「それで、行ったことのある私やラヴァベルちゃんはともかく、どうして花子ちゃんまで一緒に?」
「我が少し気に入ってのう?せっかくじゃし来てもらったんじゃ」
八重狐はラヴァベル、コネルコ、花子を引き連れてある場所に訪れていた。
そこはかつてコネルコとラヴァベルが子供達で広まっていた、人形塚という噂の調査に来ていた場所だ。
噂が消えた今は、何の変哲もない場所として人々の記憶からは薄れた場所である。
「どうして私まで……」
花子としては少々不服な様子で八重狐を睨む。
不服にも程がある雰囲気を醸し出しながら、渋々着いてきている辺り乗り気じゃないのは確かなようだった。
「修行が足りぬからじゃ」
勝ち誇った顔をする八重狐に花子は睨みを強くする。
何かがあったのは確かだが、コネルコはその何かを把握していなかった。
「して、この先にあるんじゃな?例の村は」
「この先何だけど……傷は塞がっているわね」
以前にラヴァベルが木に付けた傷が殆ど塞がっており、簡単に行くのは難しそうだ。
因みに時刻は夕方、森の中という事もあり大分暗くなっているが、今回は
「大きめに印をつけておかないと、分からなくなりそうですね……」
ラヴァベルが言うように、それでも遭難の危険があるので何かしらの対策が必要になった。
そして彼女が放った大きめの印をつけるという発言で、3人が一斉に花子の方を向いた。
「……なにか?」
一斉に視線を向けられて困惑する花子。
「丁度いいのがここにおるな?」
「あっ!そうか!花子ちゃんのその刀なら出来そうです!」
「そっちでは無い」
八重狐が少しだけ自慢げに言うと、合点がいったラヴァベルが同意するが、直ぐに八重狐が訂正させる。
困惑を深める花子に対してコネルコは彼女達が考えている事を代弁した。
「花子ちゃん。あの紙人形を使って私達が通る道に紙人形を付けて欲しいんだけど、出来るかしら?」
コネルコの提案に花子は少し考えた。
紙人形の貼り付けがどこまで維持できるか未知数であったが、逆に言えば今の実力を測ることが出来ると考えた。
「…やってみます」
紙を数枚取り出して花子は提案を受け入れた。
人形作りの村まではコネルコとラヴァベルの案内によりスムーズに辿り着いた。
途中で一定間隔で紙人形貼り付けていきながら、辿り着いたそこは、家屋があったとは到底思えない程緑に包まれていた。
とはいえ木々が生えてない広まった場所がある所からも、ほんの僅かにだけその痕跡が残っているような状況だった。
「ふむ、時間があまりに経ちすぎておるな」
「前に来た時と殆ど変わらないわね」
ライトで照らされても草があるぐらいで、以前にも来たコネルコ達としても変化した部分は無かった。
その為かすぐに本命の神社の方に自然と視線が向いた。
「ふむ、これがラヴァベルが言っておった神社じゃの……ふむ、確かに殆ど朽ちておるが比較的残っておるな」
その神社の境内は少しばかり高い位置にあり、今回訪れたメンバーの中でも1番背の高い八重狐よりも上の位置に境内があった。
それでも下から建物が見える辺り非常に狭い神社である事が伺える。
階段の麓には赤黒い鳥居と狛犬か狐の像が置かれていたであろう台座が残されている。それらは蔦に覆われており、非常に欠けた状態だった。
「ふむ、こっちは重さで耐えたという所かの。こう言うのは中々耐えるように出来ておるからの。それに上の……あれは本殿かのう?あれも水に晒されずにおったお陰で残っておるが、時が経ちすぎて危険じゃのう」
それ故にこの建物だけは残っていたのだろう。
だがそれでも、老朽化によって近づく事が憚れそうなのは免れてなかった。
「神社の名前が分かれば、調べる事も出来るのに……」
コネルコは神社の周りを見渡しながら、そうこぼした。
それに八重狐が反応する。
「ここからでも分かる事があるぞ。ほれ、そこの鳥居をよく見てみよ」
八重狐の言葉に一斉に鳥居を見つめる3人。八重狐はそのまま解説するように続ける。
「1番上が2段になっておるじゃろ。上が
確かに島木と貫の間に確かに何かがあった。だがそれが何なのか、ラヴァベルと花子には分からなかった。
