RE:MORI~輪廻少女のマルチバース~   作:ひまなめこ

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11話 勝者の命令

「俺…勝ったよな?」

 

「ああ、お前の勝ちだよ…。それよりもお前は早く保健室に行け。まだ目も耳も回復してないんだろ…?」

 

模擬戦が終結し、成海がリモリに保健室へ行くよう促す。

しかし、何度も言うが、リモリは今目が見えない上に耳が聞こえない。

 

当然、成海の声も聞こえないため保健室に行くと言う発想が彼の頭に出てこない。

 

例えリモリが自分で保健室に行く気になったとしても、そもそもリモリはこの養成学校の施設をまだ完全に把握し切れていないため、保健室への行き方がわからない。

 

更に付け加えると目が見えないため道も見えない。

故に詰みである。

 

「俺勝ったんだよな!誰か!勝ったって言ってくれ!」

 

「さっきからそう言ってるんだが…。くそ…主席の奴面倒な事してくれたな…。」

 

この状況は全て氷川が音爆弾と閃光手榴弾を使用した事が原因であり、責任は氷川にある。

 

しかし、当の本人は未だにリモリに敗北した事実がショックで放心状態。

 

今のリモリを助けられるのは成海だけであった。

 

「…仕方ない、俺が連れていってや…痛っ!…。」

 

成海は自身の周りを覆う様に展開しているバリアを解除して、リモリを保健室に連れていく為に近付こうとする。

しかし、【()()()()()(ロー)】の反動によって、全身に激痛が走り、立ち上がることが出来なかった。

 

「いってえ~体が動かねえ…。」

 

「安静にしていろ【()()()()()(ロー)】を使った反動でお前の体は既に限界だ。お前とリモリは私が抱えて保健室まで運んでやる。」

 

突然有無を言わさず、成海とリモリの体を両脇に抱え上げたのは、いつの間にかモニタールームから移動して来ていた海澤であった。

 

海澤の後ろには未だ放心状態であるが、他二人と比べて軽傷な氷川が着いてきていた。

 

「うわっ!何だ!体が浮いてる。まだ戦いは終わってないのか?!」

 

突然海澤の脇に抱えられたリモリは全力で狼狽えながら、海澤の脇の中で暴れだす。

 

しかし、海澤はそれに動揺する事なく、平然とした顔で、体幹もぶれる事なく暴れるリモリを気にも止めず歩きだす。

 

「いつの間に…何で先生が…?」

 

「この訓練の監督教員としてお前ら全員を保健室に連れていく義務があるからな。大人しく運ばれろ。」

 

成海の疑問に答えながら、海澤はリモリ達を抱えて保健室へと向かうのだった。

 

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養成学校保健室。

 

そこは訓練で怪我を負った者に応急処置を行うための施設。

即ち一般的な学校の保健室と使用目的は変わらない。

 

敢えて相違点をあげるとするなら…。

 

「おっ入学式以来初めての患者だね。」

 

そこには白衣を着た金髪碧眼のアメリカ人女性が一人。

いつぞや、リモリの身体検査を行った【D.H.A.O.】医療部署の部長アメッサである。

 

彼女は【D.H.A.O.】本部の医療部としての仕事の傍ら、養成学校の保健室の仕事もこなしていた。

 

「アメッサ、急患だ。リモリと成海を見てくれ。」

 

「了解。見たところリモリの方が重症かな?」

 

「判断はお前に任せる。」

 

まずリモリから診て貰う事になり、リモリはアメッサによって隣の診察室に運ばれた。

残された成海、海澤、氷川は保健室のソファーに腰かけて、ゆっくりと寛ぐ。

 

「あの人…アメッサ…だったっけ?珍しいなアメリカ人が日本にいるの。アメリカにも【D.H.A.O.】の支部と養成学校はあるだろ?何でわざわざ日本に?」

 

