つきんちゅハッピーエンドを求めて   作:超かぐや姫!に脳を焼かれた人

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書いてて色々とご都合主義な本作品ですが、楽しめていただければと思います。



なんか、救っていたらしい

 

ーーーー上場企業、ムーンライト社長に迫る!!

 

 

そんな雑誌の表紙を見て、デスクの上に投げ捨てる。そして、ちょっと奮発したオフィスチェアに背中を預けて天井を見た。

 

「上手く行きすぎた?」

『かもねぇ~』

 

デスクの上にあるタブレットからヤチヨが顔を覗かせて、現状に対して軽く返答してくれた。

 

ヤチヨと出会って20年。今は西暦2020年。

 

2000年に起業した俺の会社ムーンライトは上場企業となり、ありとあらゆる分野で活動する会社となった。

 

当初のネット関係、医療、電子工学などはもちろん。流通、商業、金融にも手を出して大成功。

 

もう、なんでもござれであった。もう、世界の半分を牛耳ってるんじゃないか?

 

 

………これは宇宙人の侵略になるのだろうか?

 

 

まぁ、これはヤチヨがこれまでに出会った人間の協力者達の活躍が大きい部分がある。

なんだよ、CIA職員の協力者って。スパイ映画か?え?祖父がお世話になった?

あ、そうっすか………。

 

で、だ。

 

本命のツクヨミ運営であるが、あと数年もすれば世界に公開する段階まで来た。

仮想空間の構築は終わり、ヤチヨを歌って踊れて分身も出来る8000歳のAIライバー(という設定)として売り出す準備も着々と進んでいる。

 

『…………』

「なんだ、どうした?」

『いや~……ツキ老けたなぁ~って思って』

「だまらっしゃい」

 

20年も経てば人間それなりの大人になる。俺の場合は違うが。

 

【もと光る竹】の擬態は完璧だ。20代の青年に擬態した俺はそれに倣って歳を重ねて来たように擬態している。

 

なので、今の俺の見た目は40代の男性へと変わって来た。当然、ヤチヨと出会った当初の姿に戻ることも出来るが、せいぜい戻るのはツクヨミ内だけである。

 

「話を戻すぞ、βテスターの件だ」

 

ヤチヨが写るタブレットの前に手に収まるぐらいのケースを置く。

スマートコンタクトーーーーかつて、人々がツクヨミで遊ぶ為に必要であったデバイスだ。

 

「αテストは社内で完了。修正点を元に改良してそれが終わり、一般の応募したらとんでもないことになった」

『まさか世界中から集まるなんてね』

 

そう、世間に募集を掛けたら飛んでもない人数の募集が募った。ざっと十万人。

本当ならもっと人は集まっただろう。しかし、五千人に達した時点で怪しくなり五万人の時点で会社のサーバーが悲鳴を上げた。

頑張り頑張ったサーバー。しかしサーバーだけではなく、部下まで悲鳴を上げ始めたので募集開始1時間で募集を終える事に。

 

みんなどうした?そんなにやりたいか?VR。

まぁ、人類の夢でもあるから分からなくもないが……。

 

「で、選考の末とある人にβテスターを頼もうと思う」

『いいんじゃないかな?』

「………ヤチヨ様はサプライズ好き?」

『え?なに、急に?』

 

選考に通った人の書類データをヤチヨのいるタブレットに入れる。

自分の元に来た書類データを受け取ったヤチヨはそれを見て、ギョっとした顔をしてこちらを見て来た。

 

 

 

 

酒寄朝日ーーーーそれはヤチヨが8000年を掛けて出会おうとした少女の兄である。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「朝日の母、酒寄紅葉です」

「お時間作っていただきありがとうございます。わたくし、こういう者です」

 

スマコンβテスター募集の中に酒寄朝日の名を見つけるが、如何せんこの時点で酒寄朝日は12歳の少年である。

 

未成年にあれよこれよとやらせようと言うのは世間体に問題だ。

 

本来であるなら選考落ちで処理して終わる問題なのであるが、求めるテスターの条件に彼が完全一致しているのだ。

 

他にも似たような人は何人かいたが、彼と比べると見劣りしてしまう。

 

 

ならば、採用しよう。とりあえず、ご両親に説明だ。

 

 

そんな訳で俺は今、京都へやって来てる。しかも、酒寄家にお邪魔している。

客間に通された俺は紅葉さんとその隣に座る朝日少年とご対面。

 

ちなみに、酒寄彩葉の出生は確認している。

良かったね、ヤッチョ。愛しの彩葉ちゃんがいるよ!

