つきんちゅハッピーエンドを求めて 作:超かぐや姫!に脳を焼かれた人
エッホ、エッホ。エッホ、エッホ。
「おや?ネットミームのような登場をしてどうしたの?しかも珍しいリトルツキフォームで?」
ツクヨミのヤチヨのプライベートルーム。
先日のヤチヨカップを告知してしばらく。ツクヨミ内外ではライバーが我こそは!と言わんばかりのみんな配信活動をしている。
俺とヤチヨはそんなライバー達の活動を見守りながら、不正が無いように監視をしていた。
で、見つけてしまった。
「お、いいね。新規ライバーは大歓迎だよ!なになに?『【初配信】月から地球にこんばんわ!かぐやだよ!』って…………」
とある配信画面をヤチヨに見せるとはじめは嬉しそうにしていたが、色白の肌がみるみるうちに真っ赤に染まる。
再生ボタンポチっとな。
『かぐやっほー! 月からやって来た、かぐやだよー。今日はやること思いつかないからこれで終わり!じゃあねー............ん?これで切れてるのかな?』
ほんの数十秒のアーカイブ。
手作り感満載のお世辞にも上手いとは言えない女の子がこちらに向かって手を振っている。
それに合わせて、簡単な自己紹介をして配信は終了。と思いきや最後は実写映像に切り替わり、そこには金髪色白の美少女が映ってしまった。
いわゆるこれが『放送事故』ってやつだ。
「あ、ああ………」
全ての再生が終わるとヤチヨはまるでこの世の終わりでも見て来たかのような絶望しきった顔でこちらを見て来る。
ニヤァ
きっとこの時の俺は悪い顔をしていたのだろう。そう自覚出来るほど口端がつり上がっていたと思う。
俺がヤチヨに見せたのは姫様の初配信だ。なんと、ヤチヨカップ翌日に配信したようで元気でよろしい。
ヤチヨはかつての姫様である。つまり、この配信は実質ヤチヨの初配信とも言える。
ツクヨミでのヤチヨは完璧なまでのライバーだ。ミスは少なく、あってもそれを笑いに変えることが出来る。
そんなヤチヨのやらかしを俺が無視できようか?いや、出来ないね。
「ヤチヨの本当の初配信、見ちゃった☆」
「うわぁー!うわぁー!うわぁー!!」
テヘペロとウィンクを決めてそう告げるとヤチヨが襲い掛かって来た。
しかし、今の俺はリトルツキフォーム。ヤチヨの襲撃をヒラリと小さなか体で躱し、彼女の背後に回る。
説明しよう!リトルツキフォームとはツクヨミ内で俺に唯一許されたキャラチェンである!
本格的な別キャラメイクはヤチヨの権限により禁止されているが、ただ身長を変えるぐらいは許されている。
そしてこのフォームは素早さが常時より上がり、回避率が上がっている………気がする!
この配信をヤチヨに見せれば確実に襲い掛かって来ることは予想できた。
だから、初めから逃げれるようにこの姿にしていたのだ。
「消して!記憶から消してー!」
「うはははっ!そいつは無理な相談だぁ!コイツはもうプロテクト掛けて俺の記憶領域に永久保存しちゃってるもんねぇー!」
「だったらその記憶領域を奪う!その記憶を置いてけー!!」
「うぉい!だからって刀を出して物理的に首飛ばそうとするな!それは流石にヤバい!!」
「うるさーいー!!」
伊達に8000年を生き抜いたヤチヨだ。刀を扱っていた時代の人達の動きを見事にトレースしていやがる。
「あっ」
「ぐえぇ」
ここで俺は何かを踏んづけて倒れてしまった。何を踏んだか足元を見ればFUSHIではないか。
「獲った!」
「うわっひょ」
その隙を見逃すことなくヤチヨは刀を上段に構え、俺に向けて振り下ろす。
変な声と共に何とか白羽取りで振り下ろされた刃を受け止めるのであった。
「首、置いてけぇぇぇぇ」
「もう、殺めることしか考えてない!」
「ツキには感謝してるよ。ここに来るまでいっぱい幸せを貰った。でも、これはダメ。ツキを殺して私も死ぬぅぅぅ!」
「やめろー!デレの無いヤンはただのサイコパスなんよ!と、とりあえず落ち着けって!」
「首、置いてけぇぇぇぇ」
ぐぬおおおおっ!リトルツキフォームは非力な分、力負けしてしまう。
全体重を乗せた刃が眼前に迫る。
あ、コレ無理ポと思った瞬間ーーーー
「お前等いい加減にしろ―――――!!!!」
「「アババババッ」」
FUSHIが放つ雷撃で俺達二人は仲良く感電。
まさか、ヤチヨが彩葉少女をストーキングしていた時に実装させた鎮圧プログラムがこのような形で使われるとは。
でも助かった。ナイスだFUSHI!でも、気持ち電撃強くないですかね?