「アメリカに支部はあっても本部は日本にしかない。本部は【D.H.A.O.】全体の中枢だ。それだけで優秀な人材が配属される事が多い。」

 

「じゃあ、それだけ優秀って事か…。」

 

「恐らくな…。実の所私は名前以外あいつの事を何も知らない。」

 

「名前?」

 

「アメッサ・R(リモルツ)・レイン。本人曰くこのミドルネームには何か意味があるらしいが、あいつは何かと秘密主義でな…。そこまでは教えてくれなかった。」

 

その様な雑談を交わしている内に、あっという間に診察が終わったようで、診察室からリモリとアメッサが出てきた。

 

「目も耳も順調に回復傾向にあったよ。ほっとけば明日の朝には全快すると思う。一応不便だろうから耳だけは少し応急処置を施したけど。」

 

「…何か変な注射されてから耳が聞こえるようになったんだよな…。あれ中身なんなの?」

 

「それは企業秘密。」

 

これがアメッサ・R(リモルツ)・レインと言う女性。

名前以外の全てが謎に包まれており、何故【D.H.A.O.】に入ったのか、何故日本に来たのか、誰も知らないミステリアスな女性。

 

しかし、確かなのはアメリカ人でありながら日本にある本部に配属される程に優秀で、上層部からの信頼もそれだけ厚いということ。

 

「次は成海だね。直ぐに終わらせてあげるから。」

 

そうしてリモリに引き続き成海も診察室へと連れていかれた。

 

そして、数分も経たないうちに成海も直ぐに診察室から戻って来て、【()()()()()(ロー)】による反動からある程度回復したのだった。

 

「…体が痛くない…すげえ…。」

 

「これで、今日の仕事は終わり。残業したくないから君たちさっさと帰ってくれるかな?」

 

診察が終わって早々アメッサは素っ気なく成海達を保健室から追い出してしまった。

 

「…掴めない奴だな。」

 

「ああ、色々とな…。」

 

その様な言葉を零して成海達は自分達の部屋に戻るため、その場を後にする。

しかし、その直後成海が思い出したように声をあげる。

 

「あっ!そう言えば、特待生の命令まだ聞いてねえじゃん。俺達お前に負けたんだからお前の言うこと聞かねえと。」

 

本日の勝負を開始する前に成海とリモリが交わした約束。

『負け者が勝った者の言うことを何でも聞く』である。

 

「あー、忘れていたな。…じゃあ、取り敢えず成海の方は暫く俺と氷川をお前の部屋に泊めてくれ。」

 

「は?」

 

「どう言うことだ?リモリ。男女の混合部屋は風紀が乱れる為、原則禁止だぞ。」

 

リモリが成海に放った命令に対して海澤は冷静に正論で諭す。

 

「今朝、氷川が部屋でグレネードぶっぱなしたせいで、部屋が壊れたんだ。」

 

そう、今朝風呂に入ったリモリの髪を乾かすためと称して氷川がグレネードを使用したことにより、今現在の氷川とリモリの部屋は半壊状態なのだ。

 

「何やってんだよ…主席…。」

 

「氷川、後で話がある。」

 

「…。」

 

その事実に成海と海澤は苦い表情を浮かべざるを得ない。

 

 

「そう言う事情なら、仕方ない。早急に部屋の修繕を手配する。それまでは暫く成海の部屋で世話になってくれ。」

 

「はあ…仕方ねえ。勝者からの命令だからな。従うしかないか。ただ俺にもルームメイトがいてな。そいつと俺達で部屋を共有するとなるとかなり狭くなる。それでもいいか?」

 

本来寮の部屋は二人部屋である。

故に4人で部屋を共有するとなると狭くなるのは必然。

 

「仕方ない。それでも良いよ。」

 

「なら、次は主席への命令だけどどうする?」

 

「それならもう決めてある。」

 

リモリはそう言って一呼吸置いて、口を開きこう告げる。

 

「氷川、俺に料理を教えてくれ。」

 

「え?」

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