四楓院夜一と俺の話   作:四角いトマト

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AI利用しての執筆になります。
何卒ご容赦ください。
皆様のイメージと著しく乖離することがあります。
ごめんなさい。


第6話 虚との遭遇

大学の講義を終え、駅へ向かう雑踏の中。

 

佐藤カズキは、背筋を這い上がるような「ざらついた」違和感に足を止めた。 

 

夕暮れ時の空座町。

 

オレンジ色に染まったはずの街路が、妙に薄暗く、泥を混ぜたように濁って見える。

 

「……なんだ? 周りの音が、遠い……」

 

心臓の鼓動が耳元でうるさく響く。

 

通行人たちの話し声が霧の向こうへ消え、代わりに聞こえてきたのは、空間がミシミシときしむ不気味な音だった。

 

バリリィィッ!!

 

頭上の空が、まるで巨大な獣に引き裂かれたかのように割れた。

 

漆黒の亀裂から這い出してきたのは、白い髑髏のような仮面を被り、胸に虚無の穴を穿った、体長5メートルを超える異形の怪物——「虚(ホロウ)」だった。

 

「……ッ!? なんだよ、あれ……!」

 

その姿を目にした瞬間、カズキの全身の細胞が「死」を叫んだ。

 

夜一から聞いていた知識としての虚ではない。

 

そこに在るのは、存在しているだけで周囲の空気を腐らせ、精神を圧迫する圧倒的な質量を持った「暴力」そのものだ。

 

「オオオオオオオオオォォォッ!!」

 

虚の咆哮が叩きつけられる。

 

物理的な衝撃波となってカズキの身体を突き飛ばした。アスファルトを掴み、必死に立ち上がろうとするが、足が鉛のように重い。

 

これが「霊圧」の差。

 

強者がそこに居るだけで、弱者は呼吸すら許されない。

 

「逃げ……なきゃ……」

 

巨大な鉤爪が、空気を切り裂いて振り下ろされる。

 

カズキは本能のままに地面を転がった。

 

寸前まで彼がいた場所は、爆撃を受けたかのように粉砕され、土煙が舞う。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……!!」

 

路地裏へ逃げ込むが、虚は建物の壁を紙細工のように壊しながら追ってくる。

 

行き止まりのレンガ塀に背中がついた。

 

(ダメだ……死ぬ。夜一さんに少し教わったくらいで、戦えるなんて思ってた俺がバカだった……!)

 

絶望が視界を黒く染め上げる。

 

虚が大きく口を開け、カズキを頭から喰らおうと身を乗り出した、その時——。

 

「——案ずるな、カズキ。おぬしの命、まだ誰にも渡させんぞ」

 

頭上から響いた、凛として、かつ絶対的な信頼を抱かせる声。

 

黒い影が夕闇を切り裂き、倫太郎と虚の間に割り込んだ。

 

オレンジ色の戦闘服が翻り、しなやかな褐色肌の肢体が月光を反射する。

 

四楓院夜一。

 

そこには、いつもベッドで自分をからかっていた「居候」の面影はなかった。

 

「夜一、さん……」

 

「下がっておれ。……名もなき雑兵が、わしの男に触れようなどと、片腹痛いわ」

 

夜一が右拳を握りしめる。

 

その瞬間、彼女を中心に世界が震えた。

 

「瞬閧(しゅんこう)!!」

 

凄まじい黄金色の霊圧が、爆発的な雷鳴となって噴出した。

 

夜一の背中と肩の装束が霊圧の圧力に耐えかねて弾け飛び、高密度の電光が彼女の全身を包む。

 

夜一が一歩、踏み出す。

 

それは歩みというより、雷撃そのものだった。

 

瞬きする間もなく虚の懐に潜り込み、雷を纏った拳がその巨大な仮面を撃ち抜く。

 

ドォォォォンッ!!

 

爆音と共に、虚の巨体が紙屑のように宙に浮き、次の瞬間には内側から弾けるようにして消滅した。

 

後に残ったのは、焦げ付いた空気の匂いと、静寂だけ。

 

あまりに、圧倒的だった。カズキは腰を抜かしたまま、立ち尽くす夜一の背中を見つめていた。

 

自分が必死に逃げ回り、死を覚悟した相手を、彼女は指先一つで塵に変えた。

 

(……これが、本物の死神。これが、瞬神……。俺が触れていいような人じゃなかったんだ……)

 

夜一の背中があまりにも遠く、神々しく見え、自分の情けなさに唇を噛んだ。

 

しかし、夜一は振り返らなかった。

 

彼女は鋭い視線を空の彼方へと向けている。

 

「……やってしもうたな。今の解放、一瞬とはいえ隠しきれなんだか」

 

 

 

【ソウル・ソサエティ:技術開発局】

 

薄暗い局内に、けたたましいサイレンが鳴り響く。

 

「局長! 現世・空座町081地点にて、高濃度霊圧を捕捉!」

 

「照合システム作動……! 出ました! 特級制限対象、元隠密機動総司令官・四楓院夜一の霊圧パターンと100%一致!!」

 

オペレーターの絶叫に、奥の椅子で爪を噛んでいた涅マユリが、不気味な笑みを浮かべた。

 

「……ほう。ようやく尻尾を出したかね。100年も潜っておきながら、ずいぶんと派手な挨拶じゃないか」

 

そして、別の場所。

 

二番隊舎の執務室で、一通の緊急報告書を受け取った砕蜂の手が、激しく震えた。

 

紙がクシャリと音を立てる。

 

「四楓院……夜一……。今こそ、その首を落としてやる」

 

 

 

夜一は静かに霊圧を抑えると、ようやくカズキの方へ振り向いた。

 

その表情は、先ほどの戦神のような冷徹さは消え、いつもの悪戯っぽい猫のような笑みに戻っている。

 

「どうした、カズキ?情けない顔をして。……腰を抜かしたか?」

 

「……。強すぎますよ、夜一さん。俺、自分が恥ずかしいです」

 

「ギャハハ! おぬしがわしより強かったら、わしの居場所がなくなるではないか」

 

夜一はカズキの元へ歩み寄ると、その震える手を優しく、だが力強く握った。

 

「よいか、今のわしの霊圧で、静霊廷の連中が動き出す。……ここでの平穏な『ごっこ遊び』は終わりじゃ。おぬし、わしと共に地獄の底まで付き合う覚悟はできておるか?」

 

カズキは自分の手のひらに伝わる彼女の熱を感じ、ゆっくりと立ち上がった。

 

非力な自分への絶望は消えない。

 

けれど、この温もりだけは離したくないと、魂が叫んでいた。

 

「……元から、そのつもりですよ。居候の尻拭いをするのは、家主の役目ですから」

 

「ふふ、よく言った。……さあ、走るぞカズキ。わしの歩法に必死でついてこい!」

 

二人の影は、追跡者の影が忍び寄る夕闇の中を、風よりも速く駆け抜けていった。




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