つきんちゅハッピーエンドを求めて 作:超かぐや姫!に脳を焼かれた人
流石、超かぐや姫やで。
評価・感想・誤字報告してくださった方々ありがとう。
地球にいる姫様と出会ってしばらく。
俺は人としての生活と電子世界で姫様の手伝いをする二重生活を送っていた。
幸いなことにこの肉体は疲れ知らずだ。睡眠と食事をしなくても最悪活動は出来る。
まぁ、そんなことはしないのだが。
月で生まれて、睡眠も食事も無かった世界。しかし、前世でその大切さを知っている身として久々の刺激を満喫しないなど論外。
なので、寝るし食べる。趣味に食べ歩きと言う程食べる。
「でねぇ~ここの構築をどうしようかと思ってるんだけど~」
そして今は、例の仮想空間で姫様と一緒にツクヨミを形成している。
ベースはすでに姫様が作っており、今は色々と詰める作業中。
今の所順調に彼女の目指すツクヨミが形成されているのだが、一つ問題が。
「あの、姫様?」
「な~に~?」
「なんでそんなにくっつくのですか?」
「気にしなくていいよ。ヤッチョは気にしなーい」
俺が気にするっての。
俺達は今お互いに背中合わせで作業をしている。背中から伝わる体温は
それに姫様たまに俺の背中に手を添え、スリスリと這うように動かしてくる。
一体何をしたいのだこの人は、
初めて姫様と出会った日。その別れ際に握手をした俺達であるが、その後が大変だった。
俺と触れ合った姫様が暴走した。
握る手を何度かニギニギした後にこちらの胸に飛び込んでくる。
で、ビックリしたような顔をして、こちらを見ながらポロポロと泣き出してしまったではないか。
慌てる俺と泣き続ける姫様。
事情を聞けば、こうして温もりを感じたことに感動したらしい。
それもそうか、姫様は肉体を失って8000年だ。こうして電子の世界で肉体を構築したのが最近。
それでも、こうして人と触れ合うことは叶わず、諦めていたことの一つが不意に叶ってしまったのだから。
秘密を明かせば【もと光る竹】のおかげだ。
アレは構造自体をその環境に最適化させる機能がある。だから、タケノコの形から人に変わることも出来るし、五感を再現することも出来る。
そして俺の電子ダイブは姫様の言う未来で開発されるスマートコンタクトなるデバイスを仲介してこの世界に入り込むのとは違う。
現実世界の肉体情報のままこっちに来てしまっている。だから、触った感触があるのだ。
そして、姫様の【もと光る竹】にも同じ機能は備わっている。しかしこちらは故障して本来の機能が発揮できない状態。
肉体構成が出来ない状態であり、ここにいる姫様は残った思念をデータ上に投影して存在しているに過ぎない。だから、本来であれば感触は無いはずだ。
しかし、不思議なことが起こる。
壊れた姫様の【もと光る竹】は俺に触れてアップデート。
俺と言う存在が電子世界に最適と判断したのか、姫様も俺と同じ構成データに再構築されたのだった。
現実に肉体を構成する機能は相変わらず死んでいるので、電子世界でしか適応できないのだが。それでも、姫様は大いに喜び。で、俺がここに来ると常に引っ付いて離れない。
「あ、外部アクセス。しかも悪性」
「晒しまーす」
「程々にしてあげてねぇ~」
カタカタカタカターン!っと勢いを付けてキーボードを打つ。
このツクヨミはネットの海に漂う孤島のような物。あらゆるネットワークから孤立している。
まぁ、仮想世界などまだネットが普及したばかりの時代では過ぎた物だ。だから、秘匿している。
しかし、人と言う物は未知を追い求めてしまう。
たまたまここを見つけた人がここへアクセスしようと試みようとすることがある。
見つけても何もできないと諦めてくれるならヨシ!ただし、悪意があるならカウンターだ。ご使用されているパソコンのデータ全てを世間にバラまいてやる。
これに懲りたら二度と悪いことするな。
「そう言えば姫様」
「なぁーにー?」
「俺、外で起業することにした」
ズルッ、ゴト。
そんな音が後ろから聞こえたので後ろを見て見る。
何故か姫様が床に伏せていた。
「イタタっ………ど、どういうこと?」
俺の背中から滑り落ちたのか、床に頭を打った姫様は涙目だ。感触が再現されて痛覚まで蘇ったのか。
いや、それより説明だ。
「色々考えたけど、外でも活動したほうが確実性が増すかなって思った」
「確実性?」
「酒寄彩葉に月見ヤチヨを認知してもらうこと」
未だに誕生しない姫様の思い人である酒寄彩葉。
もしかしたら、生まれないかもしれない。生まれても、姫様を認知しないかもしれない。
生誕に関しては神のみぞ知るって訳でどうしようもないのだが、認知してくれるかは別。
