つきんちゅハッピーエンドを求めて 作:超かぐや姫!に脳を焼かれた人
もうね、忙しいのなんの。
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「で?どないするん?」
「お~よちよち………え?なにが?」
「その子やその子!」
ゲーミング電柱から赤ん坊を取り上げて少し。お兄ちゃんがダッシュで私の家に来てくれた。
「どうするもこうするも………子育て?」
「現役女子高生が何言ってるんや!!」
ドンッ!
お兄ちゃんが声を荒げると隣の部屋から壁ドンされた。
うわっ、ここに引っ越してきて初めての壁ドンだ。
まぁ、お兄ちゃんの言い分は判る。
しかし、今の私は考えることを放棄してしまっているのだ。
勉強とバイトによる肉体的疲労。月島さんが社長辞任ニュースで精神的ダメージ。
疲れた時に糖分が必要なように、これ等を回復させるためには癒しが必要なのだ。
で、その癒しが今私の腕の中にいる。かわいいでちゅねぇ~。
「言うておくけどな、子育て舐めるなよ」
「え?何を言って………もしかして、お兄ちゃんやらかした?」
「ちゃうわ!お前が生まれた時結構酷かったんやぞ!!俺もお前の夜泣きで起こされたことあって寝不足続いとったんや!!」
ドンドンッ!
また壁ドンされた。お兄ちゃんの所為で明日謝りに行かなきゃいけない。
しかし、この子図太いな。大声と壁ドンに反応せずスヤスヤと寝てる。
「………まぁええ。とりあえず、24時間営業のドラッグストアで必要なモンは買ってある。オムツに服、哺乳瓶に粉ミルク。で、明日にでも児童相談所とかに………」
「お兄ちゃん、冷静に考えて」
「なんや?」
「正直にこの子の状況を伝えて信じてもらえると思う?」
「ゲーミング電柱からこの子が生まれました。どうしたらいいのでしょう?」って相談に行っても「何言ってるんだコイツ」って思われかねない。
そもそも、現役JKが赤ん坊連れて児童相談所とか………ヤバ目の案件にしか見えない。
「そこでお兄様」
「キモッ」
失礼な。
「この子お兄ちゃんの方で預かって」
「無理」
「なんでや!!」
「ええええええん!!!」
うわわっ、ごめんね、ごめんね。怖かったね、大丈夫だよ~。全部この愚兄が悪いから~。
「俺、この三連休はイベントがあって家におらん」
「えええぇ~」
まさかのアテが外れた。
お兄ちゃんはプロゲーマーであり、ツクヨミライバーだ。
ハンドルネーム『帝アキラ』として『Black onyX』と呼ばれるアイドルさながらの人気を誇っている。
フォロワー数はざっと100万人。あれ?こないだ200万とか行ったって言ってたけ?
経済的にはそっちの方が余裕だと思ったけど、役立たずめ。
でも、赤ちゃんの日用品はありがとうございます!
「それやったら母さんに………」
「論外。あの人が常識外の事を受け入れると思う?」
「………受け入れへんやろうなぁ~」
「あとは………社長?」
「もっとアカン!」
身近な大人が全滅した。
お母さんは、私が言った通り化学が発展したこの時代で非化学的な事は全否定する。
「幽霊?んなもん心の弱い人が見る錯覚や」とか豪語してる人だ。そこに論理的説明は無かったけど。
でも、私は知ってる。テレビとかで心霊番組とかやった夜にはお父さんから離れないことを。
しかしプライドが邪魔してその事実を頑なに認めない。
で、お兄ちゃんの言う社長とは、もちろん月島さんのことである。
こちらも私が言った通り論外。
何故「赤ん坊を育てる事になりました。助けてください」と言えるだろうか。
無理ッ!!あの方にだけはそんな恥は見せられない!!
しかし、どうしよう。この子をこのまま放り出すことも出来ないし………。
やっぱり私が育てるしかないかぁ~………。不安だぁ~………。
「すまんな、連休開けたらまた来るから。その時もっかいどうするか考えよう」
「………うん」
「足りひんもんはこっから出してええから。それまでお願いできるか?」
「………頑張ってみる」
「無理やって思ったら連絡しろよ」
「………わかった。遅くにありがとう」
「ええよ。俺は彩葉の兄貴やし」
そう言いながら、無骨な大きい手で私の頭をワシャワシャと乱暴に動かす。
オウ、こら、髪の毛がボサボサになったやろが。
その後は私が抱えている赤ん坊を優しく撫でて、優しく微笑む。
くそ、我が兄ながらイケメンじゃないか。
現実じゃクール系で通ってるのにツクヨミだとオラオラ系王子様なんてやってるんだ。
「ほな、またな」
「ホントにありがとうね。お兄ちゃん」
別れの挨拶をしてお兄ちゃんが部屋から出て行く。
さて、私も頑張るか。
◆◇◆◇◆
「で、私が生まれたワケ!」
おいおいおい、待て待て待て。
子育てに費やした三連休最後の夜。赤ん坊が少女へ進化した。
ここはアレじゃないのですか?ダイジェスト的な物が流れて私の子育て奮闘記をお送りするところじゃないのですか?
