女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい   作:ベリーナイスメル/靴下香

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ご褒美の時

 残念ながらと言うべきか、ダンジョンから戻って来たのは俺を含めて4人だけのようだった。

 

 ゲームの時にしてもそうだが、大体チュートリアルを乗り越えたNPCは5人以下になる。

 だからそれなりにいい結果とは言えるのだろう、酷いときはプレイヤーだけなんてこともあったわけだし。

 

「これをつけろ」

 

 感傷なのかなんなのかわからない感情に浸っていれば、ボンテージに身を包んだ美人サマが首輪をつけろと言ってきた。

 首輪には長ーい鎖がつけられていて、そう。

 

「喜べ、これが引かれた先に、キサマらブタのご主人様がいる」

 

 奴隷千本くじ、はぁじまぁるよ~。

 

 視線を上げればニヤニヤしながら鎖の先っぽを持っているサド嬢サマ方がいた。

 悪趣味と言えばそうだろう、人間扱いされていないってはっきりわかんだね。

 

 ともあれ並んでいる俺のご主人様候補の中にはお目当てのメスガキ様はいなくて残念だよ。

 

 あぁ、そういえば注意点が一つあった。

 

「ひっ」

「あら? わたくしでは不服かしら?」

「そ、そのような――」

「なら、必要ありませんわね」

 

 ぶちり、と。

 二つ隣に並んでいた男の首がもげた。

 

 ゲームでも死亡バッドエンド直行となる罠選択肢として、引っ張られた際に抵抗するというものが選べる。

 選べばどうなるかは御覧の通りとしか言いようがない、この世界において女はゴリラ――もといとても強いのだ。ステータスという面でもそうだし、権力という面でも同じく。

 

「あ、あ……あぁぁぁあっ!?」

 

 隣の男がずるずると引きずられていく。

 抵抗することもできず、されるがまま、絶妙な力加減で首がもがれない程度に。

 

 そうして。

 

「では、誓いを」

「う、あ、あぁ、げふっ!?」

「ほら、早く」

 

 差し出しついでに顔を蹴られた男が、女の足の甲へと唇を落とす。

 

「ん、ふふ。これであなたはわたくしのモノ……死ぬ気で、励みなさい?」

「か、かしこまりまし、た。ありがとう、ございます……!」

 

 あ、さっそく永続デバフ貰ってら。

 早くも恍惚とした表情を浮かべている男はともあれ、なんだかなーという感想しか思い浮かばない。

 

 設定を紐解けば、男は女の代わりにダンジョンを探索しアイテムを持ち帰るという役割を負っている。

 強い女がダンジョン探索をすればいいじゃないかという話だがそこは成人指定ゲーム、女がダンジョンアタックすればそりゃもう即落ち2コマよろしくモンスターの苗床となってしまうから入らない。

 

 つまりはお互い必要な存在、相互助関係にあるはずなんだがね。

 いつの間にやらダンジョンに入る意味が薄くなり、薄くなったがために男の存在価値が低くなった結果、体のいい玩具となってしまったわけだ。

 

 そうして、一人、二人。

 

「あれ?」

 

 男も女もその場からいなくなっていく中、俺だけがぼんやり突っ立っていますよこれ。

 

 ……なるほど。

 ってことはこれはもしかしなくても。

 

「ついてこい」

 

 中流階級以上のご主人様が確定する別室行きイベントへと辿り着けたらしい。

 

 ボンテージのお姉さんが俺の鎖を引き、引きずられないよう首ちょんぱされないようついていく。

 やー、苦労したかいがあったよね。というかこのおねーさんのスケベなお尻見られただけでも達成感あるわ。

 

「気色の悪い顔をするな! 汚らわしい!」

 

 ご褒美のお言葉ありがとうございますってな!

 

 さてさて、中流以上であれば誰が候補に居たっけな? メスガキ様は望み薄だとしても、ツンデレエルフ様くらいならわからせがいがあっていいんだけども。

 

 上流階級の奴隷になる腰かけって考えれば中流ご主人様は誰でもいい、あえて言うのならやっぱりわからせがいがあるご主人様がいいんだけど――おっと?

