女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい   作:ベリーナイスメル/靴下香

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達成感とご褒美、そしてラスボス

「ふぃー……」

 

 あの後めちゃくちゃわからセした。

 なぁにちゃんと使う場所は考えたとも、サティアのご要望通りにさ。

 

 でもどうなんだろうな? うしろをつかっても俺はちゃんと一度も破られなかった城門を破ったと認められたのだろうか? 勇敢な初陣を飾れた兵士と認められたのだろうか? いやそれは別にどうでもいいんだけど。

 

 少なくともサティハラは回避できると思う、回避できたらいいね。

 

「何にしても盲点っていうか、そりゃそうだって言うべきか。効果は覿面だったよね」

 

 自分のステータスをにやにやと確認してしまう。

 名前の部分に記載されているのはカッツォではなくカツオという文字だ。

 もしも現実世界に俺がまだ存在するのなら、昨晩の光景を撮影したメモリースフィアをお届けしてやりたいよまったく。

 

「リネーム。まさかとは思ったけど、大正解だ」

 

 ゲームの仕様として、拠点にある自分の机でリネームができる。

 

 自分の部屋へ辿り着くのはそりゃもう何十回……じゃあ収まらないか。

 ともあれ何回死んだかわからないくらいだけども、おかげさまで自分を鍛えられたよね。

 

 リネームしたらあんだけ殺されたことで得られた経験値も俺に反映されたし、うはうはである。

 

「余計かつ慎重な試みは、大事だなぁ……うひひ」

 

 ぶっちゃけアイリがいるだろう自室の扉には辿り着けたんだ、でもドアノブに触れた瞬間死んだ。反復練習を兼ねて更に5回くらい試したけど変わらず死んだ。

 無駄になっても構わないとは思っていたけど、嬉しい誤算ってやつである。

 

 ともあれ要するに結局カッツォでは(・・・・・・)クリアできないようになっていたんだ、だからカツオで攻略したって話である。

 

 流石にリネーム後に奇跡が発動するかどうかは分の悪い賭けだったから、もう一度アイリの部屋に入ろうとしたときはドキドキもんだったけど。

 

「んー……これが現実感ってやつか」

 

 街で男がリードに繋がれてるのを見た時とは比べ物にならない。

 あるいは解放感とでも言うのかね? これは疑いようもなく自分であると自認できる感じ。

 

「今度カッツォ君のお墓でも作っておくべきか? とりあえずサティアをわからせた後のお祝いとして考えておこうか」

 

 リネーム権利はワンプレイで一度だけ。

 失敗して隣にカツオの墓が作られないように頑張る所存であります。

 

 差し当ってはカッツォと俺は別の存在であるという理由で誤魔化していた魔力浸食の煽りをもろに食らうことになっている部分が懸念ではあるけど――。

 

「――旦那様、お待たせいたしました」

「っと。あいあい、あいてるから入っておいで」

「はい、ありがとうございます。失礼いたします」

 

 何とかなるか、ようやく復活したらしいアイリがやって来たし。

 

「……? 如何、なされましたか?」

 

 相変わらずの表情が変わらないクールビューティーさんではあるが、前髪に隠れた目からはしっかりこう……愛情? そんな感じの何かが伝わってくるし、何ならちょっとほっぺた赤くなってる。

 

「……ずるいよなぁ」

「え? あ、あの申し訳ありません。何か、失礼なことを――」

「あぁいや違う違う、アイリに言ってるわけじゃない」

「は、はぁ」

 

 こてんと首をかしげるアイリちゃんかわよー。はー? ちょっと天使みあるんだがー?

 

 いやそうじゃなくて、ずるいのはゲームと比べてって話だ。

 あんだけご褒美でわからされまくって、反撃らしいことを繰り返しても一切靡かなかったって言うのに、たかが一回わからセしただけでこうも変わるのがさ。

 

 やっぱり開発が悪いよ開発が。

 っていうかあんだけ乱れに乱れるアイリちゃん最高だったよ、さっさと逆転DLC販売してどうぞ。

 

「いやいや、俺がDLCになるんだってな」

「え、えぇと、旦那様? その、何か御用でしたでしょうか? も、もちろん用などなくても呼んで頂けただけでアイリは幸せなのですが」

「……っ! あーうんごめん、萌えちゃってごめん。可愛すぎ罪でしょ謝って? 謝罪しろ」

「は、はい! 申し訳ございません!」

 

