つきんちゅハッピーエンドを求めて 作:超かぐや姫!に脳を焼かれた人
超かぐや姫、ありがとう。
感想・評価・誤字報告等ありがとうございます。
お久しぶりです。ツキです。
「ツーキー! とうとうだヨ! 遂にかぐやがツクヨミに来るよー!」
ここ数年、ツクヨミに潜ってはヤチヨのプライベートルームにいることが多くなった。
ヤチヨのデビューライブからツクヨミの世界観に倣ってキャラメイクをしたのは良いが、それでツクヨミ内を闊歩すると人の目が絶えない状況だ。
さならがら、芸能人にでも会ったような扱いを受ける。
握手や写真などは当たり前。ライバーとかは是非コラボを!と言われる始末。
サブキャラを作って遊ぼうにもどうしてかヤチヨがそれを許さず、ツクヨミ内では銀髪犬耳が固定されている。
なので開き直ってその姿でツクヨミ内を満喫する。
オラ、握手も写真もドンと来い!コラボは会社を通してくれよな!辞任後は俺の気分次第だ!!
さて、そんな状況で今ヤチヨが言った通り、遂に月にいる姫様が地球にやって来てツクヨミへやって来るらしい。
どうしてそんなことを知っているのかと聞けば、新規ユーザー登録でかぐやと言う名前があったとか。
うーん……職権乱用。まぁ、ツクヨミ管理を一任しているので許される範囲なのか?
「……やっと、やっとかぐやと彩葉の物語がはじまる」
ヤチヨは懐かしみながらそう呟く。
8000年を生き抜いた原動となる大切な思い出がようやく始まるのだと。
「チュートリアルで会いに行くのか?」
「そのつもり。やっぱり、私が迎えたいしね」
チュートリアルとは、初めてツクヨミにログインする人達に対しての説明だ。
それはヤチヨが作り出した分身が行っているのだが、任意でヤチヨ本人が行う事も出来る。
「ツキも行く?」
「どーっすかなぁ~……」
「ふふん、迷っていても無理矢理連れて行っちゃうんだけどね」
「おい」
「だってお仕事辞めて暇でしょ?たまには働いてほしいなぁ~」
「むぅ……」
ムーンライトでの社長職を辞任して、ニートへジョブチェンジした事への嫌味を言われた。
いやいや、ヤチヨと出会って30年。全力疾走して、ここまで整えたのだ。
現実では50歳を超え、後任も育成して来た。やることも少なくなり、自分は表舞台からいなくなっても何も問題ないのだ。
「でも、実際は?」
こんなおもしろい世界作って遊べないとはなんたる拷問!!
むしろ、ここで遊び倒すために仕事辞めたまであるからな!!
「はぁ~………」
って、しまった。油断して俺の思考がヤチヨに読まれた。
月人時代の名残で俺の思考は上位の存在に思考が読まれるようになっている。
今は任意でオンオフが出来るようになったが、油断すると読まれてしまう。
「それよりそろそろ来るから準備して」
グイッと腕を引かれて無理矢理立たされる。
連れて行かされることに観念して、受け入れるとヤチヨはにこやかに笑う。
そして、両手を広げてパンッと手を叩くと一瞬で周囲の風景が変わる。
真っ赤な夕焼けに染まる空。その色の合わさった真っ赤な鳥居。
地平の向こうまで広がる浅い水面とそこに浮かぶ数多の灯籠。
「ーーーー太陽が沈んで、夜がやってきます」
ヤチヨがそう言うと、日は沈み、夜空へと変わた。
仮想空間ツクヨミにログインするとみんなが見る演出だ。
ただ初ログインの人はここからヤチヨが親切丁寧な説明が始まり、キャラメイクもここで行う事になっている。
「うわぁ~」
満天の星空に見惚れて目を輝かす少女。まごうなき、月にいた姫様だ。
そんな姫様はヤチヨの存在に気づき、ヤチヨも走って姫様の元に向かう。
そして、ヤチヨのチュートリアルを受け、楽しそうにキャラメイクをし始める。
姫様と別れて30年近く。
月と地球では流れる時間が違うが、俺はそれだけ長い時間離れていた。
時折、こちらの様子を密かに送ってはいたが、こうして対面するとやはり懐かしい気持ちになる。
そんな姫様の姿を見て、自然と頬が緩んでしまう。
同時にヤチヨの気持ちが判った気がする。
再会と言うのは、なんとも言えない気分の良い物なのだと。
ただ、気恥ずかしさもあって、どう挨拶するか悩む。
お久しぶりです?
いらっしゃい?
元気にしてましたか?
その前にこの姿の説明が必要か?
