お姉ちゃんはいろPと幸せになるべきだと思うの 作:いろかぐヤチは美しい
「ああ、怖くない怖くないよー。ほら、べろべろべろ〜」
「きゃはは!」
「ええええええん!」」
「ああっ!?泣かないで泣かないで!こっちの子は笑ってくれるのになんで!?」
──どうも、ツキミです。突然ですが私は今、世界一可愛いお姉ちゃんの将来のお嫁さん(もしかしたら旦那さまかもしれない)のお家で絶賛あやされ中です。
「ほ、ほーら高い高ーい、楽しいでしょー?」
「ふやああああああ!」
「お願いだから泣き止んでー……!」
……泣きじゃくる赤ちゃんお姉ちゃん……可愛い♡
いろpも必死に泣き止ませようと奮闘してて…可愛い♡
その上お互い凄く優しいんだから、本当にもうお似合い夫婦というか何と言うか……ふへへぇ……早く結婚してぇ……♡
「こ、これ以上どうすれば……えーっと……抱っこ…はしてるし、縦抱き…もしてるし、後は……」
私がそんな風にお姉ちゃんといろpの無自覚の馴れ初めに心震わせていると、何かを決心したような表情をした彩葉の方から。
「大切なメロディ──は流れてるよ──あなたのハートに──」
──そんな美しい音色が聞こえてきて。
……ああ、やっぱり綺麗だなぁ……この歌声に、この歌詞。
ずっと、残ってたんだもんね……。
……ごめんね、お姉ちゃん。
「すぅ…すぅ……」
「や、やっと泣き止んだ……ヤチヨパワー、すげー」
「うぅ…!ごめんね……!ごめんねお姉ちゃぁぁぁん……!!」
「な、何よ急に…別にあんたが謝る必要………うえっ!?」
漸く赤ちゃんが泣き止み、これで一件落着と安堵していた彩葉の背から、突如として響いてくる涙ながらの少女の泣き声。
それに対して生来のお人好しを発揮し、咄嗟に慰めの言葉をかける彩葉だったが何かがおかしいと思わず振り返るとそこには──。
「ありがとう…!ありがとうねいろpぃ……!」
「は、え……は?」
──先程までギャンしていた赤ん坊の片割れが大きくなった状態でそこにいた。…‥裸で。
……何を言ってるのか分からないと思うが、居たものは仕方がない。仕方がないのだ。
年は十歳ほどだろうか。腰まで伸びた艶やかな銀髪、若しくは白髪が乱れるくらいの大泣きをかましている。そのせいで金と銀が混じり合ったような、綺麗な瞳が赤みを帯びて台無しに──。
「って違う違う!……いやでも……マジで何事……?やっぱ徹夜続きで夢でも見てるんじゃ……これもまさかヤチヨパワー……?ヤチヨすげー……」
ゲーミング電柱に遭遇してからの非現実的極まりない出来事の連続に、妙な方向に意識を飛ばし、中々戻ってこない彩葉を見てツキミは思わずこう言ったの。
「?どうしたの?いろp」
「こっちのセリフなんですけど!?てか何いろpって!?そもそもあんた達一体何者なわけっ!?」
「何者って……えっ!?あれ!?何で私成長してるの!?」
「こっちが聞きたいんですけど!?」
「そ、そんなこと言われても心当たりなんて……あっ」
……もしかして、記憶がないお姉ちゃんと違って私の成長って物凄く早いんじゃ……いろpとヤチヨちゃんのデビュー曲を聞いて情緒が天元突破した結果、滅茶苦茶興奮しちゃったし……もしかしてそれが原因っ!?ま、まずい…!まずいよこれ……!!この後の展開は……!
「今あっ、って言ったって事は心当たりがあんのね?……とにかく、厄介事は勘弁なの。赤ちゃんじゃなくなったんなら早くここから…ってその前に服を……」
ほらやっぱり!いろpは底抜けに優しいけど、目の前で急成長する謎生物を目の当たりにしちゃったらこうなるよね……!
まだ全然絆も芽生えてないし……お姉ちゃんならともかく私だし……。
「ちょ、ちょっと聞いてんの?……た、確かに拾ったのは私の責任だけど……それとこれとは話が別で……」
──お姉ちゃんといろp……いろはの物語が私なんかのせいで壊れちゃうなんて……嫌だ。
「……ま、まあ本当に困ってるなら、少しぐらいなら……いいんだけど」
お姉ちゃん達の物語は、私が命を賭けてでも守らないと……!
グッ、と密かに決意を固める名誉いろかぐヤチ過激派のシスコンシスター。
「……ちょっと、話聞いてる?」
いいえ、ツキミさんは彩葉さんのお話を一切聞いていません。
彼女は今必死なのです。
この状況を打破する為に私が出来ること……あっ!そうだ!!