アバババババッ。
久々に喰らったアババババッから復活した俺達。
まるで漫画のような黒い煤だらけの姿でその場に放置されている。
FUSHI?呆れてどっか行ったよ。
まさかヤチヨの暴走を止めるためにFUSHIに与えた鎮圧プログラムを喰らう日が来るとはな。
少し、月にいた頃の日々を思い出してしまったじゃないか。
「すみませんでした、調子に乗りました」
「こっちこそごめんなさい。やりすぎました」
で、汚れを落としてお互いに謝罪をする。
なんだかんだでヤチヨと出会って30年。それなりにお互いの事は知っていたつもりだった。
今回は俺が見事にライン越えしてしまった。知っているつもりがまだまだヤチヨについて知らない事があるようだ。
反省反省っと。
「えーっと……あのね、この頃の私ってまだ配信の何たるかを知らなくてですね。こんな形になっちゃいましたと言うか………誰しも黒歴史は見られたくないと、言いますか」
謝罪の後、ヤチヨが歯切れ悪く、恥ずかしそうに語り出す。
かぐやとして優勝宣言をした後、早速ライバーの何たるかを調べた。
当時は技術も何も判らず、勢い任せでスタートを切ってしまった、と。
しかし、結果的にバズりにバズり。
後に行う配信も成功してヤチヨカップ優勝を飾ったのだ。
それでも初配信は見られたくなかったようで。
「俺としては意外だったな。ヤチヨの初配信は知ってたけど、まさか姫様の初配信がこうなってるなんて」
「うぅ……」
「でも、すごいぞ。これ以降はちゃんとした配信になってる。多分、彩葉ちゃんが頑張ったんじゃない?」
「この世界の彩葉はかぐやの配信に積極的だしねぇ。この初配信の後、彩葉がかぐやを叱った光景が目に見える」
「待ちきれなくて暴走したのかもな」
「ありえる~」
あははは、と笑いながら会話を重ねていつもの調子に戻る俺達。
「途中で朝日が登場してるのが気になるが……」
「ふふっ、外でペットボトルロケットやったなぁ~。この配信だと帝様にロケット直撃してるけど」
「歌は全部彩葉ちゃんが作ったのか?結構、再生数が伸びてるけどいい感じじゃん。でも、なんでキツネの着ぐるみ?」
「待って、この歌知らない!ズルい!ヤッチョも歌いたい!」
それからも、二人で姫様の配信を見ていく。
見る限り、思いついたことを片っ端しにやっていくスタイルで、後追いや二番煎じとかは気にしない。
見た目も相まって、反応もオーバー気味なのがウケてバズりにバズってる。
しかし、その内容の所々にヤチヨの知らない部分もあり、羨ましがっていた。
「それでランキングが1000位ぐらいか。すごくない?」
「ねぇ~♪これなら一緒にコラボ出来るかな」
三人でライブをする姿を想像して、ヤチヨは本当に楽しそうに笑う。
「今回はツキも一緒だもんね」
「俺も?悪いけどコラボライブは出ないぞ」
「えぇー!?なんでぇ!?」
いや、なんでっと聞かれましても。
「その日は別の予定があるからな、わりぃ」
「やだやだ!一緒にライブやるのー!ニートの癖に!」
「ヴァカめ、ニートにも予定はあるのだよ」
「うううぅぅ!!」
普段はミステリアスなイメージのヤチヨであるが、駄々を捏ねると姫様そのままだな。
しかし、申し訳ないがコラボライブ当日は真面目に予定が入ってしまている。
これをキャンセルすることは出来ないし、ここはヤチヨに折れてもらうしかない。
「………じゃ、抱っこさせて」
「は?」
「私が満足するまで抱っこさせてくれたら許す」
「えぇ~……」
たしかに今の俺はリトルツキフォームで抱っこされるのには丁度いいサイズだ。
けれどここで拒否してしまえば、さらにご機嫌が斜めになる。
それはもっと最悪だ。
「…………」
「ッ!……えへへ」
俺は観念してヤチヨの要望に応える。
正座するヤチヨの足の上にチョコンと座り、されるがままになる。
俺を抱っこ出来たのが嬉しいのか、ヤチヨは俺の腹に両腕を回しきた。
「………ねぇ?どうしても一緒にライブやるのダメ?」
「そうだな」
「ぶー……楽しみにしてたのに」
「悪い」
「いいですよ~こうしてツキニウムを堪能させてもらいますから」
ツキニウムって?
「でも、コラボライブの後は月のカウントダウンが始まっちゃうよ。それまでにかぐやと一緒に遊ぶのも限られちゃう」
「そうだな。まぁ、考えが無いわけじゃないんだけどな」
「お、何かな何かな?お姉さんに話してみなさい」
見た目上、姉弟の構図なので問題無い。実際俺達の稼働時間もそんな感じだし。
「ヤチヨさんや、コラボする気ある?」
「え?そりゃ~やる気満々ですよ」
「コラボライブじゃねぇぞ。普通のコラボ」
「へ?」
不思議そうに首をかしげるヤチヨ。対して俺はヤチヨの前に一つの投影ディスプレイを展開する。
「おぉー!これは!」
「先週ぐらいに完成したって教えてくれてな。で?これで遊ばね?」
「いいねぇ~♪じゃぁ~ヤッチョは今日の配信でコレの宣伝をしちゃうよ!」
「よろしく~」
さぁ、姫様と遊ぶか。
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