お姉ちゃんはいろPと幸せになるべきだと思うの 作:いろかぐヤチは美しい
「──で、あんたらは結局どこから……」
来たのと続けようとする彩葉だったが……。
「ねえねえツキミッ!何これ?」
「これはね、オムライスって言うんだよ!ふわふわ卵でとっても美味しいの!!お姉ちゃんも絶対気にいるよ!!」
「おーすげー!!超うまそうじゃん♪」
「へへへ…二つも買ってきちゃったから、全部お姉ちゃんが食べて?」
「えー?折角だから二人で分けようよ!……一緒食べよ?」
「お、お姉ちゃん……♡」
……聞けよ、話を。
当の二人は全く話を聞いておらず、姉妹同士で何やらわちゃわちゃとしているのだった。
「この黄色いのが卵?これ使って食べんの?おもろ〜」
「いろpが買ってくれたんだよ?」
「そうなの?……彩葉!ありがとー!!」
「あ、ああどういたしまして……じゃなくて!!」
満面の笑みで素直にお礼を言われて、思わず普通に返してしまったがそうじゃない。そうじゃなくて……!
「それでっ!あんたらはっ!!結局っ、どこから来たの!?」
いい加減答えろと強めに問い掛けると、問われた当人達は顔を見合わせ。
「「どこって……月?」」
何を当たり前の事を聞いているのかと言わんばかりの表情で、空を指差しそう言った。
「息ぴったり……ほんと何なのよ、あんたら……!」
──散々引っ張ったのにも関わらず、あっさりと空を指差す謎姉妹達に翻弄され続ける彩葉なのでした。
── ── ── ── ──
どうも、ツキミです。遂にお姉ちゃんといろpが運命の邂逅を果たしました!!感無量でございます……!!
「はぁ…もう良いわ……取り敢えずいただきます」
「?い、いただきます」
ああ…!お姉ちゃんがいろpの真似っこしてる……!!可愛いぃ……♡この二人の幸せの為なら命だって簡単に懸けられるぅ……♡
「うまっ!?何これ超うまい!!」
「それは良かったですね……ツキミ、あんたは食べないの?」
「へ?私?……私はこの光景を見てるだけで胸とお腹が一杯になってぇ…うぇへへへ……♡お姉ちゃん可愛い……♡」
「あ、ああそう…それは何よりです……」
「え〜!?何勿体ない事言ってんの!?これ超美味しいのに!ほれ、ツキミも食べてみ!」
目の前で繰り広げられる理想郷でお腹一杯になってる私に、お姉ちゃんがオムライスを差し出してきて……。
「わ、私はいいよ〜お姉ちゃんが全部食べて?その為に二つも……」
「はい!あーんってしてあげるから!!」
「食べるぅ……♡」
先程まで渋っていたくせに、姉にあーんしてあげると言われた途端目をハートにして即座に意見を翻すツキミに対してこいつチョロすぎるだろ……と少し心配になる彩葉。
……自分もツキミにおねだりされて、全部断れなかった事は忘れているらしい。
「ツキミ!あーん」
「あーん……♡んむっ!?ん、んふふふふっ……ふへぇ」
「ツキミっ!?」
「ちょっ、どうしたの!?もしかしてアレルギーとか……!」
姉が口元に運んだオムライスを食した途端、目をグルグルさせてぶっ倒れるツキミに、何か不味かったのかと慌てて駆け寄る二人だったが……。
「う、うへへへぇ…お姉ちゃん……好きぃ♡」
──目をハートにしてそんな事を呟き続けるツキミを見て。
「何だ…限界化しただけか……心配して損した……」
何時もの発作が出てるだけだと、胸を撫で下ろし一安心する彩葉に対し。
「げんかいか?何それ?……ツキミ、大丈夫なの?」
何故ツキミが気絶したのか分からず、不安な表情を浮かべる少女に彩葉は。
「ああまあ…簡単に言うと幸せすぎてキャパオーバーしちゃったみたいな感じだから、すぐ起きると思うわよ。……本当、愛されてるわねあんた」
──ツキミが側に見当たらなかっただけで泣きそうになっていた彼女を思い返し、またそうなられたら堪らないと、ほんの少しだけ陰った表情を見せ始めた彼女を安心させる為に、柔らかな微笑を浮かべながらそう語ったのでした。
それを受け少女は──。
