お姉ちゃんはいろPと幸せになるべきだと思うの 作:いろかぐヤチは美しい
どうもツキミです…犬DOGE様に全身を毛繕いの如く舐められ、ピカピカになってしまった完全敗北負け狼のツキミです。……そのせいでただでさえ低い自尊心が更に下回ってしまい私は非常に落ち込んでいるのですが……。
「ツキミー?だいじょぶ?全身ベタベタだけど」
「ふっ…一瞬で負けすぎでしょ……っ」
……当のお姉ちゃん達は心配してくれるどころか笑って楽しんでいるんです!いろpに関しては完全にツボに入ってるし……いろはの笑った顔、見れたのはいいんだけどさ……それとこれとは話が別だと思います。
まあ……お姉ちゃんが未来で言ってた「彩葉の顔がとても綺麗でさ、すぐ好きになったんだ」っていう言葉の意味は、今の彩葉の笑顔を見て分かりすぎるほど分かったけど……流石お姉ちゃんの未来の
「……もー!少しは心配してくれてもいいじゃん!」
一瞬だけ脳裏をよぎったエモーショナルな思考と、緩みそうになった顔を誤魔化すように、私は声を荒らげた。地面に座り込んだまま未だに犬DOGE様のヨダレで濡れている髪と狼耳を不満げに震わせる。
そして目の前で和んでいた二人へと、恨めしそうなジト目をこれでもかと向けるのだった。
「私だって怒る時は怒るんだからね!幾らお姉ちゃんが世界で一番可愛くて優しくてこの世の全ての美しさを凝縮した至高のお姫様だとしても!……お、怒るんだからね!」
自分の台詞に愛が漏れ出していることにも気づかず、ツキミは必死に顔を真っ赤にして拳を握りしめた。
どう考えても、誰がどう聞いても、全く怒っているようには聞こえない。
むしろ限界シスコンの全力の賛辞と愛の告白が、語気の強さに紛れて怒涛の勢いで押し寄せているだけである。
しかし当の本人は大真面目。頑張って「私、怒ってます!」と小さな身体をプンスカと揺らしているツキミの姿に、かぐやは愛おしさが限界突破して思わず笑ってしまいそうになるが、ここで笑ったら本当に拗ねてしまうと必死に口元を裏に隠して堪えるのだった。
「……っ」
「笑っちゃ駄目だよ彩葉!」
「わ、分かってるから……!」
ツキミにバレないようにこっそりやり取りをする彩葉とかぐや。しかしこのまま黙っているわけにもいかない。
黙っていたり、笑ったりしてしまったらツキミは確実に拗ねてしまうだろうからだ。
だからこそかぐやは慌てて両手を左右に振って。
「ご、ごめんってツキミ!ほら、結構楽しそうだったしさ!それにツキミの笑った表情見れたのが嬉しくて!つい見守っちゃったんだ!ね? 彩葉!!」
「ここで私に振んなー」
無関係のとばっちりを受けた彩葉が速攻でそう返すが……。
「だって彩葉も笑ってたじゃん」
かぐやも負けじと切り返すのだった。
「いや、それは……ツキミが余りにも弱すぎて、一瞬で理解らされてるのがおかしかっただけでしょ……っ」
思い出し笑いを堪えるように口元を押さえる彩葉と、必死に言い訳を重ねるかぐや。二人の態度に、ツキミは頬をこれ以上ないほどぷっくりと膨らませて、ぷいっと顔を背けた。
「もー! お姉ちゃんもいろpも酷いよ! 私、怒ったからね! ふーんだ!」
腕を組んでへそを曲げてみせるツキミ。
……本当はそこまで怒ってないけど…あ、慌ててるお姉ちゃんも可愛いし…ちょ、ちょっとぐらいならいいよね……♡
そんな姉狂いシスコン脳内妄想を繰り広げているツキミさんとは裏腹に、かぐやは割と大焦りであった。
何せ、いつもなら自分を無条件で甘やかしてくれるあのツキミが、拒絶の仕草を取っているからだ。
こんなことは、今まで一度も起きたことがなかった。ツキミはいつだって「お姉ちゃん大好き♡」と全身で伝えてくれる最愛の妹であり、一度だってかぐやのお願いを聞いてくれなかったことなどなかったからだ。
いつも、いつでも。ツキミは私のことを最優先にして、自分のことは蔑ろにしてしまう。そんな危うさを持った妹だからこそ、かぐやは心配で仕方がなかったけれど──それとこれとは話が別だ。
大好きなツキミに拒絶されるなんて絶対に嫌だし、そんなの、耐えられるわけがない。
かぐやにとってツキミとは、世界で一番可愛くて愛おしくて、何よりも大切な、ずっと一緒にいたい言わば「半身」のような存在。
離れることなど考えられないし、考えたくもない。何があっても、ツキミに嫌われることだけは何が何でも阻止しなければならない。
──たとえ、どんな手を使ってでも。かぐやはツキミの正面へと回り込むと、今度は自分自身が縋るような上目遣いになり、ツキミの両手をギュッと必死に握りしめた。
「……ツキミ、許してえ?」
至近距離から見上げるその瞳はウルウルと潤んでおり、まるで捨てられた子犬のように愛らしく、そしてあまりにも無防備だった。
まさに宇宙一可愛いと言っても過言ではない破壊力抜群のお姉ちゃんの上目遣い攻撃。
「う……っ」
か、可愛すぎるよぉ……!お、お姉ちゃん……お姉ちゃん♡こんなの、こんなの耐えられるわけが……!
