女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい 作:ベリーナイスメル/靴下香
火属性耐性レベルが50に上がった、つまりは火属性攻撃半減である。
これで最低限と言えるだろうが、火竜の庭ダンジョン上層攻略の準備が整ったと言う事だ。
物理耐性各種に関しては貧弱もいいところだし、火炎ブレス以外の複合攻撃は注意しなきゃならんがね。
「んー、良い天気だなぁ。これで罠クエじゃなかったらもっと気持ち良かったんだろうけどなぁ」
火竜の庭ダンジョンはハイキングみたいなものだ。
それなりに険しい山を登り、山頂までに至るまでを上層、中層、深層としていて。
山頂付近にある洞口に入れば火竜の住処とダンジョンの名前が変わり難易度も跳ね上がる。
今回の討伐対象である火トカゲは上層、つまりはほぼ山道に突入するまでの平原地帯と言える場所に生息しているわけだが。
「スタンピード、めんどくさいよねって」
火トカゲ討伐クエストが罠と言われる所以は
火トカゲ、正式名称フレイムリザードというモンスターは短時間でその個体数を著しく減少させると付近のモンスターを襲い強制交配を始める。
強制交配時はゲームならではの設定というか、交配し終わった瞬間にフレイムリザードの幼体が母体を食い破って生まれてくるわけだ。
更にその幼体を守るためにフレイムリザードの凶暴性が増し、討伐難易度が高まってしまう。
「格下殺し、通用しないもんな。両方のクエスト達成は欲張りすぎだってのはわかってるんだけども」
尻尾の収集もする、幼体も捕獲する。
両方やらなくちゃならないってのが、わからせ紳士の辛いところだよね。
「ただ、このクエストは避けて通れない道でもあるし……やるっきゃねぇか」
むんっと握り拳を作ってやる気を漲らせる。
実際このクエストには設定的な穴が存在してるんだ、クリアすることで少なくともアイリわからせロードが拓けるわけでマストに攻略しなければならない。
「リザード種のモンスターは、人間のメスを襲わない、ってな」
だから正攻法を挙げるのであれば主人様なんかの協力を得てクエストに臨めばいい。
スタンピードが発生しようが、文字通り何の苦も無く女を連れてくるだけで勝手に無双してくれる。
それが一番簡単にできるルートとしてメスガキ様にあたりたかったって部分はあるが、無いものねだりでしかないよね。
「さて、と」
歩を進めていけば火トカゲがちらほら見えてきた。
スタンピードを発生させること前提ならここら辺で狩るのも効率が悪いし、上層奥地にある火トカゲの巣あたりが良いだろう。母体にされるモンスターにも事欠かないし。
「んー……いやほんと、ただのハイキングしてぇな。サティアが弁当とか作ってくれるとは思わないけど」
ノンアクティブモンスター、つまり何もせずとも勝手に襲ってくるモンスターがいないことから、何気にそう言う目的で火竜の庭へと来るヤツらも多かったりする。
特に縛りを入れたりガチ攻略を目指さないのんびりプレイの時はご主人様におねだりしたもんだ。
「うん? ……弁当、か。これ、アリなんじゃね?」
不意に閃いた。
我が囲い込み拘束監禁系愛情激重ヤンデレ主様に効果的かも知れないと。
サティアが求めているモノは未知による刺激だ。
ゲームでは結局彼女の未知を超えられるルートが無かったが故にサティアの玩具として生きるしかなかったわけだが。
「うん、イけるな、これ」
ご主人様クエスト、サティアから最初に提示されるクエストはフレイムリザードの幼体を捕獲しろ、である。
これは彼女が退屈凌ぎにペットでも飼おうかと思いついたからという背景があった。
ならば、だ。
「少しだろうが、サティアの想定を超えられるかもしれないな」
……うわぁ、今の俺、すんげーキモイ笑いしてるんだろうなぁ。
つーか危ない危ない、何の脈絡もなくサティアにプレゼントなんかしても効果は薄いんだ。
「ひゅうっ! 楽しくなってきた! よーし、パパがんばっちゃうぞー!」
そうと決まればやる気もバク上がりってもんだ! 待ってろよ、火トカゲちゃーん!
そんなわけで、だが。
「――18、っと……うん、そろそろだな」
周りにいたフレイムリザードたちの様子が変わった。
そわそわと周囲を見渡して、自分の種を仕込めるモンスターがいるかどうかを探しているんだ。
「ポーション飲んでおいて……よし。それじゃ、やりますかっ!」
「グエェッ!?」
テンポよく19匹目、20匹目をゴブリンナイトセット装備のショートソードで倒す。
もちろん尻尾の採取も忘れずに、20個ゲットだ。
ここまでは、楽勝。
賭けになってくるのは、ここから。
フレイムリザードの幼体は成体程攻撃力があるわけじゃないが、とにかく素早い。
念のため捕獲スキルは10まで上げておいたけど、正直に言えば物足りなかったりする。
ただ。
「おーおー、爬虫類の交尾見たとて流石に興奮は出来ねぇよなぁ」
ズッコンバッコン手あたり次第に襲い掛かっていくフレイムリザードたちを尻目に、インベントリバッグからロープを取り出す。
そう、幼体の捕獲に必要、というか推奨されているスキルレベルは20だ。
加えて『反射神経』スキルや
そして忘れてはいけない重要な点として。
「これって、元はやっぱ成人指定ゲームだし、器用さはマジどれだけあっても困らないのよね」
格上を相手にするときは習得できる経験値にボーナスがかかる。
緊張して来たね。あぁ、生唾飲みこんじまったや。
背中にイヤな汗だって流れてるし、何なら楽しさと気持ちよさで蓋をしていた恐怖感だって思い出して来た。
けども。
「今回でまずは……自分をわからせるとしますかねっ!!」