女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい   作:ベリーナイスメル/靴下香

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生きてるって素晴らしい

 さて、ゴブリンメイジの湧くポイントでスキルレベリングを始めてしばらく。

 

 ついにというかようやくというか。

 

「い、生きてるぅっ! 生きてるってきもちいいっ!」

 

 転移後初ダメージを貰ってしまった。普通に痛い。

 痛いで済んだことを喜ぶべきだろうが、それ以上にうれしいことがある。

 

VIT(頑丈さ)、伸びてくれるかなー?」

 

 ごしゅ通りの仕様として、ダメージを受けなければHPや防御力に関わる数値が伸びないのだ。

 逆に言えばダメージを負えば関する数値は上昇する、いやまぁご主人様にレベルアップしてもらわなきゃダメなんだけどさ。

 

「しっかし、ミスったな。やっぱ一人称視点って視界が狭いわ」

 

 TPS、すなわち三人称視点だったからこそ物陰なんかを注意できたそのありがたみを強く実感するね。

 やりこんだと言って良いごしゅ通りだからある程度のエネミー配置なんかも頭に入ってはいるが、流石にランダムポップは勘弁してってもんで。

 

「ともあれ、少し休憩か」

 

 湧きスポットから離れて安置へと移動する。

 重ねて湧いたのがメイジじゃなくてノーマルゴブリンで良かったし、不意打ち補正なんかが乗らなくてよかった。

 

 いずれステータスが伸びた後、わざと不意打ちくらったり攻撃魔法を貰ったりする必要はあるだろうが、流石に今それをする度胸はない。

 

「……ステータス、か」

 

 改めてと言うべきか重ねてと言うべきか。

 このゲーム、ごしゅ通りは極めてよくできたゲームだ。

 まさに逆転要素がないってくらいが俺にとっての不満ポイントってだけで、何なら全年齢対象版もRPG部分の出来が良いことからマゾ紳士以外にも幅広く受け入れられていた。

 

 何せまずスキルが細分化されまくっていて多い。

 コンプ厨やRTA走者、やりこみゲーマーもにっこりだ。

 スキルとして表示されているもの以外にもマスクされているステータスやスキルすらある。

 

 改造班によって解明されたことではあるが、例えば投擲スキルなんかも何を投げたかまでカウントされていて、石投げ、ナイフ投げと言ったポイントが一定数溜まれば投擲スキルに反映されると言った形がとられているらしい。

 

 もちろんムフフな経験に対するステータスポイントだってあるが、そっちはむしろ負け癖付けというか、永続デバフ貰うようなもんなんだよな。

 

「ん? 永続デバフ?」

 

 逆転の可能性を丁寧に摘み取るための仕様ではあるが、むしろ成人指定シーン以外を考えればバフである。

 例えばろうそくプレイで火耐性向上とかね、改めてマジで負かせに来てんなこのゲーム。

 

「そっちのことも考えなきゃか」

 

 俺はこの世界に勝ちに来てるわけだ、なら永続デバフなんて受け入れてしまうのは絶対にアウトである。

 その代わりにRPGパートでは苦しい戦いを強いられてしまうのならば受け入れるかつ対抗策を考えなければならない。

 

 さしあたっては。

 

「斬撃耐性、つけとくか」

 

 まーさかヒロインだけじゃなくボスにもいたぶってもらわなきゃならなくなるとはね。

 レベル差があればあるほどボーナスも大きいって誰が考えたんだよこんちくしょうめ。

 

「はぁ。痛いの自体が快感ってわけじゃねぇんだけどなぁ」

 

 SMプレイは信頼関係が大事ですよ、本当に。

 どっちが相手を支配しているのかバトルはともかくとして、少なくとも一方的な思い込みと押し付けはよろしくない。

 

 ボスにいたぶられるだけ、相手を喜ばすだけなんてのはまったくもって気持ちよくないのだ。

 

「ステータス伸びるのは気持ちいいけどさ。やれやれですよね本当に」

 

 そろそろ体力も回復しただろう、さっさとゴブリンスティックを乱獲してボス戦と行きますか。

 

 

 

 そんなわけで。

 

「うひいいいいっ!! いってぇええええっ!!」

 

 都合8回目(・・・)のゴブリンナイト戦である。

 体感時間だから確証はないけれど、8回目のボス周回を俺は最後にすることを決めた。

 

「か、覚悟してたけど、さぁ!? やっぱ剣で斬られるって痛すぎるぅ!!」

 

 なまじっか切れ味が悪くて鈍器で殴られているのか、刃物で斬られてるのかわからないところもキツイ。

 

「うおぉっ! お、俺は生きるっ! 生きてやるぞぉっ!!」

 

 予定通りの耐性訓練だったが、ゴブリンナイトのドロップ装備がコンプしてしまったがために余計必死にならざるを得ない。

 

 セット効果が良いんだよ、序盤はこれで乗り切れることが約束されるレベルでさぁ!

 

「ふ、いぃっ……いってぇなぁ、もう」

 

 7回目まで瞬殺してた相手が愉快気に笑う姿ってのはムカつくね、どうも。

 お前さっきまでなんもできずヤられたじゃん、わかってる? わからせてやるからなっ。

 

「しっかし、ガチの真正面、真っ向勝負はやっぱきついなぁ」

 

 初プレイの時を思い出さないでもないね。

 ゴブリンナイトはレベル10のモンスターだ、はっきり言ってレベル1で相手をするのは無謀でしかない。

 だからこそ攻略方法が確立されて、逆を言うのならセオリーから外れたのなら当たり前に苦戦するということ。

 

「……さて、と」

 

 ただ、セオリーの中でも共通してゴブリンナイトは火属性魔法に弱いという点は取り入れられている。

 

 だからこそのゴブリンスティック乱獲だった、ご主人様がいない俺はまだ魔力を有していない。

 有していないから装備が初めから持っている魔力が尽きれば魔法は打ち止めとなる。

 

「つまり、装備の数だけ魔法を打てるってこと――」

 

 そして、ここはゲームのシステムから一部外れている世界だから。

 

「――覚悟しろい」

 

 一度に一つだけ、なんて縛りはなくなる。

 

 その目論見通り、持てるだけ持ったゴブリンスティックの先端から。

 

「ギャギャッ!?」

 

 初級火魔法、ファイアボールが放たれゴブリンナイトを焼き尽くした。

 

「……あー、気持ちぃ」

 

 黒焦げどころか燃えカスになったゴブリンナイトが消えていくのを見送り終わった時。

 

『品評会終了っ! ブタ共っ! さっさと戻ってくるようにっ!』

 

 帰還命令のアナウンスが流れた。

 

「はいはい、人使いが荒いことで……さーて、俺のご主人様は誰になるかなっと」

 

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