 

「……まじか」

「あら? うふふ、その反応も予想外ね? 良いじゃない」

 

 真祖!? 真祖なんでっ!? あいえぇっ!?

 

 え、うそマジ? マジかよどうしてサティア・ハラメントス?

 中流どころか上流も上流階級じゃん? うそやん?

 

「キサマ――」

「アイリ」

「くっ、う……失礼、致しました」

 

 うわぁ、百合鉄仮面メイド様もいるじゃん、こりゃもう疑えんわ。

 

「……跪いたほうがよろしかったでしょうか?」

「構わないわ。頭が高かろうが低かろうが、私に届くわけもなし。そうね、あるいは価値という物差しで至ってくれることを期待はしているけれど」

「では、このままで」

「ふ、ふふっ! ええ、いいわ、良いわよ、あなた! 良い拾い物だと確信できた、素晴らしいわ」

 

 吸血鬼種の中でも他の血が混ざっていないトゥルーヴァンパイアと呼ばれる種族は真祖と呼ばれている。

 さらにその真祖の中でも多くの意味で上澄みに在る吸血鬼は、吸血姫と呼ばれこの世界に三人しかいない。

 

 そうとも、サラサラ金髪、厨二病大歓喜の赤い瞳に、誰もが目を奪われるナイスバディ。

 愛が重く痛いヤンデレ真祖にして吸血姫、サティア・ハラメントス。

 

「多くを語る趣味はないわ。それに、まずは何よりも先にやるべきことがあるでしょう?」

 

 サティア……様は試すように、あるいは楽しむようにおみ足を組み替え差し出してきた。

 相手の居る場所のほうが高い、特に跪いたりせずとも少し歩けば足の甲へ唇を捧げることは出来る。

 

「さぁ、どうぞ?」

 

 頭の中にゲームで見た選択肢が浮かんだ。

 

 足の甲へキスをするか、それとも手の甲にキスをするか。

 

 前者は服従の誓い、そして後者は忠誠の誓いである。

 服従すれば俺はサティアの奴隷となりダンジョン周回を生業とする探索者となり、忠誠を捧げればハラメントス家の従者となる。

 

 サティアルートに行くか、隣に控えているメイドのアイリルートに行くかの違いだが。

 

「では、失礼いたします」

「そう」

 

 だが賢い俺は既に知っている。

 ここはゲームではない、定められた選択肢を選ぶ必要などないのだ。

 

 どちらのルートを選ぼうが、敗北者となることに変わりはない。

 敗北者? んなもんになるためこの世界を生きてやるなんて志したわけではないのだ。

 

 故に。

 

「ん? んひゅっ!?」

「サ、サティア様っ!?」

 

 俺はサティア様の足を舐めたくるぜっ!!

 

「ちょっ!? んひゃっ!? や、やめっ――んふっ、んふふふぅっ!?」

 

 あー、美人のおみ足美味しいんじゃぁ!

 

「こ、このゴミッ!! な、なんてうらやま――じゃないっ! サティア様から離れろっ!」

「へぶっ!?」

 

 あ、これあかん。調子に乗り過ぎた? め、目の前が暗く……。

 

「は、はー…はー……。あ、アイリ、やめなさい」

「し、しかしっ!」

「好きにしていいと言ったのは私よ、ならばこれもまた甘んじて受け入れる他にないわ」

 

 いかん、ほんと、これでゲームオーバーはシャレにならんのだけども。

 

「ふぅ。いい度胸、かつ本当に面白い男ね、カッツォ。いいでしょう、あなたの選択を尊重し、サティア・ハラメントスの名においてあなたを私の配下としましょう。これから、しっかり励みなさい」

 

 遠のく意識の中、そんな声が聞こえたものだから。

 

「カツオ、です」

「そう、よろしくね、カッツォ」

 

 訂正した、つもりなんだけどなぁなんて思いながら、意識を投げ捨てた。

 

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