お姉ちゃんはいろPと幸せになるべきだと思うの   作:いろかぐヤチは美しい

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私の罪

「ふんふんふ〜ん♪……おっ、これなんかおもろそー!買っちゃお!!」

 

「……………」

 

どうもツキミです。いろpが学校へ行ってしまったということで、暇を持て余したお姉ちゃんがいろはのpcで買いたい放題やっちゃっております。

 

「料理もしたいし材料も……買えたっ!これ便利だなー」

 

いろpが死ぬ気で貯めたお金が……湯水の如く消費されていきますね……。

 

「………………………………」

 

改めて見ると、さすがにいろp可哀想な気が……ご、ごめんねいろは。

 

……け、けど!ここで失われたものより多くの大切なものをお姉ちゃんはいろはにプレゼントするわけだし……し、仕方ないよね!ここでお姉ちゃんが思うがままに行動しないと、ツクヨミも胃袋を掴むも出来なくなるわけだし……必要なことなんだもんね!!

 

私は自分にそう言い聞かせ、続きを……。

 

「……ツキミー?さっきから何してんのー?」

 

心の平穏を保つために私がずっとやっている事を、遂にお姉ちゃんに言及される。

 

「何って………そ、掃除?」

 

「そうじー?……何で?」

 

「………か、雷が落ちてきそうだから…………?」

 

「外晴れてるよ?」

 

「……そうだね」

 

変なのーとカラカラ笑って、お姉ちゃんは再びネットショッピングへと舞い戻って行くのでした。

 

……可愛いから許されるよね、うん!お姉ちゃんの可愛さの前では全ての罪が帳消しになる……だって可愛いんだもん♡

 

「このスマコンってやつ……欲しい!……あれ?買えない……何でー?」

 

…………………えっ。

 

「お、お姉ちゃん?どうしたの?」

 

とてつもなく嫌な単語が聞こえてきたような気がして、そそくさと姉の近くへと駆け寄る。

 

……スマコンが買えないとか、聞こえた気が……。

 

「いやー、これ買おうとしたんだけどさ〜……何でか知らないけど、買えないんだよねー。……ツキミ分かる?」

 

お姉ちゃんはそう言って私にパソコンを向けてきて──。

 

「……お姉ちゃん、注文個数が二つになってるから残高不足で買えないんだよ。……一つにしたら、買えるんじゃないかな」

 

──その画面に映る光景に私は心底安心したのでした。

 

よ、よかった……!スマコンが買えないなんて何事って思ったけど、ただの入力ミスだった……!!

 

「えー?けど一つだけだったらツキミの分ないじゃん!それは違うっしょ!!」

 

「お、お姉ちゃん……♡」

 

入力ミスじゃなくてまさかの私のため……♡う、嬉しい……。

 

「んー……何とかならないかなー」

 

姉の優しさに改めて悶え苦しむツキミを尻目に、絶対に姉妹で同じ物を遊びたいかぐやは色々なサイトを高速で巡回し始め、遂に──。

 

「……おっ、これなら買えるじゃん!買っちゃおー」

 

お目当てのものを見つけたと高らかに勝利宣言をかますのでした。

 

「へへへ…お姉ちゃん優し……い?……お、お姉ちゃん?今買えたって……何が?」

 

「何って……ほら、スマコン!1000円のやつあった!!」

 

「せっ!?……そ、それって詐欺とかじゃ……い、いろpに怒られるよ!出品者情報見せて!!注文取り消し……!!」

 

「わぷっ!?」

 

本来の歴史にはなかった姉の行動を、私は慌てて無かった事にしようと──。

 

「…………あ」

 

「つ、ツキミ……お、重い…………」

 

──したのだが、そこに書いてある名前に思わず身体が停止してしまった。

 

出品者アカウントを示すその欄にはこう記してあったからだ。

 

──── 『umiushi8000』と。

 

「これ、もしかして……ヤチ──」

 

「つ、ツキミ……!か、かぐやちゃん潰れちゃう……!!おごご」

 

「え?…‥!?ご、ごめんお姉ちゃん!大丈夫!?」

 

余りの衝撃に停止していた身体と心が、姉の苦しむ声によって再始動する。

 

「う、うん大丈夫大丈夫……ツキミも大きくなったんだね……」

 

「か、変わってないと思うけど……本当に大丈夫?痛いところとかない?」

 

「ツキミ心配しすぎー、あはは」

 

あっけらかんと笑う姉の様子に、私はどこも問題なさそうだと胸を撫で下ろすのでした。

 

……それにしても、umiushi8000。

 

……このタイミングとこの名前、金額とかどう考えてもヤチヨお姉ちゃんだよね……どうして?何でこんな……色々問題とか、あるだろうに……もしかして………私のため……だったりするのかな……もしそうだとしたら……ちょっと、ううん……かなり……。

