その真相を打ち明けた時、ユキは果たしてどう反応するのだろうか?
そしてその後は一体何処へ向かうのだろうか?
夜、再びユキを拾った林に訪れたコネルコ。明かりなど無く、真っ暗闇の中である疑問を解決する為に散策を行っていた。
(何故キョウヘイさんはユキちゃんをここに連れてこようとしたのかしら?……っ⁉︎)
その疑問に思案を張り巡らせながら歩いていると、突然光に晒される。思わず振り向くとそこには、懐中電灯を持ったヴィラーシュが立っていた。
「ヴィラーシュちゃん⁉︎何故ここに?」
「いく場所があるから帰りが遅くなるって聞いて。ここだろうと思った。それで何か引っ掛かる事でもある?」
少し呆れた様子のヴィラーシュにコネルコは照れながらも自らが抱いていた疑問をヴィラーシュにも話す。
「そうね、そもそもキョウヘイさんはどうしてユキちゃんとここに来たのか。しかもこんな暗いところをね。それが気になっちゃって」
「確かに気になるけど。それって重要?」
「えぇ、彼女を連れていくべき場所に連れていく為にね」
「どういう事?」
歩きながらヴィラーシュに話すコネルコ。途中、意味深な発言をしてヴィラーシュを傾げさせるが、そんな事気にせずに進んでいく。すると林を抜けて広い空間に出た。周りに木が生い茂っているがその場所だけは何故か空いていた。そしてそこから見える光景を見てコネルコ達は何故ここにユキを連れてきたのか、その理由が分かった。
翌日、いつも通りに図書館に着いたコネルコは少しニヤついたメルシュカルに出会った。
「昨日は遅かったじゃない?何処に行ってたの?」
「少し調べ事をしてて、全部分かったんです」
「もしかしてユキの事?」
ニヤつくのをやめて普通に聞き始めるメルシュカル。
「ええ、多分今日がユキちゃんと一緒に居ることが出来る最後の日かも知れないわね」
「ふーん」
興味ないような素振りを見せているが内心少し寂しく感じるような雰囲気があった。どうやらたった数日だが仲良くなれていたようだ。
「他の人には?」
「まだね。でもヴィラーシュちゃんは昨日一緒にいたから分かる筈よ」
ヴィラーシュがインドア派である事を知るメルシュカルは意外そうにしていた。
「へぇ……でどうするの?犯人捕まえようって?」
「いえ、そちらは警察のお仕事。私達はもう一つの謎の正体を伝えるべき人に伝える。ただそれだけよ」
彼女はただただ微笑んでいた。
コネルコは昼近くにキョウヘイの家族に電話を掛ける事にした。遺された物を明かす為に。
「もしもし」
『もしもし、貴方は確か……コネルコさん?昨日の今日で何か用が?』
あまりいい気分でもない様子の母親に意を決して告げた。
「えぇ、実はキョウヘイさんの事について色々分かった事があります。ですので少しだけで構いません。私に時間を頂けませんか?」
あの時に彼が何をしたかったのかを全て明らかにする為に。
閉館後、コネルコは花や飲料缶などが相変わらず残っている場所に居た。手を合わせながら彼女はそこでキョウヘイの遺族を待っていた。今度は明確に、貴方がやりたかった事を伝えると心の中で語りかけて。そうしていると足音が二つ聞こえてきた。彼女は立ち上がり振り返るとそこには母娘が居た。コネルコがお辞儀をすると2人はお辞儀を返した。
「先程電話があって、事件に進展があったと警察から……もしかして、貴方が?」
どうやらオーナーの方は上手くやっているらしい。そう思いながらコネルコは返事をする。
「図らずも、ですが恐らく犯人は時期に捕まると思います」
「でも、じゃあ何故私達を呼びだして……?これで全部解決したのでは?」
母親の疑問も最もである。息子を殺害した犯人が判明して捕まる。1番良い結末と言えるだろう。だがもう一つだけ、明かさねばならない事があった。
「全部、ではありません。
2人は頷く事も出来ずに固まっていた。あとは何が残っているのだろうか?という疑問の声が上がっていた。そしてそれが何を意味するのか、いつの間にか気になってしまっていたようだ。コネルコは同意と見て話しを続ける事にした。
「まずは彼の家にあった子供服や女性用の服。あれらはやはり、人形……ドールの為の物でした」
