女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい   作:ベリーナイスメル/靴下香

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パワー(スキル)レベリング

 ああああああっ! 圧倒的パワーで蹂躙される音ぉっ!!

 

「きんもちぃいいいいっ!!」

「ガウッ!?」

 

 白亜の教会へ来て何個目のモンスターハウスか、何度目のゾンビアタックか。

 ぷちぷち自分が潰される音は、もう自分の耐性系スキルレベルが上昇している音にしか聞こえなくなってきた。

 

「ひゃっはぁっ! サティア様ー! ちょー愛してるぅうううっ!!」

 

 メスガキ様チャートにおける稼ぎを今、サティアの魔力とアイリの奇跡によって疑似的に再現してるなう。

 いやちょっとよく言い過ぎたかも、こういう形にせざるを得ないと言うべきか。

 

 方法は見ての通り、レベル差ある相手に向かって突撃する、殺される、直ぐに回復してもう一度突撃するを繰り返すって方法だ。

 

 そう。

 モンスター処理をアイリに丸投げして、狙われるアイリへの攻撃を防ぐだけの盾役を何度も行っているなう。

 

「ぷぎ――んおいしょおっ! ふっかーっつ!! へぶちっ!? んぎぎぎ! まだまだぁっ!」

 

 メスガキ様をご主人様にしていたのなら、そんなモンスターにやられちゃうのぉ♡ ざっこぉ♡ の一言で致命傷を堪えられるんだけどなぁ。恋しいよ、メスガキ様イズ何処?

 

 そう、このやり方にはメスガキ様チャートとは違って、唯一というわけではないが大きな弊害がある。

 

「サティア様サティア様サティア様サティア様――」

 

 それが回復にサティア様の魔力を使用しないといけないことから、どろり濃厚ヤンデレ味なラブジュースが脳にすーっとキまっていく。そんな感触を高頻度で味わう羽目になるってところだ。

 

「ふひっ! ふひひひひひっ!」

 

 カオスベアーの拳が身体にめり込んだ、破裂した、回復した。

 ブライダルナイトが俺をめちゃくちゃに切り裂いた、17分割された、回復した。

 

「頭ン中! ぐーっちゃぐちゃだぜぃ!!」

 

 こんだけサティア様の魔力を使ってたらどうしようもない、胸の内はサティア様への好意で溢れもうカッツォは手遅れだろう。ステータスを見ればカッツォは確かにステータス狂乱へと陥っているはず。

 

「だがっ! しかぁしっ! 俺はカツオなんだってのっ!!」

 

 カッツォをプレイしている感覚で動く。

 白亜の教会へ来て、ようやく今その輪郭を掴めた気がする。

 

 今まさに、頭の中では冷静に状況を俯瞰できているように。

 

「思っ、たんだよなぁっ! なぁんで俺ってばあの時逃げちゃったのかってさぁっ!」

 

 ミラーズハウスでボスを討伐したほぼ直後のことだった、あのサティアを前にしたのは。

 その後なんのきっかけもなく、ただ時間が経過した後で我に返ることができていた。

 

「あ゛ー……ったま、いってぇなぁ! おいぃっ!! あはははははっ!! サティア様見てるー!? いえーい!」

 

 もちろん、それが全てじゃない事なんてわかってる。

 俺の中に敗北者根性があったが故に、その場の凌ぎをしてしまったんだと反省している。

 

 反省したからこそ、俺は。

 

「あーもう! そうじゃ、なくてだなっ! いい加減俺に――従えっ!!」

 

 サティアの魔力を、従えなければならない。

 

「ぐ――う、ぁ」

 

 ぐわんぐわんと揺れている視界の中からモンスターの姿が消えた。

 消えたと理解できた瞬間その場に倒れこんだ、喉にこみ上げてくる何かをそのまま吐いた。

 

「あー……くっそ、サティア様しゅきしゅきだよこりゃ、さぁ……うげ」

 

 まぁ。そんな簡単に御せるなら、んなきもちーことしてないってな。

 

 

 

「――狂ってますね、あなたは」

「う、く……罵倒で目覚まし、これはアリよりのアリ」

「気持ち悪いです。きもっ」

「はいはい、ありがとさんです」

 

 少し意識を失っていたか、どうせなら膝枕でもしてくれていたらなと思ったりもしたけれどありえないわな。

 

 身体を起こして声の方を見てみれば、少し遠くで溜息をつきながら肩を竦めるアイリがいた。

 

「状態の方は?」

「さて、俺もどこまで俺が大丈夫かってのはわからないけど。まだアイリと一緒に、無事屋敷へ帰らなければって思える分大丈夫じゃないかね」

 

 まだ頭の中にこびり付いているサティアは拭えそうにもない。

 少しでも気を抜くとこの場で妄想のサティアでソロプレイしてしまいそうだ。

 

 恐らく、魔力侵蝕度は60%を超えたあたり。

 ゲーム的に言えば不意に行動不能になったり、戦闘中ぼーっとしたり、あるいは虚ろな顔して唐突にびくんびくんしてしまったりするデバフを負っている状態だろう。

 

 そして間違いなく。

 もう侵蝕度の自然治癒は効かない域にまでイってしまっているはず。

 

「そうですか」

「そうですよっ、と」

 

 立ち上がってみれば少しふらついた。

 

 ……なんだろうな、この感覚は。

 ゲーム的な処理の影響であることはわかってる。

 元よりそうチュートリアルが流れていたんだ、ご主人様の魔力を使いすぎると好意に浸食されその人のことしか考えられなくなりゲームオーバーになると。

 

「でも……なぁんか、違和感なんだよなぁ」

 

 俺はカツオであってカッツォではない。

 このズレは何かに利用できると思う、思っている、その確信がある。

 

 ただ、どうにも、輪郭を掴めただけに……。

 

「何ぼーっと間抜けを晒しているんですか? まさかおかわりでも待っているなんて言わないで下さいよ?」

「あー……それも悪くないかも?」

「きもっ」

「シンプルイズベストってはっきりわかんだね」

 

 ……いや、まだ今は良いか。

 

 とりあえず白亜の教会を攻略するのが先決だ。

 

「っと、そうだ。聞き忘れてたんだけどさ」

「はぁ。何をですか?」

「アイリってさ、ネコとタチ、どっち?」

「は?」

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