RE:MORI~輪廻少女のマルチバース~   作:ひまなめこ

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4話 監視役と言うよりは…面倒な介護士

「…ルームメイトって、お前が俺の?」

 

「答えが分かりきった質問にお答えするのは時間と酸素と体力の無駄遣いです。返答は拒否させて頂きます。」

 

(うわ…面倒くせえ…。)

 

ただ確認のために質問したのだが、氷川氷織はリモリを必要以上に警戒…いや、敵視しているようで、まともなコミュニケーションを取る気が無いようだ。

 

「そろそろ、就寝の時間です。お先にシャワーを使って頂いて構いませんので、お早めに身をお清めください。」

 

「…まだ、昼だぞ?」

 

「要監視対象である、あなたが自由に活動できる時間はこの学舎で校内カリキュラムを受けている時のみです。課外時間中のあなたに自由は存在しません。生物としての安全を保障して欲しければ、速やかに本日の活動を停止してください。」

 

端的に言えば、学校で授業を受けている時以外は何もせずに寝ていろ、さもなければ殺すぞ…と言う意味なのだろう。

 

その文言を氷川は一切表情を崩さずに無表情で平淡な口調で言ってのけるものだがら、リモリは彼女に得たいの知れない恐怖を感じてしまう。

 

 

「寝間着はこちらでご用意致しましたので、ご安心下さい。それでは早速、シャワーに入って歯を磨いて、ご就寝下さい。」

 

氷川はリモリの制服を巧みな腕さばきで全て脱がせ、部屋の中に備え付けられているバスルームに裸のリモリと共に入る。

 

「あなたの体は不本意ながら私が洗います。私が目を離している隙に怪しい動きをされても困りますので。」

 

「…それはそれで恥ずかしいから嫌なんだけど…それよりも、氷川…さんは制服のまま風呂に入って大丈夫なの?濡れちゃうよ。」

 

氷川はリモリを脱がしてすぐに、バスルームに入った。

つまり、今現在氷川は制服のままバスルームの中におり、リモリの体を洗っていると言う事になる。

 

制服がお湯で濡れてしまえば、生ぬるくびちゃびちゃに成った化学繊維がぴったりと体に張り付き、不快な感触が襲ってくるものだが、氷川はそれを物ともせずに黙々とリモリの体を洗い続けている。

 

「…私に裸になれと言うのですか?…私はあなたの情報を既に上の者から伝達されております。ですので、あなたが元男であったことも当然存じております。もし、私の裸を見てご自身の欲求を満たすおつもりなのでしたら、残念ですが、あなたに快楽や娯楽を享受する権利はございません。」

 

「…いや、単純に制服のまま風呂に入るのはどうかと思っただけで…。」

 

「この場において、あなたの意思は尊重されません。勿論あなたのプライバシーも。あなたが望む事を徹底的に排除し、あなたの生活にあなたが望まない物で埋め尽くすことが私に課せられた…()()です。」

 

それから、しばらく氷川はリモリの体を丁寧に洗う。

そして洗い終えた後、湯船には入れずに直ぐに、寝間着に着替えさせた。

 

「あなたの為に使用するお湯が勿体ないです。体が綺麗になれば充分でしょう。」

 

「…はい。」

 

遂に、リモリは反論する事を諦めた。

何かリモリが反発すれば、氷川はまた、リモリの人権をなに食わない顔で否定し、言葉巧みにリモリを罵倒して言いくるめてくるだろう。

 

故に、これ以上の問答は不要であり、余計であると判断してリモリは黙る事を選んだ。

 

「あなたに使われる歯ブラシと歯磨き粉が可哀想なので、歯磨きはこのタブレットを使用して貰います。」

 

氷川はリモリに親指の第一関節分くらいの大きさはある、少し大きめの白い錠剤を渡した。

 

「これを三十回しっかりと噛んだ後にうがいをしてください。それで歯磨きは終了です。」

 

言われた通りにリモリは錠剤をしっかり噛んでうがいを済ませた。

 

「それでは、漸く就寝時間です。瞬時に意識を手放して、深い眠りについて頂く為に、こちらを使用させていただきます。」

 

そう言って、氷川が懐から取り出したのは、バチバチと青い稲妻をスパークさせている、ハンディータイプスタンガンだ。

 

「…それは?」

 

「スタンガンです。元々護身用で持っていた物を先日、あなたに使用する為に改造しました。」

 

そう言うや否や、氷川はスタンガンを起動し、リモリの頸めがけて近づける。

 

「ちょ、ちょっと待」

 

抵抗も懇願もする間もなく、電流はリモリの体を迸った。

 

「ぐがっ!」

 

高電圧の電流を流し込まれた事により、リモリの体は麻痺を起こして、動かなくなる。

 

「【B.U.M.】であるあなたに電流が通用するか心配でしたが、問題なく有効なようで安心しました。」

 

その言葉を最後にリモリの意識は完全に暗闇へと落ちる。

 

「あなたにはこれから一切の自由な時間と権利を剥奪します。その方が…()()にとって都合が良いですから。」

 

リモリが気絶し、誰もその言葉を聞く者がいない無音の部屋の中で、氷川氷織は静かにそう呟いた。

 

_

__

___

 

