何卒ご容赦ください。
皆様のイメージと著しく乖離することがあります。
ごめんなさい。
夕暮れ時、ボロボロになって帰ってきた夜一は、案の定、浦原の店から「最高級の銘酒」と「何に使うか分からない怪しい乾物」を戦利品としてぶら下げていた。
「ただいま。……なんじゃカズキ、その顔は。わしが負けるとでも思ったか?」
「いや、浦原さんの生存確認をしたかっただけだよ……」
夜一は「ふん」と鼻を鳴らすと、人間の姿のまま、カズキの狭いキッチンに陣取った。
今日はなぜか、いつものオレンジ色の戦闘服ではなく、カズキが貸した大きめの白シャツ一枚という、いわゆる「彼シャツ」状態だ。
かわいい。
季節外れの冷え込みに、カズキは押し入れから古びた炬燵(こたつ)を引っ張り出した。
「ほう、これが現世の『人をダメにする霊具』か」
夜一は興味津々で炬燵に潜り込む。しかし、ただ丸くなるような殊勝な猫ではない。
「カズキ、入れ。中がまだ冷える」
「……狭いですよ、これ一人用だし」
「四の五の言うな。主であるわしの命令が聞けぬか?」
無理やり炬燵に引きずり込まれる。
暗い天板の下で、夜一の熱を帯びた脚がカズキの腿に絡みついてくる。
「……ッ、夜一さん、足、当たってます」
「わざとじゃ。おぬし、さっきからわしのシャツの隙間ばかり見ておるからな。……そんなに見たいなら、もっと近くで拝ませてやろう」
夜一は炬燵の中で、カズキの手を引き寄せた。
指先が触れ、絡み合う。
彼女の体温は、冷えた空気の中で驚くほど高く、そして心地よい。
「おぬしは……わしが死神だと分かっておきながら、一向に敬わぬな。恐怖も、媚びもない。それが、少しだけ不思議で、たまらなく愛おしい」
夜一の金色の瞳が、炬燵の縁から漏れる光を反射して怪しく、美しく揺れる。
「……俺にとっては、あなたはただの『夜一さん』ですから。時々猫で、時々美人で、いつも俺を振り回す……厄介な居候です」
カズキが少しだけ勇気を出して、絡めていた指に力を込める。
すると、夜一は一瞬だけ驚いたように目を見開いたが、すぐに蕩けるような笑みを浮かべた。
「厄介…か。……ならば、一生、厄介払いできぬようにしてやろう」
夜一はカズキのシャツの襟を掴み、そのまま炬燵の中に引きずり込んだ。
狭い空間、重なる吐息。
外は冷たい風が吹いているが、炬燵の中はより熱く、二人だけの「霊圧」が混ざり合っていく。
「おい、カズキ。……返事は『はい、喜んで』じゃ」
「……はいはい。……喜んで、夜一さん」
翌朝、カズキは腰の痛みと共に、顔中に広がる「猫の毛」の感触で目が覚めた。
夜一は再び黒猫の姿に戻り、カズキの喉仏の上で悠々と丸まって寝ていた。
「……重いよ、夜一さん」
「……ふにゃ? うるさいぞ小僧、あと百年は寝かせておけ……」
口の悪い黒猫。けれど、その尻尾は機嫌良さそうにカズキの腕に巻き付いている。
カズキは、窓から差し込む朝日を浴びながら、今日作るべき「最高のおつまみ」のレシピを考え始めた。
静かなアパート。
ここには、世界の危機も、護廷十三隊の義務もない。
ただ、一人の青年と、気まぐれで、強引で、この上なく美しい一匹の猫(?)との、騒がしくも温かな時間が、これからも続いていくのだ。
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