疑問。ループしてるのに胸が成長するのはなぜか 作:ぜズラ
何かがおかしい。
妙だな……と
俺は人権が怪しい系の高校生、
『ちょうどいいモルモットが手に入ったぜ! あいつらに連絡しろ! モルモット一匹追加してやるってなぁ! ガハハハハ!』
俺は縛り上げられ、目が覚めたら・・・
『あなたしか生き残らなかったのね。あいつら、私がいない間に人体実験なんて、勝手なことを……。もういいわ。どうせ放っておいてもあなたは死ぬ。絶対に助からない。だから、このさい、楽に
マッドサイエンティストみたいな女に、毒薬っぽい謎の何かを注射されてしまった。
俺は速攻で意識を失い、目が覚めたら・・・
『大丈夫ですか! 君! ここはゴミ捨て場ですよ! どうして裸で!?』
パーマが素敵で屈強な体のお兄さんに、病院に運んで貰って助かった。
少し落ち着いた後で、俺は『妙だな……』といぶかしんだ。南米にいたはずなのに、どうして日本の病院に。目覚めた場所はゴミ捨て場だった。しかも裸だおかしいだろう。
俺は露出狂じゃないよ?
というかマッドサイエンティストはどこに消えた。
そうだ俺は誘拐されてモルモットにされて、なんかよくわからんうちにマッドサイエンティストに殺されかけた。壊れた笑い方をする女の人だった。黒服のやばそうな人からシェリーとか呼ばれてたな。と考えてたら、ナースのお姉さんに『さっさと寝ないとダメよん』って叱られた。凄く美人なお姉さんだったから大人しく言うことを聞いて、目が覚めたら・・・
『はじめまして。私は
助けてくれたパーマが素敵なお兄さんに、俺はお前の兄ちゃんだって言われた。
ここでも俺はいぶかしんだ。
妙だな……と。
だってそうだろう。苗字違うし、そもそも俺は日本で過ごした記憶がない。気付いたら南米にいて南米で育った。日本語できるのは日本人が近くにいたからで、その人は親ではない。医師免許なしで人の腹をかっさばいてるヤバい医者だった。
『いや、兄って……ええっ!?』
『では、退院の日にまた来ます。私の職場は京都なので、一度戻らなくてはなりませんので。本日は所用でこちらに来ていたのですが……まあそれはいいでしょう。では、失礼します』
兄を名乗る謎のイケメンは、動揺する俺にそう言った。なんの説明もなしに病室を出ていき、宣言通り退院の日に迎えに来た。
外に出たらすごく高そうな車が待ち構えており、立っていたのはサングラスをかけた黒服達。マフィアかと思った俺は逃げ出そうとするも、強引に車の中に押し込まれてしまった。その後、マフィアでもヤクザでもなく執事だという説明を受けてひと安心。
そう、イケメンお兄さんは執事だったのだ。
必要とあらば激しい戦闘も可能なプロフェッショナルな執事だ。隠密工作とかもできるらしく、素直にカッコイイと思った。
『そういうわけですので、働かざる者食うべからず。君には、私と一緒に働いてもらいます』
何が『そういうわけ』なのかはわからなかったが、家はないし親もいない俺にとっては好都合。もちろん少し考える時間はあったものの、これは神様からの贈り物だと前向きに捉えて、首を縦に振ることにした。
東京から京都に移動することになったが、そこはなんの問題もない。住む場所も家もないからだ。
勤め先のお嬢様は素敵な人だった。お金を沢山くれたこともあって、俺はすぐに心を開いた。仕事はそこまで大変じゃないし、なんて幸運なんだろうと神様に感謝していたのだが
『あれ? また2017年……? 去年も2017年……そういや一昨年も…………やばいこれループしてるじゃんウワアアアア!?』
平穏な時間は突如として崩れ去った。
秋の匂いが濃くなってきたある日の夕方。公園でブランコでブランブランしながら、カラスの軍団をぼんやり眺めていた俺は、気付いてしまった。
そういえばここ最近、ずっと2017年だと。
確信してしまった瞬間、頭の奥で何かが爆ぜたような衝撃が広がって、死んだと思った。カラスの群れが二重に見えて、赤い空が一瞬で闇に覆われ、黒い物体が歩いてきているのがわかった。これは脳卒中に違いないと確信したのだが、異変はすぐに収まって夕焼け空も戻ってきた。
さっきのはなんだったのか。