かぐやとして過ごした時は月見ヤチヨは全世界に認知されている存在であった。
俺なんかが関わらなくても問題無いはずだ。それでも、確実性がほしい。
なら、その流れを自分で作ってしまおうと思った次第です。
「具体的には何をするの?」
「よくぞ聞いてくれました」
メインはネットワーク関係だな。ネットの普及し始めた今なら後々に業績が伸びる。
それに内からハッカー晒すのも飽きて来たし、ここは俺達の場所だって周囲に公言する。そうすればツクヨミも姫様も一緒に守れるし。
で、医療、電子工学。こっちは後に開発されるスマコンの性能向上が目的だな。目標は俺以外の人とも姫様が触れ合えること。
それからメディア関係も手に納めたいな。ツクヨミと月見ヤチヨの存在を世界に知らしめる。「彩葉ー!私はここだよー!」って言って認知してもらおう。そうすりゃ向こうが勝手にこっちに来るだろうし。
まぁ、アレだ。知っている未来までの道のりを自分で整えようと思った次第です。
「…………」
「姫様?」
俺が描くロードを語るとどうしてか姫様は顔を伏せてしまった。
そんで、何を思ったのか姫様はこちらへ這い寄って俺の胸に顔を埋め、そのまま押し倒してきた。
アイタッと倒された勢いで頭をぶつけるのだが、姫様はそんなこと気にせずに俺の体の上で寝やがった。
「………一つお願いがあるんだけど」
「何でございましょう?」
「私を姫様って呼ぶの、辞めて」
「え? だって、姫様は姫様じゃん」
「違うよ、私は君の知る姫様じゃない。君が知る姫様はまだ月にいて、これからかぐやに成る子なんだよ」
「まぁ……確かに?」
「その子と私はもう別人。別人なんだよ」
「それじゃ、なんてお呼びで?」
「ヤチヨ、ヤチヨって呼んで」
確かに、姫様ーーーーヤチヨ、の言い分も一理ある。
世界が分岐して、同一人物であったかぐやとヤチヨは別々の存在となってしまった。
ならば、俺が彼女の事を姫様と呼ぶのもおかしい話だ。
しかし、これは月で作られた時にリョウサン型月人に植え付けられたアルゴリズムで、俺達は月での上位個体に敬わなければならない。だから、月の姫様の事はそれなりの態度で接してきたつもりだ。
…………………あれ?そんなこと無い?
つまんない仕事サボって上司に逆らって、姫様とも悪友のような関係だったし。
そうしなきゃって考えはあるモノの、まぁいいやって投げ捨ててしまっていやん。
なら、彼女をヤチヨと呼ぶことに抵抗など無い。
「………ヤチヨ様」
「様もいらない」
「…………その、いきなり女性を呼び捨ては、ハードルが高いッス」
「ッ………デュフフフ」
気持ち悪い笑い方。しかし、嬉しそうだなこの人。
とりあえず、呼び捨ては心の中だけにする。
「もう一つお願いがあるんだけど」
「何回もう一つがあるんですか………」
「最後!最後だから」
「で?なに?」
「少しこのままでいさせて。で、ギュとしてほしい」
「二つやん。まぁ、それぐらいのことなら」
もうどうにでもなれと思ってされるがままとなる。
彼女の望を叶えるため、その細身を両腕で抱きしめた。
データ上の存在とは言え、人間と変わらぬ触れ合いに気恥ずかしさを感じる。
多分、この世界に心臓があれば早鐘を打って、ヤチヨに聞かれてしまっているのだろう。
それだけが幸いだ。
◆◇◆◇◆
ヤチヨSide
8000年ぶりの刺激に抗えなかった。
触れて、感じる。
それがどれだけ恋しかったことか。
この感じは彩葉と共に過ごした日々を思い出させてくれる。
嬉しくて、たまらなく嬉しくて、それに縋ってしまう。
でも、まぁ、8000年も我慢してたんだし、ちょっとぐらいいいよね?
それに彼だって、ヤッチョのような美少女に触れられて、満更じゃなさそうですし!
嗚呼、あったかい、どうしよもなくあったかい。
私の我儘を聞いてくれてありがとう。
それからそれからね、私が目指す場所へ道しるべを作ろうとしてくれてありがとう。
それがたまらなく嬉しかった。
過去に出会った人々も私が求める未来へ行けるように道しるべを作ってくれた。
そうやって、繋がって繋がって来た道がようやくゴールを迎えようとしている。
あの人達と一緒で、君も導いてくれるんだね。
本当に、ありがとう。
でも、ちょっと不服な事もあります。
名前はちゃんと呼んでほしかったなぁ~。
でも、忘れてるよね?君の思考は下位つきんちゅ特有の伝達式でヤッチョには筒抜けだってこと。
だから、心の中でヤチヨって呼んでくれていることも知ってるんだよ。
いつか君の口から、言葉で聞きたいな。
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