 いやそんなめっちゃ嬉しそうに土下座せんでも。ごちんって言ったよ? ごちんって。

 

 いかん語彙力が別ベクトルに死んでる。

 アイリちゃんは大変なものを殺していきました、カッツォの心です。

 

「いや悪い、アイリは何も悪いことしてないから。ともあれ、渡したいものがあってな」

「とんでもないことで御座います、旦那様に頭を下げるの大好きです、モノにされていると実感できて……よろしければもっと――あ、いえっ! んっ、んっ。その、渡したいもの、ですか?」

 

 なるほどコイツはとんだドMだぜ!! そういうの好き、もっと頂戴、もっと。

 

 じゃなくて、だな。

 

「ああ。ちょっと上書きというか、先んじてというか。こっちおいで」

「?? あっ、なるほど。はい、失礼いたします」

 

 しずしずと近寄ってくるアイリに警戒の色は見られない。

 ほんと変わり過ぎな? わからせた結果がこうだって思えば股間が熱くなるけどさ。

 

 イスに座ってる俺の前まで来て。

 

「えぇと? 何しようと?」

「申し訳ありません。朝のお勤め、でしたね。至らぬアイリを許してくださいませ。もちろん、存じております。昨夜に躾て頂けました成果、ご披露致します」

 

 何故か膝の間に跪いて。

 

「……おぉう」

 

 あれがそれでナニだった。

 それ、80点じゃなくて120点だから。

 

 

 

「いやいやそうじゃない」

「え、えぇと?」

 

 流されてない、断じて俺は流されていない。

 っぱこういうシチュなんだよなぁ! たまりまへんなぁ! とか思ってない。

 なんなら口元を色っぽく拭うアイリにリターンマッチを挑みたいとも思っていない、本当です、いいね?

 

「アイリ、ちょいちょい」

「は、はい」

 

 そうしてやり直し。

 アイリの前髪を纏めて、用意していた髪留めでパッチリと。

 

「こ、これは?」

「やっぱこっちのほうが落ち着くな。嫌かもしれないけれど、旦那様命令ってことで一つ我慢してくれないか?」

「いっ――嫌などとっ!! あ、ありがとう存じますっ! 一生の、一生の宝物に致しますっ!」

 

 サティアと本来ならこういうやり取りがあったのかもしれないよね。

 

 いえーい! サティア様見てるー? アイリちゃんの髪留め、俺がヤっちゃいましたー! フーゥッ!!

 

「なら、良かったよ」

「はい……はいっ! 旦那様、私の、アイリの愛しい旦那様……私は今、とても幸せです」

 

 いやほんと変わり過ぎな?

 

 ……うーん、これもやっぱリネームというか、世界のルールから外れたからこそ、なのかね?

 世界のルールから外れたってのもちょっと違うか? いまいちよくわからないな、この後街に出て色々確かめてみようかね。

 

「あ」

「だんな、さまぁ……私、わたしぃ……」

 

 どうにも、効き過ぎたらしい。

 めちゃくちゃおかわり希望されているというか、あー。

 

「それは、ダメだろう?」

「で、ですが、です、がぁ……このような事されてしまいますと、我慢が、ぁ……」

 

 どっちを我慢できなくなっているのか。

 唇に熱視線が注がれているあたりこっちだろうとは思うけど、許してしまえばなし崩しに全部アウトまで行っちゃうだろうな。

 

「アイリ」

「はい、は、ぃ……」

 

 あ、近い近い、めっちゃ顔近い。

 ステイですよアイリちゃん、ステーイ。

 

 まぁでも、保証はしてやるべきか。

 

「俺が、サティアをわからせたら。真っ先に奪ってやるから」

 

 ククク、ご褒美だ、いつもは強請ってばかりだった俺だが、今度は俺がご褒美をくれてやる立場になったのだ。

 

「――かひゅ♡」

「あ」

 

 ずてーんとらしからぬ勢いで床に倒れそうになったアイリを支えておいて。

 

「うーん、やっぱわからせって……最高やねんな」

 

 ひとまずの目標が達成された実感を、噛み締めた。

 

 

 

 その時。

 

「――あら、随分と……私のために(・・・・・)自分を磨いてくれたようね? カッツォ」

 

 げぇっ!? サティア!?

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