お姉ちゃんはいろPと幸せになるべきだと思うの   作:いろかぐヤチは美しい

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私の名前はツキミ

どうもツキミです!ヤチヨお姉ちゃんに心の底から救われて、更に大好きになってしまったツキミです!

 

だってお姉ちゃんは私に一番欲しかったものをくれたんです。生まれ落ちてしまった異物な私を許して欲しい、愛して欲しいっていう、自分勝手な願いをこれ以上ない形で叶えてくれました。……本当に、大好きです。

 

そんな姉への愛おしさを噛み締めながら、いろpやかぐやお姉ちゃんに指輪や簪などを自慢していたのですが……。

 

「あ、あの……お姉ちゃん?」

 

「むー……」

 

お姉ちゃんが私を抱きしめたまま一向に離してくれないのです。……まあ幸せだから問題ないですけど!お姉ちゃん可愛い……♡ふへへぇ……♡

 

「ちょっとかぐや。気持ちは分かるけど、ツキミが困ってるでしょ。いつまでそうしているつもり?」

 

ツキミをヤチヨに取られたと思ったらしいかぐやが、独占欲とヤキモチを爆発させて、ツキミにしがみついたまま離れなくなってしまった。

 

見苦しすぎるその光景を見るにみかねた彩葉が、助け舟を出してやるが……。

 

「へ、へへへ……お姉ちゃんもっと抱きしめてぇ……♡」

 

──当のツキミさんは欠片も嫌がるどころか恍惚な表情で口元を緩めていた。

 

その表情はこの上ないほど幸せそうで、困ってる要素なんて欠片もなく。

 

それを見た彩葉は、もう勝手にどうぞと早々に匙を投げ出した。

 

……本当にこの姉妹は……ていうかツキミ、何かちょっと変わった……?

 

ツクヨミにログインする前と今とでは、何か決定的なものが違う気がする。

 

彩葉は首を傾げながら、かぐやにがっちりホールドされている彼女の顔を、変化の理由を探るように密かに盗み見るのだった。

 

そんな彩葉の視線など露知らず、むすーっと頬を膨らませていたかぐやが、腕の中のツキミをじっと見つめる。

 

「……ツキミはヤチヨと何話してたの?」

 

少しだけ寂しそうな、けれどそれ以上に私を心配してくれているようなお姉ちゃんの声に、私は胸がぎゅっとなる。

 

私はかぐやお姉ちゃんの腕の中で、そっとその小さな身体を抱き返した。

 

……前の私なら、気付けなかったけど……多分、今のお姉ちゃんは私に……へへへ、嬉しいなぁ……♡

 

──脳裏にふと、少し前のお姉ちゃんとのやりとりが蘇る。

 

『ねえねえツキミ、ツキミもこの人のこと好きなの?』

 

『……ツキミが一番好きなのは私だよね?』

 

『だよね!じゃあこの人と私どっち好き〜?』

 

──あの時は、何でお姉ちゃんがこんな事聞いてくるのか、全く分からなかったけど、今なら分かるよ。

 

「……お姉ちゃん、もしかしてヤキモチ妬いてくれてるの?」

 

「………え?」

 

嬉しそうに、だけど少しだけ悪戯っぽく笑いながらそう言ったツキミに、かぐやは思わず硬直してしまった。

 

だってかぐやから見たツキミは、いつもどこか辛そうで、愛しているって伝えても、大好きだよって全身で訴えても、それを本気で受け取ってなんてくれない子だったから。

 

どれだけ言葉を尽くしても、どれだけ強く抱きしめても、ツキミの瞳の奥にはいつも、決して消えない深い孤独と諦めが横たわっていた。

 

それを見るたびに、私は悲しくて辛くて。

 

──何より、ツキミの孤独をどうしても癒せない自分自身の無力が一番許せなかった。

 

私がお姉ちゃんじゃなかったら、ツキミはもっと幸せになれたのかな……なんて思ったこともあったっけ……あれは、辛かったなぁ……。

 

……でも、彩葉が教えてくれた。

 

──『あいつが心から笑えるのは、あんたが全力で『お姉ちゃん』をやってるからだよ! 』って。駄目なお姉ちゃんなんかじゃないって。

 

……彩葉がかけてくれたその言葉が、本当に嬉しかった。救われるほどに、嬉しかったんだ。

 

何よりもあの彩葉がそう言ってくれた事が、何よりも嬉しくて。

 

……だから私は、これから何があってもツキミのそばにいて、あの子を支え続けるんだって改めて心に決めたの。

 