なのだが、いつも俺のデバイスにいるヤチヨは大人しい。

まぁ、この場に酒寄彩葉がいないので出て来るつもりはないのだろう。

 

まずは、名刺の交換をして軽い挨拶をする。これ、社会人の常識。

 

「大企業の社長さんが直々に来てくださるとは、なんと申し上げていいのやら」

「いえいえ、こちらも必要な事でしたので」

「ほら、アンタも挨拶し」

 

母親に軽く背中叩かれた朝日少年。

緊張してか背筋がピンと伸びて俺に挨拶をしてくれる。

 

「酒寄朝日です。よろしゅうお願いします!」

 

元気な挨拶やん。

そんなことで好感を持って彼に微笑むと何故かさらに緊張させてしまった。

なぜ?まぁいいや。とにかく、話を進めるか。

 

「早速ですが今回伺った件についてですが」

「伺っております。この子が御社の製品のβテスターに募集した事と」

「率直に申し上げますと、我々は朝日君にそのテスターをお願いしたいと思っております」

「何故でしょうか?」

 

当然の質問。12歳の少年がどうしてそんな重大な事を任されようとしているのか、親としては不思議に思うのは当然だろう。

その説明に俺は持ってきていたタブレットを紅葉さんに手渡す。

 

「ここ数年、ネット社会は飛躍的な進歩をしてきました。そこで我々はとあるサービスを皆様に提供するご用意があります」

 

インターネット上に構築する仮想空間。

デバイスを通して誰もがそこへ入り込み、遊ぶことが出来るツクヨミの存在。

 

それを丁寧に、一つ一つ紅葉さんと朝日少年に説明をしていく。

紅葉さんは真剣に俺の話を聞いてくれ、対して朝日少年は目を輝かして興味津々だ。

 

「応募項目でいくつかテストをさせていただきました。そして、応募者の中で朝日君は私が求める適性を持っていることが判明しました」

「適正とは?」

「空間認識能力と高い集中力。これ等はVRに携わることにおいてかなり重要な能力です」

「それなら朝日以外にもいるのでは?」

「十万の募集の中で朝日君は群を抜いて適性が高かったんです」

 

募集者にはちょっとした適正試験を受けて貰っている。

で、結果を見たら「え?なにこの超人?しかも12歳!?うひゃー!!」って社内で盛り上がってしまった。

俺は別の意味で驚いたけど。

 

「そうですね………ゲームでプロとしてやっていけるレベルです」

「ゲーム、のですか?」

 

怪訝な表情を浮かべる紅葉さん。でも、朝日少年は表情を綻ばせている。

この時代まだプロゲーマーって職業は認知されずらい。

だから、親目線で見れば不安になるのも当然。

 

「朝日君は我が社の理想の人材です。しかし、年齢が問題でして彼はまだ12歳。これから社会を学び、責任について考える時期です。一人で選択して決断だってすることもこれから起こります。我々大人は、そんな子供の決断を尊重して導く義務があります」

「…………」

「紅葉さん、朝日君は決断して我が社のテスターを受けたいと言ってます」

 

楽しいことも、悲しいことも、これからたくさん経験して彼は成長する。

どんな大人になるかは8000年生きてタイムスリップした人が「彼、ノリで求婚する軽い人になります」と言っているが、それは無視。

そして、その成長を手助けするのが大人の役目だ。だから、その成長に俺は協力するし、そちらにも協力してもらおう。

 

「ですので、今回の件については朝日君の代わりに親である紅葉さんが責任を持って判断してください」

「………は?」

 

そう言って、俺が頭を下げると紅葉さんから気の抜けた声が漏れた。

これには朝日少年もビックリ。俺と母親の顔を交互に見てくる。

 

しかし、意外な反応したのは紅葉さんだった。

気の抜けた声を漏らしてすぐ声を殺しながら笑いだす。

 

「何を、言って」

「いやいや、いきなり子供に責任持てと言われても困るでしょ?それに未成年のお子さんを親御さんに無断で働かせるのはいかんでしょ?そもそもの話、これはご両親の許可次第で決まる話なんですから」

「そりゃ、そうやけど……くくっ、アカン、お腹が痛い」

 

まさかの腹痛。厳格なイメージだったけど結構親しみやすい人かも?

