女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい   作:ベリーナイスメル/靴下香

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わからせのために

 改めて、白亜の教会攻略再開だ。

 と言っても今回の目的はボス討伐ではないし、この先モンスターが現れることもないから既に実質的なクリアに近い。

 

 だからあれだけサティアの魔力をバカスカ使っていたんですね、好き好き。

 

 ではなく。

 

「――何をしてるんですか」

「ナニを」

「殺します」

「冗談じゃん……」

 

 見ようによっては床を使ったソロプレイに近いことしてるからね、まったく冗談の通じないことで。

 

「はぁ……いえ、滑稽な姿を見続けるのも悪くないのですが」

「確かこの辺りだったはずなんだよ、隠し通路」

「隠し通路?」

 

 ここら辺だったんだけどな、現実化の影響で場所変わった? んなわけねぇよな、だってまだ白亜の教会に辿り着けてないんだし。

 

「疑問に思わなかったか?」

「何をですか」

「基本的に女を襲おうとするモンスターがいるダンジョンは女人禁制だ。にもかかわらず白亜の教会だけだ、推奨されてないとはいえ入ることを禁止されていないダンジョンは」

「それは……確かに、どうしてとは思いますが」

 

 そう、この神殿型迷宮は白亜の教会への入り口でしかない。

 ぶっちゃけ、神殿ゾーンにボスまで配置されてるしこの先があるなんて初見じゃあわからなくても仕方ないよね。

 

 だが、開発からのわかりにくいヒントではあったのだろう、女キャラも連れていけると言うのは。

 

 メスガキ様チャートにおける稼ぎ場として利用できないかを検証していた結果見つけただけの俺が、胸を張ってそうだと言えはしないけどさ。

 

「女の突入が危ぶまれているダンジョン。実際、女性単独で突入した時の突破率は極めて低い」

「低いどころか、突破の話が耳に届いたことはありませんね」

「なら尚更。ここはな? 二人の愛を証明するための試練ダンジョンなんだよ」

「は?」

 

 いやそういきなりめっちゃイヤそうな目をしないでくれって、気持ちよくなっちゃうから。

 

「俺との、ってわけじゃない。いや、発想の大本はそういうコンセプトなんだろうけど」

「発言に気を付けて下さい。私は冷静さを欠こうとしています。それで?」

「白亜の教会は愛を試されるダンジョンって話さ。で、俺とアイリの間に愛なんぞない」

「よくわかってるじゃないですかその通りです、ぺっ」

 

 あるのは俺からの一方的なわからせ欲だけである。片思いだよ苦しいね。

 

 おっと、見つけた見つけた。

 

「愛って奴を相手へ持ち合わせていないもの同士がダンジョンに入る。つまり、証明すべきものがない時はどうなるのか。その答えがこの先にある」

 

 頭がおかしくなりそうなほど白一色で造られているってのは、こういうのを発見しにくくするためでもあるんだろうな。

 

 見つけた床のくぼみに指をひっかけて、ぐいっと持ち上げれば地下へと通じる階段が姿を覗かせた。

 

「……本当に、このような通路があるとは」

「じゃ、行こうか」

 

 特に気負うことなく進んでいく。

 重ねてこの先に戦闘はないんだ、メスガキ様で何回も検証したし間違いない。

 

「この先に、何があるのですか?」

「言っただろう? 欲しい物があるんだよ」

「いえ、ですからそれが何かを聞いているのです物分かりが悪いですね本当に」

「言い返そうか。その答えはこの先にあるって」

 

 おっと、貴重なアイリさんのぐぬぬ顔がこちらですってね。

 

 あぁ、でも一つ注意事項があったな。

 

「アイリ」

「……何でしょう」

「サティアと結ばれたいか?」

「当たり前です。むしろ、あなたが現れなければ結ばれていました。責任を取りなさい」

「はは、間違いない。じゃあ一つ注意して欲しいことがある」

 