「つきみ……?」
「う、うぅ……!」
で、でも私は成長したんだ…!お姉ちゃんの事は大好きだしおねだりだって全部聞きたいけど…今の私は白狼!狼ですから!犬DOGEには負けないんだもん!
それにここで簡単に折れては白狼のプライドが許さないと、ツキミは必死に理性を奮い立たせる。
私はお姉ちゃんのおねだりを断われる人間になり……たくないよぉ!でも、ヤチヨお姉ちゃんのおねだりはちょっとアレだし……こ、断れるようにならなきゃだし……嫌じゃないけど恥ずかしいし……よし!頑張ろう!!予行練習だ!……あれ?でもヤチヨお姉ちゃんってかぐやお姉ちゃんの成長した姿だし、結局意味ないんじゃ……い、いや!これから、これから頑張りますから!
ツキミは密かに覚悟を決めたのだった。
「だ、駄目だよ! 幾らお姉ちゃんでも、そう簡単には許さないからね!」
言えた!言えたよお!……ん?そういえば何で私怒ってるんだっけ……?あ、お姉ちゃんのちょっと慌てた表情が可愛くて見たかったからだ。
……あ、あれ?もしかして私最低なことしてる……?お、お姉ちゃんを困らせてる?……お姉ちゃんの瞳、濡れてる……泣いて、るの?……あ、ああ……!どうしよう…!私、調子に乗って……!お姉ちゃんを泣かせて……!
──愛されてるからと言って、何をしても良いわけではない。
ヤチヨお姉ちゃんとの対話で、ツキミは救われた。自分がここにいて良いこと。そして、自分がちゃんと愛されていることに気付いた。気付かされた。
だからこそ、普通の姉妹同士なら当たり前に交わされるような、ちょっとした悪戯を仕掛けてしまったのだ。そんな甘えが今の自分には許されるのだと思い上がってしまった。……私は、最低だ。やっぱり私は……お姉ちゃん達を傷つけるだけなんじゃ……。
黙り込んでしまったツキミ。それは一見、怒っているようにも見えた。かぐやはそんなツキミの頑なな態度に今度はトボトボと肩を落とし、今にも泣き出しそうな、世界で一番寂しそうな表情を浮かべてみせた。
「つきみぃ……お姉ちゃん悲しいな……?」
その、ウルウルとした瞳で見つめられた瞬間、ツキミの心の中を占めていた鬱屈とした感情は文字通り跡形もなく消し飛んだ。
「つきみ……許して?」
「許しますぅ♡………あ」
「ふっ…あははっ!ツキミあんたって本当にっ……姉馬鹿にも程があんでしょ!ははっ」
相変わらずの超速おねだり陥落に思わず吹き出してしまう彩葉なのでした。
彩葉のツッコミなど耳に入らない様子で、ツキミは「ふへへぇ……♡」と再びかぐやの腕の中に自ら飛び込んでいく。
怒っていたはずの妹からの、あまりにも素直すぎる全面降伏ハグに、かぐやは一瞬できらきらとした笑顔を取り戻して、その背中をぎゅっと抱きしめ返すのだった。
「えへへ~♪やっぱツキミはお姉ちゃんの事が大好きだね!私も大好きだよ!」
「私もお姉ちゃんが大好きぃ…♡愛してますぅ……♡」
さっきまでの深刻な自責の念はどこへやら、お姉ちゃんの腕の温もりと「大好き」の言葉だけで、ツキミの脳内は瞬時にピンク色の幸せ空間へと塗り替えられてしまう。
二人の間に漂う、他者が介入する隙のない圧倒的な姉妹の結界。
そんな甘々な空間を前に、ようやく笑いが収まった彩葉が呆れたように一つ大きなため息をついた。
「はぁ……もう勝手にやってなさいよ。……って、いつまで抱き合ってんの! そろそろ本当に移動するわよ。ライブまでまだ時間あるけど、ツクヨミとか色々周りたいでしょ?」
好奇心旺盛欲深モンスターのかぐやお嬢様はツキミがキャラメイクが終わるまでずっと待っていた。本当は真っ先にツクヨミの街中に飛び込みたかっただろうに……ツキミも一緒じゃないと駄目!って言い張るんだもんなあ……変な所でカッコいいんだから、かぐやは。
……言ったら調子に乗るから言ってなんかやらないけどね。
「!ツクヨミ!!行きたい行きたい!!ツキミ、いこ!ほら、犬DOGEも!」
「わんっ!」
「ひうっ!?お、お姉ちゃんが抱っこしててね!いろpも行こ!ほら!!」
「わっ、ちょっと引っ張らないでよね!」