「あれってなんでしょうか?」
「……分からない」
唯一コネルコだけがそれの正体に気づいた。
「もしかして、あれは
「その通りじゃ。流されるような高さじゃ無かったからか、あんなように残っていたようじゃの」
「でも風化しているのか文字が読めなくなってしまっているわ」
コネルコの回答に八重狐は頷いて肯定して追加の解説をする。
だがコネルコが言うように時間が経ったせいで文字が潰れて読めなくなってしまっていた。
そのような事は八重狐にとって想定していた事のようですぐに対策が出た。
「そんなもん、光を扁額に当てた状態でスマホで拡大して撮ってみよ」
八重狐の言うようにして、光を照らしながらスマートフォンのカメラを拡大して撮る。
そしてその写真を全員で覗き込みながら、八重狐がある操作をする。
「コピーして、ペイント機能に切り替えて……」
見た目と言動とは裏腹に簡単にスマートフォンを操作する八重狐の様子に花子が独り言を落とす。
「……凄い違和感」
その様子に唖然とする花子。
対してラヴァベルとコネルコは慣れた様子で見ていた。
唖然とし続ける花子に対してコネルコは声をかけた。
「八重狐さん、スマートフォンのような新しい機械とか得意なのよね」
「お主らが使わんだけじゃろ」
聞こえていた八重狐に突っ込まれる。
実際スマートフォンをここまで使いこなせるのは図書館で働くメンバーにはおらず、八重狐ぐらいしか使わない機能なんていうのも結構ある程だった。
そんな会話をしていると八重狐の手が止まった。
「ほれ、解読出来たぞ」
八重狐が画面を見せる。
そこには手書きで書いたような字が画像の上から描かれており、そこには人稲神社と書かれていた。
「これは……なんて読むのかしら?」
文字自体は知っているが、熟語としては見た事無かった。
難読地名と称されそうなそれは、全員を悩ませる事になった。
「“ひといなじんじゃ”ですかね?」
「……“じんぼ”?」
「もしかしたら”にんほ“か”にんとう“かも?」
上からラヴァベル、花子、コネルコの順番で発言している。
色々な読み方が出来る為か候補が一気に上がってくる。
「もしくは”じんご“やもしれぬが……今となっては分からぬの」
八重狐も読み方を考えるが、これと言った物が出てこなかった。
そんな状況ではあるが、少なくとも判明した事がある。
「今分かるのは字面からして、この神社は豊穣と息災を願った物のようじゃの。それに」
そう言いながら八重狐はスマートフォンを帯の間にしまう。
「もしかしたら稲荷神社の類いやもしれぬ。あくまで憶測に過ぎぬが、せめてこの像がもう少し形が残っておったら、良い手がかりになり得ただろうに」
八重狐の視線が朽ち果てた像に向けられる。
その像は崩れた台座のみが残されており、その上に鎮座していたであろう物は跡も残って無かった。
「まぁ過ぎたるは言わぬが仏……危険ではあるが境内に近づいてみるかの」
「崩れたりしないかしら?」
「超小型のドローンで撮る故、問題は無い」
そう言いながら八重狐達4人が鳥居の前で一礼をしてから階段を登る。
思ったよりもしっかりしており、登ることへの不安が思ったよりも募らなかった。
そして登りきった後、最初の場所よりも近くで境内の様子が見れた。
「やはり、かなり朽ちてしまっているわね」
コネルコが見渡して思わずそう言ってしまう程の状態であった。
そこは小さな神社で正面すぐに本殿が佇んでおり、それ以外の建築物は彼女たちが今いる場所からは見当たらなかった。
全体的に階段の下同様に草木が至るどころから生えてきている。それでもまだ境内の方がマシではあるが。
本殿は蔦が全体的に絡まり、賽銭箱は入れる場所が殆ど折れており、鈴は床に落ちている。
柱も繋がってはいるがどこか心許ない印象を受け、中に入るのは、身の危険という意味で憚られるのような状態だった。
「むしろここまで残っておるのが奇跡じゃろ。ほれ、中の様子を撮らせて貰うんじゃ。手を合わせい」
八重狐は本殿に向かって手を合わせる。花子にはその様子がとても奇妙に感じた。
「ここまでボロボロなら、神様も何処かに行ったんじゃ?」