「え?そう?やっぱりそう見える?そっか〜!えへへ〜♪」
嬉しそうにその可愛らしい顔を綻ばせるのだった。
……本当、似た物姉妹なんだから。
微笑ましい彼女らの関係性を見て、財布に厳しいパンチを喰らったけどまあいいか……と若干思い始めている自分に少し呆れながら、未だ幸せそうに横たわるツキミを膝に乗せ、食事を再開する少女に。
「……あのさ、月から来たって言ってたけど……これに心当たりとかあったりする?」
──タブレットに『竹取物語』の絵本を映して見せた。
「たけとり?……なにこれ?」
「竹取物語。……月からやって来たお姫様が竹の中から出てきて、翁が拾って育てたり、結婚迫られたりとか……まあ色々ごちゃごちゃありますって感じのお話」
「けっこん?」
可愛っ……くない!断じて!!純粋無垢なソレに一瞬やられそうになったが、何とか正気を保つ彩葉と──。
「お姉ちゃん、結婚って言うのはね……」
「うわっ、急に復活すんな!こわっ」
「おー!ツキミ!!おはよっ」
──姉と彩葉が何やら素晴らしい会話をしている事に気付き、即座に現世に舞い戻ってくるツキミ。
彩葉は予測不能な彼女の行動に驚いていたが、姉の方は何かもう普通に受け入れていた。……これも家族の成せる技なのだろうか?
「でー?ツキミ、けっこんってなんなのー?」
「……結婚はね、一番好きな人とずっと一緒に居るための約束を交わすこと……かな?少なくとも私はそう思ってるよ」
お姉ちゃんといろはみたいに。
そんな想いを込めながら、私なりの結婚観を語ると……。
「へー…じゃあじゃあ!ツキミと私は結婚してるってこと!?」
お姉ちゃんが嬉しそうにとんでもないことを言い始めた……!
「えっ!?ち、ちがっ、違うよ!?私とお姉ちゃんは結婚してないよ!?」
その勘違いは不味いと、私は慌てて否定するのだが。
「え〜?何でなんで?だってツキミと私は一生一緒に居るじゃん。……それがけっこんなんじゃないの?」
う、うぅ……!嬉しい……嬉しいけど違うんだよお姉ちゃん……!!
お姉ちゃんが結婚するのは私なんかじゃなくて……!!
「だ、駄目っ!駄目なのっ!!結婚は、一番大好きな人とするものなのっ!!」
「……私はツキミの事好きだよ?それでも駄目なの?」
「……だ、駄目だよ……だって私は……」
「……ツキミの一番は、私じゃないの?」
──悲しそうな表情を浮かべながら、そう問いかけてくる姉に私は…私は……!!
「お姉ちゃんの事は大好きだけど…その……結婚はやっぱり大切な人としなきゃだから……」
「ツキミは……ツキミは私と結婚、嫌なの……?」
……う、うぅ…………!!
「つきみぃ……」
せ、説明が…説明が難しすぎるよぉ……!!
「……い、いろp!お姉ちゃんに結婚って何か教えてあげて!!」
「……は!?ここで私に振るのっ!?」
ここに至るまで散々好き放題してきたツキミが、追い詰められてワタワタしているのが新鮮で、少し面白がりながら成り行きを眺めていた彩葉だったが、急に丸投げされて逆に慌てる立場になった。
「だ、だってだって……!い、いろpぃ……助けてぇ……?」
「うっ…ぐっ……!し、仕方ないわね……」
涙目で上目遣いは卑怯でしょ……とまたもやおねだりに押し切られた彩葉が、ツキミに代わり口を開く。
「……良い?そもそも姉妹で結婚なんて出来ないの。……分かる?」
「……何で?」
「何でって…法律的にそうだから……?」
「ほうりつー?……じゃあ結婚ってなに?何で結婚すんのー?」
そんなの私が知るわけないでしょ…と口を突いて出そうになった言葉を何とか押し込め、目の前の少女を納得させる為の答えを自分の中で導き出し。
「……元々家族じゃない人と、家族になりたいから…とか……?」
──自然と湧いてきたその結論を静かに口にする。
それを聞いて少女は。
「おー…じゃあ私が彩葉と家族になりたいぐらい好きになったら、結婚してくれるってこと?……それが結婚?なるほどー」
漸く納得が言ったと変なことを言い始めた宇宙人。
……いや何言ってんの!?
