つきんちゅハッピーエンドを求めて 作:超かぐや姫!に脳を焼かれた人
評価・感謝・誤字報告ありがとうございます。
ここから原作スタートです。
なんか、はじまるらしい
ーーーー今は昔………。
「彩葉!」
悲鳴にも似た声が鼓膜を打つ。
私はそれに反応して、振り向いて見つけた鎧武者の一団に突っ込んだ。
ーーーーでは、なくて。
ブーメラン型のブレードを二つに割り、双剣スタイルへ。
逆手に持った剣をこれでもかと振り回し、鎧武者を一網打尽に切り裂いた。
ーーーー超未来だったり。
「ああぁぁぁ、やばいやばい!」
あらかた敵を倒すと別の方向から声が聞こえてくる。
敵集団、おかわりです。
ーーーーいやいや、大昔でも超未来でもなくて。
内に秘める感情の鬱憤を晴らすように、敵集団を細切れにしていく。
ーーーー今とあんまり変わらない、少しだけ未来の世界。
相変わらず、敵の散るエフェクトは綺麗だな。でも、そんな光景を見ても気分が晴れない。
空中に「YOU WIN」と言う文字がデカデカと投影され、私は大きく息を吸ってーーーー
「何で引退しちゃうんですかぁァァァァァァァァ!!!!!」
ーーーーゲームで叫ぶ普通の女子高生ありけり。
「彩葉、相変わらずだねぇ」
「しょうがないよ。目標にしていた人がいきなりいなくなっちゃったんだから」
そう言って、友人二人が投影ディスプレイに映し出されたネット記事を見る。
『月島圭一郎氏、株式会社ムーンライト社長職を辞任ッ!今後ヤチヨとの共演は絶望的!?』
「なんでよぉぉぉぉぉぉ!?!?!?」
勝利の雄たけびではなく、悲しみに暮れる少女に友人二人は今度慰めてあげようと思ったとさ。
◆◇◆◇◆
酒寄彩葉、16歳。諸事情により地元京都から上京して東京で一人暮らしをしております。
事の始まりはお母さんからの無茶ぶりから始まる。
「彩葉、アンタ東京行き」
いきなりの事に思わず「ん?????」と返してしまった私は悪くないと思う。
中学になって進路希望の用紙を記入して両親に相談した時だ。
あの忘れられないライブを見て、私も音楽の道に進みたいとは事前に言っていた。
だから、進路は当然家から通える音楽関係が強い高校を選ぼうと思っていた。
中学に上がってからはお父さんに作曲のやり方を教えてもらいながら過ごしていた。
お母さんもそんな私達に何も言わずに見守ってはくれていた。
「紅葉さん、言葉が足りひんとちゃう?」
お母さんの隣に座るお父さんがそう言って、お母さんの言葉の意味を教えてくれる。
東京にある知り合いの音楽スタジオでアシスタントを探しているとの事。
扱いはアルバイトであるが、それでも職場を体験することが出来る魅力的な提案。
「彩葉は父さんとしか作曲してへんやろ?色々見てきてほしいねん」
「ええの?」
「こっちから提案してるんやし、かまわへん」
自分のやりたい事を応援してくれる両親には感謝しきれない。
私もその提案を受け入れ、改めて東京の高校を探そうと思った。
「ただし条件がある」
が、しかし。お母さんがどこからともかく学校のパンフレットをテーブルの上に並べて来た。
「学費は払ったる。けど、生活費は自分で何とかし。朝日もそうやってるんやから」
二度目の「ん?????」と返してしまった。
お兄ちゃんは今プロゲーマーとして東京の大学に通っている。
ツクヨミがサービス開始に伴って、プロゲーマーも今は立派な職業だ。
お兄ちゃんも進学か就職かの進路を決める時にプロゲーマーになると言った。
で、話し合いの末、「大学だけはちゃんと卒業しろ」と条件付きでお兄ちゃんの活動を許した。
その時のお兄ちゃんは、プロゲーマーになれる喜びと受験勉強の地獄を迎える絶望を味わったとか。
それでも、ちゃんと言いつけ通りに大学合格したのだからすごいと思う。
けど、家を出る時「こんな家おられるか!?盆と正月は帰ってくるからなぁ!」って言って出てったのはカッコ悪いと思う。
で、それを私にもやれと?