「そうやもしれぬが、もし残っておったらバチが当たる故、手を合わせて損はなかろう?」
八重狐の一言に理解はしても納得は行ってない様子で手を合わせた。
コネルコとラヴァベルもそれに合わせて手を合わせる。
「さて、中の様子を失礼させてもらおうかのう」
八重狐はスマートフォンと超小型のドローンを取り出して写真を撮り始めた。
その間にコネルコ達は境内の中にある本殿以外の場所を深く見ている事にした。
「社務所のような場所は無さそう……いや崩れてしまったのかもしれないわね」
コネルコは周囲を見てそう感じた。廃村になったのが非常に昔で、本殿以外の場所があった痕跡が中々見つからない。
奥の方に行くと、一つだけ残っている建物があった。
「これは……蔵のようね」
「本殿よりもしっかり残ってますね」
ラヴァベルが言ったように、この蔵は本殿よりも見た目は良い状態で残っていた。
蔵の後ろ側に木々が生い茂っており、遠くからでは視認できないようになっている。
「蔵は普通の家よりも頑丈に作られていたそうよ。それにしても、ここまで残っているなんて思わなかったけれどね」
コネルコは長年放置されても未だ健在の蔵に少し圧倒される。
確かに頑丈とは聞いた事がある。だがそれでもここまでとは思わなかったからだ。
ふとラヴァベルが気になっている事を口にした。
「でも中に何が入っていたんでしょうか?」
「そうねぇ……普段使いしていたのなら箒とかが入っていたと思うし、神事に使われるような物も置かれていたかもしれないわ。……あとはお焚き上げの文化があったから、この中に供養箱があるかもね」
コネルコが顎に右手を当てながら憶測を並べる。実は図書館で八重狐が読んでいた史料のアーカイブ化に彼女も大きく関わっており、ある程度の情報は知っていた。
だがまさか神社が今も残っているとは当時知る由も無く、知ったのは子供達がかつて作り出した人形塚という噂を調べていた時だった。
「供養箱ってなんですか?」
「供養箱はお焚き上げをするまでの間保管する物の事よ。塚を使っていた場所もあるみたいだけど、ここだと埋めたら化けて出るという風に伝えられてたみたいだから……」
「あぁ〜なるほど、それなら納得です」
ラヴァベルは物凄く納得した。以前コネルコとラヴァベルが関わった事件で犯人の動機に繋がっていたからだ。
全てに納得がいった瞬間にある事に気付き俯いてしまう。
「もしかしたら、供養箱でずっと眠っている人形もいるかもしれませんね……」
「居るとは思うわ。出来る事なら出してちゃんとお焚き上げしたいけど……」
「流石に危ないですよね……」
どうしようも出来ないやるせなさが2人を襲う。
役目を終えたとはいえ、本来還るべき場所へ行く事が出来ないのは人形として、どこかもどかしさを感じるものがある。
「時間が解決する事を願うしかない……でしょうか?」
「そうね……そういえば花子ちゃんは?」
「え?……あれ花子ちゃん?」
蔵の方に集中していたせいか、いつの間にか花子が居なくなった事に気づかなかった。
周囲を見渡して探していると、暗がりから誰かが現れた。
「……どうしたの?」
「花子ちゃん!何処に行ってたの⁉︎」
現れたのは花子だった。慌てて駆け寄るラヴァベルとゆっくり近づくコネルコ。
「他に何か無いかと探していた。だけど何も無かった」
「もう、どっかいっちゃって心配したよ!」
「無事でよかったわ……」
淡々と報告する花子にラヴァベルとコネルコが心配の声を上げた。
今はもう暗く、頼りになる明かりは懐中電灯の光のみとなった今、ふらっと消えていかれたら見えなくなってしまう程だ。
無事な様子の花子にホッとしながらコネルコは報告を聞く事にした。
「それで花子ちゃん。花子ちゃんからみて何か気になる物はあったかしら?」
「……特には、ただ本当に小さな神社だとは思った。本殿とこの蔵以外には何も無いように感じた」
「小さな神社。確かに…そうね」
コネルコは花子の感想を聞いて改めて境内の広さを見る。
境内はこの蔵と本殿だけであり、神社としては非常に狭く感じた。
規模としては町中にあるぽつんと建てられた神社といった所だった。
