女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい   作:ベリーナイスメル/靴下香

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そうだ、わからせよう
アクセルべた踏み


「お帰りなさい、そしてお疲れ様カッツォ。ご飯は出来ているし、お風呂も沸いているわ。どちらがあなたのお好みかしら?」

 

 問、絶対戻るなり首輪か手錠されてベッドへ一直線だと覚悟していた俺に向かってこんなこと言ってくるサティア様を前にした時の気持ちを答えよ。配点は10点で。

 

「え、えぇ、っと?」

「あら? どうしたのかしら? あぁ、もちろんベッドの用意も出来ているわ。先に一休みしたいと言うのであれば部屋に案内させるけど」

「あ、あー……案内、と言われましても。部屋の場所くらい、わかっていますが」

 

 正解は誰だコイツ、である。

 

「うふふ。いつまでもあんな部屋を使わせてごめんなさいね? 本当は私と同じ部屋でも良いと思ったのだけれど……それじゃああなたも色々やり辛いでしょうから。近くの良い部屋を用意させたわ。専属の使用人も準備するつもりよ、希望があればいつでも言ってね?」

 

 うっとりと何かしらの熱が籠ってる視線だとわかる。

 籠められた何かは……慈愛、だろうか? いや、何処となく色っぽさと言うか艶を感じなくもないが。

 

 それはいい、大きな問題じゃあない。

 

「ど、どうしました?」

「どうした、って」

 

 こうとしか言えないよ! どしたん話聞こか!?

 あーもう! そんな何聞かれてるのかわからないみたいに首を傾げるな可愛すぎるでしょう!?

 

「ごめんなさいカッツォ。あなたの疑問に答えてあげたいのだけれど、何を言えばいいのかわからないわ。良かったら、教えて頂戴?」

 

 わからないことがあればちゃんと人に聞けて偉いね! 多分それ俺がやるべき行動ですっ!

 

 あーもう無茶苦茶だよ、どうした何があった? キャラ崩壊もいいところだぞ?

 もしかして遠見の鏡を使ってない? いやそれはないだろう、使ってなくともこのヤンデレ様だ、私以外のメスの匂いがするとか言う人だ、実際言ってた。俺がどっかの女とチョメチョメしたことくらい当たり前に気づいているはず。

 

 だって言うのにこの雰囲気だ。

 あり得ない、サティア・ハラメントスという存在が、今の俺を何の処罰もなしに許すことなどあり得ない。

 

 ……仕方ない。

 

「俺の疑問は一つです、サティア様」

「教えて頂戴? ちゃんと答えるわ」

「……俺がサティア様の知らない女と遊んだのはご存じなはず。その俺を、何故処罰しないんです?」

 

 直球で聞く他に選択肢がない。

 持ち上げて落とすための前フリが今だとするのなら納得もできるけれど、そう言うことをサティア様はしない。

 

 痛いくらいにバクバクする心臓の鼓動を抑えつけながら、じっとサティア様の様子を伺っていれば。

 

「あぁ、カッツォ……あなたは、本当に愛しい人ね……もう、もうっ! これ以上私を悦ばせないで頂戴っ!」

「ひえっ」

「ごめんなさい、本当にごめんなさい。そう、そうよね? あなたは私のことを愛しているものね? 罪悪感を抱いて当然だった! だと言うのに私は言わせずともよいことを……あぁもう、ごめんなさい。許して、くれる?」

「あっはい」

 

 貴重なサティア様の上目づかいシーンがこちらです。

 

 現実世界にいるだろうお父さん、お母さん。

 素直に謝ることが出来る人間は優しい人だと教えてくれましたが、これはどうなのでしょう? 正直怖いです。

 

「あなたに不自由を与えてしまった、私の失態なの。自由を求めている者だとわかっていたのに、あなたは私の翼だとわかったのに! 理解した時すぐに動いていれば、あんなメス豚を使わずとも良かった! ……あなたに責任は一切ないわ。むしろ、私のためによく頑張ってくれた。感謝こそすれ、責を問うなどあり得ないわ」

 

 わりぃ、やっぱつれぇわ。意味不明すぎるもん。

 

 さーて本格的にわけわからなくなってきた。

 サティアの心の動きはもちろん、あるはずだと確信していたイベントが発生しなかったんだ、この後どうなるのかがまったく予想できない。

 

 でも、一つだけわかることがあるとすれば今のサティアは俺のことを強く信頼しているということだ。

 俺というパーソナルを理解していないことは間違いない、じゃなきゃここまで意味不明にならない。

 つまり、サティアの中に生まれたカッツォという像をこの上なく信じている。

 

 ……信頼を裏切れば、監禁じゃあ済まないな、これ。

 

「サティア様」

「……許して、くれる?」

 

 監禁イベント一足飛びで選択肢ミスしたら即死亡状態に辿り着くことになるとは思わなかった。

 

「許すも何も、です。サティア様にそのような心遣いをさせてしまってこちらこそ申し訳ありません」

「そんなことっ! 私がっ!」

「いいえ、サティア様。恐れながらも、これはすれ違いというものでしょう。お互いがお互いのことを想い合うのは美しいものですが、その全てが良い結果に繋がるとは限らない。そのことを俺は今強く実感しています」

「すれ、違い?」

 

 よくもまぁこんなセリフを紡げたものだ、俺凄い。褒めてくれてもいいよ。

 

「俺はサティア様のために、サティア様は俺のために。より良い結果、あるいは幸せな結果に辿り着くためには、お互いの意見をしっかり交換する機会を作るべきだと思いました。如何でしょう? 俺はもう二度とサティア様に今のような表情をさせたくありません。どうか、あなたに正直な心の内を明かす機会を賜ること、許していただけませんでしょうか?」

 

 ひゅー! これってぱーぺきじゃない!? あたいってばさいきょーね!!

 

 でもめっちゃ口元もにょもにょしてる。

 我慢できないから跪いておこっと。

 

「……カッツォ」

「カツオです」

「ありがとう。これは心の底からの言葉よ。私も、そうしたいわ」

「ありがとうございます」

 

 とりあえずこの場は流せそうな雰囲気だ、急いで対策を考えないとただのその場しのぎになっちまうなこれ。

 

「でもごめんなさい。明日から仕事の集まりがあって少し留守にするの。これもあなたとの生活のために必要な準備だから、許して欲しいわ」

「よ――左様、でしたか」

 

 よっしゃああああっ! とか叫びそうになったよっしゃあああああっ!

 

「安心して? その間あなたには今度こそ不自由はさせないわ――アイリ」

「……はっ」

 

 カツカツカツと、姿は見えなかったが何処かに控えていたのだろうアイリの足音らしきものが近づいて来た。

 

「頭をあげて? カッツォ、私がいない間は、この子を自由に使って良いから」

「……は?」

 

 言葉に従って、頭を上げてみればそこには。

 

「どうか、カッツォ様のお心のまま、私を扱って頂ければ幸甚の至りで御座います」

「遠慮しなくていいわ? あぁでももちろん、言わずともかも知れないけど、最後まではイヤよ? お願いね?」

 

 跪いていた俺よりも遥かに低く、それこそ床を舐めてんじゃないかってくらいの高さに頭を下げた。

 

「……うぼぁ」

「うふふ。最大限急いで帰ってくるようにするからね? 愛しいカッツォ、帰ってきた時のあなたを楽しみにしているからね」

 

 アイリさんがじゃぱにーず土下座をしてましたとさ。

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