突然の強引な牽引に声を荒らげる彩葉だったが、繋がれた手から伝わってくる二人の体温とどこまでも無邪気な熱量に、結局は絆されてしまうのでした。
……全く、かぐやもツキミも本当自分勝手なんだから。少しは遠慮しなさいよね。
内心の毒付きとは裏腹に、彩葉の表情は酷く楽しそうに緩んでいたのだった。
何だかんだで、この二人と一緒にツクヨミを回るのが楽しみらしい。……絶対認めないだろうが。
こうして、手を繋いだ三人の少女たちは光と幻想が美しく乱舞するツクヨミの街中へと、弾むような足取りで駆け出していく──。
「わー、すごいすごいすごい!これがツクヨミなの!?」
犬DOGEを抱き上げたかぐやが、そこで初めて気付いたように仮想空間ツクヨミの常夜の街並みに目を輝かせた。
……そう言えばツキミが出て来るまでずっと湖のほとりで黄昏てたな……徹底してるというか何というか……かぐやもかぐやでシスコンよね。
「ねっ!ツキミ、どう……?」
かぐやが少し不安げにツキミに尋ねる。ツキミは恐らくヤチヨによって何かが救われた。救われた…はずなんだ。
だけど…やっぱり不安なものは不安で。ツキミが本当に笑ってくれるのか、不安で仕方なくて……。
ツキミには、笑っていてほしい。綺麗なものを綺麗だって、思ってほしい。一緒に綺麗だね、楽しいねって同じ時間を過ごしたくて。
……いつも何かを諦めているような、泣きながら笑っているツキミが、ちゃんと笑ってくれるのか……怖くて。何も出来なかった自分が情けなくて……だからもし、ツキミがこの景色を見て心の底から笑ってくれたなら……私は……。
──ようやく自分の事を、ツキミのお姉ちゃんだって認める事が出来る気がするんだ。……救ってくれたのは、ヤチヨなんだけどね……。
そんな姉の、言葉にならない痛切なまでの優しさと不安をツキミが敏感に察知しないはずがなかった。
(……お姉ちゃん。もう、心配しなくて大丈夫だよ。私はちゃんとここにいるし、お姉ちゃんの愛を全部、真っ直ぐ受け止められるようになったんだから)
繋がった手から伝わる温もりを愛おしく抱きしめながら、ツキミはかぐやの不安の霧を全部吹き飛ばすように。
「わあ……! すごい、すっごく綺麗……!綺麗だね、お姉ちゃん!いろは!!私、地球に来れてよかった!!すっごく楽しい!!」
満天の星々とデジタルな光が織りなすツクヨミの常夜の下で、ツキミは両手をいっぱいに広げ、弾けるような大音量の笑顔を咲かせたのだった。
その言葉には、かつて彼女を縛り付けていた「自分は異物だ」という暗い影も、消えてしまおうとする諦めも何一つ残っていない。
ただ一人の無邪気な少女として、大好きな姉と大好きないろはと一緒に、この世界に生きている喜びを全身で叫んでいた。
……ツキミの口から、地球に来れてよかったって言葉が紡がれた。楽しいって言ってくれた。それはかぐやにとって、これ以上ないほどの救いで。
……だってツキミは、いつも瞳の奥に孤独と諦めを携えて…泣きながら笑ってて、だけど何も言ってくれなくて……生きるのが、辛そうで……。
そんなツキミが今、自分の隣で今まで見た事のない、本当に楽しそうな表情で笑ってくれている。
その事実がかぐやの胸の奥にすとんと落ちた瞬間、胸中を占める恐怖は完全に消え去り、代わりに熱い歓喜の感情が爆発した。
「うんっ……! うんっ!! 私もツキミと一緒に来れて良かった!これからいっぱい楽しも!地球に永住だー!」
もう涙を堪える必要なんてどこにもなかった。かぐやは勢いよくツキミの首に抱きつき世界で一番誇らしげに、そして世界で一番幸せそうにきらきらとした満面の笑顔を咲かせるのだった。
「……迎えが来るまでって約束はどうなんですかねー」
永住する気満々なかぐやにボソッと呟く彩葉と言葉にギクっとするかぐや。
即座に彩葉の元に駆け寄り上目遣いでおねだりを開始するが…。
「……い、いろはぁ?」
「駄目です」
即断即決即却下であった。しかしその程度で諦めるかぐやではない。
何故なら妹と自分の幸せがかかっているのだから!