「まぁ、大方の見当は着いておるじゃろ?コネルコ殿」
少し離れた所から八重狐が声を掛けてきた。
全員が八重狐の方に向いた。そしてコネルコは八重狐の問いに頷いた。
「そうね、八重狐さんの方は撮影終わったかしら?」
「うむ、十分に出来た。お陰で色々と分かりおった。じゃがまずはコネルコ殿の推察を聞こうでは無いか」
ドローンを小さなケースに入れ袖の中にしまい、軽くウィンクをしつつ、スマートフォンを取り出しながらコネルコの推察を待つ八重狐から催促されて、彼女はゆっくりと歩きながら話し始めた。
「この神社自体は村の基点となるように作られた場所で、管理自体も村が主体となってやっていたみたい。その中でも人形作りとそれに関連した染め物、もっと言えば染料になる植物に纏わる祈りが大きかった事から、豊穣の願いと人形を通じた無病息災。これらを願われて作られた。ここまではいいかしら?」
八重狐に確認を取るコネルコ。この手の話はいくら彼女が史料作成に携わったと言えど、八重狐の方が詳しい面があったりする。
「そこまでは我も同じ考えじゃ。それ故に供養箱を兼ねた蔵とあの本殿しか無い。それで十分じゃったという訳じゃの」
視線をコネルコに戻して推察の続きを促す八重狐。
その意図を汲み取ってコネルコが再び話し出す。
「そしてこの神社は役目を終えた人形をお焚き上げして鎮める為にもあった。人形にも魂があるという考え方から大事にされて、時間が経って遊ばなくなったら天に還す。といった文化から来ていると思うわ。そんな村だからこそ、この神社に祀られているのは神様を模した人形……だとしたらいいなって思うけれど八重狐さん、どうかしら?」
再び話を振られた八重狐は懐からスマートフォンを取り出す。
「御神体は残念ながら開帳されてはおらんかった。じゃが面白い物は撮れた。この画像を見てくれぬか」
八重狐はスマートフォンを操作して画像をコネルコ達に見せる。
その画像を見た彼女達は、納得したような意外なような色んな表情を表した。
「なるほど、この村らしくはあるわね」
「御神体を守るようにありますね」
「……」
彼女達が見ている画像は本殿の最奥を守るように並べられた狐の人形と巫女服を着た人形だった。
時が経った今でも最奥の御神体を覗く事が出来ない程度には閉められており、その両脇に狐の人形があり、さらに外側に巫女服の人形が置かれていた。
いずれも布がボロボロで、顔も非常に汚れていた。
コネルコ達がそれぞれ感想を言うと八重狐は話を続ける。
「見ての通り御神体の代わりに願いを聞く
「本当に村の中心だったのね」
目を瞑りうむと声をあげる八重狐はスマートフォンをしまう。
ラヴァベルは当時の暮らしを想像して、少し物悲しい顔をした。
「それが水害で村が流れてそのまま……なんですね」
「えぇ、村は無くなりこの神社は取り残されてしまった……だけど、生き延びた人達が書き記してくれたお陰で、ここに村があったという事実が後世に伝えられた。それだけでも良かった事なのかもしれないわ」
コネルコはどこか達観したような穏やかな顔で本殿の方を見続けていた。
彼女達がこの村の存在を知るきっかけとなった大元は、ここに住んでいた人が残した物だった。
それ無くしては存在なぞ知らなかっただろうとコネルコは考えていた。
「それはどういう……」
ただラヴァベルにはまだ理解が及んで無かったようだ。
「中には、記録にも残らずに無くなってしまった村もあるかもと思っちゃったの」
「……あ、なるほど。ポジティブに考えるなら無事に生きられたという事なんですね」
ラヴァベルはコネルコが言っている事がようやく理解出来た。
過去に無くなった村の存在を現代人が知る事が出来るのは、過去に記された物があってこそ。
それらすらも残らずに消え去った村の存在を知る術なぞ、完全に無いのである。
「その通りよ、だから今日訪れた私達も後世に残せるようにしなきゃね」
「あ、史料のアーカイブ化ってもしかして」
「そう、歴史博物館の人たちの主導で後世に残せるようにやっているの」
