5話 異世界人を使った代理戦争
「さて…なぜ呼ばれたか、わかるね?」
あの戦いから2か月後、陸也、アクトマン、アクトロンの3人は再び呼び出しを受けていた。
特に書類にミスはなかった。あること全て伝え、貰ったドライバーは現状陸也の戦力として所有している。
陸也たちは「何かミスったか?」と言いそうな顔でレクスを見つめる。
「えっと…他の課がまたミスを?」
「いや、それは別に問題ではない。それ以前の問題が起きた。具体的に言うと、各国が動き始めた」
レクスから放たれた爆弾発言で3人は驚くどころか、焦る。
やっと復興が終わって体制を立て直している最中に各国が動く、つまり戦争準備を始めているという意味になるのだ。
「まさか…!ここに攻め込んでくると?」
「それは無いね。逆に、異世界の住人を使用した代理戦争を始めているらしい」
「な…!?そんなことしたら…!」
「その異世界の歴史、文明が追放世界の住人の手で破壊されてしまうという事だ。この世界の住人の役目は異世界の流れを見守る事であり、異世界の歴史の管理、修正、データ採取、回収、保護が管理部の仕事だ。断じて強奪、破壊、崩壊、改ざんではない」
レクスは真剣な眼で見つめ、ことの重要さを伝える。
異世界は常にその世界を管理する神々の管轄であり、データ採取や回収はその許可を得てやっていたものだ。
代理戦争となれば、管理している神々との争いになりかねないし、何より外交にも問題が出る。
各国が異世界を使用した戦争を起こすのは追放世界内のルール上、
レクスは事の重大さにいち早く各国の動きを知り、陸也たちを呼んだ。早めに終戦させるように仕向けるために。
「各国の戦争による要求は?」
「その異世界の重要データの譲渡だそうだ。その異世界は……「第1462番」だそうだ」
それを聞いた陸也は机をたたき、反応する。
「何故だ…!?確かにあそこは戦争をしている世界だが、もうあそこに必要なデータはないだろ!?」
「そもそも何だが…なぜ用済みの世界のデータを欲しがるんだい?あそこは確かモビルスーツがわんさかいる。スーパーロボット大戦に近い世界線だったはずだ。日ごろから変わり続けるその世界で、新たな動きがあったんじゃないかい?」
アクトマンは静かに分析し、答えを探る。
陸也も正気に戻って考える。その世界に固執してるなら、その原因が残っているという事だ。
「君たちに与える任務は二つ。まずは一つ目、「第1462番」の異世界に赴き、代理戦争を終戦させることだ。方法は任せる。起こした本人を引き摺り出して、成敗するのもいい。またはその世界で特異点組織と徒党を組んで倒してしまっても構わない。二つ目はその原因となっているデータを回収することだが、不可能だった場合は封印及び破壊せよ。代理戦争の原因となる要因は確実に取り除く必要がある」
「質問がありますが…この情報は各国の異界管理部も存じて?」
「残念ながら耳に入ってしまってるらしいけど、各国の管理部は一切関与しないそうだ」
「ストッパーがいないという事か…辛いな」
レクスは3人に現在の状況が書かれた資料を手渡し、話を続ける。
「長きに渡る任務となるだろう。軍務が丁度終わった冴ちゃんを連れて行きたまえ、そして君達の持つMSも持っていきたまえ。ただ、艦艇は現地調達となる。あの改造も許可する」
「PK装甲化改造だったね…」
PK装甲化。レクス公国が生み出した新たな外部装甲の改造法である。
実弾やビームによるダメージを軽減させてくれる鉄壁の装甲であり、その強度はガンダリウム合金系譜やヴァリアブルフェイズシフト装甲を遥かに上回る。
軽量化にも成功しており、主力機や一部の量産機に使われている。まさに資源大国であるレクス公国でしか成せない技術であった。
名はあるRPGゲームのメタルモンスターの名を冠したもので「プラチナキング装甲」と呼ばれ、略名はPK装甲だ。
「しかし、冴だけ連れて行っても人手が足りません。艦艇を手に入れたとしても艦長になった経験のある人物とクルーになる人手が何人か必要かと」
「そこは傭兵を雇えば問題ないよ。陸也君が戦艦の艦長に一時的になることでどうにかできるんじゃない?」
「んな無責任な…傭兵を雇うという案は採用ですね」
「ではこれも持っていきたまえ」
レクスは大きなトランクを4つほど、陸也達に手渡す。
「これは?」
「傭兵を雇うには金も必要だし、何より修理費も必要になるだろう?トランク1つに1億G入っている。合計4億G入ってるから、有効活用したまえ」
「……(都合が良すぎませんかねぇ)」
陸也達はオフィスを後にし、軍部の格納庫へとやってくる。
そこには黒い翼が6枚もある有翼人の若い女将校が立っていた。
「大将、大佐にアクトロンさん。待ってました」
黒色の長髪に白と青が混じった軍服を着た黒翼族の女性の名は「虹川冴」。異界管理レクス支部の第一課のメンバーであり、軍務担当をしている。
普段は彼女は軍に居て、支部ではあまり見かけない。そんな彼女も代理戦争の話を聞き、メンバーに加わったのだった。
「代理戦争の早期終戦か…無理のある話だな」
「仕方ないよ。長引けば長引くほど、不利になるのはこっちだし、長引きすぎたら何を言われるか…」
「何より…あそこで戦っても利益にならないし、戦争なんて始めたら、異世界の神から何かしらの制限を受けるのは避けたいし…これ以上深刻な人材不足は抱えたくない」
陸也はアクトロンの発言に「それ以上は言わんでくれ…頭が痛い」と言って自分の機体を確認する。
「武装の換装は、艦艇を手に入れてからでいいだろう。各々臨機応変に対応できる装備でいくぞ。アクトマンはズゴックだから限られているが…」
「その分、余計な整備に手間をかけずに済むからね」
各々準備をし、MS用の異世界ゲートを開ける。整備クルーが陸也達に声をかける。
「ご武運を。義体放棄になってもすぐ直しますので、安心して行ってください」
「……そうならんことを祈るばかりだな。ありがとう、行ってくるぞ」