「そんな物は無いと、貴方も見たでしょう」
母親が反論する。確かに家には無かった。だが実際は
「ええ。あの時、あの家には居ませんでした。ですが初めて貴方と会った時に話した事があったはずです。人形の持ち主を探していると」
コネルコは視線を母娘から目を離し、別の方へと向けると丁度来たヴィラーシュとユキが居た。
「そちらの和服を着ている子。ユキちゃんと言うのですが、彼女がキョウヘイさんが持っていた人形です」
「人形?どう見ても人間じゃないですか⁉︎ふざけるのもいい加減に」
彼女が人形だと言われて揶揄われていると思った母親が怒りの感情を露わにする。だがその反応で確信したコネルコは遮るように話を進める。
「やはり、ご存じでは無いのですね」
「何がですか!」
「彼女達や私は人間では無く、”シュガードール“と言う特別な人形なのです。殆ど人間と一緒ではありますが……」
「そんなの聞いた事無いわ」
母親は目の前に居る存在を知らないと言う。先程までの怒りも今の一言で鎮火されたようだ。知らないと回答される事も織り込み済みで予想通りの反応であった。
「シュガードールは生きた人形。この地域ではポピュラーな存在ではありますが、それ以外では存在すら知らない物だと聞きました。所謂隠れた名産品のような物だと思っていただければ」
「信じられない……本当に人形?」
まだ疑心暗鬼の母親、それに対して娘は納得といった表情をしていた。
「あの子が言ってたの本当だったんだ……生きた人形……でも本当に兄の所の人形なんですか?」
「そうです。彼女に確認取りましたので確かです」
「そっか……」
感情がごちゃ混ぜになって何もかも分からなくなっている娘。受け入れるのに時間が掛かりそうだろうと思い、歩きだしながら話しを戻す。
「この町で暮らしはじめてからキョウヘイさんも呼ばれたのでしょう。あの雑貨屋さんに。そしてそこでユキちゃんと出会い、彼女を家に連れ帰り、キョウヘイさんの下で暮らすことになりました。
そして暮らすうちに彼女は感情を育まれていき、次第に彼に着いていくようになりました。そしていく先々でいろんな経験をする事である感情が芽生えました。
それは彼を守りたいという物。シュガードールにも色んな種類がありますが、ユキちゃんはウツセミという種類で彼女のように色んな経験をした子は主を守ろうとする……らしいです。そういう事もあり、より一層キョウヘイさんについていくようになりました。
そんな最中、キョウヘイさんは夜にある場所へと彼女を連れていく事にしました。ですがそこへ向かう途中で2人とも、事故に逢ってしまいました。事故を起こした運転手が救助活動を行えば、キョウヘイさんは助かったかも知れません。ですが、あろう事かその運転手は走り去ってしまった。
ですが走り去る際、その運転手からはキョウヘイさんしか見えませんでした。ユキちゃんは何処に居たかと言うと車の下に引っ掛かったままだったのです。恐らくは逃さないように……無意識の行動ではあったとは思います。当たった瞬間は覚えていてもその後は覚えていなかったようですので。
謎の引っ掛かりを感じた運転手が下側を覗いた時、彼女がしがみついていたのを見たその人は強引に引き剥がし、道路脇の林へと投げ捨てて立ち去った。その証拠として、その時着ていた服の背中側がかなり破れていたようで、傷も背中側の方が酷かったのがそれになります。
ここまでがまず轢かれるまでの経緯です。そしてここからは、
コネルコはいつの間にか入っていた林の中を通り抜けて広まった空間へと出た。そしてそこで歩みを止めて振り返る。
「ここが、キョウヘイさんがユキちゃんに見せたかった景色です」
再度振り返り今度は空へと顔を向けた。つられて他の4人も空を見上げた。
そこには無数の星々が瞬く夜空が広がっていた。今日は雲一つない快晴だった事もあり、星がよく見えた。
「キョウヘイさんは何かの拍子に見つけたこの景色を見てもらいたくて、ユキちゃんを連れてこようとしたと思います。これだけ綺麗に星が見れる場所はいまやあまり無いですからね」