いやいやいや、東京行きはそっちの提案じゃん!お父さん助けて!
え?「………お金の大切さも知って欲しいんよ」ってなんで遠い目をしてるの?
アルバイトも紹介してくれたからいいけど、まだどれぐらい貰えるか知らんし。
いや、お兄ちゃんの所に転がり込めばワンチャン………え?ダメ?アパートは自分で探せ?マジっすか。
それだったら、と馴れない計算を脳内で弾き出して私はとある提案をお母さんにすることにした。
「………こっちからもう一つ提案してええ?」
「なんや?」
「学校の成績次第で援助してくれません?」
「なら、試験で1位やな」
あ、やべ。さらにハードル上がった。
しまった、このスパダリオカンは世の中の女性の基準を自分にしている所為か、「私に出来るんやからお前も出来るやろ?」とナチュラルに煽ってくる。
これで家族間の仲が酷く拗れないのは我が家の癒しとなるお父様のおかげだ。
しかし、今回の事でお父さんの援護は無く、お母さん側に回るらしい。
「なんや?出来ひんのか?」
「…………やったる」
「なら学校はこの中から選び」
くっそー!やったらー!!絶対!試験で1位取って金絞ったる!!
そんで、私のヤチヨグッズにしたる!!
そんな訳で学業とバイトの両立する日々を一年半ほど続けて来た。
バイト代はそれなりに貰ってる。学校も入学してから学年1位を連続で取り続けている。お金は貯めたいので、節約生活もしている。
アパートまで築数十年のボロアパート(月三万八千円)にまでして削るところまで削って来た。
ふふふっ、私に死角は無いのだよ。
ぐすん………辛い………。
でも、これもグッズの為。今月は新しいのが販売されるから余計にお金は使えない。
しかし、推しへの愛があれば耐えられる。後三日は粉と水のパンケーキになるけど。
さて、ここまで来ればお分かりだろう。
私はヤチヨガチ勢だ。そしてツキガチ勢だ。
彼女を知ったのは十年前になる。
あの時はいきなりタブレットに現れてビックリして、しばらく怖い思いをしていた。
だって、電源入れてないのにいきなりディスプレイが着いたりして「え?幽霊?おかーさーん!?」って叫んで泣いてしまったのは黒歴史。
後にそれが、ヤチヨによる悪戯(真相は不明)と知り、月島さんが「ウチのバカが申し訳ない」とわざわざ謝りに来て、ムーンライト製の最新機種と取り換えていた。
なので私は彼女の事が少し苦手だった。
でも、印象が変わったのはヤチヨのデビューライブの時。
歌う姿が魅力的で、声が綺麗で、とにかく素敵だった。
デビュー曲の『Remember』はどうしてか私に突き刺さる感じがした。
それから、何気なく彼女の配信やライブを追いかけていたら………沼にハマってしまったのです。
だから、余裕あるお金は全て彼女に貢いでしまっている。
え?グッズ買うの抑えれば私生活が安定するって?私に死ねと申すか。
ツキの方はヤチヨと共演する姿やリアルを知っていると言うのもあって推している。
大企業の社長なのに何気ないメッセージのやり取りしたり、大人らしくアドバイスしてくれる気の許せる頼れて憧れる大人。
不満なのはツキのグッズが販売されないこと。
今は自作アクスタや団扇で我慢している。ツキのグッズ販売お待ちしております社長。
しかし、そんな願いは叶わず、まさかの社長辞任のニュースが世間を騒がして私も騒いだ。
周りは病気とか不祥事とか言っているが、そんなのはどうでもいい。
私は何を糧に生きて行けばいいのだ。ヤチヨと並ぶ彼も最&高なのに。
「はぁ~…………やっと着いた」
今後、ツクヨミでの彼の活動が見れないと思うと気が重い。
バイト帰りの足取りは重く、フラフラヨロヨロと歩いているとようやく我が家(ボロアパート)に着いた。
が、見慣れたアパートが異様な光景に変わっている。
アパート横の電柱が七色に輝いていたのだ。
なにこれ?ゲーミング電柱?
