指先でくるくるとして続ける。

 

「可愛い服とか髪留めとかしていると、会話のきっかけになるの。いきなりぐいぐい行くよりも、相手に興味を持ってもらえるからね。それに気づいてから、かな?」

 

「な、なるほど。そんな裏技があったとは」

 

「裏技ってほどじゃないけど、興味を持ってもらったほうが話も弾むしね」

 

 それから、あおいちゃんは私にファッションにハマった理由や、魅力などを色々と聞かせてくれた。

 あおいちゃんは初めは人付き合いのためにファッションを学んだらしい。でも、そこから色々と調べていくうちにファッションにハマったとのこと。

 

 なるほど。スポーティな感じだったあおいちゃんがこれだけ可愛くなったのにも納得がいく。

 あおいちゃん、昔は私と一緒に絵本とか読むタイプだったから、陽キャになかなか結び付かなかったんだけど、そんな感じでファッションにハマったのか。

 それに、ファッションにそんな効果があるなんて知らなかった。これは人見知り陰キャの私も取り入れた方がいいのかもしれない。

 わたしもそんなチートアイテムが欲しいかも。

 

「あおいちゃんの体調が回復したら色々見てみようか。もしかしたら、今着ているやつよりも可愛い服が売ってるかもしれないし」

 

「も、もう大丈夫だよ! 行ってみよ!」

 

 私がそんなことを考えていると、あおいちゃんが魅力的な提案をしてくれた。

 あおいちゃんに選んでもらった服とかをきたら、あおいちゃんの隣に立っていてもおかしくない女の子になれるかもしれない。

 そうすれば、これからもあおいちゃんの友達として学校生活を送っていくことができるはず!

 

 ……あれ? それでいいんだよね?

 私の考えを否定するように、いつにも増して胸の音がうるさいような気がした。

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