しかも流暢に日本語喋って何が「で、私が生まれたワケ!」だ。
そのドヤ顔がネットミームになっている赤ん坊そのものでムカつく。
「いや~。今時は何もかもスピードが早いんですわ」
「意味が、分からん!!」
本当に意味が分からん!
どうして泣いたり、笑ったりして天真爛漫な赤ん坊が10歳ぐらいのちょっと生意気そうな美少女へ進化するんですか。
いや、それよりもだ。
「お引き取りください!」
「やだー!!」
今まで彼女の為に買い与えていた備品を段ボールにまとめて差し出すが拒否された。
だが、私も負けていられない。無理にでもここからご退出願おうと、彼女の腕を掴んで引っ張る。
「いーやーだー!」
こやつ、抵抗しよる。
「………………」
え?急にどうして抵抗を止めるの?
「お腹すいたぁ~……」
「ええぇ~……」
ぐぅーっと可愛らしいお腹の音が聞こえてくる。ちなみに私のお腹もぐぅーと鳴る。
ぐぅー。
二人してお腹を鳴らすと言うとても人には見せられない状況。
少女は瞳を潤ませて媚びた様に小首を傾げてみせて、こちらを見て来る。
「たすけて~~?」
あ、あざとい。なんてあざといんだ。
しかし、その表情が赤ん坊の頃(数時間前)の表情とダブり、可愛く思えてしまう。
こ、今回だけだからね!
「うまっ、うまっ、うまっ!」
結局、コンビニにダッシュしてオムライスとタコライスを買ってきてしまった。
頼れるお兄様。ごちそうになります。
レンジで温めたオムライスを彼女に差し出すと汚く食される。
あーもうっ、口の周りがケチャップだらけ。汚いなぁ~。
「で?あなた何者?」
「ふえ?」
口の周りを綺麗にしてあげながらそんなことを聞いてみる。
少女は少し考えながら、窓の外にある月を指差した。
「私ね、あの月から来たの」
「月?」
「うーん………毎日毎日超つまんなくて、ずっと気になってた場所に行きたいなぁ~って思って来ちゃった☆」
「来ちゃった☆」じゃないのよ。
「あ、侵略とかしないから安心して。私は、おもしろおかしくハッピーに過ごしたいだけだから!」
「おもしろおかしくハッピー?」
彼女の言葉に思わず反応してしまう。
「おもしろおかしくハッピー」はヤチヨがよく言う言葉だ。
それがまさか宇宙人の口から聞かされるとは思わなかった。
ヤチヨはワールドワイドからユニバースにまで名声を轟かせている?
いやいや、まさかですよ………。
「まぁいいや。ちなみになんだけど、アンタ『竹取物語』って知ってる?」
「たけ、とり?」
「月からやって来た姫が竹から出て来て、翁が拾って育てるの。で、姫は赤ん坊から絶世の美女に大変身。すると、周囲の男性から結婚を迫られたりとか……なんだかんだで月に帰ってしまうってお話」
「………ひめ」
「え?どうしたの?」
ポツリと呟いた姫と言う単語に何かを感じたのか、黙り込んでしまった。
「まぁ、いいや!そっちもちょうだい!」
「あっ!私のタコライス!」
「うまっ」
深く考えるのが嫌なのか、食欲で紛らわしやがった。
「で?そのお姫様は帰ってどうなったの?」
「これでおしまいよ。めでたし、めでたしでした」
「えー!なにそれ!超バッドエンドじゃん!」
これはバッドエンドなのだろうか?
まぁ、捉えようによってはバッドエンドなのかもしれない。
「決めた!自分でハッピーエンドにする!」
「はい?」
「それで、彩葉も一緒にハッピーエンドに連れてく!」
そんなにかぐや姫の物語が気に入らなかったのかな?
「はいはい、楽しみにしてますよぉ」
「むっ!あんまり乗り気じゃないでしょ」
「まぁ、そうかもね。アンタなんかに頼らなくても今私は―――」
ーーーー割とおもしろおかしくハッピーな日々を送ってるんだから。
翌朝。
「どう言うことや!!」
「だれぇ?」
ああぁ、説明がメンドイ。
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