女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい 作:ベリーナイスメル/靴下香
巻き戻るという点について、だが。
「スキル経験値まで無かったことになる、か」
ドア開けた瞬間に殺されるを繰り返した後、どっかりベッドに座って考える。
不幸中の幸いと言うべきだろう、時間はそれこそ腐らないほどあるわけだ、思考するための時間には事欠かない。
「なるほど、ねぇ」
どうあがいても現状、カッツォは今以上に強くなれないわけだ。
例えば何度も何度も死んで、各種耐性を鍛えて突破するなんてパワープレイは許されていないらしい。
「だが、だ」
都合さっきので7回この部屋から出た瞬間殺された。
2回目は何で殺されたかを確認しようとして、攻撃らしきものが飛んでくる方法を確認できた。
3回目と4回目はそれが何なのかを見定めようと試みて、インビジブルスローで刃物を投げられたと理解できた。
5回目、6回目、そして7回目はとりあえず回避を試みたが、何処に避けても2撃目、3撃目が続きとりあえず6撃目までは確認している。
「いい加減ちょっと、死に慣れて来たよね」
気持ちいい、とは流石に言えないが。
当たり前だと思いたいが、ドアを開ける瞬間が怖くなくなってきた。
いずれ朝飯食べて仕事に行くくらいの気分でドアを開けることが出来るだろう、仕事行きたくねぇって気持ち込みで。
ただ、そうして殺され続けたことで一つ実感したことがある。それが。
「俺とカッツォには、やっぱり乖離がある」
改めてカッツォのステータスを確認するが、特に何も変化は見られない。
妙なデバフも貰ってないし、予想した通り魔力侵蝕度は6割程度で、そこから動いておらず、乱用したとしても巻き戻りと共に侵蝕度も元に戻るということ。
「俺は恐怖みたいなものを感じなくなっているが、カッツォはステータス上恐怖って状態異常になってる」
カッツォが負うダメージやデバフの影響は俺にまで影響する。
しかし、俺が負うダメージはカッツォに影響が及ばない。
「これをゆっくり確認、実感できただけでも儲けものだな」
何故か?
つまるところこのイベントクリアに必要とされるモノは、カッツォではなく俺次第であるということがわかったからだ。ステータス異常恐怖にかかっていようが、戦闘にならないのであれば特に影響はない。
わからせたいと心に強く想い続ければ、挑み続けることが出来るし……何よりカッツォではなくカツオのレベリングが出来ているとでも言うのかね、人間力高めてるなう。
「いい機会だ、攻略を考えながら俺のレベルアップを図らせてもらおうかね……ったく。サティアをわからせる前に、良い踏み台になってくれるよ、お前はさ」
時計を見れば20時50分と、制限時間は残り10分を切っていた。
「さて、とりあえずリセットしてからもう一度、だな」
意識的ににやりと笑ってみる。
そうすれば、次は入り口前を突破できるような気がした。
これで何回目か、いい加減数えるのは馬鹿らしくなってきた。
「殺意が……殺意が高すぎるっ!!」
いやまじクソゲー乙でありますよこれは。
何とか部屋から出た瞬間から繰り出される不可視の刃パターンを覚えて突破できたと思ったら今度は壁に挟まれてプチってなんだよもう! 孔明の罠だ! とか叫んどきゃいいのか?
「クリアさせる気がしねぇな? このイベント」
激おこぷんぷん丸だよもう。
再びどっかりとスタート部屋のベッドに胡坐をかいて不貞腐れる、少し休憩タイムだ。
「うーん……別のアプローチを考えるべきなのかもしれんな」
たとえば具体的にアイリがどんな奇跡を行使しているかを考えて突破口を探るとか。
正直現状の仕組みがいまいちわかっていない。
とりあえず死んだら戻るって状態になっているが時間も巻き戻っている以上、俺やアイリ自身と言った個人に奇跡を使用しているとは考えにくいだろう。
「つまりアイリの奇跡は今この世界自体に影響を及ぼしているわけだ。どんな条件を触媒としているやら」
取り引きの基本は等価交換……いやごめんちょっとカッコイイ単語を言いたくなっただけ。
ともあれ、発現できる奇跡の程度は触媒の大きさに依存する。
なら、時間なんてものに影響を及ぼせるに相当する条件をアイリは設定しているわけだ。
「あるいは……これは巻き戻りじゃあない、とか」
いや、体感的には巻き戻りそのものなんだけど。
気になることがあるとすればアイリにはどう見えているのかという部分か、もしくはサティアでもいい。
俺は意識を引き継いで巻き戻っているがアイリはどうだ?
もしかしたら遠見の手鏡で見ているかもしれないサティアはどうだ?
「だー! わかんねぇっ!」
手に入れられる材料が少なすぎる。
アイリの奇跡、その本質は重ねて許可だ。
俺の死を許可しないと設定しているかどうかは別として、俺が死ぬことを起因とした何かを設定していることに間違いはないだろう。
ならば何を許可しているのか、許可していないのか。
「ふむ……」
死んだらまたここからになる。
トラップ殺法の突破方法に意識を取られていたけど、仕掛けられたトラップを乗り越えたとてアイリ本人にパワープレイぶっ殺しされちゃあ意味がなくなる。
「……うん?」
どこをどう見ても詰みであることを確認して、ふと思う。
「なら、最初っから応じなきゃ良いだけじゃん」
問答無用で俺をわからせることを目的としていたのなら、そもそもこんな回りくどいことをせずともいい。
あるいは、俺が苦しむ姿を見たいと言うのなら話は別かも知れないが、白亜の教会でのやり取りを考えるにそのセンはないと思っても良いだろう。
「なら……アイリは何を求めているんだ? 俺が泣きながら許してください、あなたをご主人様と仰ぎますからと懇願するっての、とか?」
俺が折れる瞬間を見たい?
いや、それはそもそもサティアの意にそぐわないだろう。
「まさか」
その時俺に電流走る、ってか。
いやでも流石にないよな。
「自分の手に負えない相手だと、理解したい、とか?」
ははは、ご冗談を……んなアイリまでわからされたがりなんてキャラブレイク、許されざるよ?
「ふー……でも、この本気っぷりを乗り越えられたのなら」
クリアさせる気が無いのも頷ける、か。
あー……そうか、よし。
ならば見せてやろうじゃないか。
「お前がクリアさせる気が無いなら、俺もまともにクリアしてやる気もねぇよ」
これはそういう戦いってわけね。
「……ク、ククク、た、滾って、きたなぁっ!!」
待ってろアイリ、もうすぐわからせに行ってやる。