女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい   作:ベリーナイスメル/靴下香

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わから説教とご褒美

 サティアの魔力浸食に頭を痛めながらも、わくわくする気持ちを抑えられない。

 

 というのもあれだ、ステータスがどれくらい伸びたかが楽しみだったからだ。

 体感にはなるが、魔力浸食の影響を受け入れるというデメリットこそあれど、メスガキ様と一緒に周回する以上の効率を出したんじゃないかという考えがある。

 

 白亜の教会に突入した後にアイリと合流したおかげでパーティは組んでいない状態になっているはず。

 スキル経験値にしてもレベルアップ経験値にしても、パーティを組んでいたのなら均等配分なのだ、加えてレベル差による補正がかかる。

 

 つまり、モンスターの処理をほぼアイリに任せっぱなしにしたからレベルアップ経験値こそあまりないだろうが、スキル経験値はソロで突入した時と変わらない量が補整付きで入手出来ているはず。

 

 白亜の教会は推奨レベル60からのダンジョン、そして俺は30そこいら。期待で胸が膨らむよね。

 

 やはりレベル差、レベル差ボーナスはすべてを解決する。

 

 そういうわけで。

 

「拒否します」

「そんなぁ……」

 

 アイリへとレベルアップ処理、すなわちご褒美をねだりに行けばこれである。なんで??

 

「あなたはサティア様の下僕でしょう。簡単に他の者へと尻尾を振らないでください、気持ち悪い」

 

 尻尾を振るって、なぁ? ゼロゼロ言ってくれるアイリにならともかくさぁ。

 

「俺の管理を命じられてるはずだよな?」

「それはそれ、これはこれです」

 

 なんともまぁ無茶苦茶である。

 ステータス上昇はRPGの華よ? この気持ちを俺は何処に向ければいいの?

 

 って、あぁ。

 

「別に、ご褒美としてヤらせろとか言うつもりはないけど?」

「っ……あたり、前です! 私の身体はっ!」

「条件付きで今は俺のモノなはずだけどな」

「ぐ、ぅ……」

 

 ぐぅの音は出たよね、余裕があるようで。

 

 なんとも滑稽と思うべきかね? いや、それは浅慮ってもんか。

 現状、明らかにサティア然りアイリ然り、ゲーム内で用意されているイベントや設定からはかけ離れた挙動を見せている。

 つまるところ明確な答えが用意されていないわけだ、考え方によっては自我を持ってそう間もない赤ん坊のようなものと捉えてもいいだろう。

 

「なぁアイリ」

「……なんでしょう?」

 

 うーん、実のところ俺は説教が嫌いである。

 正確に言うのなら言葉によってわからせるってのが嫌いだ。

 だって言葉でわからせるなんて、設定を知っている俺にすれば簡単すぎるから。

 

 簡単にわからせられない相手にこそ、どうやって立ち向かうかわからせるかと心が躍る。

 そういう意味では難易度低下させているのは俺自身のせいなのかもしれない、反省しよう。

 

 けどまぁ、今回は仕方ない、話が進まないからな。

 

「そういうところだぞ」

「そういう、ところ? 何を、私のことをわかったかのような台詞を」

「わからねぇよ、けどわからせることはできる。アイリ、そんなんだからサティア様の興味を引けねぇんだよ」

「っ!!」

 

 アイリというキャラは設定上、己の正義に殉じる女である。

 例外としてサティアの命令は絶対というものが存在し、アイリをご主人様として仰いだ場合にしても全てサティアの何らかを満たすためにプレイヤーを使い、管理するという立ち回りをしていた。

 

「いい加減まともに狂え(・・・・・・)よ。サティア様のためにが至上なんだろう? だったら俺へのご褒美なんぞ秒で承諾だよんなもん。もっと言うのならアイリから言いに来てもいい。だって現状、俺を高みに至らせることこそがサティアの望みなんだからな」

 

 言っておいてなんだが、だからなんだなと思った。

 だからまだ、サティアから前髪留めを贈られていないんだなと。

 

「――お前っ!!」

「あぁ、それもいいかもしれないな。予想外を好むサティア様だ、俺以上の存在こそが私だと言い切るには俺を排除するのもいい方法だ」

「っ……!」

 

 ガーターベルトに仕込まれていた短剣を引き抜き俺の首元へ添えられるが、その手は少し震えてる。

 

 一切の動作が見えなかったよね、俺ってば太ももむっちむちやぞって目を奪われたくらいだ、お見事です。

 

「一つだけ言っておいてやろうか」

「っ、だま、れ……」

「アイリ、お前今」

「だまれっ!!」

 

 ――80点すら取れてねぇぞ。

 

 そう言った瞬間、世界が反転した。

 

「ぐっ……!」

「黙れっ!! 黙れ黙れ黙れ――だまれぇっ!!」

 

 気づいたら馬乗りになられていた、短剣を振りかぶったアイリが見えた。

 

 背中の衝撃は気にならなかった、床がビシィっとか鳴ってたからヒビくらいはできてるだろう、床が抜けてないだけ手加減されたか。

 

「――で? どうすんの?」

「っ」

 

 しばらくの沈黙。

 こういう状況になった時、予想外、想定外を迎えた時。

 

「くっ……!」

「……あーあ」

 

 動けなくなるのがアイリというキャラクター、だから。

 どうすることも出来ず、ただ俺を睨みつけた後、その場から逃げていった。

 

「俺がサティアだとするのなら、逃げるなんて赤点を出すアイリを面白く思ってるだろうな」

 

 聞こえたか、聞こえてないか。

 

 どちらでも構わないか、とりあえず俺の目的は達成されたわけだし。

 

「うーん。美少女に馬乗りになられる……良いご褒美だぁ……!」

 

 さて、ステータスを確認した後、次に欲しいアイテムをダンジョンへ取りに行くことにしましょうかね。

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