……自分は誰かに愛されていい存在なんかじゃないと、心に冷たい鍵をかけてしまっているかのような、あの愛おしい妹を。

 

ツキミは私の大切な妹だよって毎日毎日伝えて……いつかツキミが自分の事を好きになってくれて、認めてくれるように。

 

これからもきっと、差し伸べた手があと一歩のところでいつもすり抜けてしまうような、そんなもどかしさと怖さをずっと胸の奥に抱えることになると思う。それでも、私はあの子のお姉ちゃんとして、ツキミとずっと一緒にいるんだ。大好きな、私の可愛い妹だから。

 

そんな風に、痛みを伴う覚悟をとうに決めていたのに。

 

それなのに、今のツキミは。

 

「どうなの?お姉ちゃん!ヤチヨちゃんにいっぱいプレゼント貰った私に……嫉妬してくれてるの?へへへ、そうだったら嬉しいなぁ」

 

──自分が、私に好かれているんだと。だからヤキモチを焼かれているんだと、心の底から嬉しそうに笑っていて。

 

太陽みたいに輝く笑顔には、かぐやがずっと恐れていたはずのあの暗い孤独も諦めも、微塵も存在していなかった。

 

そこにあるのはただ、大好きな姉に愛されていることを純粋に喜び、これ以上ないほど幸せそうに綻ぶ笑顔を見せる妹そのもので。

 

──誰かに愛されているわけがないって、いつも寂しそうに、泣きながら笑っていたあの子の表情はどこにもなくて。

 

目の前にいるのは、かぐやがずっとずっとその腕に抱きしめたかった、最高にただただ愛おしい『妹』の姿だった。

 

「それより見てよお姉ちゃん!私のきばー!カッコいいでしょー!」

 

自慢げに口元を開き、立派で鋭い犬歯を覗かせながら、無邪気に笑うツキミにかぐやは息を呑んだ。

 

「………ぁ」

 

──ツキミが、笑ってる。

 

いつもの何かに怯えるような、自分自身を責めるような、まるで今にも壊れちゃいそうな心を必死に誤魔化しながらも何とか笑顔を取り繕ってるんじゃなくて。

  

──心の底から私は今、幸せなんだって、楽しいんだって、そう全身で叫ぶように笑ってくれている。

   

誇らしげに見せてくるその表情には、暗い陰りなんて一切なくて

 

かぐやが何よりも、世界中の何を引き換えにしてでも一番見たかった『本当の笑顔』が、今、目の前で眩しいほどに咲き誇っていた。

 

……ああ、そっか……そっかぁ……っ!

 

──ヤチヨが、ツキミを救ってくれたんだ。

 

ずっと届かなかったあの子の頑なな心の鍵を、ヤチヨが全部優しく溶かしてくれたんだ。

 

そう理解した瞬間、かぐやの視界は一気に涙で滲んでいき、胸の奥でせき止められていた感情のすべてが、一気に限界を迎えて決壊した。

 

視界が涙で激しく滲むのも構わず、かぐやは両腕を大きく広げて、目の前の愛しい妹へと全力で飛びかかった。

 

「~~~~~~っやったぁーーーーー!!!!!!ツキミ~~~~~~!!!!!!!」

 

「わぷっ!?お、お姉ちゃん……?」

   

勢いよく抱きつかれて、お姉ちゃんの涙と温もりが身体いっぱいに伝わってくる。

 

「ツキミ!よかった!本当によかった!!えへへ~♪大好きだよ!!」

 

「お、お姉ちゃん……♡私も……ううん、ちゃんと伝えないとね」

 

今までは、どこか浮ついた気持ちで伝えていたこの気持ち。それはきっと、本当のお姉ちゃんを見ていなかったから。

 

心のどこかでキャラクターとして見てしまっていたから。

 

一人の人間として見てしまうと、心が耐えられなくなって壊れてしまうから、逃げて逃げて目を逸らしていた。

 

……異物な私がどうなっても誰も傷つかない。原作にいない私が居なくなっても大丈夫。

 

彩葉さえいればお姉ちゃんは幸せになれるって思い込む事で、自分の心を楽にしていた。消える為の言い訳を作り続けていた。

 

生まれ落ちてしまった苦しみから逃れる為に、せめて役に立って消えたいって言い訳。最低だったな……本当に。

 

私なしで幸せになってね、なんて……お姉ちゃんが悲しむに決まってるのにね。

 

でも、もう大丈夫だよ。だって、ヤチヨお姉ちゃんが教えてくれたから。

 

──私はお姉ちゃんの妹で、異物なんかじゃなくて、ちゃんと愛されているんだって。

 

私も、生きてていいんだって。お姉ちゃんや彩葉と一緒に居てもいいんだって教えてくれた。

 

──私の名前はツキミ。かぐやお姉ちゃんとヤチヨお姉ちゃんの妹で、この世界に生まれ落ちた一人の月人。

 

…… 異物でも、疫病神でもない。私の肩書きなんて最初から決まってたんだ。

 

──お姉ちゃんの妹、ただそれだけ。特別でもなんでもない、お姉ちゃんが大好きなだけの妹です!

