一番アガるシーンを見ないという天与呪縛 作:意外にも喧嘩好きの不良キャラ居なくね?
内容としては主人公の設定に軽く触れて、
べるぜバブ世界とかなら最上級にいい空気吸えてる系主人公です。
対戦よろしくお願いします。
面倒な設定を端折る方法
2015年 某月 冬
北海道某所の山中において、数体の二級呪霊に起因する自動車数台の絡む小規模な交通事故が発生。
その際に生じた呪力に誘引され、一級呪霊とみられる個体が出現。
当該一級呪霊の出現とともに周辺一帯が生得領域の具現により"異界"化。
事態の変遷の早さから当該呪霊に領域展開を習得する兆候、"特級呪霊"に成り上がる可能性を"窓"が報告。
アイヌ呪術連からの術師の展開よりも早く現着可能な戦力として、
──呪術高専東京校より"特級術師" 五条悟が現地に派遣。
視界を遮る猛吹雪と、それを塗りつぶすような不快な呪力の残穢。
「……ありゃりゃ、こりゃあ少し遅かったかな」
──"成り上がった"みたいだ。生存者の救助は絶望的、かな。
吹雪の中を突っ切って到着した五条悟の六眼が捉えた景色は、本来であればこの山道に存在するはずのない異様な歪みだった。
──生得領域から外部に向けて展開する猛吹雪で視界と方向感覚を奪い、中心にある本命の領域に誘導、引きずり込む。自分に有利な場を整えて、時間稼ぎにもなる。それなりに頭の回る呪霊の仕業だね。
「でもま、大丈夫でしょ。すぐに終わらせよう」
帳を下ろし、推定特級呪霊の領域に足を踏み入れる直前──"現代最強の術師"五条悟が「無下限」を万全に整えた上で、気負いなく結界に手をかけた、その瞬間だった。
「──ん? 風が弱まった?」
六眼で捉える領域外の猛吹雪に、掛かっていた呪力の流れが途絶える。
領域外郭に吹雪を展開する術式が解除され、領域内の
──バギンッ!!
まるで空間そのものがガラス細工であるかのように、耳を劈く破砕音が山間に響き渡った。
猛吹雪の中に浮かび上がっていた「領域」の輪郭が、蜘蛛の巣のようにヒビ割れ、崩壊していく。
「え?」
最強の術師が、素で呆けた声を漏らし、咄嗟に上空へ跳ぶ。
あり得ないからだ。今の今まで一帯を「支配」していた特級呪霊の領域が理由もなく、術師の干渉もないまま、自壊するなんて。
上空から俯瞰する視界の中、領域が完全に崩壊し吹雪が止んでいく。雪煙が晴れ、露わになったのは、巨大な
事故を起こした車から這い出てきたのか、泥と油が付着しボロボロになった制服を、それでも几帳面に前で留めている。さっぱりと整っていただろう髪は雪や水で濡れ、顔、というよりも身体の前面には呪霊の残滓がこびりついている。
少年は、手についた呪霊の
五条悟は空中からゆっくりと舞い降りた。目隠し越しの六眼が対象の解析を試みる。
膨大な呪力量。それ以上に異常なのは、彼の身体を覆う呪力の「波形」だ。まるで、周辺の呪力の残穢さえも否定し、切り刻むような、鋭利で鮮烈な脈動。
「……ねえ君、誰? いや──何?」
五条悟は顔にかかった雪を払い*1、目隠しを外すと、目を見開き視線を鋭くさせた。
五条悟の「六眼」は、本来なら視認した呪力情報、術式の構成、血液の循環に至るまでを瞬時に解剖する、呪術界の究極のコンパスだ。
しかし、その六眼が、今、激しいノイズに晒されていた。
目の前に立つ少年の内側から放たれるのは、オーラとして可視化される呪力やその内側に見える術式などという生易しいものではない。白く、あまりにも純粋な──「
(……なんだ、これ)
五条悟の背筋に、冷たい氷柱が突き刺さるような戦慄が走った。
六眼が対象の情報量に圧倒され、処理落ちを起こしかけている。術式が見えない。呪力の回路が読めない。それどころか、少年の輪郭すらも、その存在が放つ光量に干渉されてぼやけて見える。
「解析できない」という現象自体が、五条悟にとって人生で初の、未知の体験だった。
「……なるほど。術式以前の問題だね」
五条悟は、無意識に「無下限」の出力を最大まで引き上げた。六眼が警告を発している。──『触れるな』と。
