女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい 作:ベリーナイスメル/靴下香
オリジナルチャート発動の弊害はともかくにしても、だ。
「今のところ上手くやれている、とは言い難いな」
ぼすんと部屋に戻ってふかふかのベッドに身を投げながらそんなことを考える。
これがマジのリアルタイムアタックだったのなら大きな短縮に喜んでいる所だろうが、そう。
「あくまでもゲームイベントをいくつかすっ飛ばした上で好感度も稼げてるだけだ」
攻略という意味ならいいだろう。
ステータスを確認してみればレベルは25にまで上がっていて順調どころかお釣りが来るレベルだ。
しかしながらやっぱりあくまでも俺の目的はこの世界の女キャラたちをわからせたいわけで。
「こんな程度、アイツらにとっちゃハナで笑われるレベルなんだよなぁ……」
仮に物理こそパワーって感じで、暴力的な手段でわからせにかかるって言うのもこの世界でなら可能だろう。
ただまぁ、レベル100になってようやくそこら辺の女NPCといい勝負ができるなんて設定だ、挑んだところで瞬殺が目に見えている。
「レベル上限、やっぱりあるよな……この世界でも」
リアル化したとて世界に敷かれている設定というルールは絶対だろう。
そう考えたのなら、レベル25にまで上げてしまったことを後悔するべきかも知れない。
最初っから僕が考えた最強のビルドでレベルアップさせていけていたのならワンチャンあったのかも知れないと考えればぐぬぬって感じ。
「今からでも遅くないと思うべきだよな。なら当面はやっぱレベルじゃなくてスキルレベルアップ、ビルド構築と発展に勤しむべきか」
いや、物理的にわからせてやるって思ってるわけじゃなく。
単純に同じ舞台というかステージに立たなきゃ話にならないって話だ。
いざとなったら無理やりにでも言うことを聞かせられるって状態なら、いくらでも相手は交渉のテーブルをひっくり返せるのだから。
「……スキルレベル、か」
重ねてごしゅ通りでは多数のスキルが実装されている。
戦闘に関わるスキルはもちろん、クエストでご主人様に服を作れなんてものもあるせいか、裁縫なんかの生活スキルだってあるし、何よりも。
「性スキルをどうやって上げるか、だよなぁ」
基本受け身のシーンしかないごしゅ通りだから、耐える堪えると言ったスキルばかりではあるが。
ただ、生活スキルであれ性スキルであれ戦闘スキルと同じくステータスへの補正が発生するのは変わらない。
だからこそ多くのスキルは基本的に取り得と言って良いわけだが、性スキルを取るということは基本的に永続デバフとの引き換えになりがちで。
「やっぱ、交渉あるのみ、か」
自分の欲望を叶えるために散々使われて来たんだ。
「お前からだってご褒美貰っても構わんよな? アイリ」
一方的な搾取はダメってわからせてやらんとな。
「は? 自由に行動させて欲しい、ですか?」
「ああ。一週間に一度成果をハラメントス家に持ち帰ってくる、何なら成果に注文を付けてくれてもいいからどうだろう?」
「却下です」
「そげなこと言わんで」
そう言うわけで屋敷の窓ふきに勤しんでいたアイリを捕まえて交渉開始である。
思わず後ろからセクハラしたくなる気持ちを堪えた俺ってば偉くない? いいよね、お掃除中メイドにいたずらってシチュはさぁ。
「少し自惚れが過ぎるようですね。わからせて差し上げましょうか?」
「やー、そんな八つ当たりでわからされるのは勘弁したいところだなぁ」
「……八つ当たり?」
何のこと言ってるのかわからないみたいな顔しないでくれって。
んなもんわからされる前からわかってることだよ。
「違うのか? 自分じゃサティア様の期待に応えられないって思い知ったんじゃないの?」
「っ!?」
「だから俺を使いたい、管理したいんだよな? 手柄を自分のモノにしたいわけだ、部下の功績は上司の功績だもんな」
おーおー鉄面皮剥がしてくれちゃって。
アイリのこんな表情が見られただけでも転移できちゃった甲斐があるってもんだ。
「何を根拠にそのような!」
「わかるって、わからいでか。そもそも火竜の庭は女でも入ることが認められているダンジョンだ、そりゃすなわち俺と同じことが出来たってこと。それでもできなかった、やらなかったってことは思いつかなかったってことだろう?」
「な、ぁっ!?」
本来であればこれはモノローグとしてアイリ自身が胸中で告白するものだ。
そこをわかってますよとわからせることで俺に対してのマウントを取りにくくする。
「こ、この……!」
「落ち着けって。別にそれが悪いことだとか、アイリが俺より劣ってるとかを言いたいわけじゃない。取引をしようって話だよ」
喧嘩をしに来たわけではないのだ、わざと怒らせる言い方をしたのは悪いと思うけども。
アイリはサティアの喜びを至上としている。
なら俺もそうだとしておくことで揺るがない部分で協力関係を結べるわけだ。
「……私のコマになる、と?」
「サティア様に尽くすって一点においてはな。その代わり、さっきも言ったようにある程度の自由を認めて欲しいって話さ」
訝しげな視線はともかく、アイリはこれを断れないだろう。
ぶっちゃけ俺にサティアへの忠誠心だとかそういうモノは欠片もないがね、心の内を明かすためにもまずはレベルアップが必要だ。
その時間を稼いで、必要以上にサティアへと関わらなく済むためにはアイリの存在が必要だ。
そう、つまり。
「良い、でしょう。ですが、その形であれば」
「ああ。俺のレベルアップ管理はアイリがしてくれたら助かる。サティア様にはより貢献できるようになるための下準備と言えば納得してくれるだろうさ」
「わかったような口を……ふん。ですが、簡単に私からのご褒美が貰えるとは思わないことです」
「覚悟しておくよ。それじゃ、今後ともよろしく」
まずは、アイリを引き込む、わからせる。
背中にじっとりとした視線を感じるけれども、ひとまずこれで。
「完全にゲームルートから外れたね、よしよしこれからだ」
俺の本格的なハクスラタイムが開始できるってわけだ。