 

しかし、これはそう言う事だ。

お子さんがこういう事をやりたいと言って我々としてはやらせたいのですがいいですか?って聞くだけの話だ。

説得云々ではない。説明した上で許可してくれるかくれないか、それだけの話である。

 

きっと紅葉さんは俺がどんな説得をしてくるか気構えていたのだろう。

結果は肩透かし。で、気が抜けて笑ってしまったと思う。

 

「はぁー……久々に笑ったわ。朝日、アンタはどうしたいん?」

「俺は、やってみたい」

「ええよ。やってみ」

 

あっさり許可が下りた。こいつはグレートですよ。

 

「社長さん―――いえ、月島さん。ウチの愚息をよろしくお願いします」

「愚息ならいりません。優秀だからお願いしに来たんです」

「ふふっ、失礼。息子をよろしくお願いします」

 

これにて一件落着。さて、詳細を詰める話をしよう。

 

「あ、あの、おーー僕からもいいですか?」

 

しかし、朝日少年が元気よく挙手しながら声を掛けて来た。

 

「どうしても社長さんに言いたいことがあるんや」

「こら、敬語」

 

緊張しながらもこちらを真っ直ぐ見つめる朝日少年。けど、敬語が抜けて母親に軽く小突かれる。

そこら辺は気にしないので大丈夫と俺は紅葉さんを促し、朝日少年の言葉を聞く。

 

「父さんが事故に遭ったんよ。それも、結構大事故で」

 

酒寄彩葉の父、酒寄朝久はヤチヨが知る未来では2020年に事故で死んでしまっている。

その死をきっかけに酒寄彩葉と酒寄紅葉の親子関係は拗れ、高校は地元京都から東京へ一人で上京してしまう。

しかも親の支援無しで。一見無謀とも思える上京であるが、スパダリ酒寄彩葉はそれをこなしてしまった。

 

朝日少年の言葉と時期的に考えて、「そうか」と納得してしまう。

だとしたらタイミング的に俺の訪問は最悪だったかもしれない。辛い時に来てしまったと後悔する。

 

「でも、社長さんが作った医療器具とか薬とかで助かったんよ。だから、どうしてもお礼言いたかったんや」

「ん?」

 

…………今、なんと言った?

 

「その件では私からも。貴方方の製品でウチの主人が助かりました。なんとお礼を言えば………」

「そ、そうですか………それは、よかった」

 

おふっ………お父さん生きてるの?それは喜ばしいことだね。

じゃなくて、いや、本当に喜ばしいことなんだけど!喜ばしいことなんだけど!!

 

これって彩葉上京フラグへし折ってませんかねぇ!?!?

ヤチヨさん、そこんとこどう思いますか!?!?

ヤチヨさーーーーーん!!!!

 

「おかぁーさん」

 

内心焦っていると酒寄家の客間に来訪者。

開いた扉を見れば少女が一人ーーーーー酒寄彩葉だ。

 

ヤチヨが8000年生き抜いた理由である少女。

この時期では6歳と聞いていたイメージの面影も無く、可愛らしい少女だ。

 

「こら、彩葉。今お客さんと大事な話しとるんよ」

「………ごめんなさい」

「で?どうしたん?」

「あんな、タブレットがおかしくなってんねん」

「タブレットが?」

 

彩葉少女から手渡されたタブレットを見ると紅葉さんは眉間に皺を寄せる。

横で朝日少年が覗き込むように見てこちらも眉間に皺を寄せる。

一体どうしたんだ?彩葉少女よ、いけないサイトでも覗いてしまったか?

 

しかし俺はとある可能性に気づいてしまう。

 

それはとある存在が大人しいこと。

念願の酒寄彩葉の近くにやって来たとは言え、ここまで大人しいのはおかしい。

おい、まさかと思って紅葉さんにタブレットを見せていただくよう言い、拝見させてもらう。

 

『ハァ……ハァ……ロリ彩葉…………いとかわゆし』

 

そこには画面いっぱいに映し出された我らのヤチヨ様がおられた。

目をハートに変え、荒い息をして、とてもよそ様にお見せ出来ない姿でだ。

彩葉少女もいきなりこんなのが現れたらビックリするだろう。

 

「スッー…………」

 

テメェ!!コンニャロー!!!!




京都弁ってこんな感じでいいのか?

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