気絶した直後、リモリは夢を見ていた。

懐かしい、風景が意識を飛ばしたリモリの脳内に写し出される。

 

そこには、白衣を着た若い男性がおり、何やら楽しそうに興奮気味にリモリに話しかけている。

 

『ーーーーー!』

 

何を言っているのかはわからない。

 

夢とは夢主の記憶や知識に基づいて形作られるもの。

もしかしたら、この夢を構築する上でリモリの記憶か知識が不十分であることを表しているのかもしれない。

 

『息子よ!お前は世界で初めてーーーーーーーーーーーーーになるのだ!』

 

今度は一部だけ聞き取ることが出来たが、これだけではこの夢が何なのか判断できない。

 

そもそも、夢など荒唐無稽な物であり、それに意味を見出だす事など、滑稽でしかない。

 

しかし、この夢を見ているリモリ自身の直感が言っていた。

この夢には意味があるのだと。

 

『この犬飼ーー朗に手を貸してくれるか?』

 

名前は良く聞き取れなかったが、名字だけは聞き取れた。

この白衣の男は犬飼と言うらしい。

夢の中でリモリの事を息子と読んだいることから、もしやこの犬飼と言う男がリモリの父なのかもしれない。

 

はたまた、リモリの妄想が作り出した架空の存在の可能性もあるが…。

 

『うん!わかったよ。父さん!俺、何でも力になる。』

 

ここでリモリの口が勝手に開きその様な言葉を口にした。

その直後、リモリの視界が消え、耳が聞こえなくなり、呼吸も出来なくなった。

しかし、辛くはない。

呼吸出来ないのに問題なく生きている。

思考出来る、逆に思考しか出来ない。

 

それから光も暗闇すらも何も見えない上に感じない空間のなかで、何時間も過ごしている内に、リモリの意識がどんどん現実へと浮上していき、やがてリモリは朝日が昇ると同時に完全に目を覚ました。

 

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__

___

 

「…んっ。」

 

奇妙な夢から目覚めたリモリは周りを見渡し、自分がベッドで寝かされていた事と今が朝である事、そして何故が体に鎖が巻き付けられて縛られていることを確認する。

 

恐らくは氷川の仕業だろう。

気絶するように眠った…いや、眠るように気絶させられたリモリを部屋のベッドに寝かせるついでに体に鎖を巻いたのだ。

 

(あいつならならやりかねない…。)

 

昨日数分話した程度の浅い仲であるが、既にリモリは氷川と言う女性がどんな性格かを理解してしまったようだ。

 

「お早いお目覚めですね。まだ、5:00ですよ。こんなに早起きをして何するおつもりですか?」

 

「早起きする分には良いだろ。三文の徳って言うじゃん。」

 

「いえ、あなたが三文分も徳を得ると考えると虫酸が走ります。」

 

昨日に引き続き、フルスロットルでリモリを罵倒する氷川。

 

そんな彼女は懐からペンチを取り出し、鎖を解いた後、目にも止まらない速さでリモリに制服を着せて朝の準備を一瞬で整えさせた。

 

「なあ、昨日も思ったんだが、何で態々服を脱がせたり、着させたりしてくれるんだ?それくらい自分で出来るのに…。」

 

「自惚れないで下さい、これは善意でやっている訳ではありません。あなたに自分で着替えさせた結果、衣服の何処かに凶器を忍ばされでもしたら溜まった物じゃありません。ですからその隙を与えないためにしているのです。」

 

彼女のこの徹底ぶりは徹底し過ぎて寧ろ少しズレている様に感じる程だ。

 

衣服の何処かに凶器を隠す可能性を危惧するのは分かる、しかし、それで着替えを全て彼女が代わりにするのは、少し違うのでは無いだろうか。

 

着替え中に怪しい動きをしないように監視したり、着替えた後にボディチェックをするだけでも言いはずなのだ。

 

それでも、氷川は頑なにリモリの着替えを全てやってしまう。

 

そう、氷川氷織と言う少女は紛れもなく優秀な人間であるが、少しズレているのである。

 

「あなたとこれ以上、雑談をするつもりはありません。さっさと、顔を洗って、うがいしてきて下さい。」

 

「はい…。」

 

言われた通り、リモリは洗面所に行って、うがいと洗顔を済ませる。

 

「それでは少し早いですが、教室に向かいましょうか。」

 

「え?まだ全然早くないか?5:00だぞ。」

 

朝食まだ摂っておらず、着替えも洗顔も氷川の献身的な介護により一瞬で終わってしまったので、時間は一分も経っていいない。

 

それ故に、時計は5:00の針を差してから一切動いておらず、今から登校するには余りにも早すぎる時間だ。

 

まだ、寮の食堂すらも開いていない。

そんな時間に教室に向かうなど、正気の沙汰ではないだろう。

 

「あなたと言う存在は私含め、この学校に在籍している全生徒にとっての脅威であり、不穏分子です。他の生徒達が落ち着いて食堂で食事をし、登校するために、あなたには始業3時間前から教室にいて貰います。」

 

「そんなの滅茶苦茶だ…。」

 

無表情で無茶苦茶な事を告げる氷川の前でリモリは弱々しくそう呟くのだった。

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