何卒ご容赦ください。
皆様のイメージと著しく乖離することがあります。
ごめんなさい。
深夜。酒に酔い潰れた夜一が、猫の姿に戻ってカズキの膝の上に乗ってきた。
「……カズキよ」
「……何、夜一さん」
「おぬしは、飽きぬな。わしのような得体の知れぬ者を、よくもまあ追い出さずに置いておく」
その声には、いつもの悪戯っぽさはなく、どこか遠い過去を懐かしむような響きがあった。
ソウル・ソサエティでの激闘、亡命、そして友との別れ。彼女が背負っているものの重さを、カズキは少しだけ察する。
「……別に。猫一匹(と、わがままな美女一人)増えたところで、食費が少し嵩むだけだし」
「ふん……。可愛げのない。だが、その気楽さが心地良いのかもしれんのう」
夜一はカズキの手のひらに頭を擦り付けた。
カズキはその柔らかな黒い毛を、優しく撫でる。
「夜一さん」
「なんじゃ」
「……明日、久しぶりにちゃんとした料理作るよ。何が食べたい?」
夜一は人の姿に戻り、カズキの目を見つめた。
今度はからかうためではなく、一人の女性として。
「そうじゃな……。おぬしの作る、あの少し塩辛い卵焼きが食べたいのう」
月明かりの下、夜一は優しく微笑んだ。
それは、死神でも瞬神でもない、ただの「夜一」としての顔だった。
「……了解。期待してて」
「ああ。楽しみにしておるぞ。……ところでカズキ。今、わしの胸を見ておったろう?」
「台無しだよ!!」
カズキの叫びは、静かな夜の空に溶けていった。
瞬神との奇妙な共同生活は、まだまだ終わりそうにない。
翌朝、カズキは凄まじい重圧で目が覚めた。
金縛りかと思ったが、違う。胸の上に、しなやかで重量感のある「何か」が乗っている。
「……ん、カズキ。ようやく起きたか」
目を開けると、そこには至近距離でカズキの顔を覗き込む、全裸の夜一がいた。
正確には、彼女の長い黒髪がカーテンのように二人を包み込み、褐色肌の柔らかな質感がダイレクトに伝わってきている。
「お、おはようございます……って、だから服を! 朝から刺激が強すぎるって言ってるでしょうが!」
「何を。おぬし、寝言で『夜一さん、もう食べられません……』とか言っておったぞ。何を食べるつもりだったんじゃ?」
夜一はカズキの胸を指先でツンツンと突きながら、いたずらっぽく微笑む。
その金色の瞳が、獲物を狙う猫のように妖しく光った。
ドタバタと朝食(約束の卵焼き)を済ませた二人のもとへ、招かれざる客がやってきた。
ガラガラと窓を開けて入ってきたのは、緑のストライプの帽子を被った怪しい男。
「おやおや、お熱いですねぇ。夜一さんも現世の暮らしに馴染みすぎちゃって」
「喜助か。相変わらず、玄関から入るという礼儀を知らぬ男よ」
浦原はニヤニヤしながら、手にした包みをテーブルに置いた。
「いやぁ、お二人に新商品のモニターをお願いしたくて。これ、名付けて『霊圧増幅・超親密シャツ』。二人の距離が近づけば近づくほど、カズキさんの霊力トレーニングが加速するという優れものです」
「……絶対それ、エロい罠ですよね?」
カズキのツッコミを無視して、夜一が興味津々に包みを開ける。
中から出てきたのは、一見普通のTシャツだが、妙に透け感のある素材だった。
「ほう、面白そうではないか。カズキ、修行の一環じゃ。着てみよ」
「嫌ですよ! なんで俺がそんな実験台に……わ、わわっ!」
夜一が瞬歩で背後に回り、強制的にカズキをシャツに押し込む。
その瞬間、シャツが淡く発光し、近くにいた夜一の体を引き寄せた。
「おっと……。これは、強力な磁石のようなものか?」
「あ、あわわ……夜一さん、近いです! 胸が、顔に……!」
シャツの機能により、二人はまるでお互いから離れられないように密着してしまう。
夜一のしなやかな肢体がカズキに押し付けられ、彼女の体温が服越しに伝わってくる。
「……喜助。これ、離れるにはどうすればいい?」
「あ、言い忘れてました。二人の心拍数が一定以上に上がって、かつ『情熱的な接触』がないとロックは外れません」
「「……は?」」
浦原は「では、ごゆっくり〜」と煙のように消えていった。
「喜助め……後で瞬閧(しゅんこう)で粉砕してくれるわ」
夜一が忌々しげに吐き捨てるが、密着状態は解けない。
カズキの部屋は、急激に熱を帯び始めた。
「夜一さん、これ、どうにか……」
「……仕方あるまい。カズキ、おぬしも男なら覚悟を決めよ」
夜一はカズキの首筋に腕を回し、耳元で吐息を漏らす。
彼女の目は、いつもの「からかい」を通り越して、どこか本気の熱を帯びていた。
「わしをただの猫と思っておった報いじゃ。たっぷり、可愛がってやる……」
「夜一、さん……」
カズキの理性は、瞬神の巧みな指先と圧倒的な美貌の前に、あっさりと霧散した。
夕闇が迫る部屋の中で、二人の影は重なり、離れることを忘れたかのように揺れ動く。
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