女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい   作:ベリーナイスメル/靴下香

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そうだ、わからせに行こう
負けたくない


 昨今の同人ゲーム界隈をどう思う?

 いやいや、もちろん批判したいわけではない。

 ただ一言申し上げていいのであればあまりにもマゾヒスト向けの作品が多すぎやしないかと思うのだ。

 

 わかっている、紳士である俺はわかっているとも。

 あれはあれで趣深いものだし、気持ちがいいということだって理解している。

 

 だがそれでもだ、被虐を楽しむことができるにしてもそれは逆転があってこそだと俺は思う。

 例えるのなら負けイベントをどうにかして勝利したくなる気持ちとでも言うのか、負けて気持ち良くなりたい気持ちと同じかそれ以上に勝ちたい、すなわちわからせたいと思ってしまう。

 

 だと言うのに、なんだ? 逆転なしの一文は。

 重ねて俺はマゾも行けるクチだ、楽しめるクチだとも。

 

 しかし、しかしだ。

 

「――あー、やっぱこれも負けっぱなしなのか」

 

 勝利する男になれと言う意味を込めてつけられた俺のカツオという名前が泣いている。

 

 勝ちたい、勝ちたいのだ俺は。

 逆転満塁ホームランを夢見る少年でいたいのだよ俺はさぁ。

 

 逆転ナシの一文が書かれていないことを一縷の望みに、あまり売れていないゲームへと手を出し続けては裏切られる。

 いや、裏切られてなんていないのは理解しているさ、勝手に期待している俺が悪いんだし、そもそも勝ちたいと願うのならこのテの作品に手を出さず男性上位だとわかるものに手を出せばいい。

 

 ただ、それでも。

 作中で圧倒的だと、勝てないと描写されるほど、逆転したくなる、わからせたくなるんだよ。

 

 そんな祈りが届いたのか。

 

「おん?」

 

 エンドロールが流れ終わった時に映った文字に目を瞬く。

 

 ――100%コンプリートまで遊んでくれてありがとうマゾ豚くん。

 満足はしてくれたかな? これでも満足できないのならキミは救いようがない欲しがりマゾとしか言いようがないけれど――

 

「いや、うるさいわ」

 

 思わずイラっとしたよね。

 ただ単に逆転の可能性を探してたらコンプしてしまっただけだっての。

 

 あぁいや、それだけじゃないか。

 延々と罵倒に近いメッセージを流してくるこのゲーム、奴隷になってダンジョンに潜り自分の女主人に手に入れたアイテムを貢いでご褒美を貰うってものだが、RPG部分がかなり作りこまれていて普通に面白かった。

 逆転の目を探していたことは確かだが、面白くて熱中してしまった結果気づいたらコンプしてたって面もある。

 

「しっかしこれの次、何するかな? もう大体めぼしいモンは――お?」

 

 ――もしもキミが望むのなら……裏モードの扉を開いてもいいよ。

 

「裏モード、とな?」

 

 ……ククク、これは、いよいよを持って来たか?

 色々な意味でマゾゲーの裏モード、それが意味することはすなわち逆転わからせタイムの香りがするぜ?

 

「そうだよなぁ? ゾーニング云々はどうでもいいけど、何処にも逆転ナシなんて書いてなかったもんなぁ?」

 

 気づけば画面にはハイ、イイエの選択肢が浮かんでいた。

 

 裏モードがどういうものかは別にして、このゲームの仕様はもう完璧に理解している。

 ベースシステムがある以上、多少の変更は加えられていたとしても大きく変えられるものでもなかろうて。

 

「待ってろよ、調子に乗ったメス共……散々弄んでくれやがった借り、返してやっからなぁ?」

 

 当然選ぶはハイだ、最高にハイってやつだ。

 

「ぅ、あ……?」

 

 選んだ瞬間に世界が歪んだ。

 

 眩暈? え、なんだこれ急に。

 ヤバイ、クラクラする……ちょっと励み過ぎちまったか?

 

「きゅ、きゅうきゅう、しゃ……」

 

 スマホに手を伸ばそうとしてみればイスから転げ落ちた。

 つーか、ヤバイのは何よりもあれだ、救急車とかそういうんじゃなくて。

 

「ズボン、はいて、ねぇ……ぅぐ」

 

 マゾはイけるが羞恥系はかんべんして欲しい、よね。

 

 

 

 残念カツオくんの勝利への道はこれで終了ね。

 

「――行きなさいっ! ブタどもっ! お嬢様の為、少しでもイイものを持って帰ってこいっ!」

「ハッ!!」

 

 そうして新しい俺のヴィクトリーロードは、ついさっきまでやっていたゲーム、『ご主人様の言う通りっ!』のオープニングシーンから始まった。

 

 ……いや、マジかよ。

 

「おい、そこのブタ」

「……あぁ、俺のことか? って痛いっ!?」

「ヒトの言葉を喋ってるんじゃない。さっさと行ってこい」

 

 あーマジだわこれ、信じられないけど『ごしゅ通り』の世界だわ。

 返事しただけで鞭飛んでくるとかそうそうないよ、多分ゲーム世界転移する可能性と同じくらいないよ。

 

「いてぇっ!?」

「聞こえなかったのか?」

「……はぁ、わかりましたよ。わかりました――だから鞭らめぇっ!?」

「ふんっ!」

 

 文字通り追い立てられて目の前にあるゲートへと足を運ぶ。

 

 ……色々、思うことはあるが。

 

「裏モード、ね。こう来るとか誰が想像できるよ? いやまぁ、それはいい。それはいいから、今度こそ」

 

 ゲームじゃなくなったんだ。

 そりゃつまり絶対に負けるというシステムから解き放たれたと言う事だ。

 

 さっき鞭を振るってきた俺たちの飼育係(・・・)にも、これから出会う事になるだろう調子に乗ったキャラクターたちにも。

 

 勝てる可能性がある、ってことだ。

 

「ふ、ふふ……」

 

 いいぞぉ、まさしく逆転の芽が出てきたと言う事だ。

 

 やってやる、やってやるぞ俺は。

 

「待ってろよ……この俺が、絶対にお前らをわからせてやるからな……! ふふふ、ふはははははーーーっ! あいたっ!?」

「さっさといけっ!」

 

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