オオカミ少女は楽園の夢を見るか   作:樽ナッツ

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諸事情により投稿が遅れてしまいましたことお詫びします。
気付いたら一日が終わってたんです許して下さい。
それと漸くヘレル君が再登場します。




オオカミ少女は家族の紹介を忘れるか

 

『おいネモ、少しは自分で持って歩け』

 

「最近トレーニングをサボり気味だったんだから、そのぐらい持ってくれたっていいだろう?」

 

 

隣から聞こえてくるヘレルの文句を右から左へ聞き流しながらボクは、トリニティの外れにある現在は使用されていない別館を目指して歩いていた。

ジリジリと照りつける太陽を恨めしく思いながらヘレルと二人で暫く歩いていると、ボク達より一足先に着いていた補習授業部の皆の姿が見えてきた。

 

 

「ごめん遅れちゃって、想像より遠くて時間がかかっちゃたよ」

 

「"私達もさっき着いたばっかだから大丈夫だよ!それじゃ、皆揃ったし中に入ろっか!"」

 

 

先生の号令を合図にヘレルを連れ、なんだかいつもより動きがギクシャクしている皆と共に合宿所となる別館の中へ向かう。

別館の中は少し埃っぽいが、思っていたよりもずっと綺麗で、少し掃除をすれば一週間生活するには困らなさそうだった。

 

 

「"荷物を置く前に先ずは部屋割りを決めようか。何か要望がある子はいる?"」

 

 

とりあえず教室に集まったボク達の真ん中に、先生が別館の見取り図を広げて部屋割りの希望を聞いてくる。

暫く待って周りの皆が何も言わない事を確認した後、おずおずと手を挙げて口を開く。

 

 

「それじゃあ一ついい?ボク、誰かと一緒だと眠れないんだよね。だから、出来れば一人部屋がいいんだけど大丈夫かな?」

 

「"ネモは一人部屋がいいと……。他の子は何かある?"」

 

 

先生は、ボクの要望をメモに書き込み、他に要望がないか補習授業部の皆を見渡しながら尋ねる。

どうやら部屋割りの希望があったのはボクだけだったらしく、ほかの皆は先生の問いに何も答えなかった。

 

 

「"じゃあ、こことここの小部屋を私とネモが、こっちの大部屋に他の皆が使う感じでいいかな?"」

 

「ボクはそれでいいけど皆はどう……?」

 

「"……いいみたいだね。それじゃ、荷物を置いたらこの教室に集合ね!"」

 

 

特に反対意見も上がらずすんなりと部屋決めが終わった。

重い重いと文句を垂れるヘレルを宥めながら割り振られた小部屋に向かおうとすると、阿慈谷さんから待ったがかけられた。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください!なんで先生もネモちゃんも平然としてるんですか!?」

 

「急にどうしたの阿慈谷さん。……もしかしてボク一人だけ一人部屋はやっぱりダメだった?」

 

「違います!そのおっきなワンちゃんのことです!」

 

『オレを犬っころと一緒にするな!』

 

「ひっ!?」

 

 

何のことか全く分からなかったが、阿慈谷さんの言葉で、そういえばまだ補習授業部の皆にはヘレルのことを紹介していなかった事を思い出す。

 

 

「こらヘレル、初対面の人にいきなり吠えちゃダメでしょ、ごめんね阿慈谷さん。先生には彼のこと紹介してたから忘れていたよ」

 

「それじゃあ改めまして、彼はヘレル。ボクの……そうだね、家族みたいなものかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆と別れて個室として割り振られた小部屋の中にヘレルと共に入る。

小部屋とはいうが、ボクの自室よりも一回りほど大きい部屋に驚く。

 

 

「こんなにいいとこなのに使ってないだなんて流石お嬢様学校は違うね」

 

 

ヘレルに曳いてもらっていた荷車から荷物を下ろし、荷車をヘレルの体から取り外す。

感謝と共に干し肉を渡し、少し乱れている毛並みを整えた。

そろそろ集合場所となっている教室に向かおうと、腰を上げたタイミングで、扉を叩く音が聞こえた。

 

