四楓院夜一と俺の話   作:四角いトマト

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AI利用しての執筆になります。
何卒ご容赦ください。
皆様のイメージと著しく乖離することがあります。
ごめんなさい。


第5話 逃げ足

「……カズキ、いつまで寝ておる。今日は『例の日』であろうが」

 

カズキの耳元で、人間の姿に戻った夜一が囁く。

 

その吐息には、朝からほんのりと上等な酒の香りが混じっていた。

 

先日、隠密機動もびっくりの手際でカズキが隠した「とっておきの日本酒」が、すでに見つかってしまったらしい。

 

「例の日って……まだ朝の6時ですよ、夜一さん。それに、その格好……」

 

「なんじゃ、わしの正装が不満か?」

 

夜一は、昨夜の白シャツを脱ぎ捨て、今度はカズキの「大学のジャージ(上下)」を身に纏っていた。

 

袖は余り、裾は捲り上げられているが、褐色肌の肢体から放たれる圧倒的なオーラは、安物のポリエステル素材ごときでは隠しきれない。

 

「不満っていうか……それ、俺のお気に入りなんですけど。……で、どこ行くんですか?」

 

「決まっておる。空座町の裏山じゃ。あそこには、現世には珍しく濃い霊気が溜まる場所がある。そこで、おぬしの『持久力』を試してやろうと思ってな」

 

夜一はニヤリと不敵に笑うと、カズキの腕を掴んだ。

 

「……持久力って、修行ですか? 勘弁してくださいよ、昨日の今日で……」

 

「カズキ。お主はなまじ中途半端に高い霊圧を持っておるせいで虚にいつ襲われてもおかしくないのじゃ」

 

「虚って…夜一さんがよく言う化け物のことですか…」

 

これまでの人生で一度も見たことのない化け物の話に俺は実感が湧かないままだった。

 

「いくら部屋の中に喜助が造った結界があっても、部屋の外までは効果がないのでな。とりあえず虚に遭遇しても生き延びられるくらいの力はつけておいて損あるまい」

 

化け物から生き延びる修行だなんて、夜一さんから話を聞いていた死神と呼ばれる存在のやることなのでは?と一般人の俺は思った。

 

「ギャハハ! 案ずるな、夜の持久力は昨日十分に確かめた。今日は『逃げ足』の方じゃ!」

 

 

 

空座町にある裏山の深い森の中。

 

カズキは、人生で最も理不尽な状況に置かれていた。

 

「制限時間は一刻(二時間)。この森の中で、一度でもわしの体に触れることができれば、おぬしの勝ちじゃ。勝てば、今夜は何でも一つ、言うことを聞いてやろう」

 

「……何でも?」

 

「ああ。わしに服を着ろと言うもよし、逆に『脱げ』と言うもよし……。どうした、急に霊圧が安定したではないか」

 

夜一が指先で唇をなぞり、挑発的なポーズをとる。カズキの脳裏には、昨夜の熱情がフラッシュバックした。

 

「……やってやりますよ!」

 

カズキが地面を蹴る。しかし、目の前にいたはずの夜一は、瞬きする間に消えていた。

 

「甘いわ! 視線で追うな、気配で捉えよと言ったはずじゃぞ!」

木々の間を、黒い稲妻が走る。

 

カズキは必死に食らいついた。

 

彼女がわざと残す霊圧の残滓を辿り、枝を跳ね、泥にまみれながら、一心不乱に「その背中」を追いかける。

 

それは、死神としての訓練というよりは、獲物を追う獣の本能に近いものだった。

 

 

二時間後。

 

森の開けた場所で、カズキは肩で息をしながら地面に倒れ込んでいた。結局、夜一の指先一つかすめることはできなかった。

 

「……はぁ、はぁ……。化け物だ……やっぱり、あんたは……」

 

「何を言う。おぬし、最後の一撃は惜しかったぞ。わしの残像ではなく、実体の『揺らぎ』を見ておった。……合格じゃ」

 

夜一がカズキの隣にドサリと座り込む。ジャージは土で汚れ、髪は乱れているが、その表情は真夏の太陽よりも眩しい。

 

「……負けたのに、合格なんですか?」

 

「わしを相手に二時間、一度も心を折らずに追いかけ続けた。その執念、褒めて遣わす。……特別に、さっきの約束を一つだけ叶えてやろう」

 

夜一がカズキの上に跨り、その重みと温もりを押し付ける。

 

「……何がいい? 今夜の献立か? それとも……このまま、ここで『続き』をするか?」

 

カズキは、彼女の金の瞳をじっと見つめ返した。いつもなら赤くなって目を逸らすはずの彼が、今日は逸らさなかった。

 

「……。俺を、ずっと置いていかないでください」

 

「…………」

 

夜一は一瞬、呆気に取られたように目を見開いた。そして、ククッと喉を鳴らして笑い、カズキの額に自分の額をコツンとぶつけた。

 

「……全く。色気のない願い事じゃ。……よいか、カズキ。わしは気まぐれな猫じゃ。だが、一度決めた縄張りは、死ぬまで離れぬ主義でな」

夜一はそのまま、カズキの唇に深く、刻みつけるようなキスをした。

 

 

夕暮れ時。

 

土汚れのついたのジャージを着た二人が、連れ立ってアパートへ帰っていく。

 

カズキの背中には、歩くのが面倒になったと言い張る夜一(人間形態)が、おんぶされる形で乗っていた。

 

「重いですよ、夜一さん」

 

「うるさい。瞬神を背負えることを光栄に思え。……あ、カズキ。スーパーで油揚げと、あの高いビールを買うのを忘れるなよ」

 

「金、あんたが出してくださいよ……」

 

「わしは一文無しじゃ! 出世払いで頼む!」

 

空座町の路地裏に、夜一の笑い声が響く。

 

一人はかつて瞬神と呼ばれた死神、一人はただの人間。

 

けれど、重なる体温と、夕日に伸びる二つの影に、その差はどこにも見当たらなかった。




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