ショック過ぎて遂に幻覚まで見る事になったか。疲れてるな私。
予習して寝よって思ってたけど、今日は早く寝よ。うん、そうしよう。
なのでスルー。
だがしかし、ゲーミング電柱はどうやって出しているか判らないスモークを吐き出し、妙なBGMで私を呼び止めて来るかのようにしてくる。
………くそう、逃がさぬと申すか。
改めてゲーミング電柱の前に立つ私。
すると電柱の真ん中から突然扉のような切れ目が入って、竹をモチーフとした取ってが生えて来やがった。
どうなってるんだこれ?とマジマジと見ているとその扉が内側から開かれる。
「ストップ、お願いだからストップ」
ギギギッと動いていた扉が私の声に反応して止まった。
「頼みますから一旦整理させてください」
なんで私は電柱に話しかけているのだろう。でも、向こうも空気を読んでかギギギッと開きかけていた扉を閉じてくれる。
話がわかるヤツは好きだよ。いや、電柱に好意持ってどうするんだ?
とりあえず、お兄ちゃんに電話する。
こんな事一人で抱えるなんて無理。なので、兄を道連れにする。
『なんや?そっちから電話なんて珍しい』
「お兄ちゃん助けて!」
『え?お?』
すぐさま電話をカメラモードに切り替え、ゲーミング電柱を写し出す。
『………なんやこれ?』
「わかんない!助けて!」
『落ち着けや。とりあえず、電気会社に連絡でええんかこれ?ってか、今どこ?』
「アパートのすぐ横!」
『ええっと………とりあえず、そっち行くわ、ちょい待っとき』
「早く!40秒で支度して!」
『………お前、実は結構余裕あるんちゃう?』
あるわけないやろ!と電話に向かって叫ぶ。
もう一杯一杯なんです。頭がバグりそうです。だから、助けて。
しかし、状況が一変する。
今まで我慢していた扉がまた開きだしてしまったのだ。
「いや、まだ開くな!」
『ええぇ……まさかの力づくかい』
扉を抑えるが押し返される。残念な事に非力な女子高生である私にはなすすべなく、電柱の扉に負けてしまうのであった。
『雑魚っ』
お兄ちゃんの煽りを無視して開かれた電柱の中を見る。
中には………ベビーベッド?
「ふぇ……ふぇ………」
「あ、赤ちゃん?」
『は?』
異様に異様が重なって、まさか電柱から赤ん坊が登場するとは思わなかった。
思わず私は、その赤ん坊を抱えてしまう。だって、このままにするのはかわいそうだと感じたから。
すると、電柱の扉は締まり、まるで何も無かったかのように元に戻ってしまった。
スモークも愉快なBGMも全て無くなり、夜の静けさだけが残る。
「『ん?????」』
「キャキャッ」
私達の反応が兄妹なんだなぁ~っと実感させられた。
彩葉は自分の欲に忠実な女の子。だから、私生活を代償に推しに貢いで結局極貧生活。
でも、ちゃっかり貯金はしているのでいざとなれば無問題。
実は話のストックがこれで尽きてしまいました。
次回以降は投稿頻度が落ちてしまいますがご了承を。
まさか、これほど評価していただけるとは思いませんでした。
感想の返信は出来てませんが、ちゃんと読んでます。皆さんありがとう。