あっちからしたら俺は灯籠頭の姿しか知らない訳だし。
まぁ、そこまでの説明を含めて声を掛けるか。
「どりゃーーーーー!!!」
が、しかし。視線を前に向けると何故か靴底が見えた。
その靴底が俺の視界を覆い隠すと同時に、顔面に強い衝撃が走る。
そして、俺はその衝撃を受けて勢い良く後方へ吹き飛ばされたのであった。
「久しぶりだね、コンニャロー!!」
ヤチヨ。俺たちの再会は君のような劇的な感動は存在しないようだ。
◆◇◆◇◆
ヤチヨSide
かぐやが遂にツクヨミにやって来た。
8000年の時を得て、私が体験した素敵な思い出が始まる。
「あっ、ヤチヨ」
私からしたら懐かしい姿で現れたかぐや。
過去の自分と対面する不思議な状況であるが、これほど嬉しいことは無い。
「仮想空間ツクヨミへようこそ!管理人の月見ヤチヨでーす!」
私はかぐやの元に駆け寄り、チュートリアルお決まりの挨拶をする。
それから初ログイン用の説明をいくつかして、キャラメイクを教える。
かぐやは楽しそうに「アレとコレと」と言いながら、記憶に残っていた姿へと変身した。
金髪ウサミミのかぐや姫。
その姿を見て、安心する。
色々と変わってしまった世界線だけど、かぐやはその姿を選ぶんだね。
「ちなみにあっちはツキ。このツクヨミを作るのを手伝ってくれた人だよ!」
ツキの自己紹介を簡単に済ませる。二人は月からの顔見知りだ。
灯籠頭の頃と違って、姿形が変わってしまっても問題無いはず。
さぁさぁ!感動の再会と行こうじゃないか!
かぐやもツキの姿を目を細めながら見て、驚いた表情をする。
そして、私の元を離れてツキへと駆け出した。
「どりゃーーーーー!!!」
勢い良く、綺麗な助走から跳躍。
かぐやの華麗なるドロップキックがツキの顔面に突き刺さった。
ええええええぇぇぇぇぇぇぇ!?!?
な、なんで!?どうして!?
ってか、キック放つ前に体捻って回転付け加えてる!?
ドロップキックがドリルみたいに突き刺さった!!
痛い、アレは余計に痛い!!
「久しぶりだね、コンニャロー!!」
「……………よくわかりましたね、姫様」
突然の事にヤッチョ置いてきぼりです。
私ってあんなアグレッシブだったけ?
「当然じゃん!月にいた時にリョウサン型のキミ達を見分ける為に目を改造したんだから」
「そう言えばそうでした。月人のステータスが可視化出来るようにしたんでしたっけ?」
「そっ!」
え?なにそれ知らない。
でも、そっか。ツキは元々リョウサン型だったし他と見分けるためには必要な事かも。
「ってか、痛覚切って無かったら死んでましたよ」
「キミの自業自得でしょ?私が月でお仕事している時にあんだけ楽しそうな報告して煽るんだから」
あ、それはムカつくかも。多分だけど、私も同じことをする。
「…………名前、ツキって言うの?」
「こっちではそう名乗ってます」
「私はかぐやって言うの!」
「いいお名前ですね。自分で考えたのですか?」
「ううん。彩葉が付けてくれた!いいでしょ!」
先程の険悪な雰囲気から一変して、普通の談笑をする二人。
かぐやは鬱憤を晴らしてスッキリしたのかツキと普通に接し、ツキはまるでかぐやの従者の様に丁寧に接していた。
主従関係の様に見える関係性。でも、お互いに再会を喜んでいるように見える。
「ねぇ!ねぇ!ツキもツクヨミ案内してよ!あと、彩葉にも紹介したい!」
「申し訳ありませんがこの後予定があるんです。だから、案内は出来ません」
「えー!やだやだ!また一緒に遊ぼうよー!」
「別で時間作りますから。ほら、お友達が待ってるんでしょ?」
「…………絶対だよ?」
「はい、絶対に。ただし条件があります」
「えーまぁた条件………」
そう言えば、私も初めてツクヨミにログインする前に彩葉が色々条件を言ってきた。
残念な事にどんな条件を言われたか忘れちゃったけど………。
「ここで俺に会ったことは秘密にしてください」
「えーなんで!?」
「俺、ここじゃ有名人なんで」
「むぅー……わかった。でも、あっちはどうするの?」
「あっち?あぁ、ヤチヨですか?」
二人で盛り上がってると何故かこちらを見て来た。
「見た感じ私達と同じ月人でしょ?」
ギクッ!
「うーん……データにロックが掛かってよく見えないけど」
……よ、よかった。どうやらヤッチョがかぐやってところまではバレていないようです。
「彼女が俺の調査対象ですよ」
「あー私に送って来た手紙にあった?」
「ええ、聞けば面白そうなことをしていたのでお手伝いをしてました」
そんな事を言いながらツキは私に向かってウィンクをしてきた。
たぶん、かぐやの目の事を知っていてあらかじめ正体がバレないようにしてくれていたようだ。
怖いことするなぁ~………。
「ねぇねぇ!アナタも一緒に遊ぼ!」
眩しい笑顔で、私の手を握りながらそう言うかぐや。
「…………そうだね、これからいっぱい遊ぼ」
「うん!じゃ、彩葉が待ってるから私は行くね!ツキ、約束忘れないでね!」
私には笑顔で、ツキにはまるで叱るように別れを言ってかぐやはツクヨミへ向かった。
大丈夫、これからいっぱい遊べるよ。
あなたにとってかけがえのない、素敵な日々がこれから待ってるよ。
それはヤッチョが保証しちゃう。
「さーってと、私達も準備しよっか!」
さぁさぁ、私達でツクヨミを盛り上げようじゃないか。
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