4人は目の前に広がる景色に夢中になっている。そんな様子を見たコネルコは微笑む。そしてある提案をこのタイミングで出す事にした。
「実は今日来て頂いたのには、あと一つだけ理由がありまして」
「あと一つ?」
「ええ、是非ともキョウヘイさんが愛したドール、ユキちゃんを引き取ってもらいたいのです」
その一言で母娘はユキを見る。彼の忘れ形見と言っても過言でない彼女の様子が気にならないと言えば嘘にはなる。だがどこか躊躇する要素もあるようだ。
「でも、人形なんてそれこそリカちゃん人形のような物しか……」
「何も難しいことはありません。ただ人と同じように、愛を持って彼女に接すれば、必ず応えてくれる。それが私達シュガードールという存在です。それに私達の元よりも貴方達の所にいる方が彼女にとって、後々幸せになってくれる。そんな気がするんです」
躊躇するからこそ、引き取って欲しい。その心配事が出るだけでユキちゃんの事を少しでも思ってくれているのだからとコネルコは説得を続けている。
「…………そこまで言うなら引き取っても良いんじゃない?お母さん」
娘からも声が上がる。その説得もあってか母親は観念したかのように目を伏せた。だがその口元は少しだけ笑っていた。
「……わかりました。彼女を引き取ります」
その答えにコネルコとヴィラーシュと娘は嬉しくなって満面の笑みを浮かべる。
「ですが、本当にいいですか?」
ただやはり不安が残っているのか最後に確認を取ろうとする。するとユキがここで声を上げる。
「キョウヘイの家族の所で暮らしたい。コネルコから聞いた時から行きたいと思っていた。もっとキョウヘイの事、聞かせてほしい。だから……」
本人の想いを聞いて母娘はユキをそっと抱きしめた。その姿は本当の家族のような光景にみえた。
「これからは私たちの家族よ。ユキちゃん」
「よろしくね、ユキちゃん」
その光景を見たコネルコの目にはうっすらと涙が溜まっていた。ヴィラーシュはそれを見て微笑ましく見守る事にした。
翌日、図書館の中で働いている6人全員が地元新聞の三面記事に視線をやっている。その内容は[轢き逃げ犯逮捕]という物だった。表向きは新たな証拠がきっかけで捕まったとだけ記載されているが、その裏であった事を知る者は今いる6人とほんの数人以外には居ない。そんな事件の記事を見てラヴァベルが一言つぶやく。
「ユキちゃん。今頃どうしているかな?」
その発言にコネルコとメルシュカルが反応する。
「きっとあの家なら穏やかに、幸せに暮らしていると思うわ。それに何か困りごとが起きたら相談するように言っているから……ね?」
「そ、便りが無いのが良い便りってよく言うでしょ?でもちょっと寂しいわね……」
メルシュカルの一言に今度はサージュが反応する。
「あれ、数日で結構仲良くなったんですね」
「うるさい事言う口はどれかなー」
サージュのほっぺたを軽く引っ張るメルシュカル。それをわき目にシュベルコが少ししょぼくれた様子で呟く。
「もう少し、猫と触れ合って欲しかった……」
「まぁまぁ。今生の別れ、という訳でも無いからもしかしたら、また来てくれるかもしれないよ?」
それをコネルコが頭を撫でながら慰める。シュベルコはそのまま受け入れてされるがままになっていた。頭を撫でながらヴィラーシュの方に話を振る。
「ヴィラーシュちゃんが居なかったら多分、この真相に私達は辿り着けなかったかもしれないわね。ありがとう」
「別に、礼を言われるような事はしてない。それよりもそろそろ時間じゃない?」
そっぽを向くヴィラーシュ。だがその顔はほんのり赤く染まっているのに気付いていた。そして照れ隠しだろう発言で既に午後の作業の時間が迫っている事に気付いた。
「あら本当だわ⁉︎さ、そろそろ新聞をしまって午後の担当の子は作業を始めましょう」
慌ただしく新聞をしまい、彼女達はいつもの日常へとそれぞれ戻るのだった。
ユキは無事に新しい家族として迎えられ
轢き逃げ犯も捕まり万々歳と言った所に落ち着きました。
6人の図書館員との交流で心が落ち着いた彼女のその先の暮らしは恐らく明るい物になるでしょうきっと