「は!?なんで私!?だからさ……!」
そもそも法律的に無理だからと続けようとする私を遮って。
「そう!そうだよお姉ちゃん!!正解だよ正解!!さすがお姉ちゃん!!」
「えへへ〜それほどでも……あるかも?私超天才〜?」
「天才だよ天才っ!お姉ちゃんはいろpと結婚するのが正解なのっ!!お姉ちゃんは賢いね!!」
「いや正解でも賢くもないから!!甘やかすな姉バカ宇宙人っ!!!!」
「「酷〜い!宇宙人差別だ!!訴えてやる〜!!」」
「シンクロすんなっ!ああもうっ…何なのよあんたら本当にっ……!!」
「息ぴったり!」 「やったねっ!!」
イェーイとハイタッチをかましているエイリアンシスターズ達に、今日何度目か分からないツッコミを入れる彩葉。
「それで〜?お話はどうなるの?」
……はい?あ、竹取物語の話か。……めっちゃ急カーブで話題戻すじゃん。
「えー…お迎えが来てー、翁たちが引き渡すまいと戦うも空しく、姫は羽衣を着せられて、地球の事は忘れる。で、帰る」
「おー…で、続きは?」
「ない。終わり、めでたしめでたし」
「え、月に帰って終わり?なにそれ、全然めでたくないじゃん!かぐや姫絶対不幸じゃん!!超バッドエンド!!!!しかも、何か良い話風になってるのが許せないよー!!ねっ、ツキミもそう思うっしょ!?」
「え?う、うん……"かぐや姫"は、確かにバッドエンドだね」
「だよね!バッドエンドやぁーだぁー!!」
「いや…これは、そういうお話だから」
呆れながらそう語るいろpの後ろで、やっぱり納得いかないのかお姉ちゃんは。
「バッドエンド、や〜だ〜♪ハッピーなのが、い〜い〜♪」
床に転がりジタバタしながら歌い始めて…うっ……今そんな場面じゃないの分かってるけど……か、可愛い……♡
そんな私達を尻目に彩葉は。
「どうしようもないじゃん。暴れたって、歌ったって、決まってることが変わるわけじゃないし」
そして自分にも言い聞かせるような声色で。
「受け入れて覚悟するしか、ない」
──そう言い切った。
「………………」
あっ…お姉ちゃんが今まで見たことない表情してる……見惚れるような、ぽーとしてる様な……そうだよね、ここでお姉ちゃんはいろはのこと……。
漸くここまで辿り着けた、その安堵を噛み締めている私の隣でお姉ちゃんは忽然と立ち上がり。
「よし決めた!自分達でハッピーエンドにする!そんでハッピーエンドまで彩葉も連れてく、一緒に!!」
──指を三本立てながら、堂々と彩葉に宣言したのだった。
……待って?三本?自分達……?
…えっ、お姉ちゃん……私も入れてくれ……!
「ハッピーエンドいらない、フツーのエンドで結構です」
「うそうそうそ!なわけないでしょ?」
お姉ちゃんといろpが何やら尊いやり取りを行なっているが、今の私はそれどころじゃない。
だって…だって……お姉ちゃん……!私も一緒にハッピーエンドまで来ていいよって言ってくれた気がして……!そんなわけないんだけど……!!でも…………あっ♡
「お、お姉ちゃぁぁぁぁぁぁん…………♡♡♡」
無理♡意識保てないっ……♡お姉ちゃん大好き……♡
「ちょっ、またなの!?何事っ!?」
「ツキミっ!?さっきから何かおかしくないっ!?大丈夫!?」
───バッドエンドかハッピーエンドか、この物語の結末は果たして─────。
ハッピーエンドがいいなぁ……。