 

「私だ。入ってもいいか?」

 

「どうぞ、って白洲さん?どうしたの?」

 

「偵察だ。それと、……お願いがあって来た」

 

「お願い?何かな?」

 

「えっと、その。少し、ほんの少しでいいんだ、その子を撫でてもいいだろうか?」

 

 

ボクの部屋を訪ねてきた白洲さんが言ったお願いは、そんななんとも可愛いものだった。

 

 

「もちろん大丈夫だよ。ヘレル、ちょっとこっちに来てくれる?白洲さんが君のこと撫でたいんだって」

 

『断る。オレが人に触られるのが嫌いなのは、お前が一番わかってるだろ』

 

「そんなこと言わないでさ、少しぐらい触らせてあげなよ。これから一週間一緒に生活するんだからさ、親睦を深めると思って、ね?」

 

『何と言われてもオレは頷いたりしないからな』

 

「今日の夜ご飯、いつもよりお肉の量増やしてあげるからさ、お願い!」

 

 

ボクとヘレルの言い合いを不思議そうな顔で眺める白洲さんを横目に、ヘレルにどうにか触らせてあげるように頼み込む。

暫く言い合いを続けていると、根負けしたヘレルが漸く撫でる許可をくれた。

 

 

『ハァ……仕方ないな。いいか、少しだけだぞ』

 

「分かってるよ。……ごめんね白洲さん、説得に時間がかかっちゃて。撫でてもいいってさ」

 

「い、いいのか?なんだか、こう、すごく嫌そうな雰囲気を感じるんだが……」

 

「大丈夫、ちゃんと言質はとったから。安心して撫でていいよ!」

 

 

物凄く不機嫌そうなヘレルに恐る恐るといった風に白洲さんはヘレルに手を伸ばす。

毛並みに沿って撫でてあげてと言うと分かったとゆっくりと手を動かし始めた。

初めて触ったであろう狼に目を輝かせる白洲さん。

ヘレルは夢中で撫でる白洲さんを初めのうちは嫌そうにしていたが、白洲さんの撫で方が思いのほか気持ちよかったのか次第に表情を和らげ、提示した時間を過ぎても好きにさせていた。

 

暫くヘレルに夢中になっている白洲さんを眺めていたが、廊下から中々来ないボク達を探しに来た先生達の声が聞こえてきた。

そろそろ行かないとまずいかなと思い白洲さんに声をかける。

 

 

「白洲さん、先生達が探してるみたいだからそろそろ教室に行こうか」

 

「もう終わりなのか……?」

 

「そんな顔しないでよ、また触らせてくれる様にお願いしとくからさ」

 

「……分かった。撫でさせてくれてありがとう」

 

 

名残惜しそうな顔をしながら、渋々といった様子で彼女は立ち上がる。

また後でと言って白洲さんボクの部屋を出ていった。

 

 

「途中から気持ちよさそうだったけど、どうだった?」

 

『フン、初めてにしては悪くない手つきだった。あの小娘がどうしてもと言うなら次も撫でさせてやったっていい』

 

「そいつは、良かったよ」

 

 

ヘレルと話しながら身だしなみを今一度整えていると、『ただ』と少し間をおいてヘレルが口を開いた。

 

 

『あの小娘、白洲とか言ったか?アイツには用心しておけ。悪い奴の匂いはしなかったが、ほんの僅かだが少し嫌な匂いがした』

 

「嫌な匂い?」

 

『ああ。……血の、匂いだ』

 

 

ヘレルの言葉に手を止めて彼の方を見る。

ボクをじっと見つめるその瞳はとても冗談を言っているようには見えなかった。

鼻の利くヘレルが言うのだ、きっと間違ってはいないのだろう。

 

 

『アイツには何か隠し事がある。それも多分後ろ暗いものだ』

 

「分かった、心に留めておくよ」

 

 

彼の言葉に若干の不安を感じながら部屋を後にして、先生達の待つ教室に少し駆け足で向かった。

 

 





『』の部分はネモちゃん以外の人達には鳴き声やそれに準ずるものに聞えています。

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