「……ツキミ!作戦dyで!」
「分かったよお姉ちゃん!」
「それもう見たわ!流石に二度は通用しないわよ!」
かつてはこの姉妹の性悪コンビネーションに引っかかってしまい、迎えが来るまででいいのね?と約束を交わしてしまった私はもういない。
酒寄彩葉は成長するのだ。完璧女子高生舐めんな!
「ねえ彩葉…かぐや達のこと助けて……?」
「う……」
──茶番だ茶番!絶対ダメ!その手はくわん!邪魔しないなら居ても良いって言ったでしょ!
「いろp…私、このまま終わりたくない……一緒に、いたいな……?」
──言うべき言葉は次から次に頭に浮かんでくるけど。
「う……ぐ……っ」
「「もっと彩葉と一緒に居たいな……?」」
「〜〜〜~っあーもうっ!だったらせめて働け!生活費とか割り勘してくれるなら居ても良いから!!」
──すでにKO済みの私の口からは、こんな負け惜しみしか出てこなかった。
「「えっ?いいのぉ??やっさしー♪」」
「だから白々しいっての!いい加減にしろ地球外生命体ども!!」
やっぱいつか絶対追い出してやる!そして元の完璧だった私一人の生活に戻ってやるんだから!!
──近い未来でそれが叶う事を、まだ彩葉は知らない。知っているのは、ヤチヨとツキミだけだ。……確定した未来は、変わらない。
「「あー!また宇宙人差別したー!酷ーい!訴えてやる~♪」」
「シンクロすんなっ!ああもうっ…ほんとなんなんあんたら……!」
「かぐやだよ♪」 「ツキミです♪」
「しばくであんたら」
おちょくりまくって来るエイリアンシスターズに思わず京都弁が出てしまう彩葉だった。
「はぁ…まあいいわ。それよりほら、早く行くわよ。ライブまでまだ結構時間あるけど、どうせあんたら遊び回るんだし」
特にかぐや。ツキミが明るくなって何の憂いもなくなった今、この猪突猛進遊び大好きお姫様が止まるわけがない。
案の定、彩葉の懸念をそのまま形にしたように、かぐやのテンションは早くも天井を突き破りかけていた。
「そりゃ遊ぶっしょ!だってこんなおもしろそうなものが死ぬほどあるんだもん!ほら、ツキミ!行こ~♪」
「う、うん!へへへ…お姉ちゃんとお出かけ……♡幸せぇ……♡」
「平常運転で安心したわ…転ばないでよー」
繋いだ手をブンブンと振り回しながら、ツクヨミの常夜の街へと文字通り猪突猛進していくかぐや。
そして、その勢いに振り回されつつも、お姉ちゃんから注がれる無条件の愛と温もりに早くも脳内をピンク色に染め上げているツキミ。
完全に最初からフルスロットルな宇宙人姉妹の後ろ姿を追いかけながら、彩葉は早くも呆れと引率大変だなあと小さくため息をつくのだった。
「うお、すげー!滅茶苦茶色々あるじゃん!おもろそー!」
突撃するかと思いきや急停止し、あんぐりと口を開け放ちながら、棒立ちで辺りを見回すかぐや。ああ…これもツクヨミ初ログインあるあるだ。
景色に目を奪われて中々街に入れないんだよなあ…七色に輝く夜景、名物の太鼓橋、ファンタジック平安京とも呼ぶべき和の街並みとか…月見ゾーンとか花畑コーナーとか花火エリアとかも見るべき場所は無限にあるけど…全部は無理だし、カフェとか出店で誤魔化そう。
「良いからいこ。かぐや、ツキミ」
歩みを進めようとしたその時。
「──初ログインおめでとう!ツクヨミではみんなが表現者!君も何かをして人の心を動かしたら、運営から『ふじゅ~』が貰えるよ☆」
初ログインイベントが発生し、FUSHIが現れて説明を開始した。ツクヨミ内で使える仮想通貨ふじゅ~についてだ。簡単に言うと、ゲーム内の衣装だったり、何かを依頼したり投げ銭などに使える物だ。現実の通貨にも変換可能で、人気ライバーなどはそれだけで悠々自適な生活が送れるらしい。私のような取り柄のない人間には無縁の話だけど。