 

……だから、今の私ならこの気持ちを真っ直ぐに届けられる。

 

今まで、ちゃんとした「私」の言葉で伝えられなくてごめんね、お姉ちゃん。

 

本当の気持ち、今度こそちゃんと伝えるから。

 

私の両腕で、大好きなお姉ちゃんの身体を優しく、だけどもう絶対に離さないようにぎゅっと抱きしめてその耳元で囁いた。

 

「お姉ちゃん。──愛してる」

 

「…………はえ?」

 

私の言葉を聞いたお姉ちゃんの動きが、ピタリと止まった。その顔は、何を言われたか分からないって表情で呆然としていて。

 

……あ、あれ? いつものお姉ちゃんなら、『私も愛してるよ! ツキミ!!』って秒で返してくれる筈なのに……。

 

も、もしかして……急に真面目になったから聞こえなかったとか!?やだよそんなの!やっと…!やっと伝えられるのに!!

 

こ、こうなったら伝わるまでやるもん……!

 

何やらツキミが明後日の方向へと全力で思考を疾走させているが、別にかぐやは聞こえていなかったわけではない。ただ、脳がツキミの言葉と表情を処理しきれていないだけなのである。

 

それもそのはず。何せヤチヨとの対話によって自らの強烈な自己嫌悪とぼやけた視界をある程度克服したツキミは、まだ己のギャップと破壊力を自覚していないのだから。

 

今までは子供のように『お姉ちゃん好きぃ♡』と雛鳥の如く慕っていた彼女だが、しっかりとした自己を確立した今のツキミは、♡を乱舞しつつも一人の少女としての精神性を獲得。かぐやとヤチヨを彩葉と一緒に必ず超ハッピーエンドに連れていくための覚悟がガン決まりしている状態だった。

 

チュートリアルにて、ヤチヨの乙女心をぐちゃぐちゃに掻き回したのは伊達ではない。そしてヤチヨは成長したかぐやの姿。

 

キュンとくるツボは完全に同じである。

 

まあつまり……。

 

「……私はお姉ちゃんが好き。大好き。──愛してます、お姉ちゃん」 

 

「……………………!?!?!?!? つ、ツキミっ!? えっ、ちょ……え、うぇっ!?」 

 

今までにないほど真面目な表情と声音で語られたツキミからの愛。いつものかぐやなら『あはは!私もだよーツキミ!愛してる!!えへへ~』と返せるはずなのだが、どこか大人びた妹の変わりように顔を真っ赤にして言葉が出てこないかぐや。

 

そんな姉を見て、ツキミは。

 

「……お姉ちゃんは、私のこと、好き?愛して……くれてる……?」

 

少しだけ不安そうに、そう尋ねるのだった。

 

ヤチヨから全幅の親愛で救われたツキミは、最早愛されている事を疑ったりはしない。しないが……黙り込まれると若干の不安が湧き出してくる。

 

お姉ちゃんたちを幸せにするという覚悟は決まっても、やはりツキミの根底にある自己評価は相変わらず不動の「最低値」を記録したままだ。

 

「私みたいな異物のために、お姉ちゃんがヤキモチを妬いてくれるなんて、本当に現実なんだろうか」と、一歩引いてしまう脆さがまだ残っている。 

 

だからこその、少しだけ瞳を潤ませた、縋るような上目遣い。

 

それを目の前にした妹第一のかぐやちゃんは──。

 

「そんなの……そんなの愛してるに決まってんじゃん!ツキミは私の大切な妹なんだから!大好きだよ、ツキミ」

 

本当に嬉しそうに、最愛の妹を抱きしめるのでした。

 

異界から来訪した自らを異物と称する少女と、その子の全てを纏めて愛して救済するかぐや姫。これが、ツキミとかぐや姫の物語。めでたしめでたし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ってあんたらいつまでやってんのよ!私は放置か!ずっと待ってたんですけど!?」

 

あまりにも綺麗に終わりを迎えそうな宇宙人姉妹に耐えきれず突っ込みを入れる彩葉。

 

