俺の可愛い幼馴染(♂)がどっちでもイケるアイドルを目指す話 作:あああ
「鷲部。僕さ、アイドルになろうと思うんだ」
放課後の教室、いつも通りたわいの無い雑談をしていたある日。幼馴染がそんな事を言い出した。
「え、アイドル?アイドルってあの?」
「そう!歌って踊れるあのアイドル!前から気にはなってはいたんだけどそのせいで友達が狂ったから距離を置いててさ……」
「失礼だな、そんなに俺は狂ってないぞ。ただ、バイト代は全額推しに貢いでるだけだ」
「それを狂ってるって言うんだよ」
幼馴染が冷たい眼差しで言う。でも本当にそうか?いやいや、俺は認めない。認めたくない。
「そんな事はないと思う。良いか?お前にも分かりやすく説明してやる。アル中が酒を求める様に、生物が食事を摂る様に。喫煙者がタバコを吸う様にっ!オタクがグッズを買うのも自然の摂理だ」
「手遅れだね。本当に」
熱く語る俺とは正反対に、心底冷めた表情で幼馴染はそう呟く。
「お前もオタクにならないか?オタクになって推しを推せばお前にもこの気持ちが分かる筈だ」
「その推しになろうとしてるんだって。駄目だ鷲部にに相談しようと思った僕が間違いだった」
「相談?」
「そう、アイドルに詳しいだろうからちょっとでも相談出来たら良いなぁって思ったんだけどもう良いや。別の人に頼るよ。それで、僕はアイドルになるよ。幼少期から四六時中アイドル番組を見まくってた少年時代を送っていた人なんて他にいないだろうけど」
本当昔からアイドル好きだったよねと幼馴染は言うが、言っておくが俺がアイドルオタクになったのはコイツのせいと言っても過言じゃない。幼少期にいじめられてたコイツを助けた事があるんだが。その理由は、他の奴らが幼馴染が複数の子供に男女だと騒がれてて男なら局部を晒せとか言ってたのでこんな可愛い男がいる訳ねえだろと言って助けた。その時は、コイツの事をマジで女だと思ってたのでそれは本音だった。
それから、一緒に行動する様になって男だと理解した。それでもだんだんと傾いていく気持ちを身体が無意識に止めようとしたのだろう、ある日テレビで見たアイドルのライブが目から離れなかった。それ以降、俺はアイドルに夢中になった。気持ちが揺らぐ時は、瞼や脳みそに焼き付けた推しを思い出すようにした。
幼馴染がアイドルになる事は賛成だ。俺が協力すれば、もしかしたら多くの人の目を集める最高のアイドルになるのも難しく無いかもしれない。でも、だけど。いや。
「しょうがないな、(男)友達として手伝ってやるよ、俺以外は女ばっかりだろお前」
「本当?良かったぁ。じゃあ、これからよろしくね!」
「ああ」
熱い握手を組み交わす。手ちっちゃ。柔らか……ってラブコメの主人公がヒロインの手触った時の感想だこれ。俺と幼馴染はそうじゃない。これからはビジネスパートナーだ。
「そうだ、アイドル売りするならどう言う方向性でいくんだ?」
別にやましい気持ちなんて何も無いが、大衆ウケしそうなのは可愛い系だと思う。
「カッコイイ系かな」
「oh……」
俺の幼馴染女装アイドル化計画は偶像のまま音も無く崩れ去り、消えてしまった。