いろpに一番有効な手段……あるじゃない。
思い立ったが吉日、早速ツキミはゆっくりと彩葉の方へと顔を向け。
「うん…分かった……迷惑かけてごめんね……」
──消え入りそうな声でそう言った。
「……は?いやその…え?何が分かったの?」
「……お姉ちゃん……行こ……きっと、きっと私が守ってあげるからね……」
「……あ、あの」
私はゆっくり、ゆっくりと最愛の姉の元へ歩いていき。
「大丈夫だよ…きっと私が言い表せないほど凄惨な末路を迎えたとしても、お姉ちゃんだけは幸せに生きていけるよう頑張るからね……」
いろpに聞こえるような絶妙な声量ですやすや寝ているお姉ちゃんに優しく語りかける。
すると案の定──。
「う……くっ……」
……もう少しかな?やるからには全力でやるよ!
「ぐすっ…お、お姉ちゃん……!わっわたしっ、わたしがちゃんとっ……大人になるまで、守るからねっ……!!」
「………………」
「じゃあ…さようなら……少しの間だけど、匿ってくれて嬉しかったよ……元気でね?」
私は目尻から溢れ出しそうになる涙をソッと手で拭いながら、お姉ちゃんを抱えて玄関の方へと歩き出し。
最後に。
「ありがとう。……いろは」
「~~~あーもうっ、その子が大きくなるまでだからね!?」
その言葉が聞きたかったの!流石いろp!好き♡
「え!?いいのぉ?やったぁ!!いろpやさし〜♪」
「白々しいっ!タチ悪いわよあんた!!」
「いろpの優しさを信じてたんだよ?……本当に、ありがとうね」
「だから何よその呼び方……そもそも何で私の名前……」
「いろpはいろpだよ!……本気で嫌なら、やめるけど……だめぇ?」
「うっ…くっ……ま、まあ呼び方ぐらいなら好きにすれば?」
「いろpチョロいね。絶対お姉ちゃんに押し切られるよ」
「うっさい!あと早く服着てお願いだからっ!!」
────そんなこんなでギリギリ首の皮一枚繋いだツキミちゃんなのでした。
……あっ、まだもう少しだけ続くよ〜?もうちょっとだけね!ヤオヨロ~♪
──────
「それで、あんた達は一体何なの?お姉ちゃん…って言ってるからには妹なんだろうけど……」
酒寄彩葉が色々詰問している中、当のツキミは割と上の空であった。
なぜならその手の話は自分ではなく、彩葉とかぐやが交わすべき大事なやり取りだと思っているからだ。
そもそも今の彼女の興味は彩葉ではなく──。
「ちょっと聞いてる?」
「……へ?あっ、うん聞いてるよ?へへへ」
「(絶対聞いてないでしょこいつ……)」
「(お姉ちゃんがほんの少しだけ歳月を重ねた姿……!是非とも近くで瞼の裏に焼き付けたい……!)」
──神殿に鎮座してるヤチヨ像ただ一つだけだからである。
当然そこまで露骨だとさしもの彩葉もはいそうですかと流すわけにもいかない。
「……そんなに気になるなら、近くで見てみる?」
「えっ!?いいの?ありがと、いろp!!」
満面の笑みで心底嬉しそうに笑うツキミの笑顔を見て、思わず可愛いと思ってしまいそうになった自分の思考を必死で振り払う。
……騙されるな私!
「うわぁ……!」
──だけどヤチヨ像をキラキラした目で見つめる彼女はやはり可愛っ……くない!危ない騙されるところだった……この子は得体の知れない存在なんだから、あんまり心を揺らすわけには……。
「ねえねえ!この子、名前はなんて言うの?」
「
「ほへー…ヤチヨちゃん……ヤチヨちゃんかぁ……そっか……素敵な名前だね!……私もファンになっちゃったかも……」
「……まだ配信も歌も聞いてないのにもう推しになっちゃったの?」
「え?だって…可愛くて綺麗で……今の姿を見るとちょっと、アレなんだけど……でもやっぱり私はヤチヨちゃんが好きぃ……♡」
ヤチヨパワーすげーと改めて思う彩葉なのであった。
「ふ、ふーん……配信とかもあるけど…良かったら見てみる?」
「!見る見る絶対見る!!ありがと、いろp!!」
「はいはい分かったから大声出さない!……あとやっぱりいろpってなんなの……?」
ぼそっと呟かれたその疑問の答えは、天真爛漫な彼女が目覚める時に知ることになるだろう。
「……因みにあんたのお姉さんが大きくなるまでどのくらい掛かるの?」
「うーん…二、三年くらい?」
「は!?嘘でしょ!?」
「嘘だよ?」
「なんなのこいつ……!」
─────彼女達の物語はまだ、始まったばかりである。
早くかぐやちゃんとヤッチョと彩葉ちゃんのイチャイチャが見たいです