呟きながらも周囲に視線を巡らせ、周辺環境の分析からの推測に切り替える。
──交通事故を起こした車は、全部雪に埋まって凍ってる。もう生存者はいないだろうね。
──周囲に戦闘痕はほぼなし。
──残穢は……
今の破砕音。そして、目の前の呪霊を、まともな抵抗の痕跡も残さずに祓除したこの特異な状況。
おおよその状況を──最大の謎以外は──把握した五条悟は目隠しを戻すと*2、眩む視界に眉間に皺が寄るのを剽軽な態度で覆い隠し、声を聴いて振り返った推定少年に続けて話しかけた。
「その
水を向けられた少年は、五条悟という「最強」を前にして、ゆっくりと口を開き、ぼそぼそと呟いた。
「……ですか。ラッキーだ。ありがとう神様」
少年はふらりと歩み寄り、五条悟の数メートル手前で立ち止まる。五条悟は無下限を微調整しながら、ただその少年を観察し続けた。
「いくらここが試される大地とはいえ……、君、今さっき何をしたの。特級呪霊の領域を、中から食い破った?」
五条悟の問いかけに、少年は微笑んで答えた。
「食ったんじゃなくて、砕いたんですよ。
「……へえ? 僕のことを知っているってことは、君も
だったら話は早いケド。底冷えするような誰何の声に、少年はやや慌てたように両手を持ち上げ、手の平を五条悟へ向ける。
「ああ、いや、いや。違います。呪詛師ではありません。そうですね……ただのファン、と思っていただければ」
「……?」
想定していたよりも緩い空気をまとっている少年に、五条悟は呆気にとられてしまう。
「そうですね、詳しく説明をしたいんですが、時間がなくて。手短に説明させてください」
「……いいよ。正直僕も君については何にもわかってなくて困ってるから」
無下限術式は最高強度で維持したままで、ポケットに手を入れた*3五条悟は少年の話を聞くことに決めた。もとより、どういう対応をすることになるとしても、話を聞けるならば聞いておいたほうがいいと判断したからだ。
「まず、僕はあなた方の敵ではありません。■■■■から──、
「──……」
思ったよりも規模の大きい話が始まった気がする。五条悟はそう思った。
「
──それでもう、この
「なるほど? つまり……神サマ、みたいな存在ってこと? 君は」
「実際は違いますが、そう思っていただいて構いません。──僕はもうすぐで自我を失って消えます。初めに出会った人に状況を伝えて沈黙する、これも縛りにしています。"なおこのテープは自動的に消滅する"ってやつです」
「……うん、なるほど」
五条悟の六眼からは、彼の発する輝きが急速に翳っていくのが視えている。この言葉は"真実"だ、と判断した。
「ただ実際に消えるわけではありません。僕はこれから、生涯を懸けて彼を支えるために、彼の内側で"柱"になります。まさに"人柱"ってやつですね。──話が逸れました。最後になりますが、あなたにお願いがあります。
あなたなら信頼できる。彼を呪術高専に匿って、正しい道に導いてあげてほしい。このままにすると、きっと野生化して大暴れするので」
「……ん?」
「ええと、ちょっといろいろあって、僕の影響が半端に残っちゃうというか、天与呪縛が悪さをするというか。──喧嘩大好きな不良少年なんです。彼は」
「……ちょっ」
「けれどどうか、彼を見放さないであげて──ああ! 時間切れですさようなら~~……」
最後の話がよくわからなかった。五条悟の制止の声は、周囲に積もる雪景色に空しく吸い込まれて消えた。
次の瞬間、少年の身体を内側から照らしていた輝きが、まるで息を吹きかけられた蝋燭のようにふっと途切れた。その刹那、少年の肩がビクンと大きく跳ね、俯いた顔から荒い呼吸が漏れる。先ほどまでの「神々しいほどの異物感」が嘘のように消え去り、代わりにそこには、凍てつくような冬の空気と、もはやささやかに香る程度の血生臭い呪霊の残滓、そして──得体の知れない「好戦的な熱」だけが残った。