俺は『妙だな……』といぶかしんだが、いくら考えたとて超常現象的なことはわからない。死神みたいな物体が近くにいたから、高確率で超常現象だと思ったが、見えてしまった原因は不明。
『なんだったんだ……ウッ、なんか気持ち悪い』
吐きそうになった俺は公園の砂場にダイブをかまし、近くにいたママさん達に不審者として通報されそうになった。
体調が悪いと泣いて土下座して事なきを得たが、警察呼ばれていたら大変だった。懲戒解雇とかはないと思うが、お嬢様からの信頼が失われる。お小遣いが減る可能性があるので、それは嫌だった。
「というわけなんですお嬢様。ずっと2017年とかやばすぎるでしょう。これ、クトゥルフ的な力が働いてますって。怖いですって」
だがしかし、現在。
屋敷に帰ってきた俺は、お嬢様に弁解している。
お嬢様の部屋で土下座しながら言い訳している。
公園での奇行については普通にバレていた。ランニングしていた執事の一人が見ていたそうで、俺が帰ってくる少し前にしっかり報告したのだそうな。
なんてことしやがる。酷いや。酷いよって訴えかけたが、チクった執事はニヤニヤしていた。スズさんっていう男にしては綺麗すぎる顔の執事だ。年齢聞いたら怒られるからもう聞かない。一回聞いて殴られた。
「外の神に見られてるかも! 今! こうしてる間にも外の神がっ」
「んー、わかったわかった。ウチはあんたのこと信じてますから……」
お嬢様は自分の手を差し出すと、優しく俺の手を包み込んだ。なんて優しい人なんだろうか。お金もくれるし最高のご主人様だと感激した。
「信じてる……ええ信じてますとも……
「!? これっぽっちも信じてないじゃないですか!」
お嬢様──
全く信用してくれてないじゃん!
俺は顔から床に崩れ落ちた。一瞬でも期待した俺が馬鹿だったと。
「……ぐふっ」
「ふぅ……うふふ。そない落ち込まんといて。今のは冗談どすえ。ドッキリってやつや」
お嬢様は勉強机に向かうと、引き出しから何かを取り出した。猫のしっぽみたいな物体を右手に持って、俺の前に戻ってくる。
あれは、猫じゃらしだ……!
なんでそんなものを保管しているのか。紅葉お嬢様には謎が多い。
「ほれほれ〜」
「……」
俺は小一時間、猫じゃらしで頭をスリスリされた。
なんやこれ楽しいとか言われて、もうちょいもうちょいとやってる間に、お
俺は『妙だな……』といぶかしんだ。
ずっと2017年なのに、お嬢様のおっぱいは成長していることに気づいたのだ。どう考えてもおかしい。だとしたら気のせいか。揉んで確かめるわけにもいかないし、悩ましいところであった。
「ふふ〜。まんきつさせてもらいました。んで、なんやっけクトゥルフ? そうやな〜。そういえば去年も高校二年生やってたわ……………………」
「お嬢様? もみじさん?」
お嬢様は猫じゃらしを床に落として、微笑を浮かべたまま固まった。この反応。まさか俺と同じ状態に陥ってしまったのか。だとしたらクトゥルフ的な何かが来る。そんなことになったら、お嬢様は悲鳴を上げてしまうかもしれない。それはまずい。外にいる人達に聞こえてしまったが最後、俺が襲ったと思われるに決まってる。
「……
だが、お嬢様の反応は俺が思ってたのとは違っていた。硬直から数秒後、目をキラキラさせてパッと両手を広げて歓喜のポーズ。
そう、歓喜だ。このお嬢様、怖がるどころか喜んでいやがる。どんな神経してるんだろう。
「待って待って待って待って。ダメなんですってずっと2017年のままじゃ! わかってますかこれ、どう考えてもよからぬ超常現象ですよ!」
「? なんで?」
「なんでって……えぇ? 俺がおかしいの?」
お嬢様はガチでキョトンとしていた。
この人は変な人なんじゃないかと薄々察してはいたが、変人であり狂人でもあったのかもしれない。
普通、動揺したり怖がったりするだろ。
なんで呑気に遊び呆けようとしてるんだろ、このお嬢様。
「そうと決まればスカイツリーや!」
「は?」
「まずは遊び倒して、どうなるか様子を見てみる。それでいきましょ〜。はい、この話はおわりどす〜」
どす〜じゃないんすよ。
スカイツリーって東京行くつもり? 明日も学校あるのに?
