女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい 作:ベリーナイスメル/靴下香
カッツォとカツオの乖離を埋められたことは喜ばしいことだ。
ただ、こうも思う。
「お帰りなさいませ。サティア様」
「ええ、ただいまカッツォ。そしてアイリ? 随分と……頑張ってくれたようね?」
「サティア、様……」
俺は、この圧迫感をカッツォに肩代わりさせてたんだな、と。
初対面で脚舐めるなんてよくできたもんだよ、最初からカツオとして対面していたのならできたかどうかわからない。
いやいや、だからってビビッてるんじゃあわからせロードは早くも終了してしまう。
土下座したままのアイリが心配そうな目で俺をちらりと見た。
わからせた女を不安にさせてんじゃねぇよ、俺。
「ええ、これもサティア様のご采配のおかげです。たっぷりと……己を磨くことが出来ました」
「……ふぅん? なら、何よりね」
「ですのでアイリを褒めてあげてください。疑いようもなく真実として、サティア様のご采配とアイリの献身あっての今ですから」
目に見えて不機嫌そうなサティアの視線がアイリを貫いた。
視線を感じた瞬間びくりと身体を震わせたあたり、味わったことのない種のものだったのだろう。
横目でアイリを少し観察したい気持ちはあるが、どうにもそういうのを許してはくれないようだ。
「……ねぇ? カッツォ?」
「カツオです。何でしょう?」
不意に、サティアが微笑んだ。
知らなければきっと、そのキレイさにうっとりしていたかもしれない。
だけど。
「私は、アイリを使っていいとは言ったわ」
「ええ、確かに伺っています」
ちりちりと、熱くもないのに前髪が焦げたような気がした。
あぁ、来るな、これ。
「でもね、私は――」
――奪って良いとは、言っていないわ。
「ち、違うのですサティア様! これは私が――」
「黙ってろ、アイリ」
「っ……!」
さぁて、どうすれば凌げる?
確かに俺のステータスはバカみたいに伸びた。
それこそ街を行く一般人的な女であれば、問答無用のわからせが通ると確信できるくらいには強くなった。
それでも。
「ねぇ? 教えて? どうして私のモノを取ったの?」
唇を三日月に裂いたサティアに、敵う気がしない。
「……あん?」
なぁんか、違うな?
「答えなさい、カッツォ。どうして? 何故私のモノを――」
「――っく」
あぁ、違う。全然違う。
「くはっ、く、ククク……」
「……カッツォ?」
誤魔化す? 凌ぐ?
何バカなこと言ってんだよ。
「はーーーっはっはっは!! なぁに考えてんだよ! 俺はっ!!」
「っ!?」
違うだろうまったく違うっ!!
「
おーおー目を点にしちゃってまぁないね! そりゃそうか! いきなりこんなシーンで狂ったように笑われちゃあどんな反応したらいいかわかんねぇもんだよな!!
「いいさ! それでいい! 逆ギレでも自暴自棄でもなんでもいい! 俺は、俺はっ! こういう場面でこそ逆転できる男なんだよっ! バカタレがっ!!」
あーおっかしいな、本当に俺はこの世界に何しに来たつもりだよ。
つーか昨晩思い返したばかりだろう、わかったつもりだろう、味わっただろうよ。
準備をして勝つ? それも良いだろう。
打開策を考えて勝つ? 立派なことだ。
でも、それ以上に。
「サティア」
「っ!? きゅ、急に呼び捨ててくれるじゃない……何? 納得できる言い訳でも考え付いたのかしら?」
「……あぁそうだな。考え付いたよ、さいっこーに滾る状況設定をな」
「状況、設定……? 何を、カッツォ? あなたは何を、言っているの?」
はん! この程度で動揺して嫉妬した、激怒したフリを止めるなんて甘ちゃんかよ、ぺっ。
あれ? アイリちゃんどうしたの? なぁんでそんなトロ顔見せてくれちゃってるの? こんの欲しがりマゾがよぉ……! ククク。
サティア、お前もお前だよ。
思い通りに収まらない俺だから惹かれたんだろう? 愛されたいと思ったんだろう?
てめぇの考え得る結果に収まる範疇で予想を超えろ、なんてなぁ? バカにしてるにも程があるぜ?
「アイリ」
「は、はいっ!」
「立て」
「はい! 旦那様っ!」
はいはい、アイリちゃんは良い子ですねぇ。サティアがお気に入りにしていただけのことはあるよ。
だって言うのに随分なコトしちゃってさぁ? 好きな子を苛めちゃうクチ? キュートアグレッションはみ出てんぞ? 潜在的寝取られフェチ女が。
「すー……はー……」
「だ、だんな、様?」
「命令だ。これは俺がお前の主となって初めてする命令だ、お願いじゃない」
「つ、謹んでお承りします!」
ちらりと横目でサティアを見れば、どうすればいいのかわからなくなっている表情で、ただの観客になってしまっている。
実に好都合。
その場にいられなくしてやるから、よぉく見とけ。
あぁ、いや。
「何があっても絶対に俺へ奇跡を行使するな」
「へ? あ、あの、それはどういう――んむっ!?」
「っ!!」
いえーい! サティアちゃん見てるー?
いまぁ、目の前でキミのモノだったメイドちゃんの唇ぅ、奪っちゃってまーす!
「ぷ、ぁ……だ、だんにゃ、しゃまぁ……」
「言いつけを守れたご褒美、その前払いだ。必ず、守れ」
「ひゃ、ひゃいぃ……」
「な、なな……な、にを……」
よぉし、準備も覚悟も完了っと。
「ようサティア。ご覧の通りお前に捧げる唇なんてもんは無くなった。ついでにご明察、お前のメイドも奪っちまった。よかったぜぇ? なぁんでさっさとベッドに連れ込まなかったんだ? 俺には理解できねぇわ」
「カ……ッツォ、あ、あい、リ……?」
「そんなだから、だぜ? いつでもウェルカムって股濡らしてるメスをさー、勿体つけてもっともっととか欲張るからこうなる。いや違うか、もっと単純に、一言でアンタのことを言い表してやるよ」
「い、や……やめ、なさい。それ、以上は……い、今なら――」
うるせぇよ。
今だ、今なんだ。
このクソったれ仕様の世界に、中指おったてて、わからせてやるその時は。
「じゃ、いれる――間違った。じゃ、言うね……この、チキン野郎がっ!! 寝取られても仕方ねぇよ! そんな勘違い拗らせたバカ女じゃなぁっ!!」
「――殺すっ!!」
んじゃま、ハラメントス家ルートラスボス戦、始めますか。