女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい 作:ベリーナイスメル/靴下香
ある意味において、サティアの気持ちがわかったと言えるのかもしれない。
元々未知を求めているという部分に関しては強く共感できていたわけだが、サティアが抱えていただろう靡かれてしまう苦痛というものも理解できた。
「ご、ごめん、ねぇ……あ、あたしが、悪かった、あたしのせい、で」
「……」
これは教訓としなければならないだろう。
思い通りにコトが運ぶこと、それすなわち楽しみが半減どころか無くなってしまうと言う事だと。
全部じゃないだろう、それでも理解できたよサティア。
「ミーナのこと、好き。大好き、だった、よ。だ、だから、だか、らぁ……」
「成仏して、って?」
あんたがアイリに向ける視線は、こういう色を含んでいたんだな。
「う、ん。げ、幻影だって、わかってる、わかってる、けど」
「――ふざけないで」
あ、ついでにミーナさん? あんたの気持ちも結構わかるよ。ブチ切れするのもそらそうよって感じだよね。
だってさ、本来ならここって感動的なシーンになりそうだったわけじゃん?
にもかかわらずさぁ。
「ぼくは……ぼくはっ! キュリオが生きられるならって! それだけで満足だって思った! 思ってた!」
「ご、ごめん、ごめん、ねぇ」
「わかってる! わかってるよ! キミは本当に悪いって思ってるって! だけど! だけどさっ!!」
俺の陰に隠れながら言ってちゃあ……当て馬にされたって思われても仕方ないと思わねぇ?
「ごめん、ね?」
「……そっか、そうなんだ、そうだよね? ぼくはもういないもんね? ぼくはもう
幻影になってまで寝取られる気持ちを味わされちゃ、たまんねぇよな。
「――殺してやる」
「はっ……自分の魅力の無さを俺に八つ当たりしてんじゃねぇよ」
「ころしてやるぅううううっ!!」
うーん、裏ボス感あるわ。ちょっとわくわくしてきた。
いっそのことキュリオの胸でも揉みながら話させてたらより一層それっぽかったかもしれないよね。
元々、百合に挟まれ力が足りなかったらそうするつもりだったけど、どうにも既にキュリオの謝る理由は変わっていたようだ。
「キュリオ、下がれ」
「は、はいっ」
さてさて、戦うとしましょうか。
ステータスは本物の四分の一相当ってのは確定情報としておいて、キュリオの相棒ってあたりを考えるのならおよそミーナのレベルは120ってところだろう。
「まぁじ、魔力貰えておいて正解だったな」
「うあぁあああぁっ!!」
速い、ものすごく。
得物に短剣系統を選んでいることから恐らくシーフとかスカウトタイプのステータスを持っているはず。
「しねぇっ!!」
「不意を打ちたいなら叫ぶのはナンセンス……誰の台詞だっけな、これは」
「っ!?」
しっかり罠解除の属性を付与した魔力に引っ掛かってくれた。
「ち、ぃ……!」
「ボーイッシュ美少女が台無しだぞ? 笑えよ、巨乳ちゃん」
「黙れっ! こ、のぉおおおっ!!」
キュリオをちょめちょめしたおかげで魔力操作のスキルレベルは十分に足りている。
その上あのつよつよサティア様の魔力だ。意志伝導率、操作性、単純な魔力の質、どれをとっても最高クラス。
レベル差があろうとも、これで負けてちゃわからせの道など歩く資格はない。
何よりも。
「づっ――こ、これ、は!?」
「治療魔法だよ。アンデッドに特効ってのはお約束だよな」
少なくとも、治療魔法に関してサティアはこの世界屈指の実力を有しているわけで。
たかが推定120レベルの幻影程度、治療できないわけがない。
「う、そだ……」
「嘘かもな」
「うそだっ!」
「だから嘘でいいって」
ちらりと離れたところで見守っているキュリオへと目を向ければ、小さく、それでもしっかりと頷いた。
それじゃあ、そろそろ終わるとしよう。
「うそだああああああああっ!!」
「嘘だってんなら……死んだ奴がベラベラ喋って生きてるほうが嘘だろ」
いい加減、お前は死んでるんだって、わかっておけ。
あぁ、いや。
「わからせてやるよ」
「あ――」
治療魔法で作ったメスがミーナを切り裂いた。
「……ねぇ」
「なんだよ」
「キュリオのこと、幸せにしてあげて、ね?」
どうかな、いわゆる出来ない約束ってやつだよそれは。
でも、そうだな。
「俺が、ご主人様をわからせることができたらな」
「ぷっ……何それ、かっこ悪すぎだよ」
「じゃあ誠意努力する」
「ん、そうして」
そう言い残して、ミーナは。
「ばいばい」
「あ……」
最後にキュリオへと笑顔を一つ残して、消えていった。
「っ……ごめん、ごめんね、あたし、あたしは……ほんとうに……!」
消えたミーナの幻影が遺した疾風装備シリーズをかき抱きながらキュリオは泣いた。
多分、格好いい男ってやつはこういう時に肩を抱いてやったりするのだろう、トドメの一撃としては十分ってくらい俺でもわかる。あるいは寝取った責任とでも言うのかね? そういうのがあってこそ、なんだってのもわかってる。
「わかるん、だけど、なぁ……う、ぐ」
「あたま、いてぇ……」
これが魔力を与えられるということだ。
正確に言うのであれば主との魔力パスが繋がれたって形で、俺は自由にサティアの魔力を使用することができる。
が、もちろんノーリスクってわけではない。
「あー……クッソ。サティア、様への好きが止まらねぇ、っての」
使えば使うほど好意、いやこれは依存心かね。
そう言ったものが胸からこんこんと湧き上がってくる。
「ふーっ……俺はカツオ、勝利する男。カッツォじゃない、カツオだ……簡単に尻尾を振ってくれるなよカッツォ。てめぇになんか負けてやんねぇよ」
そうとも俺はカッツォなんかじゃない。
ダメージを受けてるのはお前だ、俺じゃない。
……ふ、ぅ。
「カッツォ、さん?」
「……あぁ。もう、良いのか?」
いつの間にかキュリオが目の前にいた。
「う、ん。えと、その……」
「礼なんか要らない。これは取引、だったからな」
「……そう、だけど」
何かを期待している目だ、あるいはこの世界にいる大多数の男がする目だ。
だからこそ期待している何かに想像はつくし、答えなんざ考えるまでもなく理解している。
「キュリオ」
「んっ、は、はいっ!」
「俺には主がいる」
「わ、わかって、るよ」
それでも、なんだろう。
そういう風にした自覚はもちろんある。
だから。
「だから、そうだな。俺がもしも、主をわからせることができたのなら、迎えに行ってやる」
「あ……!」
わからせた責任は取らなきゃならない。
……とかも思うけど、単純に。
「追加DLCいちゃらぶ逆転シナリオを待ってるヤツは、いくらでもいるだろうからな」
「え?」
「なんでもない。俺が迎えに行くまで、ちゃんとお利口に俺を想っておいてくれよ?」
「うんっ! だい、じょうぶっ!」
ほんとぉ? なんて思っちゃうよね、この寝取られ女め。
ま、いいさ。
「それじゃ、帰ろうか」
「んっ!」
帰ってからが、本番だろうからな。
オリジナル日間一位ありがとざんすぅ
みんなわからせ好きなんやなって