コネルコも時折協力する史料のアーカイブ化、それはこの町の歴史を伝えたい人達によって行われている物である。
町としても少しばかり力を入れているようで、コネルコは要請を受けて参加していた。
「しっかり伝わりますか?」
唐突にラヴァベルが聞いてきた。それに対してコネルコは静かに微笑んで。
「伝わるわよ、きっとね」
と言って本殿をじっと見つめた。
「さて、これ以上は長居は無用じゃろう。最後に帰る前に本殿に挨拶して帰ろうぞ」
八重狐に続いてコネルコ達、一度本殿の正面に来て感謝の気持ちで手を合わせ礼をする。
鳥居の前でもう一度礼をしてから彼女達は帰路に着いた。
すっかり真っ暗だったが花子の紙人形がかろうじて刺さっていたお陰でスムーズに森を抜けられた。
その道中道を歩きながらふと八重狐が呟いた。
「しっかし、まぁ時間が経つというのは時に残酷な事よの」
「どうしてかしら?」
それにコネルコが首を傾げながら反応する。
「誰にも見つからぬまま置いていかれて、時代が進んだら今度は出す事が出来なくなってしまったじゃろ。そう考えると
八重狐は目を瞑りながら話しを続けた。
誰かに動かされなければどこにも行けない普通の人形と違い、彼女達は動く事も話す事も出来る。
それだけでも八重狐にとっては幸せに思えてきたようだ。
「そうね、こうやって自分の足で自分の居場所を見つけられる。それだけでも幸せかもね」
それにコネルコも続ける。ただ花子は俯いてどこかボーっと何かを考えているような様子だった。
コネルコがそれに気づいて声をかけた。
「どうしたの?花子ちゃん」
「……こうやって動ける。それだけで本当に良いんだろうかと今も思っている」
「ほう、それはどうしてじゃ?」
八重狐も興味を持って聞いてみる。花子はそのままの体勢で続けた。
「人形は役目を持って作られる。人に愛される、神の依代にする、魔除けとして家に置かれる。そうやって作られて役目を終えたら、ただ人から忘れられる。そういう物だと思っている」
「我らシュガードールも人に愛される為に作られはしたがの」
八重狐がそう返すと、花子は歩みを止めた。他の3人も釣られて足を止める。
「でも、いやだからこそ。私達の役目って何だろうと思っている。主を守り、共に生きるだけでは無く、それ以外の役目があるなら何だろうかと」
「それはこれから見つかるかもしれないよ」
ラヴァベルの方に若干目を細めながら視線を向ける花子。
彼女は花子の手を取って続けた。
「だって図書館で働くうちに友達が出来たもん!役目という訳では無いけど、それが楽しいんだよ!それに役目というのも考えた事も無いし!」
力説するラヴァベルに圧倒されながら話を聞く花子の瞳はより小さくなっていた。
そこにコネルコが続けて話しかける。
「役目という物に縛られないで、自分が何をしたいのか……そうね。あの人を守るという事以外にやりたい事が出来たらやっていいのよ。私達はそうやって生きているのだから」
思い出の図書館が閉館するのを止める為に館長になったコネルコ。
偶然見つけた祠の残骸から修繕する為に資料を集める八重狐。
子供達と遊ぶ事を生きがいとしているラヴァベル。
彼女達は自分のやりたい事をする為に今日も明日も生きる。
そういう生き方をする3人を見て花子は涙を浮かべた。
「見つけられるのかな……」
ポツリとこぼした一言に3人とも微笑む。
「見つかるよ。きっと」
微笑んで手を差し出すコネルコ。
「絶対……とは言えないけど、見つかるよ!」
花子を抱きしめるラヴァベル。
「まぁ見つからなくとも我には付き合ってもらうがの」
ニンマリとした笑顔で扇子を取り出して仰ぐ八重狐。
抱きしめられて手を握りながら花子は俯きながら頷いた。
「じゃあ、改めて帰ろう?」
コネルコの問いに3人は頷いて家に帰るのだった。
かつて人形作りの村と呼ばれた村に残された神社に遺された残影は、かつての村の暮らしの一端が見えた気がした。
そして新しく来た
花子にとって、この3人の生き方は自分と違いすぎて参考に出来るかどうか……少なくとも新しい価値観が見つかったの確かだとは思いますよ?
次のお話はまだ未定ですが、夏なのであの話でも……