「ほなウチはこれで。一人で考えたいこともあるし、そろそろ秋庭は部屋に戻ってな〜。そうそう、旅支度はしておくように。よろしゅう頼んます〜」
行くつもりのようだ。
俺は背中をグイグイと押され、お嬢様の部屋から追い出された。その際、またしても『妙だな……』といぶかしんだ。やはりおっぱいが成長している。去年も今年も2017年なのに、これもまた超常現象のひとつなのかもしれなかった。
■
・登場人物1
西の名家、大岡の屋敷の住み込み執事。
175cmが物足りなく感じている十六歳。
京都の高校に通っている一年生だが、人間の臓器を切って外すお手伝いをしたことがある。殺すためじゃないのでセーフだと本人は言い張っている。
同僚の伊織無我は実の兄らしいが、全く似ていない。伊織のように目鼻立ちがキリッとしているタイプではなく、大人っぽくもない。蓮也は童顔である。
カラスを眺めてたら異変に気づいた。
実は予兆があって、執事になってからずっと偏頭痛に悩まされていた。物が二重に見えることもあった。マッドサイエンティストから注射されたお薬が原因かとも思っているが、病院の検査では異常なし。
なお、マッドサイエンティストのことは警察には話していない。伊織に助けてもらった日、倒れていたゴミ捨て場の近くには、蓮也が身につけていた病院着が落ちていた。そのポケットにメモが入っていて、その内容は以下のとおり。
『奇跡が起こって──このメモを読むことができたとしたら、全て忘れること。警察に駆け込んだりしようものなら、一族郎党みなごろし。まわりのひともミナゴロシ』
・登場人物2
西の名家、大岡の令嬢。
京都泉心高校二年の十七歳。
緩くウェーブのかかった明るい色のショートヘアと、派手めのネイルが特徴。新しい執事で遊ぶのにハマっていたら、いつの間にか2017年が何回もループしていた。机の引き出しにしまってある猫じゃらしは作り物である。通販で買ったやつ。
ループの件については、実は半年くらい前には気付いていた。いつまで経っても蓮也が高校一年生をやっているので、『妙どすなぁ……』といぶかしんだのがきっかけ。得意技はカルタ。頭を使うことは全般的に得意。最近
・登場人物3
謎のマッドサイエンティスト『シェリー』
怪しい組織の一員だった十八歳。研究者の女。
慕っていた姉が殺されたことを知り、組織から逃亡を試みるも失敗。連れ戻された後、自分の研究が杜撰な人体に実験に使われたことを知って激怒した。
そして、実験を続けるように命令されて従うことにしたが、本当は自死するつもりだった。
モルモットにされた人間は一人を除いて全滅。
自暴自棄に陥っていた彼女は、生き残ったモルモットに実験とは関係のない薬──人間を仮死状態にした後に復活させるが、どんな副作用が出るかは未知数なヤバいやつ──を打ち込んで廃棄した。
その後、新たなモルモットが運ばれて来る前に、自分は毒薬を飲んで死のうとした。
しかし、数分後に目を開けたら・・・体が縮んでいた! ちっちゃくなれたのでダクトの中に潜り込んで逃げた。二度目の逃亡は無事に成功して、今はどこかに潜伏中。いつの間にか2017年になってることに最近気付いて、すごく怖い思いをしている。