ツキミの変わりようを観察しながら成り行きを眺めていたが、予想以上に変化していて割り込むタイミングを見失っていたらしい。

 

因みに余りにも真に迫ったツキミの愛してるを聞いて、関係ないのに一人で悶絶していたのは秘密である。

 

「……あ!ごめんねいろp!どうしてもお姉ちゃんに伝えておきたくて……許してぇ?」

 

上目遣いで懇願するツキミ。完全にかぐやの真似っこである。

 

「うっ……ま、まあ別にいいけど……」

 

「あはは!彩葉チョロー、ツキミの可愛さにイチコロじゃん♪」

 

「あーもううっさい!それよりほら、早いとこ行くわよ!まだライブまで時間あるし、色々回りたいでしょ?」

 

揶揄われて頬を朱色に染めながらも、この三人でツクヨミを回るのは楽しいかもしれないと少しワクワクしている彩葉なのでした。

 

「ライブ……!ヤチヨちゃんのライブ!!うわー楽しみ!」

 

「!……しかも今回は握手券つきだからね。倍率を勝ち取った私に感謝しなさい」

 

「む…またヤチヨ……まあツキミのこと助けてくれたし……いやでも……うううぅ!ツキミはかぐやとヤチヨどっち好き!?」

 

「!?…………う、うぅ………えっと…………………お、お姉ちゃんが好き!!」

 

「だよね!よかった!!」

 

「かぐや……あんた本当……はぁ」

 

彩葉は気付いていた。悩みに悩み抜いた末に姉を選んだツキミに。かぐやはツキミが明るくなった影響で浮かれている為気付いていなかったが。

 

「あっ、それよりツキミ!見てみて犬DOGE!」

 

「ワンっ!!」

 

かぐやが自慢気にツキミに、ツクヨミ内に連れて来れた犬DOGEを抱き上げながら見せる。

 

それを見て、ツキミは──。

 

「……お姉ちゃん。私も狼だから撫で心地いいよ」

 

グイグイと、自身の頭をかぐやの胸元にぐりぐりと擦り付けるのだった。

 

いわゆる嫉妬心である。

 

「クゥン……」

 

それを間近で眺めた犬DOGE様は、切なげに声を上げた。かなりの高性能である。

 

その庇護欲を誘う瞳と声に一瞬ぐっ…となるツキミだったが、姉の側にいるのは私だと独占欲を燃やし心を奮い立たせて。

 

「い、犬ドージ!貴方はわんこかもだけど私はオオカミ!!つまり私の方が強い!!お、お姉ちゃんの側にいるものとして……しょ、勝負だ!!」

 

ビシッと指を指して同じ犬科として勝負を仕掛けるのだった。

 

……それを何してるんだろうこの子と遠い目で見つめる彩葉と、笑いながら見つめるかぐや。

 

「わん……?」

 

突如勝負を仕掛けられた犬DOGEは、困惑しながらもかぐやの腕から降りて、ツキミの周りをクルクルと回ってみると、ゆらゆらと揺れる、銀色の長い尻尾が目に入った。

 

犬DOGEからすると、ツキミは主であるかぐやの大切な存在である。だからこそ勝負などもってのほか。

 

その為、犬DOGEは親愛の情を示す為の行為、アログルーミングを実行しようとその尾の先を。

 

「……ワンっ!」

 

パクっと咥えてしまうのでした。

 

「ひいぃぃぃぃっ!?ご、ごめんなさい!私の負けですので尻尾はご勘弁を犬ドージ様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

ヤチヨに全身を撫で回され、自分が狼である事をすっかり分からされてしまったツキミは、腹を上にして背を地に付ける、いわゆる服従のポーズをとり即座に降参するのだった。

 

「ワンワンっ!!」

 

その姿は弱き獣そのもので、彼女は自分が守ってあげなくてはならない存在だと認識した犬ドージ様は、ツキミの狼耳をペロペロと舐め、更なるアログルーミングを開始したのだった。

 

「にぃんっ!?わ、私が悪かったですから食べないで~……!」

 

「あはは!仲良くなってくれてよかった!!……彩葉は何で震えてんの?」

 

「べ、別に……っな、何でもない……!」

 

あまりにも一瞬で分からされてしまったツキミが、何故だか彩葉のツボに入ってしまったらしい。

 

「笑ってないで助けてよー!!!!!!!」

 

──この日、犬に負ける白狼がツクヨミ某所で生まれたらしい。

 

 




ここからは幸せを積み重ねていくパートですかね。いずれ来る別れの日まで。
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