首が持ち上がり、再度開かれた少年の瞳が、ゆっくりと五条に向けられる。先ほどまであったどこか慈しむような光は消え、そこには昏い闘争心と、この世界に対する深い侮蔑が混じっていた。
「……あーあ。消えちまいやがったな、あの目障りな偽善野郎」
少年は自分の手を見つめ、グーパーと確かめるように動かす。
その動きは先ほどよりも遥かに野性的で、獲物を探す獣のようだ。彼はバキバキと首を鳴らし、制服の首元──第一ボタンを引きちぎると、五条に向かって不敵に笑う。
「おい、
五条悟は、無下限術式を維持したまま目隠しを外す*4と、じっとその少年の変化を見つめていた。六眼が告げている。先ほどの「白光」は確かに収まったが、少年の内側には、依然として底の知れない呪力の奔流が渦巻いている。しかも今度は、より泥臭く、より暴力的で、まるで闘争そのもののような波形を伴って。
「……君、名前は?」
五条が訊ねると、少年はポケットに手を突っ込み、雪を蹴った。
「
響の指先から、バチバチと火花のような音が響く。それは呪力の火花ではない。領域を崩壊させ、呪霊を砕いた正体不明の術式の漏出だ。
「さっき『匿ってほしい』とか『導いてほしい』とか、アイツは随分と殊勝なことを抜かしてやがったがな……俺の意見は別だ。
……お前のその、最強だかなんだか知らねえが、その力を見せてくれよ」
冬の冷気よりも冷たい少年の言葉。
五条悟は、初めて「予測不能な災害」を目の前にした高揚感と、言いようのない寒気を感じていた。この少年は、呪術を構成する概念そのものを理解し、その上で破壊しようとしている。
響が踏み込んだ。
地面が爆ぜる。先ほどの「人柱」としての静けさは微塵もない。彼は五条の目前にまで肉薄すると、その拳を真っ直ぐに突き出した。
「
五条は、その拳が「無下限」に触れる直前、確信した。
この男は、呪術師としての流儀や使命など欠片も興味がない。ただ、観客席からステージに乱入し、すべての演出をぶち壊そうとする、史上最悪の「暴れん坊」だ。
「……ははっ、喧嘩、ね。いいよ。君の言う通りだ、砕城響」
五条は無下限の出力を微調整しながら、悠然と余裕の笑みを浮かべる。
「僕は教師だからね。"最強"を教えてあげる。高専へ付いてくるかどうかは、僕の拳を食らってから考えなよ!」
五条悟の無下限と、砕城響の拳が、北海道の山奥で
その衝撃で周辺一帯の雪が吹き飛ばされ、一瞬にして周囲の空間が空白に塗りつぶされる。
呪術高専東京校、その異端の生徒を巡る「喧嘩」の幕が、こうして唐突に、しかし必然のように開いた。
リハビリ作品です。
これは初手で雑な転生者設定を生贄にすることを縛りに、面倒な幼少期や家系の設定をカットした主人公を召喚する頭脳プレイ。
この転生者設定を盾に主人公を雑な理屈で最強
とりあえず、渋谷事変までの間に主人公が呪詛師堕ちせずいい感じの時期に停学明けになるように祈りましょう。
なお次話の投稿は未定です。約束できなくてごめーんね。
以下はナレ死呪霊の設定です。5分で考えた。
羆呪霊: 北海道産の結構強い呪霊。"
雪山内の"狩り場"に指定した範囲を生得領域で異界化し、その外部に自らの術式で猛吹雪の結界を展開する。領域周辺の一定以下の力量の存在を自らの領域に引き込み、それ以上の存在を猛吹雪の壁によって阻む、土着の呪霊であることを最大限に悪用した狡猾な戦術を展開する。なお五条悟は吹雪の壁を無下限術式によって強引に突破した。通常は入念な準備と決死の覚悟が必須。
鹿呪霊&猪呪霊: 飛び出し注意。マタギや車を狙い衝突事故を起こさせ、喰らう。動物モデルの呪霊であり、そこそこ強い。ナワバリで狩りをしてたら羆呪霊が乱入してきたので即座に平伏し傘下に下って主人公に特攻した。
左右に不規則なステップを刻みながら接近する鹿呪霊と、直線的ながら高い瞬発力・加速力を以て超高速の突撃を繰り出す猪呪霊のコンビネーションは、雪山という環境もあって二級術師であっても対処がとても難しい。
※ちなみに北海道にイノシシは生息していない。