 

「………嬉しいな」

 

「え?何が?」

 

「あっその……す、スマコン?私の分も見つけてくれてありがとねお姉ちゃん!」

 

「そんなことお姉ちゃんとして当たり前だよ!ツキミと一緒遊びたいもん!!」

 

「お、お姉ちゃん……♡」

 

───何やらきゃっきゃとはしゃいでいるが、使っているお金は全て酒寄彩葉さんの大事なポケットマネーである事を忘れてはいけない。

 

………悪魔的姉妹である。

 

─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ───

 

「ふんふんふ~ん♪」

 

未だにネットショッピングを楽しんでいるかぐやをよそにツキミは──。

 

「………………♪」

 

ヤチヨが自身に贈り物をしてくれたかもしれない事実に、大変ご機嫌な状態なのでした。

 

お姉ちゃん…配信の時もそうだったけど、私のこと覚えててくれてるのかな………えへへ、もしそうだとしたら嬉し──。

 

──本来のヤチヨならこんな行動はしなかった筈だよね。正史とのズレを生んでいるのに何で楽しそうにしているの?(お前)にそんな資格あると思ってるの?

 

───浮かれていた心が、一瞬にして引き戻される。私自身を責める、私の声。

 

幸せを感じるなんて許さないと、侮蔑と苛立ちを含めた……そんな声。

 

………………私はただ、ほんの少しだけ嬉しいって…………思っただけで……………楽しそうに……なんて………………………。

 

──正しい道筋を邪魔しているのは誰?在るべき流れを乱している疫病神は誰なの?

 

──自分自身に言い訳なんてしても無駄、容赦なく責め立てる声は一切緩む事なく、私の罪を糾弾してくる。

 

……………………やく……びょうがみ…………それ………は…………………。

 

──そう、(お前)だよね?……異物である(お前)は生きてるだけで歪みを生む。……その歪みが、致命的にならない理由がどこにあるの?楽しそうにするな、(お前)にそんな資格ないんだから。

 

───その通り、その通りだ。私に幸せなんて絶対に許されない。

 

脳裏に響く声と、私の気持ちが重なっていく。

 

──姉を見捨て、目を逸らし、変えられたかもしれない未来、その事実から逃げて逃げて逃げ続けた私に価値なんてない。

 

………………ごめん……なさい…………。そうだ……私なんて、最初から──。

 

生まれてこなければ、この世界は本来の歴史通りに問題なくハッピーエンドに辿り着けていただろうに余計なことを。……お姉ちゃん達が幸せになれなかったら、それは私が生まれてきたせいなんだよ?忘れたの?分かってるの?

 

……忘れない、忘れてないよ……ちゃんと覚えてるよ……。

 

──どこまで行っても世界の異物であり、邪魔者にしかなれない。それが(ツキミ)だってことを。

 

…………分かっ…てるよ……そんなこと……。

 

──ツキミが幸せになる事なんて、世界の誰も望んでない。

 

……………………知ってる。

 

──苦しみ続けることが、姉に出来る唯一の贖罪。私にハッピーエンドなんてないんだから。

 

……うん、そうだね…………ありがとう、教えてくれて…………………私はやっぱり、私だね。

 

「ねね、ツキミ。これ届いたらさ!一緒に──」

 

「………………」

 

──ああ、またこの表情だ。今にも消えてなくなってしまいそうなほど、苦しそうなその顔。

 

そんな表情しないでって言えたら、どれだけ良かっただろう。

 

何かに悩んでるのは知ってる。何かを怖がっているのも知ってる。……ずっとずっと、苦しそうなのも知ってる。

 

何とかしてあげたい、悩みがあるなら聞かせてほしい。私も一緒に考えたい。

 

──ねえツキミ、ツキミは何でいつも何かを諦めたように笑いながら泣いているの?

 

何がそんなに苦しいの?私じゃ……お姉ちゃんじゃどうにもしてあげられない事なの?

 

……聞きたい、聞きたいよ……本音を、聞かせてよ……。私はそれを、ただ叶えて……。

 

───でも、''そのこと''について聞かれるのを、ツキミが一番怖がってるってことも分かってる。

 

……そこに触れたら、どうしようもないほどツキミが傷ついちゃう気がして……私は今日も何も出来ない。

 

……頼りないお姉ちゃんで、ごめんね……。

 

 

「……よしっ、ツキミ!頼んだもの来たら料理作って外行こ!!一緒にっ」

 

 

 

───いつか話してくれるその日を信じて、私は今日もツキミと一緒に───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────まさか手遅れになるなんて、思わなかった。




ツキミは幸せを感じると度々こうやって自分自身を責め続けます。この精神状態を何とかしないと幸せになんて絶対なれません。……これをどうにか出来る鍵を握っているのはヤチヨだけです。
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