 カツカツと階段を降りる足音が反響する中で、しっかり伝わるように振り向いて。

 

「目的地に着きゃ、すぐに花束が投げられる」

「花束?」

「願掛けって意味でも、絶対それを手に入れておけよ」

「は?」

 

 別に無くても困りはしないけれどな、花嫁のブーケは。

 

 

 

「ほら、行って来てくれ」

「え? あ、いやこれって一体――あぁもう! ちゃんと後で説明しなさい!」

「わかってるって」

 

 辿り着いたのは正真正銘白亜の教会、色とりどりの花が咲き誇る整備された中庭だ。

 そこで今まさにブーケトスが始まろうとしている瞬間だった。

 

 さっさと行ってこいと言った指示に文句をつけたそうな顔はされたが、従ってくれているあたりやっぱりある程度の信頼度は稼げているんだろう。

 

「さて、と」

 

 ここで入手しておきたいアイテム、それが『メモリースフィア』だ。言ってしまえばカメラかビデオになるか。

 

 この結婚式は幻影たちを使って再現されているのではなく、全てがメモリースフィアに記録されているものを映した立体映像である。

 

 ご主人様と深い仲になった状態でここに来れば映像は流れない。二人で結婚式……いやまぁそういうプレイが出来るよってシーンが回収できる場所となる、内容はごしゅ通りらしいマゾ仕様ではあるが。

 

 ともあれ違うのなら、こういう映像が流れることになり、アイテム入手イベントに変わるわけだ。

 

 あぁ、ついでにもっかい言っておこうか。

 

「スクリーン代わりにするため、ダンジョンを白一色にする必要があったんですね。ってか」

 

 流石ゲームというべきだろうか。

 教会自体はちゃんと建ってあるし、花嫁のブーケや結婚指輪もアイテムとして存在している。

 入手方法は簡単で、映像が終わるまでにプレイヤー、あるいは同行者が欲しいアイテムに触れるだけで映像終了後その場に残るようになっている。

 

「メモリースフィアは、っと。あったあった」

 

 教会内の壇上に置かれているスフィアへ触れておく。

 

 これで問題ない。

 映像記録アイテムゲットである。

 

「ふ、ぅ……」

 

 少し気が抜けたせいだろう、我慢していたサティア様への好意が頭と胸の中で暴れ始める。

 

「サティア、と、こんな結婚式を、ねぇ?」

 

 自然とそんなことを考えてしまう。

 何だろうな、俺はサティアをわからせて、その後どうしたいんだろうか。

 まさしく勝手に生まれてくるこの想い通り、結婚して幸せな家庭でも築きたいのか。

 

「あ、ヤベ」

 

 んなこと考えてしまったせいだろう、侵蝕具合が加速した感じがする。

 まだ他にも行かないとってダンジョンがあるんだけどな、ちょっと甘く見過ぎてたかも。

 

「あー……くっそ、男の蕩け顔ダブルピースなんざ薔薇界隈でしか需要ねぇってのにな」

 

 身体が奮える、緩んだ口が引き締められない。

 涎が自然と出てきた、下腹部がものすごく熱い。

 

「ふー……っ、フー……ッ!」

 

 とりあえずここから離れよう、後は映像を見ないようにしてこれ以上この欲求を高めないようにして――。

 

「カッツォ」

「……カツオだよ」

 

 若干意識が朦朧として来た中、アイリの声へと振り向けば。

 

「――は」

「な、なんですか、何か言いたいことでも?」

 

 器用に口元だけもにょらせてて、それでも大事そうにブーケを抱えるアイリさんがいらっしゃったものだから。

 

「いや。助かったよ」

「は? 私は別にあなたを助けた覚えなどありませんが?」

「はいはい、そうですね、知ってますよっと」

「……釈然としませんね、腹が立つので殺して良いですか?」

 

 そうだな、サティアだけじゃないんだって。

 こいつもわからせないといけないんだって、戻ってくることが出来た。

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