女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい 作:ベリーナイスメル/靴下香
いざいざチュートリアルダンジョンへ突入したわけだが、当たり前かのように説明画面は出てこないしナビ音声も流れない。
「とはいえ流石リアル化とでも言うべきか、空気感があるな」
岩肌が露出した洞窟型のダンジョンで、松明が設置されているわけでもないのに不思議と明るいあたりゲームならではのご都合を感じるが。
「……臭うな」
そういえばちゃんと確認はしていなかったが、確かこのチュートリアルで俺と一緒にこのダンジョンへ突入した男は俺含めて10人いたはずで。
そのうちの一人は踏み入ってすぐの場所で低級モンスターであるゴブリンにヤられてしまっているはず。
「これが血の臭いって奴か」
むせ返るようなとは言わない。
ただ、少なくとも元の世界では味わうことがなかっただろうこの感じ。
「……よしっ! 気合い、入れなおそうっ! まずはステータスの確認からだっ!」
急に怖くなって来たわけじゃない、本当だよ?
自分の能力がどの程度のもんかを知ることは大切だ、敵を知り己を知れば百戦危うからずと言うだろう?
それにチュートリアルではまずそこからだ、ステータスの意味を知るためにもこのダンジョンでは突入して最初の広間にステータスクリスタルが置かれているわけで。
「どうやって起動したら――うおっと」
とりあえずらしきものに触れてみればクリスタルが形を変えて少し大きめのタブレットみたいな形になった。
中身には見慣れたステータス画面が表示されていて、プレイヤー名のところもしっかりとカツオと表記されている。
「……んー、特に捻りもなく初期値か。あわよくばチートだなんだを期待したけども」
ステータスフラット、つまるところ全てが10ポイントだった。
ゲームであればここから減らして別のところを増やしてなんかができたけど、そういうのは出来ないらしい。
続いてスキルツリー画面に進んでみるがやっぱり最初から覚えているのは。
「殴るLv1に……あぁ、人間種なのね? 安心したような、がっかりしたような」
人間種が初期から取得している取得経験値アップLv1が表記されていた。
どうせなら最強種族であるドラゴニュートとかだったら……いやいや、一般ピーポーから逆転するからこそのカタルシスだよな。
「さて、と」
いい加減現実逃避している場合でもない。
チュートリアルダンジョンにいられる時間は6時間だったはず。
ずっと潜っていることも可能だが、さっさと俺の主人が誰になるのかも確認したい。
「確かレア度Dランクのアイテムが条件だったよな」
近場に落ちていた小石を集めながら待ち受けているだろうゴブリンの場所へと向かう。
近づくたびに薄らと漂っていた血の匂いが強くなってくるのがまさしくリアル感を伝えて来て少し足が震える。
……まぁ、なんだ。
「ご主人様をわからせるって決めてるヤツが、ゴブリンなんかに怖気づいてりゃ話になんねーよな」
ぶっちゃけこの世界の女は強い。
コンセプトが女尊男卑である『ごしゅ通り』、女が尊ばれるに足る理由はいくらでもあったが中でも単純な強さや権力なんかはわかりやすく有されている。
それこそいずれ歩けるようになるだろうか、街中のモブ女キャラに対してであっても指先一つでダウンさせられてしまうのだからたまらないよね、いろいろな意味で。
そんな強い女サマへとダンジョンで良いアイテムを捧げて、ご褒美としてアレやコレをしてもらう。
もちろんゲーム的に成人指定シーン目的にやっていた部分はあれども、現実世界となった以上最低限生きるためにある程度ご主人様の庇護が必要な以上、やらなければならないからやるという側面がある。
「というわけで、悪いがハメさせてもらうぞ」
「ゲギャッ!?」
近くに転がっていた男の死体はみないフリをしたまま、遠間からゴブリンへ石を投擲する。
「ゲゲッ!!」
怒り心頭って感じでこっちに向かってくるけれども、ゲームと同じであるのなら――
「ギャギャッ」
あるぇ? みたいな雰囲気で首をかしげて元いた場所に戻っていく。
鳥頭ならぬゴブ頭、三歩歩けば忘れる脳みそが素敵だね。
「予想通り、かね」
そうとも、あのゴブリンはあの場所にチュートリアルとして設置されているモンスターだ。
マス目で言えば3歩分の距離まで近づけば襲ってくるが、それ以上離れたのなら俺を見失った後元の場所へ戻るようになっている。
「じゃ、とりあえず3時間くらい投擲スキルレベル上げするかね」
周りに小石は余るほどに落ちているし、この大きさならどんだけ頑張ってもダメージは与えられんだろうしちょっとした無限稼ぎ場だよねここ。
途中でクリスタルの場所にまで戻って確認する必要はあるだろうが、投擲レベル3でもあればチュートリアルダンジョンは無双できるだろう。
余裕を持って上げられるだけ上げたいが……レア度Dランク以上は奥の方まで行くか、レアエネミーのドロップアイテムなんだよな、どうするか。
「どうとでもなる、か。最悪アレすりゃいいわけだし」
最悪のことも考えながら、ひたすらゴブリンへと小石をぶつけ続けることにした。