「まずは初ログインボーナスをプレゼント!ふじゅ~を使って君の好きなクリエイターを応援しに行こう!」
チャリンチャリン♪とかぐやとツキミの元にふじゅ~コインがプレゼントされていく。
「これで色々買えんの?すげー、おもろー!」
「無駄遣いしないようにしないとね。お姉ちゃん」
「よく言ったわよツキミ…!」
姉が絡まなければ割と常識ある方なツキミは、彩葉にとっては仲間である。姉が絡むとぶっ壊れるが。
「じゃあ行こっか!どこから……ツキミ?」
チャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリン♪
「あ、あれ?…お姉ちゃん、止まらないんだけど」
チャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリン♪
「は!?何これ、どうなってんの!?バグ!?」
──かぐやのログボはすぐに止まったのだが、ツキミのログインボーナスがバグり散らかしている謎の挙動を見せている。
「い、いろは!こう言うのってよくあるの!?」
「ないわよ!何が起きてるん!?」
「まあ良くない?損はないっしょ?」
楽観的なかぐや、焦る彩葉とツキミ。
しかしここでツキミにある仮説が浮かんでくる。
……このログインボーナスってヤチヨお姉ちゃんが個別にやってるんだよね?ヤチヨお姉ちゃん…も、もしかして……いやでも…そんな露骨な贔屓、するかな……?
── 『……うん……!もうツキミと、離れたりなんてしない……!!今度こそ、一生一緒にいる……っ』
……やるかも。ヤチヨお姉ちゃんは…私と8000年間会えなくて…しかも目の前で消えちゃって……うん、私が同じ立場だったら…やっちゃうかも。
── だって、私だったら8000年分のプレゼントを贈りたいから。
「つ、ツキミ!これどうする?他の人とかにバレたら不味いんじゃ…や、ヤチヨに相談する?ツキミならヤチヨとも話せるんじゃ……」
……って違う!今はそれどころじゃない!何とか誤魔化さないと!えっとえっと……!
チャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリン♪
「あ、あのあの!バグ!バグじゃないかなぁ!?ほら、私って月人だし!?お姉ちゃんもでしょ!?二人分の月人はデータ処理能力超えてバグったんじゃないかなぁ!?」
無理があるだろうけど、これしかないよぉ!お姉ちゃん、贔屓が露骨すぎるって!……う、嬉しいけどさ!
「いやいやいや!そんなことあるん!?」
「実際起きてるんだもん!あるんだよ!」
「納得出来へんわ!アホか!」
いやでもそう言い切るしかないもん!だって私とヤチヨお姉ちゃんの関係がバレたら……全部壊れちゃうから……。
ツキミの一瞬の翳りを察したかぐやが、話題を逸らすべく口を開いた。
「……彩葉。別にいいんじゃない?だってほら、FUSHIも笑ってるし」
「……え?」
かぐやの言葉を聞き、FUSHIの方を見ると。
「ツキミちゃんはヤチヨにそっくり記念だからね☆特別サービスだよ!他の子には内緒だよ?さらばーい!」
FUSHIは現実的なエラー対応をするどころか、星とハートエフェクトのふざけたウィンクを散りばめ、そのまま光の粒子となって煙のように消えてしまった。
完全に運営公認と言うか…ヤチヨ様による力技の極みのゴリ押し対応である。
「……は? 記念って何よそれ! 特例にも程があるでしょ!!」
消え去ったFUSHIの残像に向かって、彩葉の鋭いツッコミがツクヨミの夜空に虚しく響き渡るのだった。
いずれ来る絶望パートが書きたくなさすぎて逃げてました。すいません。
月見ゾーンと花畑ゾーンと花火エリアはオリジナルです。次回かその次辺りに出ます。