女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい   作:ベリーナイスメル/靴下香

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検証と開拓

 ゲームで用意されているルートから外れることが出来た。

 これだけで満足してちゃ片手落ち、今度は何処までゲームのルールが適応されているかも確認しなければならないだろう。

 

 というのも、一部の挙動がゲームであった仕様通りだったからである。

 

 わかりやすいのが戦闘チュートリアルで用意されていたゴブリンの存在だよな。

 一定距離を取ればこちらを見失うっていうあたり、実にゲームライクではあったが、リアル化したのなら自然と修正されてしかるべきポイントだと思う。

 

「そういうわけでダイナミック入店! お邪魔しまぁす!」

 

 やって来たのは一般クエスト受注所である、ギルド「家畜のエサ箱」だ。

 

 入った瞬間に死んだ目をした男どもが視線を向けてきた、えぇいてめぇらに興味はねぇんだよ負け犬どもがっ! ぺっ!

 

「またゴミ、増えた」

 

 奥にある受付カウンターテーブルに突っ伏していた顔が持ち上がればそこには眠たそうな青い瞳が――うぅん、ダウナー系美女だね!

 

「へっへっへ。ゴミ箱管理者は大変っすねぇ? マスター」

「……何の、よう? さっさと、言う」

 

 こちらにおわすが主にご主人様を持ってない男、通称野豚へ仕事を斡旋してくれるギルドのマスター、キュリオさんである。

 ご主人様を持たない男たちの一時的な仮ご主人様と言えるポジションにあたる人とも言えるだろう。

 

 別にご主人様が居ても仕事貰えるんだけどね。

 その場合はご褒美なしの、通常依頼達成報酬だけになる。

 

「キュリオさんの心を奪える仕事を一つ頼んます」

「死んだ方が良い」

「はっはっは! きびしーっすねぇ! 泣いていいっすか!」

「うるさい」

 

 眠たそうな目にマジもんの殺意が宿ったよね、おお怖い怖い。

 けども、とりあえずこれで一つ確認は出来た。こういう反応はゲーム上で返ってこなかったからね。テンション上がっちゃったよ。

 

「ふぅ、失礼しました。ここに来る用事なんて一つしかありませんよ、仕事を探しに来ました」

「そう。じゃ、ステータス、見る。クリスタル、出して」

「はい。こちらを」

 

 こちらのキュリオさんは、攻略可能ヒロインになってほしかった(・・・・・・・・)アンケートランキング一位に座するお方である、俺も好き。やる気なさそうに責められたい、雑にコかれたいだけの人生だった。

 転移後に攻略可能DLCとか発売されてたら泣くに泣けんぞ。俺の魂返して?

 

 俺の欲望は別にして、重ねて言えば攻略ルートがなかったキャラクターである。

 言い変えるのであれば攻略できませんよという仕様にされていた存在だ、ゲームルールを確認するにはもってこいだろう。

 

 とはいえ、この世界の常識自体は適応されているわけだし、仮にルート開拓できたとて普通に攻略した(・・・・・・・)だけなら結局ご褒美デバフくらってお終いだろうが。

 

「ん、確認した。希望する、仕事は?」

「ミラーズハウスで、何かあれば」

 

 ダンジョンの名前を口にすれば、ようやく起きたってわかるくらいに見開いてくれた。

 

「一人で? ……自殺志願者? キミがどうなろうと、興味ない、けど。仕事上警告しなきゃ、いけない」

「自傷は嫌いじゃないですけど、死にたくはないですね。ですが、突入許可レベルは満たしているはずですが」

 

 んー! キュリオさんのやさしさが染みるなぁ! そういうところだゾ。

 

 ミラーズハウスはボス以外のモンスターが存在しないトラップ偏重迷宮型ダンジョンであり、火竜の庭と同じく女でも入ることが認められている。

 

 だが、設置されているトラップがいわゆる尊厳破壊系かつ破壊しつくされるまでに罠を解除できなきゃ死ぬってものばかり。

 挙句ダンジョン突入した瞬間にパーティを組んでいたら別々の場所に飛ばされるというおまけ付きでクソほど人気がない。

 

 という設定であるが、トラップに引っかかってあられもないご主人様の姿を拝めることから俺含めたプレイヤーたちは大変よくお世話になったダンジョンでもある。

 

 なお存分に堪能した場合、後のことは保証されていない。

 

「そこまで言うのなら、仕方ない」

「ありがとうございます」

 

 ふぅっと一つ溜息を吐いたキュリオさんは、何か仕事があったか探すために手元のノートをぺらぺらと捲りだした。

 

 実のところ設定上キュリオさんにとってミラーズハウスは忌まわしき場所だったり。

 この世界における女は強い、強いがその中でもやはり階級があるわけだ。俺が上流階級だなんだと言っているように。

 

 で、その階級を上げるための手段としてダンジョン突破があったりする。

 

「あった」

「ありがとうございます。どんな仕事ですか?」

 

 ありがちな話だろうが、キュリオさんもまた自分の階級を上げるためにダンジョン攻略稼業をしていて、ミラーズハウスへもパーティを組んで突入した。

 

 そして。

 

「遺品拾い、だね」

「それは、どのような遺品でしょう?」

「……ん。疾風シリーズ装備」

 

 ククク……なぁるほど、やっぱり設定は活かされるわけか。

 それとも設定に縛られてると言うべきか? どうせ縛るならぼくちんの愛で縛ってやんよげへへのへ。

 

「了解です、期限は?」

 

 あー、わかってる、わかってるよ。

 そのノート、何も書かれてないよな? ミラーズハウスでやる仕事なんてさ。

 

 今キュリオさんは俺ことゴミを利用して、あわよくばを狙ったんだよね?

 

 それはつまり、裏を返した感情部分を見れば、期待したということだ。

 

「無期限、かな。キミみたいなゴミに、できるわけないだろうし、良かったね」

「そうですね、落ち着いて攻略できそうですよ」

「……言っとく、けど。バカなら、なおさら無理、だよ」

「じゃあ俺がバカじゃないって、わからせてあげますよ」

 

 ルートの割れた迷宮なんぞ迷宮じゃねぇんです、偉くなくてもわからないんですか?

 

「そ」

「ええ、では行ってきます。ポータルをお願いします」

「……あっち」

 

 再び机に突っ伏していくキュリオさんの後頭部へ向けてにんまりと笑顔を一つ残して。

 

「さぁて尊厳破壊、楽しみだなーっと」

 

 ダンジョンへテレポートさせてくれるポータルを潜った。

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